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  • ろりしょたばとるろわいある@ うぃき
  • 刀銀十字路(前編)

ろりしょたばとるろわいある@ うぃき

刀銀十字路(前編)

最終更新:2008年01月05日 03:21

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刀銀十字路 ◆IEYD9V7.46



正直に心を打ち明ければ、“感嘆”という言葉が転がり出てくる。
言葉の出所は一人の少年。明治時代の士族、明神弥彦の胸中からだ。
彼は得体の知れない力でこの島に連れてこられたとき、
そのことに憤りを覚える一方で、眼前に広がる未知の世界に対して少なからず胸を躍らせていた。
彼の時代では、人々が過去の遺物であると受け入れ始めていた、全国各地に点在する城。
その城に易々と匹敵する高さ、大きさ、威容さを誇る高層ビルが、
八百屋に野菜でも並んでるように無数に、そして無造作に生えている。
弥彦は目を丸くしながらそれらを眺め、深い息を漏らした。
堅牢さを窺わせる外観。陽光を反射し、時間が経つにつれて違う色を返してくる透明なガラス窓。
そんな石塊の摩天楼の足元にあるのは、幅が広く、
馬車が数台並走するくらいでは何の問題もない、平らで頑強な道路。
――異国ってのは、こういうところなのかもな。
その光景を通して、弥彦は海の向こうに広がっているはずの世界に想いを馳せ、
一時のあいだ、心地良い感動の波に身を揺らしていた。
しかし、穏やかな時間は転瞬の間に終わる。
非現実的なこの島で、非現実的な豚の少年を誤殺したことに端を発して。
その後は何をやっても、ゆっくりと真綿で首を絞められていくばかりだった。
仕方がないこととはいえ、結果的に何人も見殺しにし、誰も救えなかった。
その上、先の放送が最初の仲間である磯野カツオと、
数時間前に言葉を交わした八神太一の死までも告げていった。
掲げたいと願っていた“不殺”の信念は冗談みたいに呆気なく崩れ去り。
助けたい人間は助けられず、確固たるものは何も得られていない。
泥の中でもがくようなものだ、失うものはあれど手に入るものは何もなかった。
分かりきっている。泥土の海に光り輝く宝は埋まっていない。
それでも。

「はあ、はあ、はあ……、くっ……」

それでも弥彦は足掻いている。今もまだ、足掻き続けている。
速い息を断続的に吐き、額には大量の、冷熱の判別がつかない汗の玉が浮く。
道着が重い。発汗による水分を衣服が余すことなく吸収し、鈍い枷となっている。
べたつきによる不快感は、ひとたび冷涼な夕風が吹けば一転する……、はずだが、それは望めそうにない。
弥彦が今いるのは、閉塞感を容赦なく突きつける裏路地、その袋小路のすぐ近く。
澱んだ空気はドブ川以上に腐った臭いで占められ、一向に風の吹く気配を見せてくれない。
弥彦の背後、数メートル先には石の壁がある。
対する正面側には、狭いながらも道があるはずだが……ビルの作る陰影、それらが重なり合った闇のせいで輪郭がつかめない。
弥彦は闇を睨みつける。そして、果てのない黒に対して、右手に持ったあるものを向ける。
小刻みに震える手で差し出したものは鞘だ。本来は一点の曇りもない漆黒のはずの鞘には、無数の傷が刻まれている。
それは傷だらけの持ち主の状態を反映したかのように、ボロボロだった。
まるで激しい戦いをこなした後のような、――違う。まだ戦闘は終わってなどいない。
弥彦が未だに警戒を解けないのが何よりの証拠だ。
油断なく、そして忙しく。両目で上下左右、灰と黒の世界を撫で回る。

