ジーン
「‥‥‥‥‥‥見えるか？」
クー
「見えません‥‥‥」
ジーン
「ぐわあああああ！！まさかこの私が！！」
ジーン
「色鮮やかなこの私が、透明色になってしまうなんて！？」
クー
「ジーン様‥‥‥申し訳ありません！私が取り逃がしたせいで‥‥‥‥」
ジーン
「く‥‥‥だが悔やんでいても仕方ない」
ジーン
「透明人間‥‥‥‥初めての経験だが、どんなものか‥‥‥」
ジーンが魔晶石を掴むと、魔晶石諸共消えてしまう
ジーン
「なるほど、持った物体ごと透明化するのか‥‥‥‥着ている服まで透明になっている‥‥‥よかった」
ジーン
「もし服だけ残っていたら、私はこれから全裸で出発しなくてはならなくなった」
ジーン
「そして突然解除されれば！私は社会的に死んでいたところだったな！」
クー
「はい、二度と魔王城から【出られない】生活になるところでした」
ジーン
「さて‥‥‥‥一応メッセージやマスターとしての行動は可能だが、どうしたものか‥‥‥‥」
クー
「透明化は‥‥‥？」
ジーン
「何、これはこれで興味深い！一緒に研究すればいいだけだ！」
クー
「おお、自分のトラブルも研究対象にしてしまうとは‥‥‥さすがジーン様です！」
ジーン
「ところでクー、見えてないはずなのにどうして目で追える？」
クー
「見えなくてもジーン様の魔力反応で場所は特定出来ます！」
ジーン
「そうか！なら問題ないな！」
ジーン
「では行ってくる」
クー
「お気をつけて〜」
ジーン
「‥‥‥‥‥」
イグニス
「！」
ジーン
「痛っ！！」
ジーンは突如結界に閉じ込められ、頭をぶつける
ジーン
「何するんですか！！」
イグニス
「‥‥‥その声はジーンか？どこにいる」
ジーン
「ここですよ、ここ！」
イグニス
「‥‥‥悪い、人の反応がして‥‥‥な」
イグニス
「‥‥‥どこにいる？」
ジーン
「ここ！ここ‥‥‥あっ、透明になってるんだった！」
メアト
「うわぁ寝坊した‥‥‥なんの騒ぎよ‥‥‥」
ジーン
「あっ、メアト！ちょっと影柱壊してくれ！」
‥‥‥‥‥
ジーン
「ということで、私は透明になってしまったわけだ」
メアト
「念の為聞くけど‥‥‥‥服着てる？」
ジーン
「着てますよ、服まで透明になってます、ほら」
イグニス
「確かに触ってて袖らしきものが分かるな」
メアト
「ほんとでしょうね？ここから元通りになったらあたしあんたの汚いの見ることになるんだけど」
ジーン
「汚くない！！」
イグニス
「そんなことより、お前を襲った奴はまだ城に居るのか？」
ジーン
「分かりません‥‥が、今もクーに探させています」
ジーン
「そいつは色を消す力があるらしく、真っ白なものが多ければ近くを通ったという証になるかと」
イグニス
「分かった、白い物に警戒する」
メアト
「‥‥‥‥‥‥それにしても、あんた色々ありすぎでしょ」
ジーン
「無人島に遭難した時よりはマシです」
ジーン
「この姿でも
逃走中の進行くらいは出来ますよ」
イグニス
「逃走中といえばメアト、お前は選手だが出発しなくていいのか？」
メアト
「ええ〜‥‥‥本当にあたしがやらなきゃダメ？」
ジーン
「諦めなさい、クジで決まった以上絶対です」
メアト
「‥‥‥‥む、分かったわよ、今回だけだから」
ジーン
「では私もそろそろ」
イグニス
「ああ」
イグニス
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥やりづらいな」
‥‥‥‥
メアト
「‥‥‥‥‥」ｿﾜｿﾜ
メアト
「ちょっとジーン、離れて歩いてよ」
ジーン
「離れてますよ」
メアト
「なんでついてくるのよ」
ジーン
「行き先が同じだから当然でしょう」
メアト
「‥‥‥‥なんか付けられてるみたいで嫌なのよ」
ジーン
「心配しなくても貴方を付ける人なんていませんよ」
メアト
「は？あんたあたしに魅力ないって言いたい訳？」
ジーン
「いえいえ、貴方は伸びしろありますよ、もっと色を知れば魅力を感じる人はいますよ」
メアト
「い、色って………あんたそういう意味で言ってんの！？ちょっと」
ジーン
「ほら、王子様というのは案外近くにいますからね、たとえば、そう…………」
ジーン
「私とか」
メアト
「じﾞげﾞんﾞそﾞうﾞ」ﾋﾞｷﾋﾞｷ
ジーン
「ごめんなさい調子に乗りすぎました」
…………こうして、ジーンは挨拶を済ませ…………
ジーン
「よし、最初は大丈夫だ………ハンターを用意して、と」
ジーン
「思惑通り！数十分暇が出来たぞ！」
ジーン
「この間に透明化の研究を進めてみましょう」
…………
ジーン
「ふむふむ…………何をしても視認出来ないな」
ジーン
「鏡にも映らない………しかし影は出来るようだ」
ジーン
「……………ない！！」
ジーン
