「んで、黒影をあっと言わせるゴッドイベントは決まったんだべ?」
「まあはい、どんなルートが可能性あるかってだけですが」
「あまり無駄口を叩くな、お前はメンテナンス下手なんだから丁重に扱え」
「うるさいですね、私はハッキングの成績が下手なままだから楽してハッキングできる装置作ったんですよ」
「
たくっちスノーくんも言ってたけど改めて戦隊ヒーローのアイテムじゃないなぁこれ……相田くん、色々戦隊っぽいこと出来る機能つけたいけど容量余ってる?」
「よし、ちょっと整理してみるべ」
コバルトとさくらのシュンヨウフォンメンテナンスにシエルとポチがアシストに加わり、より高度なアイテムへのアップデートを試みる。
以前からたくっちスノーはゼロからの発明ならポチが一歩先をいくのではぐれ戦隊以外で作るなら彼に頼りたいと語っていたこともありコバルトも納得するくらいスムーズに進む。
なんとポチは一人だけブンブンカーやアバタロウギアのような独自のコレクションアイテムを作成している。
「んでオラ達はゲーム的に例えるとどんなルート行くべ?
バッドエンド確定だけは勘弁して欲しいんだが」
「大丈夫だ、レッドやブルーと和解出来た君等にそこまで酷いどんでん返しや追い打ちはないよ、俺達は精一杯頑張った物語を肯定する……『僕はラブソングが歌えない』なんてことは、君等にはないね」
「まず俺の理想のルートは怪人や過去からのトラウマから脱却して新しい幸せを手に入れるルート」
「あっオラもそれは賛成だべ、エレボスだが人類の存続だかはともかくさくらちゃん達のそこは深刻だべ」
「そんなもの見つかるなら苦労しませんよ、戦隊として戦うよりはハードじゃないですか?」
「そうだな、今更どうしろと言いたいが確かに後腐れはない……他にはブルー、イエロー、グリーンの単体戦隊も増やして春夏秋冬を結成し戦力を強化する、怪人と人類を隔離するの3ルートだが」
「うんまず最後のやつは論外だな、現実的ではあるが後回し、逃げのルート、バッドエンドじゃねえにしても解決を放棄した結果だべな」
「当然だ、私もこれは本意ではなく可能性の一つとして挙げた後に過ぎん。」
今現在の自分たちに出来る選択肢は2つ、新しい戦隊をさらに増やすか自分達のトラウマを脱却するか。
だがこの道はどちらも生半可に済むはずがない、ベビー、マゼンタ、かすみの精神的問題には解決して新生活も半ば問題ないがシエルとさくらの深く残った心の問題は深刻、今更さくらは女の子らしい生活も戻れないしかと言ってサクラのように男になるのも嫌だ。
シエルも家族を亡くしたまま1人で生き続けて今更新しい者なんて受け入れられるだろうか……?
新戦隊に関しても大きな問題がある、相田率いるブルーの藍の波止はともかく金の久遠と翠の庭園は黒影の介入のせいでガタガタ、戦隊を作るどころか学校が維持できるか怪しい。
翠はともかく金の久遠に至っては全員ロボットであることがバレて学校を維持できるかも怪しい状況にある、やはり選択肢は一つしか無いがその上で学校を蔑ろにすることが出来ないのも悩みどころである。
そうこう話している内にシュンヨウフォントのメンテが終了したのでさくらとシエルはそそくさと帰る。
「そういえば監理局の方は分身してるとはいえ問題ないのか?」
「そうですね、私さっき話したような真実を盗聴して特盟に流したんですけど」
「……え?それマジで言ってる?特盟公認ってことは実施全時空にゴッドイベントのこと並びに黒影局長のことバレたってことになるけど???」
「はいそうですが、だからたくっちスノー局長はもういっそのことあちこちでゴッドイベントやろうって話じゃないんですか?」
「なるほど考えたな……まさかたくっちスノーくんがそこまでやるとは、いやはやミリィも知ってるだろうなこりゃ……そして黒影局長はゴッドイベントの原因が
オブリビオンであると思っている……」
ポチは語る、そもそもゴッドイベントというものは名称にするほど複雑なものでもない。
どんなに優れた全知全能の神でも運命まではコントロールできない、世界の行く末や人々が導いた未来なんてものを自分の望むままになんて出来るわけがない。