胸中にあった異国への好奇心は、既に木っ端微塵に吹き飛んでいる。
それどころか、この街にあるもの全てが恨めしいとさえ思えてきた。
理由は二つ。
土地勘がないせいで、散々迷ってしまったからということが一つ。
綺麗だと思えたのは上辺だけで、一度路地裏に入れば、
このような醜悪な空間が広がり、幻滅したということが一つ。
弥彦にとっては理解の埒外だが、二つの理由、特に後者は致し方ない部分でもある。
人々の貧富の差が決して埋まることがないように、街全体が同じように発展を遂げられるわけではない。
光の差すところに闇はある。ビルや繁華街は光、ならばその裏に位置する吹き溜まりは当然闇である。
常人は光を求めるがゆえに、こんな陰鬱な場所を彷徨うことはない。が、それで人影がゼロになるわけでもない。
闇の中を、自分の庭のように駆け回る人間は、確かにいる。
ドス黒く濁った水の中に、頭からつま先まで躊躇なく浸かれるようになってしまった人間が、厳然として存在しているのだ。
ある社会に属するものたちは、そんな彼らを畏怖の念を以ってこう呼んだ。

――――『厄種』と。

(来た!)
堆積し続けていた空気が細波のように揺れ始めた。何かが大気を掻き分けて接近してきている。
それを敏感に感じ取った弥彦は身構えて……すぐに違和感がこみ上げる。
おかしい。そろそろ姿を現してもいいはずなのに何も見えない。
剣心たちのような達人には遠く及ばないとはいえ、半ば閉鎖された空間であるここなら……。
少なくとも気配を読める程度の修練は積んできたつもりだ。
勘を信じろ、真正面でないなら恐らく――

(上か!?)

顔だけを別の生き物のように上げて攻撃を確認。
見えた。斜め上方に宵の明星の如き光。
尾をひく黄色光を横目にしながら、全身を使って撥ねられたように側転。
一瞬の後、弥彦がいた場所に輝く隕石が落下し、派手な音を立てて地面に衝突した。
コンクリートが周囲に砕け飛び、それに巻き込まれるように弥彦はゴロゴロと路地を転がる。
(さっきからなんなんだよあれは!? 槍に火薬でも仕込んでるのか!?)
心中の早鐘を押し止め、追撃に備えるべくすぐさま起き上がって鞘を構える。
黒い鞘の先端、その向こうに粉塵が立ち込め、中から呟きが聞こえてきた。

「武装、解除」

性別が分からない、ただ美しいとしか表現できない声が悠然と響く。
塵埃が消え去り、現れたのは突撃槍を持った少年……ではない。
趣味の悪い手品のように、少年が少女と入れ替わっている。
長い銀髪をたくわえた丸腰の少女――グレーテルだ。

「兄様、お疲れ様。少し休みましょうか」

あの人に興味も湧いたし……。
グレーテルはそう呟き、満面の笑顔を弥彦に向けて朗らかに問う。

「ねえ、お兄さん」
「……何だよ」
「いつになったら私を貫いてくれるの?」
「は?」

思わず呆けた声が口をついて出た。弥彦は目を白黒させながら、少女の言葉に耳を傾ける。

「だって、あなたも人殺しでしょ?」
「!? 違うっ、俺は――!」
「あら、違うの? おかしいわ。そんなにも、惚れ惚れするほど衣を赤黒く染めているのに?
 胸が高鳴るほどに、芳醇な塩と鉄の香りを身に纏っているのに? ウソなんて言ってもダメよ。
 ……ああ、なんて素敵なの。最高級の染料と香水による、上質な正装……」

会話の途中から、グレーテルが違う世界に甘い目を向け始める。
隙なのか、罠なのか。考えあぐねた弥彦は結局その場を動けない。
やがて、グレーテルの瞳の焦点が再び現実に結ばれ、彼女は矢継ぎ早に言葉を発する。

「信じられない、こんなに勿体無いものなんてあるのかしら?
 外装は最上級なのに、中身がどうしようもない不能だなんて……。
 あなたは立派なものを持っているでしょ? 私知っているわ、それは剣を納める鞘よね?
 僅かに反った形だから……日本刀というものだったかしら?
 早く使わないとあなた死んじゃうわ。それとも、……もう、終わらせてしまってもいいの?」