「何もないな透明って！！調べられることが少なすぎる！！」
ジーン
「く………だったら、元に戻る方法を考えていつも通りになるんだ！」
………
ジーン
「あー！！どのエレメントでもダメか！！」
ジーン
「いかん、いかんいかんいかん落ち着け………」
ジーン
「…………はぁ、他に、試してないこと………えーと、まだ試してないことがあった………」
ジーン
「えーと、思い出せ………思い出せ………そうだ！！あれを試していなかった！！」
ジーン
「ほよほよ君100体にダーイブ！！はははははやわらかーい！！」
ジーン
「遊んでる場合かーー！！」ﾊﾞｷｯ
ジーン
「はぁはぁはぁ………いや、解くな！逆に考えよう、透明生活をエンジョイするんだ！たとえば………」
ジーン
「イエーイ！メアト見てる〜？これから君が前々から楽しみにしてるスイーツを手品のように消しちゃます」
ジーン
「わたしのバカヤロー！！」ﾊﾞｷｯ
ジーン
「………ぜぇぜぇ、ダメだ！透明になったら頭がおかしくなる！」
ジーン
「というか………まずい！！忘れている！！何かを！でも何を忘れたのか分からない！」
ジーン
「透明人間になると記憶まで透明になって曖昧になってしまうのか！？」
ジーン
「クーーー！！助けてくれ、クーーーーー！！！」
…………
イグニス
「………………城の回りを知らない奴が走り回るというのはむず痒くなるな」
イグニス
「魔王様のくれたリストのおかげで、影柱を作らなくても済むが‥‥‥‥」ﾁﾗｯ
イグニス
「‥‥‥‥ん？」
イグニス
「そういえば‥‥‥何か忘れているような‥‥‥‥」
イグニス
「気のせいか」
ジーン
「クーー！！クーー！！！」
クー
「はい、クーです！」
ジーン
「‥‥‥よかった‥‥‥よかった、寂しかった！！」
クー
「おわっ‥‥‥どうかしたんですかジーン様！？」
ジーン
「大変なんだ‥‥‥‥あの透明化にはとんでもない力がある！！」
ジーン
「私の記憶がどんどん薄れて、無くなっていくんだ！！」
クー
「ええええええ！！？」
ジーン
「極わずかだが、少しづつ！‥‥‥私の予想では‥‥‥私はあと一日で全ての記憶が消える」
ジーン
「そして‥‥‥‥‥脳は完全に機能停止し誰にも気付かれぬまま死んでしまう」
クー
「そ、そんな‥‥‥嫌です！！そんなの嫌です！」
ジーン
「私だって嫌だ！忘れたくない！」
ジーン
「‥‥‥‥このままでは‥‥‥‥‥」
ジーン
「いや‥‥‥その上で、逃走中もやらなくては‥‥‥‥‥えっと、最初にやるミッションは‥‥‥‥‥」
クー
「これです！」
ジーン
「ああ、すまない‥‥‥‥」
クー
「ジーン様‥‥‥もう記憶が‥‥‥」
ジーン
「だ‥‥‥大丈夫だ！まだ出来る！」
ジーン
「現に、まだお前のこともイグニスもメアトも、魔王様だって覚えている！ 」
ジーン
「えっと次は‥‥‥‥文字を打ち込むんだったな、こうして‥‥‥このボタンを‥‥‥‥！！」
クー
「‥‥‥…‥！！」
クー
「私、イグニスさんに伝えてきます！」
‥‥‥‥
クー
「私のせいで、ジーン様が大変な事に‥‥‥」
クー
「いや、違う！悪いのはジーン様を透明にしたあの人‥‥‥絶対に許せません！」
クー
「絶対に捕まえてやります！！」
‥‥‥‥
たくっちスノー
「なんかミッションがいつもより変だな‥‥‥文字打ちは主導なのか？変換ボタンあるのに」
メアト
「ジーンの奴、全然上手くやれてないんだけど」
イグニス
「あいつがやったとは思えない出来だな」
メアト
「透明になって浮かれてるのかしら？」
イグニス
「‥‥‥‥‥‥」
イグニス
「だが‥‥‥妙だ」
メアト
「妙って、何が？」
イグニス
「この逃走中というゲーム‥‥‥‥何かが怪しい。」
メアト
「怪しいって‥‥‥いつもの考えすぎじゃない？」
イグニス
「俺もそう思いたいが‥‥‥‥」
メアト
「大丈夫よ、あいつにはクーがいるんだし」
イグニス
「ああ‥‥‥‥そうだな」
‥‥‥‥‥
クー
「はぁ、はぁ、はぁ‥‥‥‥」
クー
「早く、この事を伝えないと‥‥‥‥」
「困るんだよなぁ、せっかくのショーを台無しにしようとするのは」
クー
「‥‥‥‥‥貴方はあの時の！！」
クー
「うっ、何を‥‥‥‥やめっ！！」
「‥‥‥‥‥‥！！」
‥‥‥‥‥‥‥
ジーン
「クー？クー！！どうして戻ってこないんだ！！」
「おやおや？」
ジーン
「！！」
ジーン
「えっと‥‥‥確か」
ホワイトジョー
「ホワイトジョーです」
ジーン
「あ、ああホワイトジョーさん‥‥‥」
ホワイトジョー
「大丈夫ですかぁ？随分息が荒いですけど‥‥‥」
ジーン
「心配ありません‥‥‥大丈夫です‥‥‥まだ」
ホワイトジョー
「分かってますね？」
ホワイトジョー
「これが大失敗したら、この世界の価値は‥‥‥その責任は、ぜーんぶ貴方に‥‥‥‥」