彼もまた自分の好きなようにすることで破滅を招かねない、ただ世界が未来に向かっていくのをゴッドイベントと名付けているだけだと。
黒影は主人公ではない、ヒロインも彼のほうを向いていない、相棒は……まだわからない。
「なんでそこまで言い切れる?」
「あれ?あのベビーっていう可愛い子から聞いてないの?俺とミリィはたくっちスノー君も把握しているが監理局とは別の派閥にある、その派閥のトップは俺達を作った人で……黒影局長の敵」
「おっと……まるでオラ達みてぇな状況だったか?」
「まあといっても実際は黒影局長の関係者なんて甘い汁を啜りたかったり利用したいやつばっかで本心からあの人の味方してる人は実際は結構少ないんだよ?たくっちスノーくんくらい?」
「……それで、ベビーさんがそちらの人と?」
「あーうん、実はね……」
コバルトもデータベースを弄っていくうちに気づく、ベビーがゴクイエローを通してその研究所にアクセスして話をしていた。
恋愛大好きベビーは黒影にとってのヒロインが気になってしょうがなかったらしくとてつもない行動力である。
そしてその結果ベビーは……。
◇
「まさかプライベートで戦隊ピンクと話できるなんて、俺としてはとんでもない贅沢だよ」
「あっそうかな〜、一応お土産も用意してあるよ、はいこれさくらちゃんに選んでもらったゴクレンジャーフィギュア」
「やっば泣きそうだよ……俺もこの世界行っとけば良かった……」
密談のように、レッドの喫茶店のときとはまた違う雰囲気でベビーとミリィがこっそりお洒落な洋菓子店で話をしていた。
今回はゴクレンジャーの新人ピンクと
時空監理局局長臨時アシスタントではなく、1人の恋に飢えた少女の好奇心に応えるものとして。
「しかしまさか、ハッキング力が凄いとは聞いたがウチの研究所にアクセスしてくるとはね、まあうちのセキュリティもっと強化しなくちゃって意識は付いたけど」
「ごめん!でもブルー様の為にもあたしはもっと知っておきたくて……」
「恋する乙女すごいね……さて、ここまでされた以上、俺達は君に話す義務がある……いいよゴクブルーさん、出てきて」
「えっ……ブルー様!?」
ベビーが周りを見渡すと隠れてるつもりのブルーとあやめさんの姿が。
毎度思うがなんでこのブルー本名わからないままなのだろうか、機械のイエローはともかくブルーだけこの調子なので色んな意味で浮いているがそれは良い。
ミリィの方もリモート映像やお客のデータを消して席を合わせて本格的に話に入る。
「実はこの店、研究所の関係者が資金源として使っているチェーン店なんだ、この為に貸切にしてもらった」
「まずあたしが聞きたいのは、黒影にとってのヒロインについて」
「まあやっぱりそこだよな……うん、まだ時空の誰にも詳細は明かせないけど……黒影にとってのヒロイン、『
黒影剣』の話をしよう」
黒影剣、時空の始まりでありある男の愛と関心に巻き込まれて時空が生まれるまでになった。
彼はかつて彼女とともに大冒険を繰り広げて、その時の体験に飢えてこの時以上のドキドキワクワクの物語を作ろうとしている。
脳天気なイエローでも黒影の真意が読める、そのヒロイン相手に自分だけの冒険がしたいから自分達の事を抑え込んでいる、まだその時じゃないというだけと。
その為に時空を作り、数々の世界でイベントを招き……それを自分が解決する気なのだろう。
だがそれは舞台にするにはあまりにも広すぎた、黒影が作るには幅が広すぎて黒影いなくてもわりと発展していた。
「それっていつぐらいのころ?」
「えーと不老不死であることを仮定しても……10万年前?」
「もう転生も出来ない長さだよねそれ?」
「作ったのね……改めて自分の彼女を」
「ただ作るならともかく、死んだ人をこれで元に戻せると思うんだから狂ってるよ、犬かっての……」
さっきまで戦隊フィギュアを片手に子供みたいな笑い方をしていた少年とは思えない呆れたような引いたような笑みを浮かべるミリィ。
ベビーは現在ヒロインがいないから物語を始めようがないことを焦っていることには分かったが、まだ疑問があった。
……どうして剣を作らないのか?
