つい数ヶ月前なら、コーヒーを飲みながら穏やかに過ごす日曜日というのは想像もつかない日曜日だろう。
しかも、コーヒー代が奢りとあっては、奢らされ続ける今までの日々からするとまるで天国のようだ。
「ですから、佐々木さんは……」
さっきから佐々木を神にする利点を説いてる橘。
周り車を一生懸命回しているハムスターのような空回り具合は、
朝比奈さんほどではないが心癒されてお茶請けにはちょうどいい。
「でも、藤原さんは非協力的だし、九曜さんは……」
そして、橘の話が愚痴となって行くのもいつもの話だ。
まったく進展を見せないこの集まりにコーヒー代を払い続けている向こうの機関の懐の広さに感謝するね。
「あ……」
橘の視点が外に移る。
アスファルトにぽつんと黒い染み。
ぽつん、ぽつんと加速度的に染みは加速度的に増えて行く。
「キョンくん、傘もってきてます?」
「いや、もってきてないが……」
降水確率は30%ぐらいだったと思うのだが。
どうせ日中は降らないだろうと高をくくって持ってきていなかった。
やれやれ、濡れて帰るのはごめんだぜ。
「そですか、じゃ、今日はこのへんでお開きにしましょう」
いつもの癖で手を伸ばしかけた伝票を、橘はさっと取ってレジへ向かう。
奢ってもらうのは気分がいいのだが、女の子に奢ってもらう男ってのも格好つかないね。
橘の「領収書ください」に気づいてもらうのを祈るだけさ。
しかも、コーヒー代が奢りとあっては、奢らされ続ける今までの日々からするとまるで天国のようだ。
「ですから、佐々木さんは……」
さっきから佐々木を神にする利点を説いてる橘。
周り車を一生懸命回しているハムスターのような空回り具合は、
朝比奈さんほどではないが心癒されてお茶請けにはちょうどいい。
「でも、藤原さんは非協力的だし、九曜さんは……」
そして、橘の話が愚痴となって行くのもいつもの話だ。
まったく進展を見せないこの集まりにコーヒー代を払い続けている向こうの機関の懐の広さに感謝するね。
「あ……」
橘の視点が外に移る。
アスファルトにぽつんと黒い染み。
ぽつん、ぽつんと加速度的に染みは加速度的に増えて行く。
「キョンくん、傘もってきてます?」
「いや、もってきてないが……」
降水確率は30%ぐらいだったと思うのだが。
どうせ日中は降らないだろうと高をくくって持ってきていなかった。
やれやれ、濡れて帰るのはごめんだぜ。
「そですか、じゃ、今日はこのへんでお開きにしましょう」
いつもの癖で手を伸ばしかけた伝票を、橘はさっと取ってレジへ向かう。
奢ってもらうのは気分がいいのだが、女の子に奢ってもらう男ってのも格好つかないね。
橘の「領収書ください」に気づいてもらうのを祈るだけさ。
外へ出たときには雨は予想以上に強くなっていた。
こりゃ、家に帰るときにはずぶ濡れかな……
「はい、キョンくん」
橘が傘を開き、ちょっと持ち上げて俺も入れる。
女のらしいかわいらしいデザインの、俺がいつも使う100円ショップの安物傘とは違うブランド物の傘。
この傘に二人入るのはきつそうだ。濡れちまうぞ、橘。
「大切なキョンくんを雨に濡らして返したら機関の名折れです」
大切な、とは佐々木に力を移すための協力者として……だよな
俺としても濡れて帰るのは本望じゃない。傘のご相伴に預かりますか。
「♪」
雨の中を歩く橘はどこかご機嫌だ。
傘が雨をはじく音も、どこか楽しげに聞こえる。
……しかし、この状況は相合傘じゃないのか?
うわっ、ハルヒに見られたらなんて言い訳すればいいんだ?