ジーン
「っ！！」
ホワイトジョー
「今の時代‥‥‥‥グローバルじゃない世界なんて、ねぇ‥‥‥‥‥」
ジーン
「‥‥‥‥‥」
ホワイトジョー
「貴方も魔王様の部下ってやつなら期待に応えないと」
ジーン
「‥‥‥‥っ、はい‥‥‥‥‥‥‥」
‥‥‥‥
ジーン
「魔王様の為‥‥‥‥魔王様の為にも‥‥‥‥」
ジーン
「私はやるんだ‥‥‥やらなくちゃ‥‥‥」ｶﾀｶﾀ
ジーン
「私はゲームマスター‥‥‥失敗は許されない‥‥‥‥‥‥」
ジーン
「魔王様、の、為にも‥‥‥‥‥」
ジーン
「いや‥‥‥‥落ち着け！！焦ったら余計に失敗する！」
ジーン
「マニュアルだってあるんだ、これを見れば‥‥‥‥」
ジーン
「私は‥‥‥‥えーと、えーと、【ナントカ三術将】として、必ず成功させる！」
ジーン
「魔王様の顔に泥を塗る訳には‥‥‥‥魔王‥‥‥様‥‥‥」
ジーン
「‥‥‥‥‥魔王様って‥‥‥‥どんな顔‥‥‥だったっけ‥‥‥」
‥‥‥‥
たくっちスノー
「‥‥‥‥‥もしもし、ホワイトジョーの社長さん？」
たくっちスノー
「‥‥‥‥‥今回の逃走中、いくらなんでもバグが多すぎるのですが？」
たくっちスノー
「‥‥‥‥.はい？ゲームマスターの問題でうちは悪くない？アホ言うなです」
たくっちスノー
「ゲームマスターを選ぶのも、舞台も、全部そっちの責任です、時空事件とは訳違うんすよ」
たくっちスノー
「条件に見合う存在を用意できなかったアンタの責任、この世界関係ないんすよ」
たくっちスノー
「で？これについてどう説明を？」
たくっちスノー
「‥‥‥‥‥‥バカ言うな、俺はさ、クロノス社を代表してここに来て逃走中の全チェックしてんの」
たくっちスノー
「気付かないと思ったか‥‥‥‥？【ゲームマスターが不在】ということに！！」
たくっちスノー
「今すぐゲームマスターを連れ戻せ！！」
たくっちスノー
「‥‥‥‥は？ちゃんと居る？何言ってんだ、どこに‥‥‥‥‥」
「たくっちスノー！！」
たくっちスノー
「あ？‥‥‥ちっ、また後で！！」
たくっちスノー
「どうした！」
たくっちスノー
「分かった！」
‥‥‥‥‥
ジーン
「魔王様‥‥‥‥魔王様の顔‥‥‥‥思い出せない」
ジーン
「男だったか？女だったか？年齢は？確か鎧つけてなかったか？私と同じくらいだったか！？」
ジーン
(‥‥‥‥まずい、この数十分で、一気に記憶が‥‥‥‥‥)
ジーン
(これでは、一日どころか、このゲームのうちに‥‥‥‥‥全てを‥‥‥嫌だ‥‥‥嫌だ、忘れたくない！！)
ジーン
(イグニス‥‥‥‥)
ジーン
(メアト‥‥‥‥)
ジーン
「‥‥‥‥あと、あと一人！！私の、私の使い魔！！」
ジーン
「あいつの名前が‥‥‥‥思い出せないっ！！」
ジーン
「あいつは‥‥‥あいつは私の大事な使い魔なんだ！！どうして忘れてしまったんだ！！バカか私は！？」
ジー
「分からない！！分からない‥‥‥助けてくれ、誰か！！」
ジ
「誰か！！！！」
「気付いてくれええええええええええええ！！！！！」
クー
「‥‥‥‥‥はぁ、はぁ、はぁ助かりました」
イグニス
「クー？何故ここにいる」
クー
「‥‥‥‥‥い、イグニスさん‥‥‥」
魔理沙
「こいつは？」
たくっちスノー
「ジーン‥‥‥ほら、ゲームマスターだった奴の使い魔、弟子代わりだ」
クー
「‥‥‥‥ジーン様！！大変だ！！ジーン様が！！」
クー
「メアトさんは！？」
イグニス
「確保されて檻の中だ」
クー
「だったら一緒にメアトさんの所へ！！大変なんです、ジーン様が！！」
イグニス
「‥‥‥‥ジーンに何かあったのか！？」
クー
「ひとまずメアトさんの所へ」
たくっちスノー
「待ちな」
クー
「ですが‥‥‥‥」
たくっちスノー
「‥‥‥‥‥‥」
たくっちスノー
「ルーラ！！」
たくっちスノーはクーとイグニスを掴んで、檻の近くまで一気にワープする
倫太郎
「あれっ‥‥‥たくっちスノーさん？」
メアト
「あたしだって許されなかったんだから！」
たくっちスノー
「‥‥‥‥今回は非常事態だ、急いだ方がいいと思ってな」
クー
「メアトさん‥‥‥大変なんです！！ジーン様が‥‥‥ジーン様が」
クー
「このままだと死んでしまいます！！」
イグニス
「な‥‥‥なんだと！？」
メアト
「ジーンが！？」
たくっちスノー
「‥‥‥‥‥‥‥！！」
たくっちスノー
(あのクソ企業、何かしやがったな！！)
たくっちスノー
「‥‥‥‥‥俺にも聞かせろ」
‥‥‥‥
メアト
「じ‥‥‥ジーン‥‥‥！！」
イグニス
「‥‥‥‥っ！！」
倫太郎
「‥‥‥‥体が透明になり、記憶が薄れていく‥‥‥そんなのまるで、存在が消えてしまうようじゃないですか」
クー
「それをイグニスさんに伝えようとしたら、何者かに捕まって‥‥‥‥」
ルイージ
