「都市伝説に関する生物といえば色々あるよなぁ、生態系が従来と違う謎の存在」
「……それ俺達が言うかってツッコミ待ち?」
「ユリコさんがまだギリギリよくわかる存在ってなんだよ……他人事じゃないんだよ!
マガイモノってなんなんだよぉ……!」
今回は独自に『UMA』(未確認生命体)と扱われる生物を通してマガイモノの研究を行うことにした。
改めて言っておくが黒いドロドロの体で不死身なんてめちゃくちゃ未知側である。
リアルワールドで知られている物で例えると『ツチノコ』とか『ネッシー』辺りだろうか。
「でもツチノコって確か妖怪ウォッチとかでも出てたし妖の仲間とかじゃないのか?」
「アヤカシではないんだなコレが、他世界だとなんかそれっぽい見た目だからそんな見た目にしましたとか珍しくもないぞ?」
ネッシーはスコットランドにあるネス湖で見つかったからネッシー、ヨッシーはヨースター島だからヨッシー、ドップラー国というところにはドッシーなるものまでいる。
過去の資料にもそれっぽいからそういう名前にしているだけで実際は別物……そんなことも多い。
「ビッグフットなんかが一番曖昧かつわかり易い例だな、人や獣の仕業とは思えないくらい巨大な足跡……リアルワールドのアメリカ以外でも発見されているが全てが一致、それだというのに異世界の生物などと比較してもどれも当てはまらないんだ」
「当てはまらない!?エイプマンとかポケモンとか……それっぽい見た目の生物は時空に山ほどいるのに全部足跡が一致してないのか!?」
「また全部調べきったわけじゃないけど……もう千くらいパターンの足跡が80%も一致していない、未確認生命体っというのも伊達じゃないんだよ」
そもそもリアルワールドに載っている毛むくじゃらの類人類のような見た目もあくまで仮説に過ぎない、実際はどんな生物なのか……分かることは足がデカいことだけ。
たくっちスノーの悪戯というわけでもない。
「じゃあツチノコも……?」
「飲み込んだヘビの見間違いだったり危険な毒蛇を誤って捕まえて大惨事とかニュースで見たが……そもそもあれなんでツチノコって名前か知ってる?」
「えーと確か……金槌みたいな見た目だからだっけ?」
「そう、アンバランスな体格でまるで槌のようだからツチノコ、ヘビというか爬虫類や両生類みたいな見た目はしてるかもしれないが何かの生物に似てるってのはまずないだろ」
ツチノコですら何がツチノコたらしめるのかは分からない、前述の妖怪ウォッチのものですら蛇っぽいがそれも自分達がやっているように都市伝説上の情報からそういう風に形成されたというのもあるし、案外「これはありえない」と見向きもしてなかったものが真のツチノコだったというのもあるだろう。
「じゃあツチノコを見つけて捕まえたら幸運になるっていうのは?妖怪世界でそんな風潮を聞いたからには由来があるでしょ」
「それは多分、当時はミステリーブームだったから何がなんでもツチノコをハントしようとするやつが居たからだな、マジに賞金とかかけられてるよ何億の所も」
ユリコがパソコンを内部から操作すると当時のツチノコに関する情報が出てくる、ドラえもんですらツチノコに関する回を丸ごと作ったりチームまで結成してツチノコ捜索を行うものまで。
しかしよく似たヘビだったり、上記の通りデスアダーというとても恐ろしく強力な毒蛇を見つけてしまうという惨事になったことも。
ブームが過ぎ去ったというか現代がオカルトに構うどころじゃないのでツチノコはその見た目あってUMAというよりは町おこしのマスコットという立場にもなりつつある。
「でもまあ実際、幸運になれるって言い伝えのほうが面白いからそっちは広まっていいんじゃないか?」
そしてネッシーの話へ、ある世界によると絶滅動物と一緒に保護されたともあるが……それは果たしてネッシーなのか?という疑問も出る。
先ほど語ったようにネッシーはネス湖で発見されたからこそネッシーたらしめるとたくっちスノーは思っている。
一度そこから離れてしまえば正直言ってただの首長竜と変わらないと思う。
都市伝説が確認された場所というのは無視できない神聖な領域であると考えているのだ。
「たとえばトイレの花子さんは学校のトイレっていうのが有名だよな?でもそれがもしも、公園のトイレやその辺のマンションのトイレでも出てきたらどう思う?」
「うーん……なんというか神出鬼没で別の意味で怖くはなると思うけど花子さんとしてのインパクトは薄れるよな?」
「そうだろ?貞子といえば井戸、くねくねといえば田舎の田んぼ!それ相応の場所があってこそ引き立つものもある、どんなところから出てきてもいいのはサメ映画のサメだけだよ」
「…………それユリコさんはどうするの?」
