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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

犬神憑きと怪人アンサー-14b

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西区にほど近い、廃棄された製薬会社。
黒服に指定されたその場所に着いた。
錆びついた看板や窓枠の外された外観が不気味な印象を与えてくる。

「なんだか、嫌な雰囲気の場所だね…」
「そう、だね…
でも、紗江ちゃんは私が護るから!」
『都市伝説の気配が致すな…お二人共、用心下され』
アンサーが呟いた。

「お待ちしていましたよ」
建物の入り口から、担当の黒服が姿を現した。
「「…黒服さん?」」
「おや、私が現場にいる事がそんなに不思議ですか…?契約者を担当している黒服も、現場に出る事はありますよ…こちらです」
黒服について、建物内部に入る。
階段を下りて、地下室の、同じような作りの部屋がいくつも並ぶ長い廊下を歩きながら黒服が話す。
「今回の任務ですが…とある都市伝説を救って頂きたいのです」
「都市伝説を…救う?」
「ええ。都市伝説は、忘れられると消滅します。存在を保つには、一人でも多くの人間に存在を知ってもらわなければなりません…貴女方には、この場所にいる都市伝説の存在を保つための手伝いをしていただきたいのです」
どうやら今回の任務はとある都市伝説を救う事らしいが…担当の黒服の不穏な情報の事もあり、その言葉を信じきる事が出来ないでいた。

「……あの、黒服さん…以前お伺いした件なんですが…」
ここで聴き逃したらチャンスが無いような気がして、意を決して、紗江が尋ねる。
廊下の突き当たりの扉を開けながら黒服が呟いた。
「ああ…担当の黒服を変えられるか、という話ですね。その件でしたら、特殊な事情があれば変えられますよ」
あっさりと返ってきた肯定を、喜ぶべきか迷った。

促されて、部屋に入った姉妹。黒服は自分も部屋に入った後、扉を閉めた。
広めの部屋には、二人の黒服がいた。一人は、部屋の中心にビデオカメラを設置している。
もう一人はビデオカメラの近くの床の上に、鉈、鋸、鋏、金属バット等を置いている。
「ぅ…………!」
明らかに異様な光景。そして、部屋の中には猛烈な血の匂いが充満していた。思わず、口元を押さえる。
ふと、部屋の隅に無造作に転がっているものが目に入った。
―家を出るまで生きて話をしていた、姉妹の、両親の死体だった。
「――――――!!」
「ぁ……うあ……!」
悲鳴を上げたはずだったのに、口からは途切れ途切れの言葉しか出てこなかった。

紗江が、紗奈に死体を見せないように、庇うように前に出た。
両親の死体は、巨大な獣にでも食われたかのように所々食い荒らされていて、腹部に至ってはその中身がこぼれ出ていた。本来は射殺されているのだが、その傷口のあった周辺も食われていた。

「ああ…救って頂きたい都市伝説は『スナッフフィルム』といいます。娯楽用に流通させる目的で行われた、実際には存在しないといわれている殺人ビデオの事です。
 なにしろ、存在しないといわれているだけあって、個体数がなかなか確認できていないので…
『スナッフフィルム』が学校町中に広まれば、面白い事になるでしょうからねぇ…
ご両親ですが…娘が死ぬのに、親だけ残しては可哀そうですからねぇ…先にあちらに送って差し上げました」

姉妹の前に立って、笑みを浮かべながら話す、A-No.666。
…それは、ある意味で実験材料と呼べるものだったのかもしれない。

―そんなことの為に、両親を殺したのか
「――貴方っ…!」
言葉が途切れた。いつのまにか傍に来ていた、凶器を並べていた黒服に髪を掴まれて横倒しにされ、仰向けに転がされた。紗江ちゃん!と自分の名を呼ぶ紗奈の声と、床と擦れる背に感じる痛みにも似た摩擦熱と、髪を引っ張られる痛みを感じながら、そのまま部屋の奥までずるずると引きずられていく。

紗江が引きずられていくのを見て、助けようと反射的に上着のポケットから携帯を取り出した。
直後、担当の黒服に携帯を奪い取られた。
「全く…助けを求めるにしろ、都市伝説の能力を使うにしろ、私を忘れてもらっては困りますねぇ…」
そういいながら、無造作に携帯を開くと、ばきり、と真ん中から二つにへし折った。
携帯の残骸を床に落とし、紗奈の腕を掴むと、部屋の真ん中―ビデオカメラの前に引きずって行き、勢いよく突き飛ばした。

ビデオカメラを設置していた黒服が、カメラを回し始める。

――

部屋の奥まで引きずられ、ようやく黒服が止まった。
起き上がろうとしたら、三、四回ほど顔を殴られた。
黒服が、懐から何かを取り出した。カチャリ、という金属音。パン、という乾いた音と、脚に激痛を感じた。
思わず目を向けると、脚が赤く染まっていた。
黒服が手にしている拳銃から、硝煙が上がっていた。
黒服は拳銃をしまうと傍にあった金属バットを、紗江の左腕に叩きつけた。
二の腕が赤黒く変色し、曲がるべきではない方向に曲がった。
「……………!!」
声も出ないほどの激痛とおぞましい感覚に、額に嫌な汗が浮かんだ。
そうして、首を絞められた。
ぎりぎりと爪が食い込んで、痛い。息が出来ない。苦しい。
少しずつ周囲の音が遠くなっていく中、紗奈の悲鳴が聞こえた。
(紗奈ちゃん……!?)
もがいた右手に、何かが触れた。
それ――小振りの斧を掴んで、黒服の頭に思い切り叩きつけた。生暖かい返り血を浴びた。
首を絞めていた手が外れ、血をまき散らし、斧を頭から生やしたまま、黒服が真横に倒れこんで、動かなくなった。