「ゲームが問題なく動いてるなら、多分大丈夫だと‥‥‥‥思いたいけど‥‥‥‥」
イグニス
「‥‥‥‥‥‥たくっちスノー」
イグニス
「少しの間だけ、メアトを外に出してもいいか」
たくっちスノー
「‥‥‥‥いいよ、アンタらにはアンタらの問題があるもんね」
イグニス
「‥‥‥部屋はどこだ！！」
たくっちスノー
「ちょっと待ってな‥‥‥‥クロノス社のパスワードで‥‥‥‥」
たくっちスノー
「おりゃ！！」
たくっちスノーはゲームマスター室の扉を破壊する！！
「成功させなきゃ‥‥‥成功させなきゃ、成功させなきゃ、成功させなきゃ、成功させなきゃ。」
イグニス
「ジーン！！」
メアト
「ジーン‥‥いるんでしょ！？」
「成功させなきゃ‥‥‥‥‥」
たくっちスノー
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥いや、違う」
ジーンの声はマイクから出ていた‥‥‥
たくっちスノー
「今どきカセットテープ‥‥‥音声だけ、ジーンはどこだ！？」
メアト
「クー、魔力反応から辿れない？」
クー
「やってみます！」
イグニス
「俺は魔王様に報告して、このゲームを中断させるよう頼みに行く！」
‥‥‥‥‥‥
ジーン
「‥‥‥‥‥‥‥」ﾎﾞｰｰｯ
ジーン
(私は、私は何をしているんだろう)
ジーン
(私は今、何のためにここにいるのだろう？)
ジーン
(私は‥‥‥__)
クー
「‥‥‥‥この辺りです！！」
メアト
「‥‥‥‥ジーン、聞こえる？そこにいるんでしょ？」
メアト
「ジーン！！」
ジーン
「‥‥‥‥‥‥‥」
メアト
「ねぇ‥‥‥ちょっと‥‥‥聞いてるんでしょ‥‥‥そこにいるのは、分かってるんだから‥‥‥なんとか言って！！」
メアト
「何やってんのよ‥‥‥あんたは！！」
メアト
「あんたは彩喚士！！いつも眩しいくらい派手な格好して、いつもいつも目立ってた！！あたしの事を助けてくれた！！」
メアト
「そんなアンタが‥‥‥体どころか、心まで透明なんて、あるわけないでしょっっ！！」
メアト
「ねぇ！！いい加減元に戻ってよ、ジーン！！」
メアトの声質は、次第に涙が混じり、必死になり、切実になっていく、だが、それでも
ジーン
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥あの」
ジーン
「彩喚士って‥‥‥なんですか？」
ジーン
「というか‥‥‥貴方は誰ですか」
メアト
「＿＿＿＿＿っ」
メアト
「うっ‥‥‥‥ううううっ‥‥‥‥‥」
メアト
「うわあああああああああああん！！！」
メアト
「バカ！！バカ！！バカ！！！ジーンのバカ！！」
メアト
「あたし達3人のこと忘れたの！？あんなに色々あったじゃない！！辛いことも楽しいこともあったじゃない！！」
メアト
「うっ、うううっ、うっ‥‥‥」
クー
「メアト、さん‥‥‥‥‥」
イグニス
「メアト！！」
魔王
「メアト‥‥‥ジーンは！！」
メアト
「‥‥‥‥あそこ」
ジーン
「‥‥‥‥‥‥‥」
魔王
「ジーンの記憶は‥‥‥……‥？」
メアト
「…………」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ
魔王
「そんな…………！！」
イグニス
「‥‥‥‥‥何故だ、ジーン」
イグニス
「今のお前は影しか見えない、いつものお前はどこに行った‥‥‥いや」
イグニス
「お前を奪ったのは‥‥‥誰なんだ‥‥‥！！」
メアト
「…………この城、真っ白ね」
メアト
「今のあたし達みたい」
メアト
「…………」
イグニス
「…………白」
クー
「はっ！」
イグニス
「…………そうか、まだこの世界に奴がいる！」
たくっちスノー
「………………聞かせてもらったよ」
たくっちスノー
「三術将さん………その件、俺も参加させてもらう」
たくっちスノー
「こいつは…………時空案件だ」
「クロノス社としてじゃなく………」
…………
たくっちスノー
「…………まず、逃走中をする世界ってのは基本的に誰も来ないようにしてるんです、貸し切りみたいなもんだ」
魔王
「外部からの不法な侵入者の場合は？」
たくっちスノー
「それでしたらウチの関係者が気付かないわけがありません、うちの精鋭はみんな時空に精通してるので」
たくっちスノー
「つまり、今回はこの世界に居るヤツらによるもの…………もう、目星は着いています」
メアト
「本当！？ねぇ、それって誰なの！？」
イグニス
「…………ホワイトジョー。」
たくっちスノー
「そう、あの胡散臭い野郎だ」
たくっちスノー
「………ホワイトジョーの今回の逃走中、怪しくってな………あれから調べて見た」
イグニス
「そもそも、奴は何者だ？」
たくっちスノー
