【不思議少女シルバームーン第八話 第三章「死闘」】
高度一万メートルにおける俺と親父の戦いは未だに続いていた。
「死ねえ!」
空間を埋め尽くす量の釘が俺に向けて降り注ぐ。
躱すことはできる。
しかしその行動に意味はない。
投げた釘の軌道を変えるなどあの男にとっては朝飯前の筈だ。
ならば取るべき行動はたった一つだった。
躱すことはできる。
しかしその行動に意味はない。
投げた釘の軌道を変えるなどあの男にとっては朝飯前の筈だ。
ならば取るべき行動はたった一つだった。
「おらあああ!」
手に持っていた蜻蛉切を振り回して釘をはじき飛ばして無理やり道を作る。
一瞬だけできた釘のない空間を疾駆して俺は父親の眼前にまで肉薄する。
一瞬だけできた釘のない空間を疾駆して俺は父親の眼前にまで肉薄する。
「喰らえ!」
槍投げの要領で思い切り槍を投げつける。
あの男はまるで軌道が最初から解っていたかのように俺の槍による一撃を躱した。
あの男はまるで軌道が最初から解っていたかのように俺の槍による一撃を躱した。
「何故だ……!?」
外れた槍は俺たちを取り囲む屍食鬼を塵芥が如くなぎ払う。
しかしそんなことはどうでもいい。
俺たちを取り囲む屍食鬼がすでに半数以上物言わぬ肉塊になっていたとか。
ルルがもうどうにでもなーれって顔で俺たちを見ているとか。
そういうことは果てしなくどうでもいい。
今俺の目の前に居るのは我が父上田明也。
俺は今までの人生をこの男の打倒のために注いでいたのだ。
強さなどどうでもよかった。
こいつが世界最弱ならば、俺は世界で二番目に弱くて良かった。
ただシンプルにこの男が強かったから俺も強くなったに過ぎない。
超えるべき壁という意味では高いに越したことはないというが……
そういう意味では俺はこの男に感謝しているのかもしれない。
しかしそんなことはどうでもいい。
俺たちを取り囲む屍食鬼がすでに半数以上物言わぬ肉塊になっていたとか。
ルルがもうどうにでもなーれって顔で俺たちを見ているとか。
そういうことは果てしなくどうでもいい。
今俺の目の前に居るのは我が父上田明也。
俺は今までの人生をこの男の打倒のために注いでいたのだ。
強さなどどうでもよかった。
こいつが世界最弱ならば、俺は世界で二番目に弱くて良かった。
ただシンプルにこの男が強かったから俺も強くなったに過ぎない。
超えるべき壁という意味では高いに越したことはないというが……
そういう意味では俺はこの男に感謝しているのかもしれない。
「お前は真っ直ぐすぎるんだよ!」
槍を投げた後の隙を突いて奴は俺の襟を掴み屍食鬼の群れの中に投げ込む。
手近に居た屍食鬼を踏み台にしながら銃器を奪い取ると俺は父に照準を合わせた。
手近に居た屍食鬼を踏み台にしながら銃器を奪い取ると俺は父に照準を合わせた。
「そいつぁ……!」
「H&k USP あんたの大好きなピストルだったな!」
「H&k USP あんたの大好きなピストルだったな!」
次の瞬間、銃口にプラスドライバーが突き刺さる。
俺は迷うこと無くそれを手放す。直後、拳銃がその場で爆発する。
何も持つものが無くなったと同時に蜻蛉切が俺の手元に戻ってくる。
俺は迷うこと無くそれを手放す。直後、拳銃がその場で爆発する。
何も持つものが無くなったと同時に蜻蛉切が俺の手元に戻ってくる。
「はっはっは、まだだ、まだ弱いなあ!」
楽しそうに笑ってみせる親父。
違う、俺が弱いんじゃない。
こいつと対峙しているだけで何故だか思うように戦えていないのだ。
まるで沼だ、沼に足を取られているかのような感覚。
こいつの異常な精神性と、それに伴う器の大きさ、それのせいかなにかこう感覚が乱れるのだ。
祖父であれば無限の武練を持つ彼ならばその程度動じないに違いない。
師匠ならば自らを絶対に崩さない彼ならばその程度歯牙にもかけないに違いない。
しかし俺は悲しいほどに凡人だ。
