五里霧中 ◆JZARTt62K2
勇気を出そうと思った。
傾き始めた太陽が放射状に光を放ち、光を受けた波がきらきらと輝く。
湖のほとりに群生した水仙からは虫々が跳び降り、水面に波紋を広げながらすいすいと泳ぐ。
目の前に広がる湖に動きは少なく、ただ、波と虫だけが時間の経過を綴っている。
私は、そんな光景を瞬きもせずに見つめていた。
別に湖に見惚れているわけではない。ただ、他に視線を向ける先がなかっただけ。
このまま座り込んでいてはいけないということはわかっている。
だけど、動けない。
あとちょっと首を伸ばして下を見るだけなのに、それができない。
焦燥の鎖が頭を締め付け、動かなければ、という念だけが蓄積されていく。
目も耳も鼻も舌も心臓もいたって冷静。ただ、脳味噌だけが痛みを訴えている。
いや、それはウソだ。
本当はもう一箇所、どうしようもなく痛くて痒くて疼いている場所がある。
ほんの少し手を持ち上げれば触れることができる『そこ』。
もちろん、触れることなんてできない。私の手は、ちくちくする雑草の感触を伝えてくるばかりだ。
もう、何分の間こうしていただろうか。
何もせずとも時間はただただ無為に過ぎ、頭の痛みだけがその重量を増やし続けている。
だから、勇気を出そうと思った。
湖のほとりに群生した水仙からは虫々が跳び降り、水面に波紋を広げながらすいすいと泳ぐ。
目の前に広がる湖に動きは少なく、ただ、波と虫だけが時間の経過を綴っている。
私は、そんな光景を瞬きもせずに見つめていた。
別に湖に見惚れているわけではない。ただ、他に視線を向ける先がなかっただけ。
このまま座り込んでいてはいけないということはわかっている。
だけど、動けない。
あとちょっと首を伸ばして下を見るだけなのに、それができない。
焦燥の鎖が頭を締め付け、動かなければ、という念だけが蓄積されていく。
目も耳も鼻も舌も心臓もいたって冷静。ただ、脳味噌だけが痛みを訴えている。
いや、それはウソだ。
本当はもう一箇所、どうしようもなく痛くて痒くて疼いている場所がある。
ほんの少し手を持ち上げれば触れることができる『そこ』。
もちろん、触れることなんてできない。私の手は、ちくちくする雑草の感触を伝えてくるばかりだ。
もう、何分の間こうしていただろうか。
何もせずとも時間はただただ無為に過ぎ、頭の痛みだけがその重量を増やし続けている。
だから、勇気を出そうと思った。
「…………ッ!」
硬く目を瞑った後、顔を突き出し、下を向く。
そして、恐る恐る瞼を持ち上げた。
じっとりと、網膜に光が差し込む。
涙でぼやけた視界が回復した後、目の前に広がったのは黒く澄んだ湖。
光を反射する水面は鏡の役割を果たし、湖の上に広がる風景を映し出す。
濁った空と灰色の雲。白い太陽と黒い鳥影。そして、私。
私は、勇気を出した。
そして、完璧に後悔した。
硬く目を瞑った後、顔を突き出し、下を向く。
そして、恐る恐る瞼を持ち上げた。
じっとりと、網膜に光が差し込む。
涙でぼやけた視界が回復した後、目の前に広がったのは黒く澄んだ湖。
光を反射する水面は鏡の役割を果たし、湖の上に広がる風景を映し出す。
濁った空と灰色の雲。白い太陽と黒い鳥影。そして、私。
私は、勇気を出した。
そして、完璧に後悔した。
「ッきゃあああああああああああああああああああッ!!」
反射的に、後ろに跳んでいた。
勢いよく立ち上がったために脚がもつれ、思い切り転んでしまう。
お尻をしたたかに打ちつけたため、鈍い痛みがじわじわと広がった。
だが、そんなことはどうでもよかった。
その程度のことは、今私が見た光景に比べればそよ風のようなものだ。
「う……そ。やだ……やだぁあああぁあああああああ!」
頭を振って大声で叫ぶ。もう、叫ばずにはいられなかった。
勢いよく立ち上がったために脚がもつれ、思い切り転んでしまう。
お尻をしたたかに打ちつけたため、鈍い痛みがじわじわと広がった。
だが、そんなことはどうでもよかった。
その程度のことは、今私が見た光景に比べればそよ風のようなものだ。
「う……そ。やだ……やだぁあああぁあああああああ!」
頭を振って大声で叫ぶ。もう、叫ばずにはいられなかった。
水鏡に映ったのは、火傷によってドロドロに爛れた汚い顔。
赤黒い肉が露出した頬は、腐り落ちた果実に似ていた。
顔面を沸騰させたかのように、唇の端には醜い水ぶくれが連なっている。
前髪も眉毛も炭と化し、瞼すら焼け焦げて見えた。
北川さんによくからかわれた顔の丸さも、つるつるの額も、もう残っていない。
まるで屍役の半仮面でも被ったかのように、顔の右半分と左半分は別物になっていた。
赤黒い肉が露出した頬は、腐り落ちた果実に似ていた。
顔面を沸騰させたかのように、唇の端には醜い水ぶくれが連なっている。
前髪も眉毛も炭と化し、瞼すら焼け焦げて見えた。
北川さんによくからかわれた顔の丸さも、つるつるの額も、もう残っていない。
まるで屍役の半仮面でも被ったかのように、顔の右半分と左半分は別物になっていた。
「ひぐッ、いや……いやあぁ……」
信じたくなかった。認めたくなかった。
自分の顔があんな『モノ』になってしまったという事実を、拒絶したかった。
だが、現実は無情だ。
脳にこびりついた画像が冷酷に囁く。“あれはお前だ”と。
「あ……ひっ……」
逃げよう。何から逃げるのかわからないけど、とにかく逃げよう。
どうやって? 一体どうやって逃げるっていうの?