ヤバイ、適当なところで……
「じゃ、俺、この辺でいいから……」
ぐいっと掴まれる手。俺を睨む橘。
「ダメです。濡れて帰ったりしたら風邪引いちゃいますよ」
「いや、でもこのまま帰るのはちょっと……」
「いいから、キョンくんは傘に入っててください。ちゃんと家までお送りしますから」
強引に傘の中に引き戻される。
やれやれ、俺は強引な女に弱いのかね。
しかし、このまま相合傘で家に帰るのもマズい。
玄関先で妹に見つかったら「キョンくんの新しい彼女~?」なんてことになるのは確実だ。
そんでもって朝比奈さんに伝わり俺の心の癒しが失われ、長門に伝わり絶対零度の目で睨まれ、ハルヒに伝わり世界崩壊だ。
ヤバイ。それだけはどうしても避けなければ……
「きゃっ……」
そのとき、一陣の強風が西宮の町を駆け抜けた。
とっさに橘は風の方向へと傘を向けようとしたが、一瞬遅かった。
予想外の方向への力に傘は負け、嫌な音とともに傘は妙な方向へ曲がった。
どこかの傘の骨が折れてしまったらしく、妙な形にゆがむ傘。
チャンス。傘が折れてしまってはしかたがない。
「あ~、しかたない。こうなったら濡れて帰るしか……」
こりゃ、家に帰るときにはずぶ濡れかな……
「はい、キョンくん」
橘が傘を開き、ちょっと持ち上げて俺も入れる。
女のらしいかわいらしいデザインの、俺がいつも使う100円ショップの安物傘とは違うブランド物の傘。
この傘に二人入るのはきつそうだ。濡れちまうぞ、橘。
「大切なキョンくんを雨に濡らして返したら機関の名折れです」
大切な、とは佐々木に力を移すための協力者として……だよな
俺としても濡れて帰るのは本望じゃない。傘のご相伴に預かりますか。
「♪」
雨の中を歩く橘はどこかご機嫌だ。
傘が雨をはじく音も、どこか楽しげに聞こえる。
……しかし、この状況は相合傘じゃないのか?
うわっ、ハルヒに見られたらなんて言い訳すればいいんだ?
ヤバイ、適当なところで……
「じゃ、俺、この辺でいいから……」
ぐいっと掴まれる手。俺を睨む橘。
「ダメです。濡れて帰ったりしたら風邪引いちゃいますよ」
「いや、でもこのまま帰るのはちょっと……」
「いいから、キョンくんは傘に入っててください。ちゃんと家までお送りしますから」
強引に傘の中に引き戻される。
やれやれ、俺は強引な女に弱いのかね。
しかし、このまま相合傘で家に帰るのもマズい。
玄関先で妹に見つかったら「キョンくんの新しい彼女~?」なんてことになるのは確実だ。
そんでもって朝比奈さんに伝わり俺の心の癒しが失われ、長門に伝わり絶対零度の目で睨まれ、ハルヒに伝わり世界崩壊だ。
ヤバイ。それだけはどうしても避けなければ……
「きゃっ……」
そのとき、一陣の強風が西宮の町を駆け抜けた。
とっさに橘は風の方向へと傘を向けようとしたが、一瞬遅かった。
予想外の方向への力に傘は負け、嫌な音とともに傘は妙な方向へ曲がった。
どこかの傘の骨が折れてしまったらしく、妙な形にゆがむ傘。
チャンス。傘が折れてしまってはしかたがない。
「あ~、しかたない。こうなったら濡れて帰るしか……」
さて、この事態を誰が予想できようか!!
