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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 魔法少女銀河-17

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【不思議少女シルバームーン第八話 第一章「開戰」】

「……おかしい。」

 K-No.1、新島友美は首をかしげていた。
 その日は“ネバーランド”が全世界に戦争を仕掛けると宣言した日だった。
 その宣言通り、全世界で今正に都市伝説を用いた戦争は行われているのだ。
 ロシアでは巨大化した生物が暴れだし、アメリカでは失われたはずの巨大戦艦の艦隊がミサイルをものともせずに砲撃を始めている。
 ただしイギリス及びフランスを攻める部隊は半数が奇襲攻撃と指揮官の裏切りにより全滅。
 もう半分も対地対海攻撃に秀でたE-No.の精鋭によって潰走している。
 場所によっては押され気味だがそれでも全体としては拍子抜けするほどに優勢。

「明尊からの情報によればこの学校町がジャック・ジョーカーの狙いの筈。
 この学校町に魔力満ちる日食の時刻までに奴は行動を起こすはずだ。
 だというのに何も動きが無いなんて……」

 まったく動きがない、それがひたすらに不気味だった。
 彼女の緊迫と裏腹に朝日が登るまで町には何も起きてなかったのだ。

「さて、この状況、サンジェルマンはどう読んでいる?」
「私ですか?」
「今、学校町に集まっているのは組織と関係ないフリーランスの契約者達。
 言い方は悪いが烏合の衆だよ。」
「個々の力は素晴らしいと思いますがね。」
「指揮系統が不完全だ。」
「組織は全世界を守るために散開せざるを得なかったですからね。」
「サンジェルマンはなにしてるの?」
「東南アジア方面任されたんですけどね。」
「うん。」
「あそこ蒸し暑いじゃないですか。」
「うん。」
「私って頭脳労働のイメージなんで部下に任せて呑気にここで紅茶でも飲んでることにしました。」
「ええぇ……。」
「っつーか私よりフェリシアが指揮したほうが皆さん士気が上がるみたいなんで放っておいてますよ。
 あと私ってばフリーランスで一芸に秀でた契約者の顔見知りが多いものですから連絡役に徹していたり。」
「あー、確かにね。」
「はい。」
「そうそう、私の推理でしたね。」
「うん。」

 サンジェルマンが口を開きかけたところで部屋の扉が開く。

「サンジェルマン、居るかい?」

 中に入ってきたのは無駄に無駄のないセクシーな体つきをしたお姉さんだった。
 煙草を咥えながら長い足を伸ばして椅子に腰掛ける。

「蘭子さんじゃないですか。」
「そこの人は?」
「新島友美さんです。」
「こんにちわ。」
「こんにちわ、あたしは穂村蘭子、怪盗さ。」
「ちなみに私が無理やり出資者にさせられた孤児院の出身です。」
「あー、F-No.実務トップの笹木さんだったかがピアノ引く姿を見られると噂の。」
「あたしが子供の頃はピアノ下手っぴだったんだぜ。
 ……じゃなくて調査結果だ。辺り一帯隈なく調べたが吸血鬼の気配はねえ。
 あんたやそこの友美ちゃんが個人的に用いている兵力や雇われの契約者しかこの町には居なかったよ。」
「成程、了解しました。」
「本当に奴らは来ていないの?」
「ああ、少なくとも陸海空全てカバーできる私の煙にかからなかったんだ。
 今この時点では来ていない。」
「時空間転移は?」
「そこまでは私じゃ無理だが……」

 蘭子はサンジェルマンの方をちらりと見る。

「ええ、時空間関係の能力者がそれについては網を張っています。
 下手にワープしてきてくれればむしろ思う壺だ。」
「本当に訳がわからなくなってきたな。」
「ですね。」
「明尊が掴まされたんじゃないか?」
「彼の油断スキルならあり得ますね。」

 サンジェルマンがやれやれとため息をついた正にその瞬間、突然つけっぱなしにしていたテレビの番組内容が変更される。
 そこに写っていたのは…………


―――――――――――――――――――――――


「おかしいわねえ。」
「ええ、おかしい。主人公なのに出番がなさすぎます。」
「へ?」
「いやこっちの話です。」

 ヨツバとスバルは二人揃って人が集まっている繁華街のカフェでお茶を飲んでいた。
 いやもうなんかカップルである。
 一応ここも戦場となる筈で、彼らはこの町に攻めてくる敵に対して十分すぎるくらい因縁があるのだ。