げほげほと咳き込み、激痛に堪えながら壁を支えにして上体を起こす。
(紗奈ちゃんは―――!?)
視界に、血塗れの紗奈にのしかかった担当の黒服の姿と、三つ首の大きな獣の首の一つが紗奈の脇腹に食らいついているのが見えた。
あの獣が、どこから出てきたかなんてどうでもいい。両親と最愛の妹を害した。それだけ分かれば十分だ。早く殺して、紗奈が手遅れになる前に救急車を呼ばないと。
一人になりたくない、紗奈を失いたくない。
紗江の憎悪に引きずられて犬神が徐々に数を増していくが、その姿は蜃気楼のように揺らいでいて、酷く不安定だった。
紗江は、犬神の数が増える度に、自分が自分で無くなっていくのを感じていた。
(………私はどうなってもいい。紗奈ちゃんだけは、絶対に助ける)
担当の黒服を睨みながら、行って、と犬神達に指示を出す。どうにか形を保っている二十から三十匹ほどの犬神の群れが担当の黒服と、その後ろでビデオを回している黒服に向かっていく。

―――
両親が無残な姿になっていた。巻き込まれて、死んでしまった。
携帯電話を壊された。
一応、アンサーとの繋がりは感じ取れるものの、都市伝説の能力も使えないし、天地達に助けを求める事も出来ない。
(――どうしよう…どうしよう…!)
腕を掴まれてビデオカメラの前まで連れて行かれ、突き飛ばされた。焦りと恐怖と混乱で半ばパニックになっていた紗奈の視界に、担当の黒服の姿が映った。
――担当の黒服がサバイバルナイフを振り上げていて、がつっ、と左の掌を貫通して床に突き刺さった。
「――うぁ……!?」
黒服は、床に置いてある凶器の中から小刀を選ぶと、紗奈にのしかかり、右目に小刀を近付けて――ぶつ、と上瞼に突き刺した。
「――あああああああああああああああああああああああああああ!」
――痛い!痛い!
絶叫を上げた。視界が真っ赤に染まった。
刃ががりがりと瞼の肉を削ぎ、眼窩の骨を削り、神経を寸断しながら何度も何度も抜き差しを繰り返して右目を蹂躙して行く。
自由になっている右手で必死になって小刀を持った腕を引き剥がそうとするも、少女の力では引き剥がせず、ただ縫いとめられた左手の傷を広げていくだけだった。
右目が痛みの坩堝と化していた。涙なのか血液なのかも分からない、熱い液体が頬を濡らしていく。



永遠のようにも、一瞬にも感じた蹂躙が終わりを告げた。
やがて、ごぼ、と濡れた音をさせて、眼球が掘り出された。瞼の裏に、空気が入り込んだ。頬を伝い、眼球は、血の跡を引きながら床に転がり落ちて行った。
朦朧とする意識のなか、涙でぼやけた左目の視界に大きな獣の姿が映った。
直後、脇腹に熱さと苦痛を感じて、一瞬、息が止まった。

呼吸をする度に、脇腹の傷が、絞られる様に痛む。
(…紗江ちゃん、ごめんね…護るっていったのに……)
溢れ出る血液が、体温を奪っていく。
(私…紗江ちゃんに…何にも言えてない……ちゃんと…伝えておけば、良かった…)
紗江への想いを自覚したものの、嫌われたくなくて伝えられなかった事を後悔しながら意識を失った。
閉じられた左目から、一条の涙が零れ落ちた。

「おや…この程度で気を失うとは情けない。もっと楽しませて貰いたかったのですが…
ケルベロス、出てきてしまったんですか。仕方ありませんねぇ…」
A-No.666は、血の匂いに反応して出てきたケルベロスに、やれやれ、と肩をすくめた。
首の一つは、紗奈の脇腹に食らいついている。
(都市伝説の存在を一般人に知らせる訳にも行きませんし……このテープは、過激派への土産にでもしましょうか)
「次は……ハラワタでも、引きずり出してみましょうかねぇ」

『グルァァ!』
犬の咆哮が聞こえ、目を向けると二十から三十匹ほどの犬神が、群れとなってこちらに向かってきていた。
「ひっ………!」
後ろでビデオを回している黒服が、引き攣った声を上げた。
だが、A-No.666に焦りは無い。
直後、ケルベロスの二つの頭が、ごう、と口から炎を吐いて、こちらに向かってきていた犬神の群れを一掃した。
『ギャッ!』と、犬神の断末魔が上がり、灰も残さず消滅した。
炎が消えた後、残ったのは床の焦げ跡と、血に染まり、荒い息を吐きながらこちらを睨み据えている紗江の姿だった。彼女の周囲に何十匹もの犬神がいたが、それらは蜃気楼のように揺らいでいて、酷く不安定だった。
能力に、器の方が追い付いていないだろうことは一目で分かった。
都市伝説に、飲まれかけている状態。放っておいても勝手に自滅する。
何より、ケルベロスの炎に耐えられるものなどいない。
己の絶対な優位を疑わず、A-No.666は笑みを浮かべた。

続く…?

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