さっきまでニコニコだった橘が、傘を抱えてボロボロ涙をこぼしているではないか。
いやいや、どういうこった。マズい。
橘は泣きながら「傘が……大切な……」とか言っているだけだし、
傘に彩られた町の人々も奇異の視線でこっちを見ている。
とにかく往来の真ん中で女の子を泣かせているという図はマズい。
「橘、とりあえずこっちへこい」
橘の手を引っ張って、シャッターの閉まっている店の軒先に連れ込む。
橘の顔は雨と涙がごっちゃになってびしょびしょで、服も濡れた傘を抱きかかえていたからぐっしょり濡れている。
ハンカチを取り出し、橘を拭いてやる。
「橘、どうしたんだ。教えてくれないか」
橘はえづきながらも話し出した。
途中突っかかりながらも話してくれた内容はこうだ。
この傘は、今は亡くなっている大好きだったおじいちゃんと連れ立って歩いた幼少の頃、
突然の雨に買ってもらった、思い出がぎっしりと詰まった傘らしい。
その頃は橘の家も結構裕福だったらいけれど、お爺さんの亡くなってしまったあとは一族での遺産の奪い合いがおこり、
お爺さんの遺品はほとんど他の親戚が持っていってしまい、手元に残ったのはこの傘だけだったという。
「お爺ちゃんに買って貰った……大切な……傘なのに……ひくっ……」
傘を抱きかかえながら涙を流す橘は、いつもとは想像もつかないぐらい弱弱しい。
くそっ、一瞬チャンスだなんて思ってしまった自分に腹が立つ。
前のレスに戻って自分を殴りたいぐらいだ。
橘の大切な傘だったなんて……
「ん?」
いや、傘、傘だ。確か、この前ハルヒと探索で町を歩いたときに、変わった店があった気がする。
確か、駅近くの店で……
「橘」
俯いていた橘の手をぎゅっと握る。
傘を抱いていた橘の手は冷たく、冷え切っている。
「ちょっと濡れるぞ。これ以上傘が壊れないようぎゅっと抱いてろ」
橘の手を握って雨の中を駆け出す。
くそっ、服がびしょびしょだ。ここまで濡れてしまえばもう気にならない。
方向は……確かこっちであっていたはずだが……
さっきまでニコニコだった橘が、傘を抱えてボロボロ涙をこぼしているではないか。
いやいや、どういうこった。マズい。
橘は泣きながら「傘が……大切な……」とか言っているだけだし、
傘に彩られた町の人々も奇異の視線でこっちを見ている。
とにかく往来の真ん中で女の子を泣かせているという図はマズい。
「橘、とりあえずこっちへこい」
橘の手を引っ張って、シャッターの閉まっている店の軒先に連れ込む。
橘の顔は雨と涙がごっちゃになってびしょびしょで、服も濡れた傘を抱きかかえていたからぐっしょり濡れている。
ハンカチを取り出し、橘を拭いてやる。
「橘、どうしたんだ。教えてくれないか」
橘はえづきながらも話し出した。
途中突っかかりながらも話してくれた内容はこうだ。
この傘は、今は亡くなっている大好きだったおじいちゃんと連れ立って歩いた幼少の頃、
突然の雨に買ってもらった、思い出がぎっしりと詰まった傘らしい。
その頃は橘の家も結構裕福だったらいけれど、お爺さんの亡くなってしまったあとは一族での遺産の奪い合いがおこり、
お爺さんの遺品はほとんど他の親戚が持っていってしまい、手元に残ったのはこの傘だけだったという。
「お爺ちゃんに買って貰った……大切な……傘なのに……ひくっ……」
傘を抱きかかえながら涙を流す橘は、いつもとは想像もつかないぐらい弱弱しい。
くそっ、一瞬チャンスだなんて思ってしまった自分に腹が立つ。
前のレスに戻って自分を殴りたいぐらいだ。
橘の大切な傘だったなんて……
「ん?」
いや、傘、傘だ。確か、この前ハルヒと探索で町を歩いたときに、変わった店があった気がする。
確か、駅近くの店で……
「橘」
俯いていた橘の手をぎゅっと握る。
傘を抱いていた橘の手は冷たく、冷え切っている。
「ちょっと濡れるぞ。これ以上傘が壊れないようぎゅっと抱いてろ」
橘の手を握って雨の中を駆け出す。
くそっ、服がびしょびしょだ。ここまで濡れてしまえばもう気にならない。
方向は……確かこっちであっていたはずだが……
「あった!!」
前にハルヒが見つけたアクセサリーの修理屋。
確かこの店は、傘の修理もやっていたはずだ。
扉を開けるのももどかしく、中に駆け込んだ。
「いらっしゃいませ……って、お客さん、大丈夫ですか?」
驚きながら店主が差し出してくれたタオルを受け取り、橘の頭を拭いてやる。
「ほら、橘。傘を出してみろ」
橘が恐る恐る差し出した傘を、店主は丁寧な手つきで受け取った。
店主はゆっくりと、傘の動きを確かめながら、慎重な手つきで傘を開く。
「どうですか?直ります?」
「う~ん、ちょっといじってみますから、少し待っててください」
店主は店の奥のほうへ入ってゆく。
俺は放心状態の橘の頭をタオルでごしごし擦る。
「橘、大丈夫か?」
「あ、ええ……大丈夫……です」
橘は弱弱しい手つきでタオルを受け取る。
雨に濡れた橘の体は冷え切っている。
店主がつけてくれた置きっぱなしの電気ストーブがあたたかい。
ストーブの前に腰掛けて、二人で店主の帰ってくるのを待つ。
「あの、キョンくんも……」
橘がタオルを差し出してくる。
「いや、俺は大丈夫だから……」
「ダメです。風邪引いたら大変ですし、それに、私のために……」
体が温まって、少し元気が出てきたのか、橘が俺の頭をタオルでごしごしと拭く。
ちょっと湿っぽいが、それでもびしょ濡れより大分マシだ。
「あの、ごめんなさい。私のせいでキョンくんをずぶ濡れにしてしまって……」
いや、あれは不可抗力だろう。傘を貸してくれた橘に落ち度はないしな。
傘が壊れてしまったことを、ラッキーと感じてしまった後ろめたさもある。
「キョンくんに助けてもらって、その……」
もたれかかる橘の感触。間近で感じる橘の吐息。
まずい、こ、これはキスなのか?