「ユリコさんはほら、実家がゲームソフトなのは変わんないから……それで結局たくっちスノーは保護されてネス湖にいないネッシーはネッシーじゃないと?」
「まあそういうのもあるけどさ……ちゃんと許可取ってんのかそれ、別世界に生き物が居るときは4パターン、ウチに許可貰ってる時と貰ってない時、そもそも密輸、そして世界そのものになんかあったときだけ」
「それはまあ偏見ぁと思うけど……じゃあネッシーはネス湖にいると思う?これに関してはマジで見間違い説広まりつつあるけど」
「信じる魍魎は呪われる、安全のためにそういう風潮が広まるってのも悪いことじゃないだろう」
都市伝説は面白半分に近づいていいものでもない、たくっちスノー達が何を言ってるんだという話でもあるがUMAというものへのこだわりは案外自分達にも無関係じゃないところがある。
その為に次は人型の物に関して掘り下げる。
「〇〇マンってタイプの人型風のやつがリアルワールドでも結構いるんだよな、雪男にフロッグマン、オウルマンにモスマン……なんかこれだけでB級ホラーとか特撮作れそうじゃないか?」
「ああ特撮?ミリィは知らないのか……ウルトラマンとかガメラってリアルワールドだとフィクションだけど、あいつらもUMA扱いされてる時もあるぞ」
「えっ!?」
ウルトラマンは神出鬼没、怪獣らしきものが街を襲うとたちまち現れて破壊しないように戦闘を行い去っていく……これがそういう作品と知らなければかなり怪しい代物である。
何せ実際に目撃出来るのは大体たった3分のみ(※個体による)というわけだから信憑性が薄くなるだろう……偽物も山ほどいる。
仮面ライダーでさえ作中でSNSでバズりまくる展開もそれなりに見る。
「アレがUMA扱いか……なんか改めて凄いんだな、
時空新時代の影響って」
「存在していないと思われていたものが実際にいたってわけだからな、リアルワールドだってアニメやゲームが実際にあったわけだから大混乱、厄介な時に引き継いじまったなぁ」
この歴史でどれだけ無理矢理かつ強引な形で解決した出来事があっただろうか、アニメじゃない本当のことがリアルに起きたことでこれまでの前提はだいぶ覆る。
監理局としても
地の文で表現出来ないようなだいぶとんでもない手段を用いてなんとかなあなあにしてきた。
これが珍しく監理局の不手際でも黒影の思いつきによるものでもないというのが全員ビックリなことだろう。
……UMAについては粗方情報をまとめてきた、改めてたくっちスノーとミリィは本題に入る。
マガイモノはUMAに分類されるのか?この質問に関してミリィは言葉に詰まり冷や汗をかく。
たくっちスノーはどうして自分が生まれてきたのか分からない、自身の分類の確認とは己の存在意義を知るためでもあった。
だがミリィはそれを普通に知っている、たくっちスノーが生まれた場所も作られた理由も誰が作ったかまで研究所で全部見ている!その為に迂闊なことは話せないとまで思っていた。
だが二人きりの中どうしても話題を振られてしまう中どうしようというところで、厳密には
ツナカユリコもいることを思い出して会話を押し付けた。
「ねえユリコさん、ネットだとマガイモノってどこから来たとかどういう風に言われてるかな?」
ユリコはネットニュースを一瞬で巡り様々な見出しや考察サイトの切り抜きなどを取り上げてプロジェクターにして公開する、たくっちスノーが作った無駄に多機能な設備を安易に使いこなせるのはさすが電子生命体といったところだろう。
ネットでささやかれているのは意外なことにマッドサイエンティストの実験といった科学的なものではなく、怨念の融合体とか満足に生まれてこなかった生き物が悪霊化したとかスピリチュアルなものだった。
「真っ黒でドロドロしてるからそういうイメージが強いんかな、形も安定しないし」
「……説の情報に出てくるの大半がたくっちスノーだけどね」
「そりゃマガイモノといえば自分だし昔は種類も少なかったから仕方ないでしょうが……でも怨念の融合体か、面白い着眼点だな」
(俺達の身体を構成している成分はサヤさん……剣さんののなり損ない、望まれず生まれて作られること無く処分された物って考えると案外正解ではあるのかもしれない……)
たくっちスノーは自分の体であり実質本体である成分がなんなのか分かっていない、どれだけ研究を重ねても実験を繰り返しても核心を突くような話は見つからない、都市伝説にも関わらず答えが存在しないのは気に入らないしアイデンティティの確立がどうとかの問題でもある。
【マガイモノ】とはなんなのか?channelを通してたくっちスノーはどうしてもそれが知りたかった。
だがミリィはどうしても答えを言えない、まだこんな形で
カーレッジ・フレインや生まれについて答えることは出来なかった!