「時空の新聞社やってんだよ、主な特集は芸能人の闇とか不正とか、所謂スキャンダルを載せる傾向にある」
たくっちスノー
「うちに裏取りのプロがいてな、調べてもらったら出るわ出るわ、明らかに細工された後、捏造、外部操作！」
たくっちスノー
「………そして、ホワイトジョーの能力も分かった」
たくっちスノー
「……………それは」
「【ショーを盛り上げる能力】だろう？」
たくっちスノー
「！！」
ホワイトジョー
「ご機嫌いかが？ショーのお人形さん」
魔王
「…………貴様がホワイトジョーか！」
メアト
「あんた！！あんたのせいでジーンが！！」
ホワイトジョー
「彼は中々いい役者だったよ！」
ホワイトジョー
「すっごく忠誠心があって、真面目で、そして追い詰められやすい！」
ホワイトジョー
「壊しがいがあったよ！最近流行りの『曇らせ系』の素質あるんじゃない？」
たくっちスノー
「お前………ジーンを潰したくて狙ったわけじゃないな」
たくっちスノー
「動機を………いや、お前の考えついたシナリオとやらを教えな、俺ネタバレ許容派なんだよ」
ホワイトジョー
「単純さ、一面に………逃走中の最中ゲームマスターの突然死、透明奇病！！とでも載せておけば、うちの雑誌は飛ぶように売れるぞ？」
たくっちスノー
「…………………は？」
たくっちスノー
「お前、そんな事の為に………殺したのか？ジーンを」
たくっちスノー
「そんな、くだらない事のために？」
ホワイトジョー
「まだ死んでいない！！」
メアト
たくっちスノー
「…………っ！！？」
ホワイトジョー
「透明になったんだ、証拠なんて出ないんだよ！誰も知らない！！」
ホワイトジョー
「透明になったジーンは病気によって死んだ！【これが事実だ】」
メアト
「お前っ！！！」
イグニス
「メアト！！堪えろ！！」
メアト
「でもこいつのせいでジーンが………あんたは、憎くないの！？こいつが！！」
イグニス
「……………今は、堪えろ…………メアト！！！」ｷﾞﾘｷﾞﾘ
クー
(イグニスさんも………メアトさんも…………あんな顔はこれまで見たことありません)
クー
(分かりますよ…………当然ですよ、だってジーン様もお2人が同じ目にあったら同じ顔をしますもの………)
ホワイトジョー
「どうする？中止か？」
メアト
「決まってるでしょ！？中止よ！こんなモノもう終わらせるべきよ、ねぇヘリオール！！」
たくっちスノー
「いや…………逃走中は下手に中止したら、また【あの人】に怒られちまう」
ホワイトジョー
「………ふふふ、そうだろ？」
たくっちスノー
「まーでも、別にあんたらいなくても困んねーから」
たくっちスノー
「スポンサーをアンタからヘリオールに移し返す、あんたは用済み」
ホワイトジョー
「そんなことが出来るとでも？」
たくっちスノー
「ミスター・エストマンの足と情報力をなめるなよ？」
たくっちスノー
「お前の情報はもう既に時空外に拡散され、SNSは大炎上してんだよ！！」
たくっちスノー
「りりすた革命団敵に回して、勝てると思うなよ！？」
ホワイトジョー
「…………新聞社を、情報の力を…………なめ」
たくっちスノー
「ペンは剣よりも強しってのは間違いだ」
たくっちスノーは容赦なくホワイトジョーを蹴り飛ばす！！
たくっちスノー
「時空はペンも剣も二刀流で使いこなせるやつがいちばん強いんだよ」
たくっちスノー
「いいか、ジーンを元に戻せ、さもないと殺す」
ホワイトジョー
「は？いいさ、殺してみろよ、死んだら終わりだぞ？」
たくっちスノー
「は？死なせるかよ、何回も殺してやる」
たくっちスノー
「
マガイモノ成分の安全な入れ方を俺は知ってんだよ」
たくっちスノー
「それで、死なないまま何度でも殺してやる、何度も何度でも」
ホワイトジョー
「なっ、何故そんなことを！！」
たくっちスノー
「何故？てめぇは逃走中をゴミクズみたいなネタに使おうとしたんだよ」
たくっちスノー
「ハンター用意しないだけ有難いと思えよ」
ホワイトジョー
「………ふふふ！！はーはははは！！甘い、甘いぞたくっちスノー！！」
ホワイトジョー
「なあ………これは分かるか！？」
ホワイトジョーが指を鳴らすと、身体中ツギハギの生物が現れる！
たくっちスノー
「………ディスペクター！マガイモノもどきを用意したのは………てめぇか！！」
ホワイトジョー
「どうだ！！最強のディスペクターたちを見ろ！！」
ホワイトジョー
「こっちは電撃破壊王ゴジキング！！」
ホワイトジョー
「更にこちらは赤き武者ボルテメウス・デーモンドラゴン！！」
ホワイトジョー
「そして総仕上げ！！最強災厄生物マガイマガラ！！」
ホワイトジョー
「時代はディスペクターなんだよ！！」
たくっちスノー
「野郎っ！！」
魔王
「ジーン…………あった！！」ｶﾞｼｯ!!