いや、あの、ちょっと、橘さん……
前にハルヒが見つけたアクセサリーの修理屋。
確かこの店は、傘の修理もやっていたはずだ。
扉を開けるのももどかしく、中に駆け込んだ。
「いらっしゃいませ……って、お客さん、大丈夫ですか?」
驚きながら店主が差し出してくれたタオルを受け取り、橘の頭を拭いてやる。
「ほら、橘。傘を出してみろ」
橘が恐る恐る差し出した傘を、店主は丁寧な手つきで受け取った。
店主はゆっくりと、傘の動きを確かめながら、慎重な手つきで傘を開く。
「どうですか?直ります?」
「う~ん、ちょっといじってみますから、少し待っててください」
店主は店の奥のほうへ入ってゆく。
俺は放心状態の橘の頭をタオルでごしごし擦る。
「橘、大丈夫か?」
「あ、ええ……大丈夫……です」
橘は弱弱しい手つきでタオルを受け取る。
雨に濡れた橘の体は冷え切っている。
店主がつけてくれた置きっぱなしの電気ストーブがあたたかい。
ストーブの前に腰掛けて、二人で店主の帰ってくるのを待つ。
「あの、キョンくんも……」
橘がタオルを差し出してくる。
「いや、俺は大丈夫だから……」
「ダメです。風邪引いたら大変ですし、それに、私のために……」
体が温まって、少し元気が出てきたのか、橘が俺の頭をタオルでごしごしと拭く。
ちょっと湿っぽいが、それでもびしょ濡れより大分マシだ。
「あの、ごめんなさい。私のせいでキョンくんをずぶ濡れにしてしまって……」
いや、あれは不可抗力だろう。傘を貸してくれた橘に落ち度はないしな。
傘が壊れてしまったことを、ラッキーと感じてしまった後ろめたさもある。
「キョンくんに助けてもらって、その……」
もたれかかる橘の感触。間近で感じる橘の吐息。
まずい、こ、これはキスなのか?
いや、あの、ちょっと、橘さん……
「すぅ……すぅ……」
ああ、こんなことだろうと思ったよ!!
雨に濡れながら結構な距離を走ったんだ。そりゃ眠くもなるさ。
橘は俺を信頼しきったようにもたれかかって眠っている。
やれやれ、これで敵対組織の幹部っていうんだからな。
そういう俺も、だんだんと眠くなってくる。
電気ストーブの熱と、橘のぬくもりが気持ちいい。
ちょっとだけ、店主が帰ってくるまでちょっとだけ……
ああ、こんなことだろうと思ったよ!!