「そういえばミリィはあの博士から作られたんだよな?」
「あ?ああ……そうだね、でも博士も後追いで見様見真似だから実際の作り方は知らないよ」
ミリィの言ってることは嘘ではない、ミリィもたくっちスノーも適当な成分に松山の成分が混ざったから誕生した……そのオリジンである松山がマガイモノになった原理すら意味不明な代物なので考えるほど沼にハマる、事実ミリィも生まれたての頃に松山から『俺のことを考えるだけ無駄』と念押しされているくらいだ。
どうしてこんなことにといわれてもこっちが聞きたい、それがマガイモノだ、一つ分かるのは全部黒影のせいということ。
「最初にマガイモノを作ったやつ……自分の創造主はどうやって作った?そもそも自分は何のために作られた?ノストラダムスみたいな陰謀の元作られて、もしかしたら自分が大物の
時空犯罪者になることまで想定して……?」
「そ……そこまでは陰謀論みたいになっちゃうんじゃないのか!?」(や、やべぇ……あまりこの話掘り下げすぎるとマジで心臓がいくつあっても足りなくなるぞ!!)
たくっちスノーにこのまま考えさせていたら死なないけど死ぬほどゾッとするとなんとしても話題を変えようとツナカユリコにハンドサインを送る奇行を行うほどテンパってしまうが電波にそんなもの送ってどうするんだと思われてそう。
考えた末に別の奴へ話題を逸らすことにした、まだ全貌がよく分かってないマガイモノが二人いたではないか。
「例のボディーガード2人ってたくっちスノーが作ったわけじゃないんでしょ?」
「ああ、田所とEXE!!そうじゃんアイツらの方がよっぽど異様だ!」
野獣先輩とsonic.exeはたくっちスノーがスカウトしてきた形であり、田所は狙って雇ったが実を言えばたくっちスノーもexeがマガイモノであると知ったのは後からである。
更に言えばラグナロクの件でEXEはマガイモノかどうかも怪しいと感じている、たくっちスノーの成分を捕食したことによる変身能力、あまりにも桁外れすぎるパワー……そして最初に彼を発見した世界。
「たくっちスノーはたまたまEXEの世界に迷い込んで、それで連れ出したんだよな」
「そうそう、どこの趣味の悪い奴が作ったのかグロテスクでスプラッタで……そういえば、EXE自体クリーピーパスタでも有名だったか」
「彼の話ってどんなの?」
たくっちスノーは都市伝説としての『
Sonic.exe』の話をする。
友人にパソコンで出来るソニックのゲームが送られてきた、だから名前が『sonic.exe』である。
ゲームを遊んでみると動かせるのはソニックではなくテイルス、ナックルズ、エッグマンをパートごとに移動する形式。
しかしゲームの様子はだんだんおかしくなり砂嵐と共に周囲は残虐で血濡れた光景になり、敵キャラを倒すと現れる動物が虐殺されており、ソニックのような怪物が姿を現す。
たくっちスノーの馴染み深い血まみれで目が黒くて血涙を流すあの姿。
テイルス達はそんな彼に少しずつ追い込まれていき惨殺されて、最後には遊んでいたプレイヤーも……。
ボディーガードとしてのあのexeを知っているミリィからすれば信じ難い内容だった。
「そ、そんな……なんでソニックが?」
「このクリーピーパスタはだいぶ掘り下げられていてな、まず結論から言うとexeはソニックとは別の存在だ、エックスって呼ばれてるらしくソニックに模倣して人間の魂をオモチャのようにもて遊ぶ」
ゲームの中のテイルス達もまた人間の魂であり、殺しているのではなく苦しめて楽しむ危険な存在である。
戦闘力は桁外れ、スーパーソニックには負けるといわれているが基本的に尋常ではない破壊力を持っており『神』を自称したこともある。
改めて感じる、これまでの無垢で真面目なexeとは別人のようであると……むしろ、あの優しさを持つ彼の方が異様なのかもしれないがたくっちスノーは心当たりがあった。
