極端なカード

新しく登場するカードの強さは、「汎用性が高い分カードパワーは低い」か「汎用性が低い分カードパワーが高い」かのどちらかが求められる。
これに当てはまらないカード、例えば「汎用性もカードパワーも高いカード」はゲームバランスを壊すカードにしかならず、「汎用性もカードパワーも低いカード」は使い道がないカードにしかならない。

これまでの遊戯王シリーズでもこういった極端なカードは散見された*1が、極端に強いカードを使うとズルをしたようにしか見えず、極端に弱いカードを使うと全力で戦っているように見えなくなるため、OCG化を考慮しない場合*2ですら問題があると言える。

しかし、やはりゼアルでもその姿勢は反省されず、こういった極端なカードは更に多くなってしまっていた。
傾向としては、極端に弱いカードは初期に、極端に強いカードは末期に多い。



極端なカードの実例を挙げだしたらキリがないため、以下にはその両極端なカードを2枚挙げた上で考察を述べる。
何を以て「極端に強い」「極端に弱い」とするかには主観も含まれてしまうが、このページに挙げる2枚であればだれも異論はないだろう。


極端に強いカード


《CiNo.1000 夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア》
光属性/ランク13/攻撃力100000/守備力100000
【悪魔族・エクシーズ/効果】
レベル13モンスター×5
このカードは「No.」と名のつくモンスター以外との戦闘では破壊されない。
自分フィールド上に存在する「CNo.1000 夢幻虚神ヌメロニアス」が破壊された時、
そのカードをこのカードの下に重ねて、
このカードを自分のエクストラデッキからエクシーズ召喚する事ができる。
このカードカードの効果では破壊されず、攻撃宣言をする事ができない。
このカードが自分フィールド上に存在する限り、
相手はこのカードを攻撃対象に選択しなければならない。
選択しなかったターンのエンドフェイズ時に、相手はデュエルに敗北する。
このカードのエクシーズ素材1つを取り除いて発動する事ができる。
相手モンスター1体の攻撃を無効にし、自分はその攻撃力分のライフポイントを回復する。


もはやツッコミを入れるのも面倒臭いが、言うまでもなく明らかなぶっ壊れカードである。
それどころか、攻守やランクの数値が完全に遊戯王の概念を崩壊させてしまっている。
これで召喚条件が極端に厳しかったら百歩譲ることくらいはできたのかもしれないが、このカードは正規の方法でエクシーズ召喚する必要すらない上に、その召喚条件に必要なカードもカード1枚でお手軽に呼び出すことのできるカードでしかなかった。*3

ついでに言うとこのモンスター、ゼアルにおけるマウンティングの姿勢やその誘因である自信の無さを如実に示した効果を持つモンスターでもある。
他人が作った世界観を蔑ろにしてまで「自分はすごいだろ」という設定を主張するも自分から動くことは断固拒否し、無視されれば勝利するという無敵君は、人と向き合うことに怯えているものなのだ。



そして何故このような極端なカードが多く登場するかと言うと、もちろんその理由は構成力の無さという一点にしかない。

相手の強さを表現したい場合はプレイングやコンボで表現するものなのだが、そのプレイングやコンボを表現できない場合は、極端に強いカードを使わせて「オレツエー」な展開にしかできないのである。*4
プレイングやコンボで魅せた場合はキャラクターの強さの説得力も生まれるのだが、極端に強いカードを使っているだけのキャラクターには、むしろ「そのカードが強いだけだろ」という疑念しか生まれない。
この「ぼくのかんがえたさいきょうかーど」要素もまた、ゼアルキャラクターに実力があるようには見えない理由の内の1つである。



もちろん、強いカードの使用自体を否定しているわけではない。
要は見せ方である。

例えば、5D'sで行われた【チーム5D'svsチーム太陽】戦は、強力な効果を持ちながらも召喚条件が非常に厳しい《眠れる巨人ズシン》をチーム太陽が一丸となって召喚させ、チーム5D'sを圧倒するというデュエルだった。
これは《眠れる巨人ズシン》の召喚条件が非常に厳しいからこそ説得力が生まれている展開であり、もしチーム太陽が前述した《CiNo.1000 夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア》と同レベルのお手軽さで《眠れる巨人ズシン》を召喚したら、もう何もかもが台無しであろう。