両手を背中側にまわして、小首を傾げながらグレーテルがニコッと微笑む。
問いかけを聞いた弥彦は、背中のランドセルに意識を向けた。
その中には妖刀、桜観剣が抜き身で仕舞ってある。
確かに、相手はこんな鞘一本でどうにかできる敵じゃない。
意図は分からないが、眼前の少女、或いは少年は全く本気を出していない。
放送後に接触してからずっと、何かを試しているかのように、弥彦をなぶり続けてきたのだ。
勝つためには、生き残るためには刀を使うしかない。
だが、

「刀は、使わない……」

グレーテルが微かに眉を顰める。

「俺はもうこれ以上、誰も殺すわけにはいかないんだ! だから!」

弥彦の脳裏を、一人の少年の姿が掠める。
桜観剣は使えない。自分の手で殺めてしまった、名も知らぬ幼い少年のためにも。
あんなことは、間違っても二度と繰り返すわけにはいかない。
例え相手が、救いようのない殺人鬼だったとしても、だ。
弥彦にはそうするに足る理由と信念がある。
なぜなら彼は剣心の『不殺』だけでなく、神谷活心流の『不殺』も同時に背負っているのだから。
殺さずに相手を制することこそが、神谷活心流の極意であり、骨子となる理念だ。
それを自ら進んで破ってしまえば、今までの自分は全て否定されてしまう。
ばかりか、剣心と仲間たち、道場の看板にまで泥を塗ることになる。
そんなものは士族として、そして何より弥彦個人としての矜持が断じて許さない。
だから弥彦は、罅だらけでありながらも強い意志を載せて、グレーテルを視線で射抜く。

「……ふ、あははははははははははははははははははははは……」

腹のあたりを抱えて、しかし軽やかにグレーテルが笑う。

「おかしいかよ」
「ええおかしいわ、とっても。……けど、それ以上につまらない」

グレーテルはビルに切り取られた遠い空を眺める。

「朝はとっても楽しかった。素晴らしいボルシチを堪能できたし。
 それに、順番を間違えてしまったけど、
 食後のボイルド・マカロニも思いの外味わい深いものがあったわ。
 その後もメインディッシュの連続ですごく満足していたのに……。本当にがっかりだわ。
 もうディナーの時間なのに、怖くて人を刺すこともできないゴミが出てくるなんて。
 今日の中で一番ひどい食事よ」

グレーテルは軽く目を瞑り、両手で頭を抱えた。

「でも、良く分かったわ。お兄さんは貫くより――」

声色が微かに変化する。少女が少年――ヘンゼルに変わり、

「――貫かれるほうが好きなんだね!!」

地を蹴った。いつの間にか、その両手には出所の分からない大槍が握られ、見る見るうちに弥彦に迫っていく。
槍自体の大きさと質量、ヘンゼルの膂力を考慮すれば、まともに受けるのは下策だ。
だから弥彦は、右手に持った鞘と、槍の穂先のみに集中して、

「だあああっ!!」

巨大な槍の側面を鞘で打ち、攻撃ベクトルを僅かに逸らす。
同時に身をかわして、ヘンゼルの突撃を背後にやり過ごし、距離をとったところで互いに振り返り、視線を交錯させた。
弥彦は肺の空気をゆっくりと入れ替えながら先を見据える。
(大丈夫だ、まだやれる。攻撃自体は大振りなだけで充分見切れる!)
初めて接敵したときから、このやり取りは幾度か繰り返され、弥彦はそれを掻い潜ってきた。
そして、あの大槍との戦い方もようやく掴めて来たところだ。
傷だらけの鞘が砕ける前に勝敗を決するためにも、今が好機だと捉える。
ゆえに弥彦は両手で鞘を強く握り締め、

「ああああああああああああ!!」

気合を糧に、ヘンゼルに切り込む。
今まで受けが主体だった弥彦の明確な攻勢を目の当たりにし、ヘンゼルは微かに目を見開いた。
が、すぐに気を取り直し、迫り来る弥彦に対して槍による刺突を繰り出して迎撃、否、反撃をする。
弥彦に恐怖はない。充分な助走のない槍の一撃を、やはり鞘でいなす。
これまではそれで終わりだった。だが、今度は違う。