特別なだけで天才なだけで優秀なだけで計測可能な存在だ。
違う、俺が弱いんじゃない。
こいつと対峙しているだけで何故だか思うように戦えていないのだ。
まるで沼だ、沼に足を取られているかのような感覚。
こいつの異常な精神性と、それに伴う器の大きさ、それのせいかなにかこう感覚が乱れるのだ。
祖父であれば無限の武練を持つ彼ならばその程度動じないに違いない。
師匠ならば自らを絶対に崩さない彼ならばその程度歯牙にもかけないに違いない。
しかし俺は悲しいほどに凡人だ。
特別なだけで天才なだけで優秀なだけで計測可能な存在だ。
「でも諦めねえ……!やっと念願叶ったんだ!」
俺は服の中に隠していた刀を取り出す。
ネバーランドに来てからも部屋にずっと飾っていた刀。
古今無双の最強の名刀。
ネバーランドに来てからも部屋にずっと飾っていた刀。
古今無双の最強の名刀。
「相州伝……五郎正宗!」
抜き放つと同時に白い光が辺りを包む。
この刀の都市伝説としての力は“絶対防御”だ。
河に流れた草葉が自ら刀を避けた故事に基づいてありとあらゆる敵意をはじき飛ばす。
この刀の力があれば釘に一々関わる必要はない。
この刀の都市伝説としての力は“絶対防御”だ。
河に流れた草葉が自ら刀を避けた故事に基づいてありとあらゆる敵意をはじき飛ばす。
この刀の力があれば釘に一々関わる必要はない。
「そ、それは……!?」
刀と槍を両手に構えて親父に再び立ち向かう。
近づけば片手抜刀の居合が、離れれば槍による一突きが、あいつを確実に屠る。
普通の人間であればとても持てない重たさだが、半人半魔の俺がそんなこと気にする必要はない。
近づけば片手抜刀の居合が、離れれば槍による一突きが、あいつを確実に屠る。
普通の人間であればとても持てない重たさだが、半人半魔の俺がそんなこと気にする必要はない。
「喰らえええええええええええええ!」
楽しい、本当に楽しい。
村正が親父の右腕を貫いた。
村正が親父の右腕を貫いた。
「うぐっ!」
「……やったか!」
「んなわけねえだろ阿呆かお前は。」
「知ってるし、知らないわけ無いし。」
「照れ隠しか?可愛いなあ。」
「……やったか!」
「んなわけねえだろ阿呆かお前は。」
「知ってるし、知らないわけ無いし。」
「照れ隠しか?可愛いなあ。」
腕を貫かれたまま親父は村正を握る。
次の瞬間、俺の意思を無視して俺と村正の契約は断ち切られた。
次の瞬間、俺の意思を無視して俺と村正の契約は断ち切られた。
「一体何が!?」
「こいつが俺の運命の都市伝説ってことだよ!」
「はぁ!?」
「それもいただくぜ!」
「こいつが俺の運命の都市伝説ってことだよ!」
「はぁ!?」
「それもいただくぜ!」
突如として親父の左手の中に小さな黒い球体が現れる。
それに吸い込まれるかのように俺が持っていた正宗も親父の手の中に吸い込まれてしまった。
それに吸い込まれるかのように俺が持っていた正宗も親父の手の中に吸い込まれてしまった。
「えっ、ちょ、待て……」
正宗との契約も意思に反して断ち切られる。
正宗の発していた白い光が今度は親父を強く包みはじめた。
二本の刀は小刀のように短くなって親父の手の中に収まる。
奴はそれを牙のように逆手に構えると俺に対してニヤリと笑った。
正宗の発していた白い光が今度は親父を強く包みはじめた。
二本の刀は小刀のように短くなって親父の手の中に収まる。
奴はそれを牙のように逆手に構えると俺に対してニヤリと笑った。
「爺さんも馬鹿なら孫も馬鹿だぜ……。」
「ふ、ふざけるな!他人が契約していた都市伝説を無理やり自分と契約させるなんて……!」
「おめえの存在の方がありえねえから!」
「親にあるまじき台詞だよ……。」
「だってお前は世界でたった一人の俺の息子だからな……」
「追いつめられていい話っぽくまとめようとしてるよ最低だよこいつ!」
「アメリカも日本もない、俺がお前の父さんだよ!
