バルーンハンター 前日譚
バルーンハンター | の前日譚です。 |
頭に包帯を巻いた少年が地に頭をこすりつけ土下座をしている。
その向かいには常盤台中学の制服を着用した女子学生。
「………………………………ナニよ、それ」
仁王立ちじた女子学生が土下座している少年に底冷えする声をかける。
「ナニ、と申しましても土下座で御座います、美琴様」
顔を上げず答弁する少年。
「違うわよ、その頭に巻いてる包帯はナニか、って聞いてんの!」
「こ、これにつきましては階段からコケまして額をホンの少々、ホントに少しだけ切りまして、えー。先生も大げさだなー」
体を起こし、包帯に包まれてない髪を掻きながら少年は答えた、もちろんウソである。
「ほー、なる程ね。いつもの不幸だって言いたいわけ?」
「そーなんだ、上条さんの不幸体質は相変わらず絶好調ですよ……毎度、心配かけちまうな」
「うっ…………それが昨日は一日中連絡が取れなかった理由?」
「まっまーな、頭を打ってるから大事をとって一日中検査します、ですよ。おまけに部屋に携帯を忘れちまって、すいませんでした」
もう一度頭を下げて謝る上条、携帯に何度も着信が有りながら電話に出なかったことを謝る。
実は迷子の少女に手を貸したら、その子が科学結社に狙われていた。
狙われたのはその子の持ち物、超常現象を起こす謎のアイテムと見られていた。魔術サイドの霊装だった訳だが、おまけにそれの本来の持ち主である魔術師まで絡んで来た。科学結社は自滅してくれたようであるものの、最後に魔術師との対決といった、映画が一本撮れる一大アドベンチャーの1日だった。
いつもよりはケガの程度は低い。額を科学結社の者が撃った銃弾が掠めたぐらいだ。ケガ自体は大したことはない。が、銃弾である、ほんの少し、何ミリかでもズレていれば今日、美琴に会えてはいなかった。
そして改めて上条が思った事は自分の身の危険よりも、大事な美琴をこんな事に関わらせたく無い、だった。
その為にはウソもつく。
「そう……」
まだ疑わしそうな顔をしている美琴。
「そーだ、美琴。大覇星祭の初日のナイトパレード。ゲコ太の山車がまた出るんだってよ」
「えっ、今年もアレが出るの?」
「レベルアップして登場って話しだぞ……一緒に見に行かないか?」
「ア、アンタと一緒にって、そっそれ////」
「あっ、去年は大ラスのフォークダンス、邪魔されっちまったよな」
「くっ黒子にね」
「今年は邪魔されないといいな」
「うっうん……その後、連絡取れなかったのよね」
返事する美琴だが、顔が曇る。
(いけね、去年は大覇星祭の後、イタリアに行ってすぐまた入院したんだったか、あん時も連絡が取れなくなってたんだ)
「そ、その後の罰ゲームも楽しかったよな」
「そ、そーかな?」
罰ゲームにかこつけたデートもどきは上手くいかなかったうえに9.30事件当日である、巻き込まれた。
「美琴の方で何かまた計画しといてくれよ」
「そんなの誘う方が計画するもんじゃないの?……まぁいいわ何か考えとく……」
「……アンタもバルーンハンターに出るの?」
「二日目のアレか?出るけど。さすがにこっちの作戦がバレるよーなことは美琴にも話せねーぞ?」
「それは良いわよ、唯一の直接対決かぁ、楽しみね」
ニヤリと笑う美琴。
上条はそれをニッコリと笑ってくれたと思った。
(ウソを言ってんのはわかってんのよ! 銃を持ってアンタを追ってた連中を誰が止めたと思ってんのよ! 困ったことに巻き込まれたらあれほど連絡しなさいと言ってるのに……いい機会だわ、認めさせてやるんだから!)
そうして二人は大覇星祭を迎えることになる。