ジーン
「あっ………」
たくっちスノー
「今は逃げるぞ！！」
イグニス
「くっ………」
…………
ホワイトジョー
「ふふふ、逃げたか」
ホワイトジョー
「まあいい、逃走中タイマーにはジーンの声を加工して作った、嘘のスキャンダル告発装置があるんだ」
ホワイトジョー
「あれはあと1分で起動する………」
…………
ジーン
「何！？何なんです！？何故こんなことを！？」
魔王
「説明する暇はないんだ！もう少しだけ！」
メアト
「…………ジーン、絶対取り戻すから！！」
クー
「た、大変です！」
イグニス
「どうした！？」
クー
「タイマーに変な仕掛けが！！」
たくっちスノー
「なんだと！？くそっ、あの野郎が仕込みやがったな！！」
たくっちスノー
「………ダメだ、間に合わねぇ！！」
…………
ジーン
【あー、あー、テストテスト、うん、上手く声入ってる………といいな………】
ジーン
【言った覚えのない声が入ってたから削除して、改めてこれを話したいと思う………】
イグニス
「ジーンの声…………」
ジーン
【このメッセージが放送されている頃、私はどれだけ記憶が残っているだろうか】
ジーン
【未来の私、もし彼らを忘れていたらとんでもない馬鹿者だからな？】
ジーン
「……………私の、声」
ジーン
【顔はいつもムスッとしているが、とても信頼出来て、意外とユーモアがあって、頼もしくて、自慢の同僚だ】
ジーン
【彼女はちょっと面倒臭い時もあるが………あいつもあいつなりに、人助けが出来て、優しい心を持った………彼女も自慢の同僚だ】
ジーン
【でも、そんな2人の事を私は忘れてしまいそうになっている………罵ったって構わない、嫌いになってもいい】
ジーン
【でも、頼みがある】
ジーン
【もしも、もしもだ………記憶が完全に無くなって、私が私でなくなった時に頼みたいことがある】
ジーン
【ひとつは私の住処、ナーコの村を守ってくれ】
ジーン
【あそこはいい所だ、こんな私を支えてくれた………あったかい故郷なんだ】
ジーン
【だから、逃走中の舞台にもした。】
ジーン
【2つ面は、クーを頼むということ】
ジーン
【とても凄い才能と力を持ってて、愛嬌もある………私自慢の立派な使い魔を大事に育ててくれ】
ジーン
【え？もし私が元に戻ったら？………恥ずかしいから、後で焼却処分して無かったことにしてくれ、私もそうする】
ジーン
【最後に、とっても大事な頼みがある】
ジーン
【イグニス、メアト、2人にしか頼めないんだ………】
ジーン
【私は姿も見えなくなって、この声と記憶だけが私が居たという証明になって】
ジーン
【やがて、年月が経って私のことを忘れてしまっても…………】
ジーン
【彩喚士の事を、忘れないでくれ】
ジーン
【私が死んでも、悲しまないでくれ】
ジーン
【魔王城には彩り豊かで、世界を綺麗に染めあげられる存在が必要なんですよ】
ジーン
【だから………この魔王城を、魔王様を頼みます】
ジーン
【親愛なる我らがナントカ三術将より、
彩喚士ジーンでした………以上。】
ジーン
【………あれ？停止ボタンってどれかな…………ああ、これか】ﾎﾟﾁｯ
魔王
「ジーン…………お前という、奴は…………」
イグニス
「……………」
たくっちスノー
「あんた、やっぱ無愛想だよ、普通泣いちゃうだろ、こんなの」
イグニス
「………どうして、泣く必要がある」
イグニス
「……………………誰が、悲しむか」
イグニス
「お前はまだ…………死んでいないだろう！！」
ジーン
「……………」
ジーン
「さい………かん………し………！！」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ジーン
(私たちはナントカ三術将、3人お互いがお互いを補いあって行く、そんな存在………でしたね？)
ジーン
(私が死んでも悲しまないでくれ)
ーーーーーーーーーーーーーーーー
イグニス
「死なせるか…………死なせるものか…………」
イグニス
「お前が死んだら………悲しいに………決まってるじゃないか…………」ﾎﾟﾛｯ
イグニスは、無念で壁を叩いた、赤い血が出ても叩いた
メアトはイグニスに言われた通り必死に堪えた、堪えても青い涙が零れた
まだ、足りない。
黄色が、足りない。
ホワイトジョー
「ジイイイイイン！！！」
たくっちスノー
「ホワイトジョー！！」
ホワイトジョー
「よくも………よくも俺のスキャンダルを潰しやがったなあああああ！！本当の本当に、ころしてやるうううう！！！」
ホワイトジョーは顔の血管ビキビキの形相でディスペクターに乗って迫る！！
たくっちスノー
「………この情報ハエ野郎っ！！」
イグニス
「………………」
メアト
「………………」
ホワイトジョー
「許さない！！お前だけは」
メアト
「【ゆるさない】？アンタにそんなこと言う資格があるの？」
メアトはゆっくりと、ゆっくりとディスペクターに近づく
メアト
「………許せないは、こっちの言葉よ！！」
メアト
「あんたはあたしから大切なものを奪った！！」
メアト
「どれがひとつでも欠けちゃいけない、あしの人生を！！」
メアト
「返しなさいよ…………」