お前だって覚えているだろ、母さんの言っていた言葉を……」
「え?」
「ぬちどぅ宝……」
「あんた関東人だろうが。何処のドラマに影響された?言ってみろ。」
「それでも沖縄が……心の故郷だ。」
「いや、あんた行ったことないだろ。」
「ふ、ふざけるな!他人が契約していた都市伝説を無理やり自分と契約させるなんて……!」
「おめえの存在の方がありえねえから!」
「親にあるまじき台詞だよ……。」
「だってお前は世界でたった一人の俺の息子だからな……」
「追いつめられていい話っぽくまとめようとしてるよ最低だよこいつ!」
「アメリカも日本もない、俺がお前の父さんだよ!
お前だって覚えているだろ、母さんの言っていた言葉を……」
「え?」
「ぬちどぅ宝……」
「あんた関東人だろうが。何処のドラマに影響された?言ってみろ。」
「それでも沖縄が……心の故郷だ。」
「いや、あんた行ったことないだろ。」
ルルそっちのけで俺たちは敵を圧殺し続ける。
俺の伸ばした拳が親父の背後の敵を殴り飛ばし、
親父の剣戟が俺の背後やルルに襲いかかる敵を切り刻む。
そうかと思えば背後からおやじの蹴りが襲いかかってきたり、
俺を狙った銃弾を能力で防御した親父の背中に向けて俺がナイフを振るう。
俺の伸ばした拳が親父の背後の敵を殴り飛ばし、
親父の剣戟が俺の背後やルルに襲いかかる敵を切り刻む。
そうかと思えば背後からおやじの蹴りが襲いかかってきたり、
俺を狙った銃弾を能力で防御した親父の背中に向けて俺がナイフを振るう。
「お、おまえら!こいつがどうなってもいいのか!」
「た、助けて明尊ちゃん!」
「おい息子、お前の彼女捕まってるぞ。」
「解ってる。」
「た、助けて明尊ちゃん!」
「おい息子、お前の彼女捕まってるぞ。」
「解ってる。」
俺は正宗を親父から奪い取って投げつける。
恐らくまともに助けてはもらえないと覚悟していたルルは必死で暴れて向けられていた銃口をわずかに自分から逸らす。
正宗はまるで生き物のような動きでルルだけを回避しながらあたりの敵を切り刻む。
まるでそこに見えない剣士が居て、彼女のために正宗を振るっているようだった。
恐らくまともに助けてはもらえないと覚悟していたルルは必死で暴れて向けられていた銃口をわずかに自分から逸らす。
正宗はまるで生き物のような動きでルルだけを回避しながらあたりの敵を切り刻む。
まるでそこに見えない剣士が居て、彼女のために正宗を振るっているようだった。
「使いこなすねえ。」
「いえいえ。」
「だが、こいつは躱せねえだろ!」
「いえいえ。」
「だが、こいつは躱せねえだろ!」
そこらへんに居た兵士の頭を砕いて血しぶきを俺に浴びせかける親父。
目潰しのつもりなのだろうか。
目潰しのつもりなのだろうか。
「喰らえバカ息子!」
攻撃が来ると思い目をつぶったまま直感だけで近くの死体を盾にしながら後ろに下がる。
が、何も起こらない。
が、何も起こらない。
「……うわ何この写真。」
「読みを誤ったなあ息子よ!」
「ルルお前何を見ている!?」
「その質問には俺が答えてやる。
幼少期のお前の写真だああああああああああああ!」
「ぎゃあああああああああああ!」
「読みを誤ったなあ息子よ!」
「ルルお前何を見ている!?」
「その質問には俺が答えてやる。
幼少期のお前の写真だああああああああああああ!」
「ぎゃあああああああああああ!」
※この間にも屍食鬼の皆様は大量虐殺の憂き目にあっております
「うさみみフードでお母さんに抱かれているぞおおおおおおおおお!」
「やめてええええええええええええ!」
「うさみみフードで俺にほほずりされて泣いてるぞおおおおおお!」
「ヒゲジョリジョリで嫌だった記憶があるううううううううう!」
「やだ可愛い……。」
「この場にいる全員ぶっ飛ばしてやる!」
