夢現聖杯儀典:re@ ウィキ

シモン&バーサーカー

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匿名ユーザー

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――いいかシモン、忘れんな。


目を閉じればいつも、あのときの言葉が脳裏に谺する。
忘れようとしたって忘れられるはずがない。
シモンにとって、世界でただ一人「兄」と慕った男の声だ。


――お前を信じろ。


無論、血が繋がっている訳ではない。
関係を表すならば、単に同郷というだけだ。
家族でも親戚でもない、遠い関係。


――俺が信じるお前でもない。


しかしそれでも、その男はシモンにとって「兄」だった。
ただ目の前の壁を掘ることしかできないシモンに、目的をくれた。
壁を掘り抜いた先にあるもの――未来という名の希望をくれた。


――お前が信じる俺でもない。


いつしかその男は、シモンだけではなく多くの人間の拠り所となっていた。
無知で、無茶で、無謀で、無鉄砲で、無遠慮な男。
しかし誰もが、その男の背中に夢を見た。
閉塞した世界を叩き壊す可能性を見た。
その背中についていくことを願った。


――お前が信じるお前を信じろ。


その男の名は、カミナと言った。
そして、カミナは、もういない。
もう、どこにも、いないのだ。


   ◇


キュラキュラキュラ……と、軋んだ金属音が響く。
薄暗い、星灯りだけが光源の路地裏で、少年は一人、ドリルを回し続けていた。
ビルの壁は穴だらけになっている。
少年は意味もなく壁にドリルを突き立て、回し、掘る。
しかし掘り「進んで」はいない。穴が開いたと見るやそれを放り出し、次なる穴を穿つ。その繰り返し。
どこにも行かず、機械的にドリルを回し続ける。

「…………」

その様子を、傍らでずっと見ている男がいた。
腕を組み、気怠げに壁にもたれかかる男。少年が召喚したサーヴァントである。
クラスはバーサーカー。狂戦士の英霊。
しかしその瞳は確かな理性を宿し、少年の行動をつぶさに観察していた。

「はぁぁ……」

バーサーカーは溜息を付く。
別に疲れた訳でも呆れた訳でもない。生来の癖のようなものだ。
だがいい加減、飽きて来る頃だった。
出逢ってからこっち、少年は一言も発することなく黙々と壁に穴を開け続けている。
バーサーカーに一度として眼をやることもなく。
サーヴァントを召喚したマスターならば、自分に課せられた役割は理解しているはずだ。
自分以外の全てのマスターを倒し、聖杯に到達すること。
そうすれば願いは叶う。万能の願望機たる聖杯は、因果をねじ曲げてそれを可能にする。
過去の英霊であるサーヴァントにも願いがある。だからマスターの呼びかけに応じて参戦し、マスターの武器として戦う。
バーサーカーにも聖杯に掛ける願いがある。
かつて失ったものを取り戻すために、地獄の底からこうして這い上がってきたのだ。
だがいくらバーサーカーがやる気だろうと、マスターにその気がなければ意味がない。
これはハズレを引いたか――と、バーサーカーがマスターに見切りをつけようとしたとき。

「……ぁ」

少年の手元で、濫用に耐えかねた手回しドリルが二つに折れた。
頑丈そうに見えたドリルだが、古くなっていたか、あるいは少年の使い方があまりにも乱暴だったか。
いずれにしろ少年の手は止まった。

「おい」

声をかける。少年はようやく、のろのろと振り向いた。
罵声を浴びせるか、あるいはいっそ、一発蹴りをくれてやろうか。
そう考えていたバーサーカーは、少年の瞳に吸い寄せられるような引力を感じた。
深い――どこまでも底のない、真っ暗な穴。
想起されたのは、そんなイメージだ。

「……ほう」

やる気なさげだったバーサーカーの眼が軽く見開かれる。
ハズレなどと思ったのは間違いだ。俄然、このマスターに興味が湧いてきた。

「お前。良い眼をしているな」

壁を蹴って離れる。踵の滑車が火花を上げる。少年の鼻先で顔を突き合わせた。
じっと、双眸を覗き込む。息がかかりそうな距離。
少年は、ぴくりとも動かず見つめ返してくる。
恐れ、戸惑い。そんな弱腰の感情は読み取れない。
かといって怒りや憎しみなどの強い感情があるわけでもない。
そこにはただ、穴がある。何もかも吸い込み、落下していくだけの、底のない奈落が。
間違いなく、バーサーカーと同じ眼をしていた。

「あんたが、俺のサーヴァントか」
「そうなるな。なんだ、状況は理解できてるのか」
「わかってる。考えはだいたいまとまった」

なるほど、とバーサーカーは得心した。
あの穴開けはある種の手慰み、思考を円滑に進めるための儀式のようなものだったらしい。
応えた少年の声には震えがない。とすれば、導き出した答えは聞かずともわかる。