「よりによって学校町に仕掛けてこないなんて。」
「吸血鬼の力が最も高まる日食の時間に何もしないなんて……ねえ。」
「ええ、戦局を有利にすすめるためにここを死の街にしてもおかしくないのに……。」

 その時、突然近くのビルが轟音と共に、瓦礫をまき散らしながら崩れ去る。
 とんでもない量の土煙が晴れ渡った時、そこにあったのは巨大なアンテナがついた見たこともない塔だった。
 スバルの足元に瓦礫の破片が飛んで来る。

「看板だ、笛吹探偵事務所……。」

「スバル、あれを見て!」
「なんです?今のビル以上にすごいことなんて……」



「都市伝説の箱庭に囚われた哀れなる学校町の住人達よ。」
「嘘だろ……!?」

 繁華街の巨大な街頭ディスプレイに彼の見知った顔が映る。
 ジャック・ジョーカー、スバルの古い友人にして、世界に対する戦争を仕掛けた悪魔。
 死神と吸血鬼の多重契約者。

「俺たちはネバーランド。
 俺たちはを争いや苦しみから開放しにきた夢の国の住人だ。
 この国の時間で正午、午後0時に俺たちはこの町に“死の河”を展開してお前らを俺の一部として取り込む。
 お前らはそこで痛みも苦しみも憎しみも希望も絶望も無い命の一つとして生きることになる……。
 それまでの時間、たった一時間だがせいぜい有意義に過ごしてくれ。
 ああそうそう、俺たちを止めようと躍起になっている化物共に教えてやる。
 今からこの街全体に大量の吸血鬼をばら撒く、御存知の通りあの手の化物はねずみ算式に増えていく。
 たとえ俺の計画を止められたところで……お前らの大好きなこの街はお終いだ。
 せいぜい哀れな箱庭の住人の為に一時の安息を守ってやるんだな!」

 次の瞬間からたくさんの悲鳴が町に溢れる。
 その方向に走りだそうとするスバルの腕をヨツバが掴む。

「離してください!朔夜が居ない間は俺が代わりに守らないと!
 じゃないとあいつが帰ってこれない!
 罪悪感に押しつぶされて帰って来れなくなる!」
「駄目よ、見捨てなさい。」
「でも!」
「貴方は神様じゃないの、あなたにやれることは、私たちにやれることはたった一つ。」

 ヨツバは先ほど降ってきた塔を指さす。

「たぶんアイツらが居るのはあそこよ。」
「……確かにそうでしょうね。」
「私たちが多分一番近いわ。」
「はい。」
「……行くわよ、すぐに。」
「でも……。」

 苦々しそうな顔をするスバル。
 眼鏡の奥の彼の瞳からは涙がこぼれそうになっていた。

「いつの間に僕はこんな人間臭くなっちゃったんだ……。」

 吸血鬼が道行く人々に跳びかかる。
 彼の視界を塞ぐようにしてヨツバは彼を抱きしめる。
 そして彼女は彼の唇を唇で塞ぎ、キョトンとした顔の彼に言った。

「帰ったら、続きね。」
「……はい。」
「街のことは正義の味方に任せる!
 私たちにやれることは!?」
「ふざけた事件のふざけた首謀者をいち早くぶっ殺す。」
「その通り、私たちはオフェンスよ!」

 通りを一つ越えたところにある塔にめがけて二人は走りだした。





――――――――――――


「ヒャーッハッハッハ!」
「やっと殺しができるぜ!」
「暴れたい放題だ!」
「こちとら無敵状態で弾数無制限だもんなあ!
 サイッコォォォォォォォオオに勃起もんだぜぃ!」

 ジャックとドクの手によって改造された吸血鬼兵士が学校町を所狭しと蹂躙する。
 彼らは様々な場所に分散していたがやはりというべきかその狙いが一番集中していたのは住宅地。
 南区の巨大な住宅街に向けて百を超える吸血鬼兵士は列をなして向かっていた。

「まずは引きちぎってやる!ガキのあったけえ肉を引きちぎってよお!
 悲鳴をあげているところを犯して、殺して、そっからもっかいおグピャア!?」

 吸血鬼兵士の内、一体の頭が脳漿をまき散らして派手に吹き飛ぶ。

「な、何者だ!?」

 それまで何の気配も感じられなかった場所に住宅地への通り道を防ぐようにしてベルトを装着した男たちが経っていた。
 全員が全員、警察の制服を着用しているところからしてこの町の警察であることは推測できるが……