「やめてええええええええええええ!」
「うさみみフードで俺にほほずりされて泣いてるぞおおおおおお!」
「ヒゲジョリジョリで嫌だった記憶があるううううううううう!」
「やだ可愛い……。」
「この場にいる全員ぶっ飛ばしてやる!」
再び俺と親父の戦いが始まる。
とはいえ都市伝説を一つも持たない俺と三つもの都市伝説を駆使して俺を追い詰める親父では戦力差は圧倒的だ。
俺はあっという間に追い詰められて首に刀を突きつけられていた。
とはいえ都市伝説を一つも持たない俺と三つもの都市伝説を駆使して俺を追い詰める親父では戦力差は圧倒的だ。
俺はあっという間に追い詰められて首に刀を突きつけられていた。
「これで終わりだな……。」
「ふふふ……どうだろうな。」
「なに?」
「俺が終わるよりも先に……この船の雑兵共が全滅したみたいだぜ。」
「…………居たね、そんなの。」
「ふふふ……どうだろうな。」
「なに?」
「俺が終わるよりも先に……この船の雑兵共が全滅したみたいだぜ。」
「…………居たね、そんなの。」
原型も留めずに尽く燼殺され虐殺され滅殺された屍食鬼達。
俺たちの親子喧嘩に巻き込まれるとは運の悪い奴らだ。
俺たちの親子喧嘩に巻き込まれるとは運の悪い奴らだ。
「あれ、ところでお前の彼女。」
「居ないね。あと彼女じゃねえ。」
「……ああ、今度は俺が」
「居ないね。あと彼女じゃねえ。」
「……ああ、今度は俺が」
次の瞬間、親父の体が揺れる。
刀を取り落としてその場で崩れ落ちる親父。
その背後に立っていたのはルルだった。
ルルが、親父の背中にナイフを突き立てていた。
刀を取り落としてその場で崩れ落ちる親父。
その背後に立っていたのはルルだった。
ルルが、親父の背中にナイフを突き立てていた。
「……親父!?」
「ぐふっ、やっと父と呼んでくれたな……。
ルルを責めるな……いい女じゃねえか……。」
「おいルルお前!」
「ご、ごめんなさいでも!」
「いやナイス。」
「え?」
「は?」
「どうせこの程度で死なないしこいつ。」
「…………ああ。」
「…………へぇ。」
「おら!さっさとこっから脱出する方法を教えろよ!」
「明尊ちゃん酷いよ……。」
「ぐふっ……それなら簡単だ。
俺がてめえらを空間操作で日本に返せばお終いだ。
やっぱ全力で殺しにかかるべきだったかなこのバカ息子。」
「それやれよーさっさとやれよー。世界がやばいんだぜー。」
「明尊ちゃん頼みごとが有る時は素直に……」
「緊急事態だから仕方ないが、てめえ後でしばく……。」
「ぐふっ、やっと父と呼んでくれたな……。
ルルを責めるな……いい女じゃねえか……。」
「おいルルお前!」
「ご、ごめんなさいでも!」
「いやナイス。」
「え?」
「は?」
「どうせこの程度で死なないしこいつ。」
「…………ああ。」
「…………へぇ。」
「おら!さっさとこっから脱出する方法を教えろよ!」
「明尊ちゃん酷いよ……。」
「ぐふっ……それなら簡単だ。
俺がてめえらを空間操作で日本に返せばお終いだ。
やっぱ全力で殺しにかかるべきだったかなこのバカ息子。」
「それやれよーさっさとやれよー。世界がやばいんだぜー。」
「明尊ちゃん頼みごとが有る時は素直に……」
「緊急事態だから仕方ないが、てめえ後でしばく……。」
そう言うやいなや親父は俺を思い切りパソコンの画面で殴りつけ、ついでにルルに画面で優しく触れた。
無駄な紳士ぶりである。
洗濯機に放り込まれたような感覚に襲われる。
それが終わると俺とルルはいつの間にかエーテルさんの目の前に居た。
無駄な紳士ぶりである。
洗濯機に放り込まれたような感覚に襲われる。
それが終わると俺とルルはいつの間にかエーテルさんの目の前に居た。
【不思議少女シルバームーン第八話 第三章「死闘」】