「はあっ!!」

止まらない。鞘をすぐに振りかぶりなおし、ヘンゼルに追撃の一打を叩きこもうとする。
対するヘンゼルも、体格に見合わぬ異常な腕力を以って槍を引き戻し、弥彦の打撃を迎え撃つ。
槍と鞘がぶつかり、弾きあい、またぶつかり、また弾きあう。
そんな衝突の嵐の中でも、弥彦は巧みに、重い斬撃だけは逆らわずに、確実に鞘で受け流す。
互いに一歩も引かない、防御を兼ねた攻撃の応酬。
硬質の木と金属が玲々とした音を響かせ続ける。まるで、鉄琴が延々と打ち鳴らされているかのように。
だが、いつまでも続くわけではない。一定だったリズムに微かな雑音が乗り始める。
弥彦の踏み込む距離が大きく、そしてヘンゼルの踏み込みが小さくなっていく。
二人の中央で発生していたはずの金属音が、段々ヘンゼルのほうに押し流されていく。

「ああああああああ!!」
「こ、のぉっ!」

ヘンゼルは焦った様子で、必死に槍を突き出し、形だけの攻撃を繰り返す。
が、突き出す距離は回数を重ねるたびに目に見えて減っていく。
当然だ。いかに常人離れした力を持っていようとも、
サンライトハートはヘンゼルの小柄な体格には、どうしようもなく不釣合いな代物。
重量の問題はクリアできても、槍の重心を活かし、自在に操るには問題がまだ山積みだ。
だからこそ、今までは主に不意打ちという形でこの槍を使ってきたのである。
そしてそれを解消するべく、たった今、弥彦を殺さずに敢えて甚振り続けることで、
新しい心臓を得た自分の身体と突撃槍の調子を測っていた次第だった。
それは一定の効果をあげたが、まだ不十分であることは今の劣勢からして明白。
押されながらも辛うじて迎撃していたが、ついに――

「くっ……!?」

ヘンゼルの口から苛立ちの吐息が零れる。同時にギィン! という甲高い音が響き渡った。
これまでの激突音の調子とは、明らかに異なる音。
弥彦はそれを聞いた、そして見た。続いてほんの少しだけ口元を吊り上げた。
それまでは、仮にも攻撃を以って応戦していたヘンゼルの大槍の先端が、明後日の方を向いている。
互いの視線の先、喜悦と焦燥、対照的な表情が写りあう。
そして、ぶつかり合う視線の中央では。
槍の刃の腹と、弥彦の振るった鞘が、ほぼ垂直にぶつかり合って拮抗していた。
大槍を横に倒した、完全な防御の態勢。
ヘンゼルの持っていた攻撃への余裕が、ここで0になる。
そこから後は、

「もらったあ!! ――はあああああああああああっ!!」

防戦一方。
弥彦の咆哮を伴った打撃の雨を、ヘンゼルは横倒しにした槍全体、刃から柄までも使って懸命に防ぐ。
相対距離が近すぎて、槍を加速させるための、振るうための距離を稼げない。
槍というものは剣の間合いを踏み越えるために生まれたものだ。
剣の間合いの一歩先を容易に制することができる一方で、
ひとたび懐に飛び込まれれば、重量と長すぎる柄が一気に仇となる。
まさに弥彦の狙い通りの展開だった。
ヘンゼルがぎこちない手つきで大槍を防御に回しているのに対し、
弥彦は今持っている鞘を、いつもの自分の得物、竹刀と同じような感覚で扱えている。
そのため、攻撃の内容は上中下段、斬る、刺す等といったように、実に多彩なものが揃っているのだ。
曲りなりにも道場剣術を修めた弥彦だ。力で敵わなくとも、ヘンゼル以上の技がある。
度胸でも決して引けを取っているわけでもない。
勇気と信念を以って狂気に立ち向かい――その行動は実を結ぶ。