忘れよう。今まで見た物も体験したことも、全部忘れてしまおう。
どうやって? 一体どうやって忘れるっていうの?
何かしなきゃ。何でもいいから、何かをしなきゃ。
どうやって? 一体どうやって――――ここから動くの?
「…………あ」
足は、ぴくりとも動かなかった。
尻餅をついた姿勢のまま、一歩たりとも動けない。
喉がぴりぴりと痛む。心臓は今にも止まりそう。涙は枯れ果てた。
前に進むこともできず。後ろに下がることもできず。
私はただ、溺れた虫のようにもがくことしかできない。
誰か。誰か助けて。
お願い。お願い。お願いぃ……。
(どこに行ったの、ベルフラウちゃん……!)
助けは来ない。誰も来ない。
私は身勝手な願いを抱いたままもがき続け、
信じたくなかった。認めたくなかった。
自分の顔があんな『モノ』になってしまったという事実を、拒絶したかった。
だが、現実は無情だ。
脳にこびりついた画像が冷酷に囁く。“あれはお前だ”と。
「あ……ひっ……」
逃げよう。何から逃げるのかわからないけど、とにかく逃げよう。
どうやって? 一体どうやって逃げるっていうの?
忘れよう。今まで見た物も体験したことも、全部忘れてしまおう。
どうやって? 一体どうやって忘れるっていうの?
何かしなきゃ。何でもいいから、何かをしなきゃ。
どうやって? 一体どうやって――――ここから動くの?
「…………あ」
足は、ぴくりとも動かなかった。
尻餅をついた姿勢のまま、一歩たりとも動けない。
喉がぴりぴりと痛む。心臓は今にも止まりそう。涙は枯れ果てた。
前に進むこともできず。後ろに下がることもできず。
私はただ、溺れた虫のようにもがくことしかできない。
誰か。誰か助けて。
お願い。お願い。お願いぃ……。
(どこに行ったの、ベルフラウちゃん……!)
助けは来ない。誰も来ない。
私は身勝手な願いを抱いたままもがき続け、
コツリ、と。
伸ばした手が、何か硬いものに触れた。
藁にしては手ごたえがある。救いの手にしては無機質だ。
それでも、一縷の望みをかけて手繰り寄せた。
「……なんだ」
それは、ついさっき見つけた鉄の塊だった。
奇妙なマークの下に『LXX』とだけ刻まれている、六角形の鉄片。
私が求めているものとはあまりにかけ離れた、ただのガラクタ。
「……でも、当たり前よね」
そう。これはきっと当然の帰結。都合良く魔法のランプは落ちていない。
わかっていた。そんなことはわかっていた。
――それなのに、なんでこんなに苦しいんだろう?
叶うはずの無いちっぽけな希望が打ち砕かれただけなのに。
ほんのちょっと思ってしまった、荒唐無稽の妄想が潰えただけなのに。
この現実が変わりなく続いていくってわかっただけなのに。
「なんで、こんなに胸が痛いんだよぅ……!」
もう駄目だ。もう限界だ。
そう思いながらも、卑しい願いは次から次へと溢れ出てくる。
「帰りたい。帰りたい。帰りたい……」
思い出すのは平和な日常。
朝、お母さんに起こされて。学校にはお父さんに送ってもらって。
他の先生達に挨拶して。教科書を揃えて授業に出て。
生徒の皆と笑い合って。ときどきからかわれて。それで怒ったりもして。
お腹が空いたから早弁を食べて。取り上げたマンガを読んで。見つかって言い訳して。
家に帰って。お母さんやお父さんと夕飯を食べて。お風呂で体重の増加に戦慄して。
家族そろってテレビを見て。明日のぶんの宿題を作って。それから、寝る。
そんな、日常。
遠い、日常。
「帰りたいよぉ……」
枯れ果てたはずの涙が溢れる。
動かないはずの足が震える。
口から零れ出るのは、ただのかなわぬ願い事。
「死にたくない……!」
藁にしては手ごたえがある。救いの手にしては無機質だ。
それでも、一縷の望みをかけて手繰り寄せた。
「……なんだ」
それは、ついさっき見つけた鉄の塊だった。
奇妙なマークの下に『LXX』とだけ刻まれている、六角形の鉄片。
私が求めているものとはあまりにかけ離れた、ただのガラクタ。
「……でも、当たり前よね」
そう。これはきっと当然の帰結。都合良く魔法のランプは落ちていない。
わかっていた。そんなことはわかっていた。
――それなのに、なんでこんなに苦しいんだろう?