「やる気か?」
「そのためにここにいる。あんたは違うのか」
「いいや……俺も同じだ」

少年は既に、覚悟を終えていた。
今さらどうするべきかなど迷わない。やると決めた、そういう顔をしている。

「だが念の為に聞いておこう。お前は何のためにここにいる?」
「兄貴を、取り戻すためだ」

少年――シモンは言い切った。

「兄貴は死んだ。もういない。なら……取り戻す。生き返らせる。
 それで、もう一度、俺たちのグレン団をやり直すんだ」

絶望に濁った眼でシモンは続ける。
それこそが唯一残された救いだと、心底から信じきった眼で。

「聖杯ならそれができる。そうだろう」
「ああ、そうだな。死んだ奴だって生き返すことができる。それが聖杯だ。
 だがそのためには、お前以外の他のマスターが邪魔だ。一人残らず皆殺しにしなきゃならない」
「俺は……弱い。俺一人でみんな殺すなんて無理だ。でも、そのためにあんたがいるんだろう」

殺人に躊躇いはない。
己の弱さを認めた上で、尚、それを為そうとしている。

「バーサーカー。俺は聖杯が欲しい。誰かを殺したって構わない。俺は兄貴に生きてて欲しいんだ」
「クク……いいだろう。お前は誰よりも俺のマスターたる資格があるようだ」

バーサーカーは立ち上がり、シモンに手を差し伸べる。
このマスターは、気に入った。
地獄に堕ち、夜を這い回り、天の太陽ではないただ一つの光を追い求める魂。
それはまさしく、バーサーカーと同じカタチの魂だからだ。

「俺の願いはな、弟を甦らせることだ。かつて、俺がこの手で葬った弟を……。
 兄を甦らせたいお前が、弟を甦らせたい俺を召喚した。洒落が効いていると思わないか」
「バーサーカー、あんたも……?」

シモンはここでようやく、バーサーカーに決意以外の視線を向けた。
バーサーカーがシモンに感じたシンパシーを、シモンもまた感じ取ったのか。

「俺の名は矢車想。長くなるのか短くなるのかわからんが……シモンよ。俺と一緒に、地獄に堕ちよう」

バーサーカーが真名を名乗る。このマスターには、そうするだけの価値がある。
果たして、彼が差し伸べた手を、シモンは躊躇うことなく握り返してきた。
契約はここに成った。
弟は兄を求め、兄は弟を求める。聖杯を手にするために、この場限りの地獄の兄弟が起つ。
太陽は闇に沈んでいる。星灯りだけが彼らを祝福していた。


   ◇


ドリルをいくら回しても、もう前には進めない。シモンの背中を押す声が、聞こえなくなったからだ。
ドリルは虚しく回るだけ。燃えるような熱は去った。
グレン団はカミナが作った組織だ。今のグレン団には魂がない。炎がない。
シモンでは、カミナの代わりにはなれない。
このままではみんな死ぬ。
シモンも、ヨーコも、ロシウも、キタンも、ダヤッカも、リーロンも、ミギーもダリーも。
カミナが作ったみんなの居場所が、なくなってしまう。それだけは、許せない。認められない。
シモンはカミナの代わりにはなれない。それはわかっていたことだ。
ならば、カミナを取り戻せばいい。
グレン団にはカミナがいなければならない。それが正しいカタチであり、自然な状態なのだ。
どのような手段を使っても、あの声が、あの背中が戻ってくるのならば、迷いはしない。


――あばよ、ダチ公。


最後に聞いた、カミナの声を思い出す。
シモンはそれを、否定する。

「あばよ、じゃない……俺たちは一緒だろ、兄貴。だから……」

握り締めたコアドリルが弱々しく光る。
刃先が皮膚を裂き、流れ出た血が掌を汚していく。
だが、構わない。

「……俺、やるよ。必ず兄貴を、生き返らせてみせるから」

これからシモンは、見も知らない誰かの血でさらに手を汚していくのだから。




【マスター】
 シモン@天元突破グレンラガン
【能力・技能】
螺旋力:EX
 ドリルは一回転すればその分前に進む。生命体に進化を促す原初の生命エネルギー。聖杯戦争においては魔力に変換が可能。
 ただし、現時点でのシモンは秘めた螺旋力に蓋をした状態であり、全力を出すことが出来ない。ゲーム的に表現するなら最大MP低下。
 螺旋力は前に進む意志を発現の起爆剤とするため、ネガティブな精神状態では本来の力を発揮できない。
 結果的にバーサーカーも相応に弱体化している。シモンが全螺旋力を開放することができれば、バーサーカーもまた本来の力を取り戻すだろう。
  筋力:D 耐久:D 敏捷:C 魔力:E 幸運:E → 筋力:C+ 耐久:C 敏捷:B+ 魔力:D 幸運:C
【weapon】
コアドリル
 ガンメン・ラガンの起動キーとなる手のひらサイズのドリル。武器として扱うにはやや心もとないが、非常に強固。
【人物背景】
 獣人に支配された地球の地下世界に生まれた、穴掘りを生業とする少年。
 来る日も来る日もドリルで穴を掘る毎日だったが、同じ村に住む青年カミナに触発されて地上への旅に出る。
 シモンは生まれつき類まれな螺旋力を持っていて、偶然発掘したガンメン(ロボット)・グレンを起動させることができた。
 内向的な性格だったが、破天荒男カミナに弟と認められ、カミナ率いるグレン団の中核として少しずつ成長していく。
 だが獣人との戦いの中で、シモンを助けるためにカミナは散る。カミナを慕って集まった人間たちは大いに悲しみ、シモンもまた絶望に苛まれる。
 カミナを失った喪失感はニアと名乗る少女との触れ合いで癒され、やがて立ち直るのであるが――。
【マスターの願い】
 カミナを生き返らせる。