「ッ!?」

手元が狂ったのだろうか。ヘンゼルの槍の穂先が、地面に擦れてガッと跳ねた。
無論、反対側にある長柄の動きも一瞬止まり、腹部に空白が生まれる。
弥彦は見逃さない。現れた勝機に手を伸ばす。

「――取ったあッ!!」

全身のバネを活かしきった必倒の刺突が、ヘンゼルの腹に吸い込まれていく。
流れる景色の中。熱い鼓動を刻みながらも、弥彦は冷静に敵の動きを目で追って、それを見た。
ヘンゼルが動かない長柄から、躊躇なく右手を離したのを。
(右腕を盾にする気か? だったら、遠慮なくその腕を貰う――ッ!)
決意し直し、微塵も進撃を緩めない。
相手が肉を切らせて骨を断ってくるつもりであっても、そのことを念頭に動けばいいだけ。
肉を断ったところで油断せずに、更に動き続ければいいだけだ。
ゆえに弥彦は迷うことなく突き進んで、……気付いた。
防御に回すかと思われたヘンゼルの右手が、槍に付属していた何かを掴んでいる。
手にしたのは、微かに揺らめく――
(……飾り布?)
弥彦がその正体を見極めた瞬間。飾り布に鞘が接触し――――爆発的な光が生まれた。
(な!?)
驚愕したときには視界が白に染まっている。
弥彦の身体はとっくに宙を舞い、数メートルもの距離を一瞬で、強制的に吹き飛ばされていた。
冷たい地面に全身を打ちつけ、不完全な受身を取りながら数回転して、漸く勢いを殺しきる。

「あはははは、お兄さんありがとう。思ったよりもずっといい運動になったよ。
 姉様がゴミって言ったこと謝るね。ゴミにはゴミなりの楽しみ方があるって分かったよ」

嘲りを背に受けながら、よろよろと弥彦が立ち上がる。
苦悶の息を吐き出しつつ、弥彦は突撃槍につけられた長い布を苦々しく凝視した。

(槍に仕込んだ火薬の正体は、あの飾り布か……。
 ちくしょう……迂闊だった。あいつは、さっきもまだ本気じゃなかったのかよ……?)

思い返せば、ヘンゼルは先ほどの乱撃の応酬においては、最後以外、あの飾り布を全く使っていなかった。
使えば今のように簡単に形成を逆転できたというのに、手加減をして遊んでいたのである。
大槍の弱点をフォローし、長所を伸ばす飾り布の存在は大きい。
むしろ、あの布のほうこそが大槍の本質であり、真に警戒すべきものだったのだろう。
埋まると思った実力差が、更に広がるのを感じる。

(だからって、曲げられるわけがないだろ……!)

弥彦は鞘を両手で、正眼に構える。
左腕はさきほどの光に軽く焼かれ、その後地面に卸されて打撲と擦り傷は大きく増えた。
だが、致命的な支障はない。四肢はしっかりと動く。
それにこの程度の痛みなど、戦いの緊張感が全て吹き飛ばしてくれる。
強がりだったとしても、構わない。現実に刻みつけるように、弥彦は言葉を放つ。

「……勝ったつもりでいるのか? 俺はまだピンピンしてるぞ」
「はは、お兄さん誘ってるの? 慌てなくても良いよ」

ヘンゼルは笑いながら、立てていた槍を傾け始める。
そのまま腰を深く落とし、両手で槍をしっかりと構え、
歩幅20歩程度の場所に立つ弥彦に、鋭利な穂先と濁った眼光を向けた。

「次で、本当に逝かせてあげるからさ」

空気が一段と重みを増し、息苦しさを覚える中。
ヘンゼルの構えを見た弥彦は、ある男とその得意技を想起した。
(斉藤一の、牙突……!)
それは偶然の一致、いや当然の帰結か。
突撃槍がその真価を発揮するのは勿論、速度、質量、射程を活かした単純な刺突だ。
得物は違えど剣による刺突、その最高峰たる牙突を連想するのも無理もない。
それだけの威圧感を大槍とその担い手が放っているのだから尚更だ。
間違いない。誇張なしの、本気の一撃がやってくる。
冷たい汗が頬を伝うのを感じながら、弥彦は精神を集中させた。