「それどころじゃないってこと?」
「まあそれもそうだね、俺達にも何が起きるのか分からないけど当時は最悪クラスでカリスマ気取ってたたくっちスノーが一転して君達の知る態度になって、黒影は自分が死ぬかもしれないってめちゃくちゃ焦ってる、その時が来たらどうなるのかひやひやする。」
そう考えると時空の危機とは思えないほどにあの五人は間抜けすぎる茶番をしていたような気もする、一応当事者の一人だったはずだがミリィもよく今、真面目に返事してる物である。
だがここまでの話を聞いて同じ研究者だったあやめは核心に至った。
「なるほど、たくっちスノーはその実験で生まれた人造人間だったのね?」
「そうだよ、といってもたくっちスノーはそれを知らない……なんで分かったの?」
「いくらなんでも黒影への態度が……まるで親のように甘さを感じた、あの二人の関係は私とさくらとほぼ同じよ、でも言わないの?」
「まだその段階じゃない、俺もまだ俺はたくっちスノーの影武者として彼に作られたってことにしたい……まあ、博士のことはバレてるけどそれだけだ」
だが一番危ないがチャンスでもあるのは黒影が特盟に不信感を抱かれて事業にメスが入るこの時。
しかし自分達の数々の事業の結果も大きくマイナスになりその時が来れば現在やろうとしていることも危ない。
「多分だけどさくらさんが全部チクったからウチの権威はスカイツリーから落ちるが如くだ、特別講師の座も下ろされることになる……まあいつになるか分かんないけど」
「じゃあそれまでにゴッドイベントを実行しなきゃってこと?でも研究所は?」
「ああ、未来のサクラさんとやらはウチで回収して欲しいと言われたから遠慮なく……それと都合が良かった、ゴクレンジャーの皆さん、うちがスポンサーになって
時空ヒーローになってみませんか?」
「え?あたし達が時空規模?」
「いいんじゃない?抜群の科学力の設備を持つところなら私たちの目的も果たせそうだし」
「時空の平和を守っていくのも大事だが……レッドはどう応えるかじゃないか?」
◇
「何?ゴクレンジャーが時空ヒーロー?……いいね、なろう!!オレ達ももっと色んなヒーローと力を合わせていく時代だ!」
ゴクレッドの姿でかすみはあっさり両諾、ゴクレンジャーとしてのセカンドライフは無事に手に入れてかすみも無事に第二の人生が安定した。
それで問題はシエルとさくらなのだが……。
それよりもレッドは何か大事なことに気付いたのであやめに電話で受け答えする。
「待ってくれ姉さん!時空監理局並びに別組織と会話して時空への新たな一歩踏みしめるってめちゃくちゃゴッドイベントっぽくないか!?」
「確かにそうじゃない!?そりゃ法則性分かんなくて意味わかんないとか言い出すわ!!それで……肝心な私の孫娘はどんな調子?」
「……あーーー、なんというかその……ぱっと見ではパパ活」
「は?」
何故かさくらはたくっちスノー、シエルはポチとWデートの最中?のようだ。
確かに傍から見ればちょっとやばい光景、たくっちスノーが特別講師なだけにコレちょっとまずいのであまり大っぴらにならない他世界で行っている。
かすみは不安になって覗きに来たわけだ。
「……先生、コレはさすがに問題になると思いますよ?」
「自分もそう思う……ねえポチどういうこと?」
「ええ?女の子に向き合うにはまずはデートしてときめきを感じながらその子の全部を知ることだよたくっちスノーくん!」
「あのね自分の立場分かってるのか!?君さあプロファイリングの天才なんだからちょっとプロフィール分析して改善案用意するだけでいいだろ!?」
「教師がそんなことでいいのか?もっと女の子の真意に向き合ってこないと!それに……俺は桃井さつきになれない……」
「まだそれ引っ張ってたのか……」
ついこの間まで青峰大輝にブチギレてた奴のセリフではない。
というか青峰はともかく比較対象がデータキャラとしては本当にぶっ壊れてる相手だしポチは性欲だけでこの能力成立させたので相手にならないのはしょうがないが。
とにかくポチはシエルの為にデートもどきをしているのであって決して趣味などではない。
だが当然シエルとさくらは乗り気ではない、まあ相手が相手なのでどんな女の子もそんな反応するが。
「おい、私は別に恋人が欲しいわけでは」
「いや私もいらないんですけど?」
「じゃあ思い切ってさくらちゃんとシエルちゃんが付き合うってのは?」