失敗例としては、これまた5D'sで行われた【チーム5D'svsチーム・ニューワールド】戦が挙げられる。
こちらもチーム太陽同様にチーム・ニューワールドが一丸となって*5《機皇帝グランエル∞》や《機皇神マシニクル∞³》を活かす戦術を見せており、チーム5D'sを苦しめていた。

ここまではいいのだが、問題は後のデュエルで前述の《機皇神マシニクル∞³》が《カオス・インフィニティ》1枚でお手軽に召喚されていたことである。
結果として、前述したデュエルでチーム・ニューワールドが手間暇かけて行っていたことが茶番になってしまっていた。
「強いカードには厳しい条件を付ける」ことの大切さが、如実に表れた一件と言えるのではないだろうか。

まぁ、成功例として記した《眠れる巨人ズシン》の件に関しても、「なんで終焉のカウントダウンを使わないの?」*6というツッコミが生じるという問題があるのだが。*7*8


極端に弱いカード


仕込みサイクロン
通常罠
自分フィールド上に存在するモンスター1体のコントロールが相手に移り、
そのカードがリリースされた時、発動する事ができる。
相手フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を破壊する。


遊戯王OCGには古くから「フィールドの魔法・罠カード1枚を破壊する」という効果を持つ速攻魔法《サイクロン》が存在しているのだが、このカードは露骨なまでにその下位互換である。
まず、「自分フィールド上のモンスター1体のコントロールが相手に移りかつリリースされる」という条件自体が限定的過ぎる上に、その結果適用できる効果自体も《サイクロン》より範囲が狭い。
そしてこのカードは通常罠カードであるため、手札から直接使える《サイクロン》と違って一旦セットしておかなければならないのである。



そして何故このような極端なカードが多く登場するかというと、もちろんその理由も構成力の無さという一点にしかない。
具体的に言うと、構成ミスの回避である。

勝敗等の結果を決めた上でデュエル構成を作る都合上、「このカードを使える状態なら負ける方が勝ってしまう」「このカードを使える状態なら早い段階で決着が付いてしまう」というような状況は制作過程で度々起こる。
本来はその問題を解消するためにカードが加わるタイミングやカードの効果を調整して無理のない展開にするものなのだが、実際はカードに厳しい使用条件を付けて汎用性をなくすことで、構成上都合の悪いタイミングでの使用を回避しているだけなのである。

前述した《仕込みサイクロン》の件に関しても、もし遊馬の手札にあったカードがこのカードではなく《サイクロン》*9であったと仮定した場合は、対戦相手であるロビンがセットしていた《トリオン・バリア》等を破壊できたことになり、結果として手札事故を起こすことになるロビンにもっと早い段階で勝利できていたことになる。*10
この件に限らず、ゼアルで登場するカードの発動条件は、使われて困るタイミングを露骨に省いた御都合主義感溢れる発動条件が非常に多い。



もちろん、弱いカードの使用自体を否定しているわけではない。
これもまた見せ方なのである。

例えば、遊戯王デュエルモンスターズで行われていた【遊戯vsデュエルマシーン】戦は、リック*11が構築したバランスの悪いデッキ*12を使って戦わざるを得なくなった遊戯が、工夫を凝らした戦術で勝利するというデュエルだった。*13
強いカードを使って勝っても当たり前としか思えないが、弱いカードを活かして勝つのであれば、そのキャラクターの実力に説得力も生まれるだろう。
また、このデュエルの少し前に遊戯はリックに対してアドバイスと共に《凡骨の意地》を渡しており、それがデュエルのキーカードにもなっていたため、弱いカードの活かし方を視聴者に教えるという販促にもなっている。*14

失敗例としては、エドに敗れた十代が新しく手に入れていた「ネオスデッキ」が挙げられる。
主人公のパワーアップイベントは王道であり、十代のファンデッキのパワー不足*15を感じていたファンにとっては、特にワクワクする展開になったことだろう。