「実はexeは都市伝説としても派生が沢山存在する、彼を崇拝する者による偶像『LoadX』とその7人の眷属、純粋なるソニックを模倣した悪魔『Faker』、相方に『Tails Doll』なんてやつもいたか……そんなにいるんだから、アイツみたいに苦しんでるやつがいてもおかしくないだろ」
「……苦しんでたの?」
「あいつは普通の感性を持っていたんだ、都市伝説の通りにテイルスやナックルズが死ぬ、抵抗したりしても同じことの繰り返しでやりたくもない肉の束を積み上げて……exeって名付けたのは偶然だけどね」
唯一役割を拒み理から外れた、ある意味彼だけが正常だった。
そして名前もなく外へ出た彼はexecutor(実行者)として新しい形でその力を振るえるようになったわけだ
だがたくっちスノーはこの都市伝説に関しては結構マジなやつだと確信してる、何故なら初めてexeと出会ったグリーンヒルゾーンのような未知の世界は監理局で調査しても反応が見えなかったからだ。
あの時自分はどんな世界に迷い込んでしまったのか……?もし偶然訪れたのがたくっちスノーのような存在じゃなかったら、あいつは一生あの無限地獄で……?
「それどころじゃない、この都市伝説が実際に存在していたら……伝承の方の有名なexeも存在していることになる、あの化け物のようなアイツまで」
「それって彼は知ってるのか?」
「……いずれ知ることになるけど、僕としては出来ればあいつにはなるべく無縁な生活を送らせたい……あっ、それ言うなよ?ボディーガードなんだからさ、たまには労ってやらないとな!」
照れくさそうに言うたくっちスノー、そういえば何か忘れてる気がすると思ったら野獣先輩については何も聞いてない。
こちらは既にマガイモノであることを知っていたみたいだったが……?
「
ニコニコワールドには何回か訪れたことがあったんだよ、Ankerシステムで重音テトって奴を作って売り出したこともある……あいつ元気にしてるかなぁ?それで田所の話なんだが、ネットミームっていうの?動画配信で意図的にキャラが変更されてさ、ニコニコワールドで形になるってこと結構あるらしいのよ」
「そのうちの一つ田所ってこと?じゃあニコニコワールドは巨大なマガイモノ生成装置ってこと?」
「そうだね、自分としても世界丸ごとなんて規模は見たことないしメイドウィンも見たことないからどんな奴なのか興味あるよ」
「……あれちょっと待って?それってつまり、sonic.exeとたくっちスノー作ったやつとニコニコワールドでマガイモノの作り方が3つあるってことじゃ」
「いや……新時代からすればどんどん作り方が広まっていくはずだからオリジンの作り方は一生分からないままなのか……?」
「何の話してるの?諸君」
「何ってそりゃマガイモノの都市伝説調査を……ぎえええええ!!!?黒影ぇ!?」
まるでメリーさんのごとくニコニコとチェアに腰掛けていたのは黒影、完全に
時空監理局のことを引っ張り出してこの調査チームを作成したのでめちゃくちゃ驚いて椅子までひっくり返る。
二人は今必死に言い訳を考えていたが、黒影の反応は全く異なるものだった。
「依頼してもいいかな?」
「え?依頼?」
「え?だって君等都市伝説を調べてるんでしょ?だったら仕事してもらわないと、俺に黙ってこんな事に関してはどうでもいいけどさ……ここに来たからには俺も客だからね、調べてもらいたいものがあるんだよ」
ごく普通の態度で席に座っている、黒影は何考えているのか分からないが少なくとも今はお客らしい。
なので……都市伝説より大分怖いがひとまず話でも聞いてみることにしよう。
「それって自分らの命保証される?」
「お給料は保証されないかもねー」
最終更新:2025年05月23日 06:54