「何がじゃあなんだよ性欲方面で考えるのも大概にしろよ」
「俺も混ぜてよ」
「ほらそういう話をすると野生の百合の間に挟まるチャラオが!!」
「ガ……ガイアッッッ!今すぐYWMに連絡しないと!!」
たくっちスノーとポチは精神年齢が若干似ているしミリィの保護者になりたがる二人組なので組むとexeのときや5人揃うより思考が馬鹿になる。
シエルはめんどくさくなって逃げようとするがさくらに腕を掴まれる。
「おい私を道連れにする気か」
「考え方を変えましょうシエルさん、男達に貢がせて良い思いしようと考えるんです」
「それは誤魔化しようがないパパ活になるだろうが!!」
「でもせっかくですよ?それに……それに、私達今更どうするんですか?イベントの為で納得できます?」
「うっ……それは、そうだが……」
気持ち問題で解決できるほど甘くないがこれが世界のためというのも複雑な気持ち。
とりあえずポチは真剣にやっているんだーー!!ということで続けることになる。
ぶっちゃけデートかどうかなんてどうでもいいんだ、問題はこのバカ五人リアル女性との経験なんて無くて作戦でデートなんて無謀もいいところである。
ポチは空論のデートでグダグダになるのが目に見える……とたくっちスノーは思っているし
たくっちスノーは異性との経験なんてない空間だからモテはするけどいざとなると……ってポチは思っている。
始まってみるとさくらは結構乗り気なのかたくっちスノーを引っ張るがシエルは素っ気ない態度。
ポチはこれくらいクールビューティーな見た目なら想定内だし黒影よりは冷たくないからと堪えない。
「黒影よりよっぽどいい!!」
「ダメですシエルさん、あの人たちの基準黒影で上書きされてるので何しても喜びます」
「こいつら普段どんな扱いされて仕事してるんだ……」
「おいポチ、デートとかいうけど大丈夫なの?自分ら結局女の子の相手とか……」
「なーに平気平気、俺に任せておきなさい!」
「なんだろう……自分の姪っ子と考えるととんでもなくほっとけない気配がするぞ……」
「あらあら楽しそうね、私も混ぜて」
「ねっ姉さん!?いつのまに!?」
こうして戦隊の恋模様を追いかける残りメンバーという意外と戦隊では見かける光景になり、花岡姉妹はじっくりと相応しいかどうか観察することにした。
「で、ポチお前デートプラン聞かせてよ」
「こういう時は服でしょ服、アパレル方面行くぞ」
「アパレルってお前な!?自分服とか詳しくないぞ!?どっちが似合う!?とかその手の質問苦手なんだよ!」
「あのいまさらですけどそういうのってもっとヒソヒソ声でやってくれませんか?いらないですよ服なんて……大体私なんて何着ても似合いませんしスカートとか嫌いですし……」
「あーうん前言撤回だ!服屋行こうさくら君!!」
「えっちょっと!?」
たくっちスノーの気は変わって
時空の渦でさくらを強引にお気に入りの服屋に連れて行って、
マガイモノの部下を呼び出して店員に仕立て上げて
ジーカ握らせてオススメを用意させる。
(あの子可愛い系苦手っぽいから如何にも女の子って感じの服は控えて)
(了解ボーイッシュ系でございますね、鳥のマガイモノとしておまかせを)
(うん、お前はアレ作ってくれるくらいだからね)
「あの……何してるんですか?」
「ああうん、さくら君って女であることに嫌な気持ち感じてるんだよな?それはもう変えられないし教師だからってどうこう言えることじゃないと思う……けど自分なりにアプローチくらいはしたいじゃない?さくら君大事だし!待ってろ、今君に似合うような戦隊好きも唸らせるとびっきりの衣装作ってやる」
「作っ……作る!!?買うとかじゃなくてオーダーメイド!?いいですよそんなの悪いですって私のためにそんな!大体デートとかいいんですか?貴方は……」
「おいおい何回も言ってきたろ?僕は無性別だ、僕は君に僕の理想を押し付けない、でも僕は何にでもなれるから君の望みなんにでもなれる……さくら君、僕はどんな風になってほしい?」
「えっ……?」
今までこんなこと、言ってくれた人はいただろうか。
彼はマガイモノ、男でも女でもない理想の生命体。
女でありながら男の趣味を持った自分に対して器となってくれる存在。
まるで歪な鍵に綺麗に差し込まれた穴のようにぴったりと一致したさくらの心臓は初めてゴクレンジャーを見た時のように高鳴った。
最終更新:2025年08月06日 23:03