「総員」
「な、なんだポリ公か!
 銀の弾だけで俺らを殺せるとでも……」




「―――――――変身!」




「変身」
「変身」
「変身」
「変身」
「変身」
「変身」
「変身」
「変身」
「変身」

「な、なんなんだ!?只のポリ公じゃねえな!?」

「警視庁都市伝説犯罪対策一課実働部隊第一小隊“隊長 明日真警部”」


 先頭に立る男、明日真の合図によって警察の制服を纏った男達は同時に人外の姿へ身を変えた。
 だがその姿はどちらかといえば人外というよりは人外を模した機械に近い。
 組織によって提供された簡易型契約書によって擬似契約を結んだ故のこの姿だった。

「ふ、不完全な契約を機械で補ってやがる!」
「気にすることはねえ!俺たちと違ってできそこないだぞ!」

 明日真を先頭にして十名の精鋭は自分たちの十倍以上の敵に突撃を仕掛ける。
 銃弾の雨を当たり前であるかのように受け止め、はじき飛ばし、拳一つで吸血鬼を圧倒する。

「う、嘘だろ!?象刈りに使う銃弾だぞ!」

 そういった吸血鬼は次の瞬間、心臓をとり出され、握りつぶされる。

「貴様ら都市伝説犯罪者を駆除し」

 狂ったようにサブマシンガンを撃ちまくる吸血鬼は顔面を力任せに引き剥がされ、

「地獄に送り返すモノ」

 或いは生きたまま摂氏5600℃の炎に焼かれ
 或いは四肢を握りつぶされ
 地獄の住民はここ地上にて真の地獄を見る

「人々の笑顔を守るため」

 虐殺、虐殺、虐殺
 しかしそれは許される
 何故ならばそれは間違いない正義だから
 人々を守るための戦いだから

「人として戦い続けるモノ」

 吸血鬼が死に絶えた戦場で明日真はひそりと呟く

「“仮面ライダー”だ。」

 明日真の前に規則正しく整列した九人の男たち。
 皆、彼より若い。

「隊長!指示を!」
「全員散開、敵は殺せ。ただし人命最優先だ。」
「了解しました!」

 思い出したように付け加える。

「敵でもできるだけ人は殺すな。」
「了解しました!」

 十人の影は町へと散開した。





――――――――――――――――――

 場所は物語冒頭に戻る。

「警視庁都市伝説犯罪対策一課実働部隊が獅子奮迅の活躍を見せており、吸血鬼部隊による被害は南区では0です。」
「正義の味方か……、あそこまで強くなるとはね。」
「もう今の上田さんよりは強いんじゃないでしょうかねえ。」
「全盛期同士ぶつけたら比べ物にならないでしょ。」
「上田さんの肩を持ちますね。」
「そりゃあねえ」
「北区では民間人に一部被害が出た模様!」
「くそっ……。」

 学校町のネバーランド対策本部は先ほどまでの空気とは打って変わって一気に慌ただしくなっていた。
 サンジェルマンと新島友美は学校町中の契約者と連絡をとりつつ対ゲリラ戦という難行に挑んでいる。

「サンジェルマン、“fourcard”の面々は?」
「橙さんはF-No.の仕事中です。
 ハートとスペードはこの街にすでに解き放っています。」
「クローバーの彼は?」
「彼女ですよ。カイトさんは今頃笛吹探偵事務所跡地に立ったタワーを攻略しに行っている筈です。」
「ありゃあ近づくのさえ困難だからねえ。」
「ハイ、ヨツバさん達が入り込んだ直後に“ジャックの豆の木”で防壁を張られましたからね。」
「面倒なことになったね。純粋な破壊力でカイトを上回るとなると……霙ちゃんは。」
「すでに塔に潜入しています。内部から破壊工作を仕掛けている途中です。」
「よし。」

 煙草の煙を一蒸ししてから友美は呟く。

「この町に喧嘩を売ったんだ……、それだけの覚悟はしてもらおうか。」

 かくして学校町を巻き込んだ史上最大の戦争は始まった。

【不思議少女シルバームーン第八話 第一章「開戰」】

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