「じゃあ、――――行くよッ!!」

爆発。飾り布が山吹色の光に転じ、ヘンゼルが砲弾のように飛び出した。
今までの戦闘は本当にお遊びだった、そう認めざるを得ない、神速の突撃が弥彦に迫る。
(速――!?)
辛うじて視認できた弥彦は、全身が見えない力で軋むのを感じる。
胃がキリキリと搾られ、迫り来る死の暴風に一瞬呑まれそうになる。
(落ち着け明神弥彦! 男だろ!? 士族だろ!? こんなもんにビビるなよ!
 目を開け、耳も使え、手足はいつでも動かせるようにしておけ!
 あの勢いなら、すれ違いざまに一撃入れればそれで仕留められるはずだ!
 だから臆するんじゃねえよっ!)
改めて、弥彦は前方を見据える。
心中の叱咤が功を奏し、ヘンゼルの突撃を曇りなく捉えることには成功した。
が、そこに予想外の光景が広がっている。
突撃に全神経を注ぎ込んだと思われたヘンゼルが、突撃槍を正面ではなく上段に大きく振りかぶっている。
弥彦にはその意図が読めない。
飾り布の爆発によって得た速度を活かすなら、槍を真っ直ぐに構えた突進が一番適しているはずだ。
なのに、ヘンゼルはその速度を殺そうとしているかのように、攻撃の軌道を無理矢理上段に変更している。
更に弥彦は怪訝なものを見た。
まだ大槍の間合いの外にいるというのに。
ヘンゼルが、振りかぶった槍を既に打ち下ろそうとしている。
(何だ? そんなとこには何も――)
決して気を緩めてなどいなかった。
けれど弥彦は、ヘンゼルの戦法を最後まで読み取ることはできなかった。
ヘンゼルは、充分な加速を得た大質量の槍を思い切り――地面に叩き付けた。

「!?」

膨大な光がアスファルトを大小雑多に砕き、無数の破片が弥彦に襲い掛かる。
咄嗟に弥彦は両腕を交差させて顔面を守り、次の瞬間全身に痛みが走った。
(くそ! これが狙いか――!)
光と散弾の雨が消え、弥彦は改めて鞘を構える。
しかし、そこにヘンゼルの姿はない。
(どこだ、どこに行った!?)
脳が一気に冷え込むのを感じる。
悪寒。弥彦は本能的に背後を振り返り――

「――じゃあね」
「ッッ!!??」

我武者羅に鞘を縦に構えるのと同時。鞘に、圧倒的な力が激突した。
馬車にでも撥ねられたような強烈な衝撃に弥彦は弾き飛ばされ、
後方にあった壁に無様に背中を打ちつけ、へたり込む。
受身などとれるはずもない。一瞬、脳天から腰の辺りまでの感覚が完全に失せた。
壁に背を預け、地面に座ったまま、朦朧とした意識の中で弥彦は右手を見る。
不殺の信念を全うするために、自分と共に戦ってくれた鞘。
それはたった今の攻撃により、握っている部分を除いて無残に破砕されていた。
弥彦はそこでやっと、ヘンゼルのとった戦法に気付く。
ヘンゼルは光と石の散弾で弥彦の視界を奪いつつ、突撃槍を地面に叩きつけ、
その反動で棒高跳びのように飛び上がることで、弥彦の背後をとっていたのだ。
牽制と目くらましと陽動を兼ねた、必殺の一撃。
鞘を犠牲にしたとはいえ、弥彦が防げたのは奇跡と言ってもいい。

「あれ、おかしいな? さっきのでオシマイのつもりだったんだけど……お兄さん本当にスゴイね」

弥彦は顔を上げる。鈍く光る銀色の大槍。
それを携えた銀髪の少年、ヘンゼルがすぐ近くに立っている。
弥彦は夢でも見ているような瞳で、処刑人を見つめた。
その表情を確認し、ヘンゼルは柔和に微笑む。

「ふふ、眠いんだね。いいよ、僕が寝かせてあげるからさ――」

そのまま槍を片手で持ち、頭上近くに掲げて、

「おやすみ」

無慈悲に、振り下ろす。
閃く銀弧を、弥彦は他人事のように眺めていた。

――はずがない。

(ここだっ!!)