雨に濡れながら結構な距離を走ったんだ。そりゃ眠くもなるさ。
橘は俺を信頼しきったようにもたれかかって眠っている。
やれやれ、これで敵対組織の幹部っていうんだからな。
そういう俺も、だんだんと眠くなってくる。
電気ストーブの熱と、橘のぬくもりが気持ちいい。
ちょっとだけ、店主が帰ってくるまでちょっとだけ……
表を自動車が走り抜ける音。
隣に寄りかかる暖かい感触。
ぼんやりと目を開ける。テーブルで何か作業している店主の姿。
「おや、起きたかい?もう終わってるよ」
いつの間にやら雨はやんだらしく、オレンジ色の光が店の中に差し込んでいる。
「しかし、ずぶ濡れで店に飛び込んできたのも驚いたが、二人仲良く寄り添って寝てるのにも驚いたよ。
悪いが、彼女さん起こしてやってくれ」
そういえば、橘が寄りかかったまま寝ていたんだ。
いや、彼女じゃないのだが……あんな姿を見られてはどう言い訳すればよいのか分からない。
「ほら、橘。修理終わったぞ」
「んん……もう朝ですか……」
寝ぼけ眼の橘の前に、修理の終わった傘を差し出す。
橘のぼんやりとしていた目が一瞬で開く。
恐る恐る手を伸ばす。綺麗に巻かれた傘は新品同様に見える。
店主が大丈夫、といったように頷く。
橘はホックを外し、ゆっくりと傘を広げ……
「うわぁ……」
いつも通りに、決められたとおりに開く傘。
「とてもいい傘だね。ずっと大切に使われていたことが分かるよ」
さっきどこが折れていたのかまったく分からないぐらいに綺麗に直っている。
「ありがとう……ございま……」
橘の目から再び涙が零れ落ちる。
夕日にきらきら輝きながら落ちてゆく涙。
俺はガラにもなくそれを、綺麗だなと思ってしまった。
隣に寄りかかる暖かい感触。
ぼんやりと目を開ける。テーブルで何か作業している店主の姿。
「おや、起きたかい?もう終わってるよ」
いつの間にやら雨はやんだらしく、オレンジ色の光が店の中に差し込んでいる。
「しかし、ずぶ濡れで店に飛び込んできたのも驚いたが、二人仲良く寄り添って寝てるのにも驚いたよ。
悪いが、彼女さん起こしてやってくれ」
そういえば、橘が寄りかかったまま寝ていたんだ。
いや、彼女じゃないのだが……あんな姿を見られてはどう言い訳すればよいのか分からない。
「ほら、橘。修理終わったぞ」
「んん……もう朝ですか……」
寝ぼけ眼の橘の前に、修理の終わった傘を差し出す。
橘のぼんやりとしていた目が一瞬で開く。
恐る恐る手を伸ばす。綺麗に巻かれた傘は新品同様に見える。
店主が大丈夫、といったように頷く。
橘はホックを外し、ゆっくりと傘を広げ……
「うわぁ……」
いつも通りに、決められたとおりに開く傘。
「とてもいい傘だね。ずっと大切に使われていたことが分かるよ」
さっきどこが折れていたのかまったく分からないぐらいに綺麗に直っている。
「ありがとう……ございま……」
橘の目から再び涙が零れ落ちる。
夕日にきらきら輝きながら落ちてゆく涙。
俺はガラにもなくそれを、綺麗だなと思ってしまった。
外はもうすっかり雨も上がってしまっていた。
ところどころ残る水溜りと、湿った空気が雨が降っていた名残。
オレンジ色の夕日に照らされた町は帰り支度を整えている。
隣でカチンと小さな音。橘が傘を広げる音だ。
「さっき途中で終わっちゃいましたから。また相合傘の続きです」
……ちょっと待て。とっくに雨が上がってるのにか?
晴れているのに傘を広げている二人を、町の人は奇異の視線で見ている。
「あの、ダメですか……」
ああっ、もう。その上目遣いは反則だぞ。
駅まで、駅までだからな!!
「分かりました。ほら、一緒に行きますよ」
ちょっと待て、手を引っ張るな。やっぱちょっとこれはちょっと恥ずかしいぞ。
夕焼け太陽のオレンジ色の光と、町の人の奇異の視線を浴びながら、二人相合傘で町を歩く。
そんなのも、すこしだけ悪くないかなと思ってしまった日曜日だった。
ところどころ残る水溜りと、湿った空気が雨が降っていた名残。
オレンジ色の夕日に照らされた町は帰り支度を整えている。
隣でカチンと小さな音。橘が傘を広げる音だ。
「さっき途中で終わっちゃいましたから。また相合傘の続きです」
……ちょっと待て。とっくに雨が上がってるのにか?
晴れているのに傘を広げている二人を、町の人は奇異の視線で見ている。
「あの、ダメですか……」
ああっ、もう。その上目遣いは反則だぞ。
駅まで、駅までだからな!!
「分かりました。ほら、一緒に行きますよ」
ちょっと待て、手を引っ張るな。やっぱちょっとこれはちょっと恥ずかしいぞ。
夕焼け太陽のオレンジ色の光と、町の人の奇異の視線を浴びながら、二人相合傘で町を歩く。
そんなのも、すこしだけ悪くないかなと思ってしまった日曜日だった。