ここまではいいのだが、問題はそのネオスデッキが既存の「E・HEROデッキ」以上に弱かったことである。*16
結果として、ファンデッキの発展を期待していたファンをがっかりさせる結果になってしまっていた。*17
「強キャラには強いデッキを使わせる」ことの大切さが、如実に表れた一件と言えるのではないだろうか。*18

まぁ、成功例として記した《凡骨の意地》の件に関しても、デュエルマシーン*19がプレイングミスを犯していなければ普通に遊戯が負けていたという問題があるのだが。*20



一方のゼアルはと言うと、「その場その場の都合に応じたピンポイントカードばかり使う」というバランスの悪いデュエルが多いため、「強い弱い以前にファンデッキがまともなデッキにならないという問題が生じているのである。*21
これでは強さに説得力が生まれないのも、OCGの売り上げが落ちるのも、ゼアルキャラのストラクチャーデッキが発売されないのも、全て当然でしかないだろう。
しかも遊馬が行っているのは販促ではなくである。

ファンあってのアニメであるということも、もっと言うならOCGあってのアニメであるということを理解していないとしか思えない。*22

なお、これまでの遊戯王シリーズには、既存の弱小カードを活かしたデュエルもあったりする。*23
しかし、ゼアルにそのようなデュエルはなく、*24*25それどころか肝心の遊馬がホープ*26一辺倒である*27ため、もう完全にただの雑魚にしか見えないだろう。


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最終更新:2022年01月03日 11:14
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*1 たがが外れだしたのはドーマ編

*2 OCGあってのアニメである以上それもおかしいのだが

*3 一応、正規の方法でエクシーズ召喚するのは非常に難しい...というかほぼ無理である

*4 ボスの使用カードにぶっ壊れカードが多いのも、圧倒的強さが求められるボスの強さをまともに表現できないためである

*5 プラシドのみ反抗期を引きずっていたが

*6 《眠れる巨人ズシン》は20ターン耐えて初めて召喚できるカードで、《終焉のカウントダウン》は20ターン耐えるだけで勝利できるカード

*7 尤も、5D'sの世界に《終焉のカウントダウン》が存在するかどうかまでは不明であり、《終焉のカウントダウン》がチーム戦でどう処理されるのかも不明なのだが

*8 ストーリー面では、観客の多くが《眠れる巨人ズシン》(使えないと評されている筈のカード)を携帯していたことへのツッコミもある

*9 どうでもいいが、等々力は《サイクロン》を三積みしている

*10 積み込みにしか見えない手札であったが故の手札事故である

*11 GXや5D'sにも同名の人物が存在する

*12 勘違いされやすいが、「遊戯デッキは重い」と言われる主な原因は使用カードがOCG化された際の弱体化にある

*13 どうでもいいが、遊戯にデュエルを任せた際のリックは腹に一物あるかのように見える

*14 実際は城之内の凡骨ネタありきでストーリーを作ったのだろうが

*15 主に手札消費の多さに伴う息切れ

*16 グラン・モールだけ異様に強かったりもするが

*17 コンタクト融合せずにネオス単体を過労死させた方が強いとか言われる

*18 ネオスのウルトラマンネタを優先していなければまだ何とかなったかもしれない

*19 一応最高レベルに設定されている

*20 《キラー・スネーク》ではなく《格闘戦士アルティメーター》で攻撃していれば遊戯のライフを0にできていた

*21 OCGオリジナルカードでの補強を邪道だと思わないのであれば何とかなるかもしれないが

*22 イカサマを個性とするキャラのストラクチャーデッキとかどう再現するんだという話である

*23 遊戯や遊星が行っている他、GXでは万丈目やエドがその役割を担っている。一応十代も自分のデッキに「おジャマ」を混ぜたことはあるが

*24 カイトの使った《死者蘇生》や《月の書》はパワーカードであり、初デュエルで手札にあった既存カードは全て《フォトン・ベール》でデッキに戻された

*25 六十郎が遊戯のカードを使っていたりするが、結局その理由は一切不明なままだった

*26 作中でナンバーズはパワーカード

*27 この点を等々力から否定されたこともあったが、結局それも有耶無耶になった