瞳に強い光が灯る。弥彦はまだ諦めてなどいない。
手には柄の代わりに鞘の残骸。
そして、ヘンゼルが繰り出したのは上段からの振り下ろし。
ならば、弥彦にはまだ抗う手段が残されている。
それは即ち。
こぶしを頭上で交差させ、手の甲で白刃取りする、神谷活心流――

――奥義の防り・刃止め。

時間の進行が遅くなる。
勝利を確信したヘンゼルが、悠揚と槍を振り下ろし。
最後まで屈しようとしない弥彦が、両手を頭上に掲げようとして。
しかし。――――動けなかった。
弥彦の顔が、今度こそ死人のように青ざめる。
(!? やばい、さっきの衝撃で身体が――っ!?)
反応してくれない。
ヘンゼルの不意を突く為に、ギリギリまでタイミングを遅らせていたのが命取りとなった。
弥彦が予想していたよりも、腕が上がるのが遅い。
自分の腕が、自分のものではなくなったように動いてくれない。
そんな弥彦の状態が考慮されるはずもなく、槍の刃先はただ無感情に、風を裂いて迫る。

(俺はこんなところで終わるのかよ!?
 誰も助けられないまま、何も出来ないままで――!?)

信念はとっくに砕けていた。砕けた破片を集めて、惨めであろうと形に戻そうと思った。
分かっている、覆水は盆に返らない。それでも、たとえ身勝手であったとしても。
自分が殺めてしまった少年のために、そして、何より自分のためにも。
不殺を組みなおし、一人でも多くの人を助けたいと願った。
そうして、いつの日か。
追いつき、追い越したいと熱望していた、大きな背中があった。

(剣心、俺は――)

間違っていたのだろうか。自分が背負うには、大きすぎるものだったのだろうか。
自分が未熟なことくらい、分かっている。弱いということくらい、分かっている。
それでも、無謀な信念を通したいと願うなら。
命を代価とするのも、止む無しなのだろうか。
弥彦にその答えは見つからない。
見つける時間は、もう残されていない。
刃先が来た。風切り音が大きくなる。
直後。
ついに刃が到達し、音が響いた。

キィン! という――――金属音が。

肉の裂ける音も、血の噴き出す音も一向に聞こえない。
死を覚悟していた弥彦は、思わず目を見張った。
(……ウソだろ?)
今まで、こんなにも自分の視覚を疑わしいと思ったことはない。
視界の中に、ヘンゼル以外の誰かの背中がある。
その背中越しに、弥彦と同じように目を見開いている、ヘンゼルの顔が見えた。
闖入者は思い切り身を屈めて、弥彦に迫っていた大槍を、手に持った刀で受け止めている。
緋色の長髪。そして両手で掲げた刀はあろうことか――逆刃刀だった。
その姿はまさしく、

(剣、心……?)

一瞬浮かんだ考えを、すぐに否定する。
そんなはずはない、ここに剣心はいない。体格も全然違う。
だが、弥彦には不思議と……、その背中が大きく見えた。

「……また、会ったわね」

凛とした少女の声が、ヘンゼルに向けられる。
返事はない。そうする時間が与えられない。
刀と槍がかち合っていたのは、物の数瞬――!

「――もう、会うことはないけどッ!」

凄絶な音が炸裂した。裂帛の気合と共に、少女は強引に刀を振りぬく。
碌な助走もないはずなのに、少女は腕の力だけで巨大な槍諸共ヘンゼルを吹き飛ばした。
放物線を描きながら、ヘンゼルが向かいのビルにある事務所の窓に突っ込んで行く。
ガラスが砕け散り、中にあった机や椅子が崩れていくけたたましい音が鳴り響き、濃密な埃が舞った。


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