イグニス
「………影柱！！最大出力！！！」
メアト
「かえせえええええええええ！！！！！！！」
メアトはあっという間に時空間を粉々に破壊して大規模な【次元葬】を作り、ディスペクターをまとめて次元の彼方へ送り込む
イグニスは巨大な結界で吸い込まれないように壁を形成した！
ホワイトジョー
「あ…………ああ、あ、あ？」
ホワイトジョー
「なんだよ、これ、なにが、どうなって、シナリオと、違う」
たくっちスノー
「それだけじゃない」
ﾌﾟﾙﾙﾙ
ホワイトジョー
「なんだよ！？今忙しいんだけど！！」
【それどころじゃないんです！！今、会社に謎の男が！！社員をどんどん凍らせて………ぐわあああっ！！】
魔王ヘリオール
【聞こえるか、ホワイトジョー】
魔王ヘリオール
【お前は相手にしたものが何か分かってないようだな】
魔王ヘリオール
【消えろ………もう、逃げ場はない】
ホワイトジョー
「くっ………だが！」
ホワイトジョー
「どんなに喚こうがもうジーンの記憶は破壊された！」
ホワイトジョー
「何があっても戻してやんない！」
メアト
「………！！」
ジーン
「…………あれ」
ジーン
「なんだろう、私、何か………」
クー
「………まだです！！」
クー
「私はジーン様から生まれた使い魔！私にはジーン様の魔力が、あの人の思いが込められています！」
クー
「だから、あの人の意識に入って………呼びかけてきます！！」
クー
「ジーン様……失礼します！」
ジーン
「え？う、うわあああああ！！」
………
ジーン
「………！！」
ジーンは気が付くと、謎の空間に立っていた
真っ黒………相変わらず姿は見えないままだ。
ジーン
「私は………誰だ？」
ジーン
「名前しか、分からない……私は、どんな姿をしていた」
「お久しぶりですね、随分と………醜い姿になったものだ」
ジーン
「誰だ？」
「私達の事まで忘れてしまったのですか？」
「私達の記憶、そう、貴方にとっては忌まわしい【彼ら】の記憶」
「滑稽だな、お前が大切に思っていた仲間の記憶は忘れて………お前を追い詰めた我々の事は片隅に残っている」
「最も、私達の名前すら忘れてしまったのでしょうが」
【灰色のフードを着た男】【イグニスに似た男】そして【どこか面影のある男】が、影のようにジーンに語りかける
ジーン
「…………誰なんだ」
ジーン
「私は誰なんだ！？答えてくれ！！」
「さあ？それくらい自分で見つければいいでしょう」
「貴方はジーンなんですから」
ジーン
「………分からない、ジーンとは、私とは何なんだ」
ジーン
「私は………何を忘れたんだ」
ジーン
「こんなに胸が締め付けられるくらい………どれだけ大切なことを忘れてしまったんだ………」
クー
「ジーン様！！」
ジーン
「…………君は」
クー
「……やっぱり、私のことも覚えていませんか」
ジーン
「………………ああ」
ジーン
「でも、見ていると………少しだけ安心出来る」
ジーン
「…………こんな空っぽの私を、ハッキリと見てくれた」
クー
「ジーン様は空っぽではありません……もっと、もっとキラキラしてて、素晴らしい方です、私の………彩喚士様です！」
ジーン
「…………なら、教えてくれないか」
ジーン
「私はどんな姿をしていた？」
クー
「…………ジーン様は」
クー
「どんな姿でも構いません！」
ジーン
「！」
クー
「たとえどんな見た目でも、ジーン様はジーン様です！」
クー
「どんな風にも色付けられる、そんな方です！」
ジーン
「………そうか、私はなんでもある、か」
ジーン
「なら、君に任せよう、彩喚士の弟子君」
ジーン
「私に彩を付けてくれ！！」
クー
「……はい！」
ホワイトジョー
「………！！」
たくっちスノー
「……ん？」
後ろにいたジーンの影が光り始める！……
光は影で人の姿を写し、影に色がついて……存在がはっきりしていく
黄色い服、赤い髪……そして、はっきりと見えてくる青い涙
腕や足も鮮明になっていき………
ジーン
「…………………！！」
ジーンの心に再び色が付いていく
ジーン
「思い………出した………！！」
ジーン
「思い出したぞ！！私はジーン！！魔王様の三術将！！彩喚士ジーンだ！！」
ジーン
「イグニス！メアト！クー！魔王様！！全部思い出した！！」
イグニス
「ジーン………！！」
メアト
「クー………上手くやったわね」
ジーン
「………そして、覚えている！！今までの事も！！」
ジーン
「ホワイトジョー！！」
ジーン
「よくも私からあれ程苦しい思いを味合わせたな！！お前の私利私欲で！！」
ジーン
「忘れてたまるか………もう二度と！！あんなに素晴らしい思い出を忘れてたまるか！！」
ホワイトジョー
「そんな馬鹿な………俺のイリュージョンが、破られるなんてことは………」
たくっちスノー
「ホワイトジョー、もう終わりだ」
たくっちスノー
「一応言うけどアンタもう
時空監獄行き、断罪者が来るから」
たくっちスノー
「でも、そ・れ・ま・で」
たくっちスノー
「あとは好きにしな」
ジーン
「ええ」
ジーン
「イグニス、メアト、クー、ありがとうございました」
メアト
「………ジーン」
メアト
「っ！！」ﾊﾞｼｯ!!