【クラス】
 バーサーカー
【真名】
 矢車想@仮面ライダーカブト
【パラメーター】
 筋力:D 耐久:D 敏捷:C 魔力:E 幸運:E 宝具:C
【属性】
 混沌・狂
【クラススキル】
狂化:E
 「狂戦士」のクラス特性。通常時は狂化の恩恵を受けないが、その代わりに正常な思考力を保つ。
 ダメージを負うごとに幸運判定を行い、失敗するとどんどん自暴自棄になる。
【保有スキル】
心眼(真):B
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
料理作成:D
 市販の食材を使い、料理を作成するスキル。
 バーサーカー自ら「地獄の豆腐料理」と称する麻婆豆腐は僅かながら神秘を帯び、マスターが食べれば魔力を回復する効果を持つ。
 ただし激辛のため、常人では一度に多量の摂取はできない。
【宝具】
『白夜へ向かう飛蝗(マスクドライダー・キックホッパー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:自分
 バッタの形状をしたコアであるゼクターをベルトにセットすることで全身に装甲を纏う、常時発動型の宝具。
 矢車が使うゼクターはキックホッパーと呼称され、先にロールアウトした既存のマスクドライダーシステムとは互角の性能ながらも系列の異なるモデルである。
 キックホッパーは脚部にジャッキが取り付けられており、作動させることで凄まじい跳躍力を生む。
 自分がジャンプするだけでなく、敵に押し当てて作動させることで吹き飛ばす用途にも使える。
『時をかける飛蝗(クロックアップ)』
ランク:D 種別:対時間宝具 レンジ:- 最大捕捉:自分
 マスクドライダーシステムが共通して搭載するタキオン粒子操作機構の一環。
 世界と異なる時間流の中に突入し、自身以外の存在から見れば相対的に超高速となる(自分以外は止まって見える)行動を可能とする。
 ただし矢車の肉体に多大な負担がかかるため、発動していられる時間は10秒ほど。再度の発動にはややインターバルが必要。
 結果的な事象としては超加速しているように見えるものの、時間の流れを早めているだけなので攻撃力が増す訳ではない。
『地獄に堕ちた飛蝗(ライダーキック)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:10人
 マスクドライダーシステムが共通して搭載するタキオン粒子操作機構の一環。
 タキオン粒子を凝縮させ、純粋に破壊力へと変換した蹴りを叩き込む。
 インパクトの瞬間にジャッキを連動させることで、キックの反動で空中に戻り、二度三度と連続して蹴り続けることも可能。
【weapon】
『白夜へ向かう飛蝗(マスクドライダー・キックホッパー)』
 秘密組織ZECTが異星生命体ワームと戦うために開発したマスクドライダーシステム。
 ホッパーは増加装甲形態マスクドフォームがオミットされ、常に機動性に優れたライダーフォームで活動する。
 さらにゼクターをセットする向きによって、蹴撃主体のキックホッパー・拳撃主体のパンチホッパーと二種の形態を使い分けられる。
 が、矢車の戦闘スタイルは蹴りを多用するものであり、またパンチホッパーの使用者は彼の弟以外にいないと決めているので形態を変化させることはない。
【人物背景】
 ZECTの精鋭特殊部隊シャドウを率いる若き指揮官――だった男。
 完全調和(パーフェクト・ハーモニー)をモットーとし、あらゆる物事に卓越した才能を見せる、絵に描いたような完璧な人間。
 しかし仮面ライダーカブトと関わることで運命が激変。ザビーゼクター、部下、ZECT上層部の全てに見放され、失意の内に街を彷徨う。
 やがてカブトの前に再び姿を現したとき、矢車の中に完全調和の信念は一欠片も残っていなかった。
 「地獄を見た」と嘯き、あらゆることに無気力かつ厭世的な言動を見せる。が、自身を笑った(と矢車が感じた)対象には非常に攻撃的な対応を取る。
 かつて自身を陥れ、同じく全てを失った影山瞬を弟とし、カブトやワームに区別なく襲い掛かり、気の赴くままに暴れ回った。
 最後はワームと化した影山に自らの手で引導を渡し、二人だけの光――白夜を求めて、何処とも知れぬ旅に出た。
【サーヴァントの願い】
 影山瞬を生き返らせる。

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