どうしてこうも、日本の夏は暑いんだろうか。天照大御神が発情期なのか、
それとも、現人神であるとされる、あの女のせいなのかは知らんが、
こうも暑いと、チャリンコを漕ぐのだけでも、今しがたプールに突き落とされた後のような状態になってくる。
本当に突き落とされたあとならもう少し涼しいものだが、
どうせ突き落とすのはあの年中夏女であるあのハルヒであって、そんなことを頼んだ日には突き落とすのは俺だけでなく朝比奈さんや長門、ついでに古泉まで、突き落とされかねず、
そもそもSOS団加入時から、幾度となく千尋の谷に突き落とされ、フリーフォール中なので今更そんな面倒をするまでもない。
と自己完結しつつ、涼しさを求めてあのベンチのある、土手沿いの道にチャリンコを走らせた。
普段は帰り道には使わないのだが、猫のように涼しさに釣られてしまった。
あの橘のタンポポでのやり取り以来香り変わったところはなかった。
それとも、現人神であるとされる、あの女のせいなのかは知らんが、
こうも暑いと、チャリンコを漕ぐのだけでも、今しがたプールに突き落とされた後のような状態になってくる。
本当に突き落とされたあとならもう少し涼しいものだが、
どうせ突き落とすのはあの年中夏女であるあのハルヒであって、そんなことを頼んだ日には突き落とすのは俺だけでなく朝比奈さんや長門、ついでに古泉まで、突き落とされかねず、
そもそもSOS団加入時から、幾度となく千尋の谷に突き落とされ、フリーフォール中なので今更そんな面倒をするまでもない。
と自己完結しつつ、涼しさを求めてあのベンチのある、土手沿いの道にチャリンコを走らせた。
普段は帰り道には使わないのだが、猫のように涼しさに釣られてしまった。
あの橘のタンポポでのやり取り以来香り変わったところはなかった。
ツインテールが道の真ん中にしゃがんでいる以外は。
「何をしているんだ?」
言外にしゃがむなら、道の端でしゃがみなさいという意味を込めつつ言った。
「あ、キョン・・・さん」ちょ、ちょっと橘さん?なんでいきなり涙目ですか?俺が何かしましたか?ナニかしたのはあなたではなかったのではないですか?
と、俺は無駄に慌てたが、よくみると、大体何があったか理解できた。
「・・・猫か」
「猫・・ヒック・・さんです」
まごうことなき猫を橘は抱えていた。
言外にしゃがむなら、道の端でしゃがみなさいという意味を込めつつ言った。
「あ、キョン・・・さん」ちょ、ちょっと橘さん?なんでいきなり涙目ですか?俺が何かしましたか?ナニかしたのはあなたではなかったのではないですか?
と、俺は無駄に慌てたが、よくみると、大体何があったか理解できた。
「・・・猫か」
「猫・・ヒック・・さんです」
まごうことなき猫を橘は抱えていた。
轢かれて血まみれになっているという以外は。
「どうするんだ?」
血まみれの猫をいつまでも抱いてしゃがんでいる橘をなんとかベンチに座らせ、
俺のハンカチで橘の顔と手を拭いてやり、
そのハンカチと橘のハンカチで猫を包んでやった。
落ち着いてきたみたいだが、橘はどうしたらいいか分からないようで、頭を振るばかりだった。
沈黙。
日が傾き、辺りが赤く染まりだして、ようやくおずおずと橘は顔を上げた。
絞り出すように声を出した。
「・・・あの、く、九曜さんか長門さ」
「それはだめだ。橘」
「なんでですか!この子を轢いていった奴は笑ってバイクを走らせてました!この子には生きる権利が」
「いいか、橘。たしかにあのふたりなら生き返らせることができるかもしれん。だけどそれはやっちゃいけないことだ。人間には命を」
「だけどっ、あんな奴のせいでっ!あんな奴のせいでこの子はっ!」