ジーン
「痛っ！！何故そこで叩く！？」
メアト
「二度と！！」
メアト
「二度とあんな事言わないで………」
メアト
「………無かったことなんて出来るわけないでしょ！！忘れるわけないでしょ！！」
メアト
「………だから……………もう、消えないでよ…………もう、あたしは誰にも………」
ジーン
「…………はい、配慮が足りていませんでしたね」
ジーン
「サンダー」
ホワイトジョー
「げぼ！！」
ジーン
「サンダー！！サンダー！！サンダー！！サンダー！！サンダー！！サンダー！！サンダー！！サンダー！！サンダー！！サンダー！！サンダー！！サンダー！！」
ホワイトジョー
「ぎゃああああああああああああぁぁぁ！！！！」
ジーンは打った、自分の中にある魔力が。自身の色が尽き掛けるまで
魔法を打った。
ジーン
「…………これで、奴の計画もおしまいですね」
たくっちスノー
「………まだ、終わっちゃいないぜ、あんたは」
ジーン
「え？」
ジーン
「ああ、そうか………そういうことか」
イグニス
「待て、ジーン」
ジーン
「止めないでください、それとこれとは別です」
ジーン
「魔王様の為にも逃走中は完遂させます」
ジーン
「ただし………奴のシナリオ通りではない、私が考えつく最高のゲームを始めるんです！！」
ジーン
「もっと美しく！もっと華麗に！」
ジーン
「これを成功すれば、【彩喚士】ジーンの名は時空にも広まる」
ジーン
「そうすれば、みんな覚えてくれる」
ジーン
「この世界の名を。」
イグニス
「しかし、お前は…………」
メアト
「行きなさい」
メアト
「やりたいんでしょ？選ばれたんでしょ？」
メアト
「だったら、しっかりやり遂げなさい」
ジーン
「………当然です」
ジーン
「さて！これから忙しくなるぞ！手伝ってくれクー！」
クー
「はい！私に出来ることであれば！」
メアト
「……やっと、元通りになったわね」
イグニス
「そうだな………」
メアト
「………さて、あたしもいい加減オリに戻らないとなぁ」
たくっちスノー
「……………」
イグニス
「今回は世話になったな」
たくっちスノー
「そりゃこっちのセリフだ、俺は……この世界来てよかった」
たくっちスノー
「真っ黒な俺はジーンみたいに色鮮やかになれねーから、あいつはもっとそれを誇っていい」
たくっちスノー
「こりゃ、後半は相当派手になるぞ」
イグニス
「ジーンにはそれを言うなよ、調子に乗るからな」
たくっちスノー
「はは、ちげぇねぇや」
たくっちスノー
「俺も戻るわ、てか失格だなこれは」
…………
魔王
「………戻った」
魔王
「たくっちスノーとやらが、私をあの場所に送ってくれた」
イグニス
「魔王様……ご無事で何よりです」
魔王
「ジーンとメアトは？」
イグニス
「………問題ありません」
イグニス
「全て、『いつも通り』に戻りました」
魔王
「………そうか」
魔王
「お前も城の警備に戻れ」
イグニス
「了解しました」
……………
ジーン
「…………見える」
ジーン
「私の姿がはっきり見える！なんて素晴らしい事だろう！」
ジーン
「………ははは」
ジーン
「逃走中、成功してよかった」
ジーン
「思えばここ3回、交代で逃走中をやるという約束なのにゲームマスターを出来たのは私だけだったか」
ジーン
「まぁイグニスは仕方ない、女の子たちに追われ、マガイモノとやらも戦って大怪我続きだからな」
ジーン
「メアトも……呪いでおかしくなるわ不眠になるわで散々だったな」
ジーン
「思えば私も………」
ジーン
「いや私！！逃走中の時ろくな目にあってないな！！」
ジーン
「この【3週間】色々ありすぎだ！！」
ﾊﾟｼｬｯ!!
ジーン
「ぎゃっ！！眩しい」
クー
「あっ、すみませんジーン様」
ジーン
「今、何をした？」
クー
「たくっちスノーさんから面白い機能を付けて貰ったんです、カメラといって写したものを絵のように残せるんですよ」
ジーン
「本当だ！私の顔が出てきた………面白い」
ジーン
「これでいつでも私の顔を思い出せるな」
クー
「はい！」
メアト
「ジーン」
イグニス
「クーもいたか」
ジーン
「おや、どうしました2人して」
メアト
「よーやく逃走中が終わったから、打ち上げ」
メアト
「あたしらもしとかない？」
ジーン
「………では遠慮なく」
………
ジーン
「思えば私達色々ありましたね」
メアト
「もうこりごりってことばっかなんだけど」
イグニス
「俺は今回で何度怪我したのだろうか」
ジーン
「私は精神的に色々来ましたよ………当分はほよほよ君で癒されようかと」
メアト
「あたしももう暫く何もしたくないわ………」
クー
「………ふふっ」
ﾊﾟｼｬｯ!
イグニス
「ん？何をした？」
ジーン
「気にしなくていいですよ」
ジーン
「あっ、でもびっくりしたこともありましたね、何せイグニスがメアトにキ……」
メアト
「あああああぁぁぁ！！！」
メアト
「忘れなさい！！忘れなさい！！それだけは忘れなさい！！忘れるまでやるから！」
ジーン
「い、痛い痛い！やめてくれ！忘れた！もう忘れたから！」
クー
「………いつまでもこの絵のように、仲のいい三術将でありますように」
ジーン様、私は貴方の使い魔でとても幸せです。
こうして、ジーンの気付かれない一日と長かった逃走中は幕を閉じた。
【ジーンの気付かれない一日】
「おしまい。」
最終更新：2021年05月11日 23:48