「聞けっ!橘!人間が、殺しといて、可哀想だから生き返らせるなんて傲慢だ!永久に生きることができないから!理不尽にも死んじまうから!必死に生きるんだ!そいつに必要なのは命じゃない!安らぎだよ」
橘は、ずっと唇を噛みしめていた。
再び沈黙。
動くものはツインテールだけで、なんとなしに見ていると、
橘は決意に満ちた目で顔を上げた。
「ここに・・・ここに、埋めてあげます。」
血まみれの猫をいつまでも抱いてしゃがんでいる橘をなんとかベンチに座らせ、
俺のハンカチで橘の顔と手を拭いてやり、
そのハンカチと橘のハンカチで猫を包んでやった。
落ち着いてきたみたいだが、橘はどうしたらいいか分からないようで、頭を振るばかりだった。
沈黙。
日が傾き、辺りが赤く染まりだして、ようやくおずおずと橘は顔を上げた。
絞り出すように声を出した。
「・・・あの、く、九曜さんか長門さ」
「それはだめだ。橘」
「なんでですか!この子を轢いていった奴は笑ってバイクを走らせてました!この子には生きる権利が」
「いいか、橘。たしかにあのふたりなら生き返らせることができるかもしれん。だけどそれはやっちゃいけないことだ。人間には命を」
「だけどっ、あんな奴のせいでっ!あんな奴のせいでこの子はっ!」
「聞けっ!橘!人間が、殺しといて、可哀想だから生き返らせるなんて傲慢だ!永久に生きることができないから!理不尽にも死んじまうから!必死に生きるんだ!そいつに必要なのは命じゃない!安らぎだよ」
橘は、ずっと唇を噛みしめていた。
再び沈黙。
動くものはツインテールだけで、なんとなしに見ていると、
橘は決意に満ちた目で顔を上げた。
「ここに・・・ここに、埋めてあげます。」
なんとか手を使って穴を掘った。穴掘りも結構役に立つもんだ。今度なんかおごってやろう。
「ちゃんと天国まで上って逝けるのでしょうか?」
俯きながら呟く橘を不謹慎にも可愛いと思ってしまった。
庇護欲にくすぐられた俺は、近くにタンポポの綿毛が抜けて落ちているのを見つけた。心ない誰かが抜いてしまったのだろう。
それをそっと橘に渡しつつ、
「これを吹いてやろうぜ。たぶん天国まで一緒についていってくれるはずさ」
といった。
「んっ・・・そうですね。それじゃあ一緒に」
俺と橘の距離がグッと縮まる。なんとなく橘からする檸檬の薫りにクラクラしつつ、せーの、という
フゥー
綿毛が高く高く舞い上がる。橘はそれを見上げくるくると舞っていた。
まるでそうすれば一緒に飛べるとでもいうように。
逝かないでくれ。
つい、本当につい、橘を抱き締めてしまった。
橘は当惑した顔をしていたが、すぐ微笑んだ。
夕日に染まって朱い橘の顔。
俺は檸檬の薫りの出所にそっと口づけをした。
「ちゃんと天国まで上って逝けるのでしょうか?」
俯きながら呟く橘を不謹慎にも可愛いと思ってしまった。
庇護欲にくすぐられた俺は、近くにタンポポの綿毛が抜けて落ちているのを見つけた。心ない誰かが抜いてしまったのだろう。
それをそっと橘に渡しつつ、
「これを吹いてやろうぜ。たぶん天国まで一緒についていってくれるはずさ」
といった。
「んっ・・・そうですね。それじゃあ一緒に」
俺と橘の距離がグッと縮まる。なんとなく橘からする檸檬の薫りにクラクラしつつ、せーの、という
フゥー
綿毛が高く高く舞い上がる。橘はそれを見上げくるくると舞っていた。
まるでそうすれば一緒に飛べるとでもいうように。
逝かないでくれ。
つい、本当につい、橘を抱き締めてしまった。
橘は当惑した顔をしていたが、すぐ微笑んだ。
夕日に染まって朱い橘の顔。
俺は檸檬の薫りの出所にそっと口づけをした。
綿毛が高く高く舞い上がる。