叶うはずの無いちっぽけな希望が打ち砕かれただけなのに。
ほんのちょっと思ってしまった、荒唐無稽の妄想が潰えただけなのに。
この現実が変わりなく続いていくってわかっただけなのに。
「なんで、こんなに胸が痛いんだよぅ……!」
もう駄目だ。もう限界だ。
そう思いながらも、卑しい願いは次から次へと溢れ出てくる。
「帰りたい。帰りたい。帰りたい……」
思い出すのは平和な日常。
朝、お母さんに起こされて。学校にはお父さんに送ってもらって。
他の先生達に挨拶して。教科書を揃えて授業に出て。
生徒の皆と笑い合って。ときどきからかわれて。それで怒ったりもして。
お腹が空いたから早弁を食べて。取り上げたマンガを読んで。見つかって言い訳して。
家に帰って。お母さんやお父さんと夕飯を食べて。お風呂で体重の増加に戦慄して。
家族そろってテレビを見て。明日のぶんの宿題を作って。それから、寝る。
そんな、日常。
遠い、日常。
「帰りたいよぉ……」
枯れ果てたはずの涙が溢れる。
動かないはずの足が震える。
口から零れ出るのは、ただのかなわぬ願い事。
「死にたくない……!」
※ ※ ※ ※
ぽたり、と。
歪な頬を伝って流れた涙が、六角形の金属塊に落ちた。
金属の表面に落ちた涙は潰れ広がり、ゆっくりと内部に浸透する。
その涙は、凝縮された想いの結晶。『死にたくない』という、強い意志表示。
『死にたくない』ということはつまり、『生きたい』ということ。
そして、『生きたい』という想いは、何にも増して強く、激しく、荒々しい。
――生きることは、戦うことなのだから。
だから、この結果はきっと当然。
錬金術が作り出した奇跡の結晶は、一分の間違いもなく彼女の『闘争本能』に反応する。
歪な頬を伝って流れた涙が、六角形の金属塊に落ちた。
金属の表面に落ちた涙は潰れ広がり、ゆっくりと内部に浸透する。
その涙は、凝縮された想いの結晶。『死にたくない』という、強い意志表示。
『死にたくない』ということはつまり、『生きたい』ということ。
そして、『生きたい』という想いは、何にも増して強く、激しく、荒々しい。
――生きることは、戦うことなのだから。
だから、この結果はきっと当然。
錬金術が作り出した奇跡の結晶は、一分の間違いもなく彼女の『闘争本能』に反応する。
――武装、錬金。
パキン、と金属塊が弾けた。
弾けた破片は更に砕け、砕けた欠片は更に千切れ、銀色の粒子へと姿を変えていく。
一瞬後には、六角形の板の姿はどこにもなく、銀色の霧だけが辺り一面に広がっていた。
弾けた破片は更に砕け、砕けた欠片は更に千切れ、銀色の粒子へと姿を変えていく。
一瞬後には、六角形の板の姿はどこにもなく、銀色の霧だけが辺り一面に広がっていた。
※ ※ ※ ※
「え!? な、なにコレ!」
脳は混乱の極みに達していた。それこそ涙も忘れるほどに。
目の前に突然湧き起こった白い霧はみるみるうちに密度を増し、今や足元さえも見えなくなっている。
突然手の中から消失した金属板も含めて、何がなんだかわからない。
前を向いても横を向いても霧霧霧。世界の全てが白く染まっていた。
「これじゃ何も見えな……」
そう言った途端、目の前を覆っていた霧が左右に割れた。
視界が少しだけ開け、自分が地面にへたり込んでいる姿がよく見える。
「……あれ?」
不思議に思った私は、試しに別のことを念じてみた。
右に集まれ。
左は薄くなれ。
密集して形になれ。
一部分だけ空洞を作れ。
『ただ念じた』、その結果、
「うそ……」
霧は、全ての命令に忠実に応えた。
原理は全くわからないが、どうやらこの霧は自分の思い通りに動くらしい。
(ベルフラウちゃんのカードみたいなものなの?)
消えた金属板と関連づけて考えると、霧は『魔法の道具』の一種だと言えるのかもしれない。
もしそうだとしたら、効果から見て視界や行動を遮断・妨害する類のものだろう。
この霧に阻まれた相手は、その視覚を封じられ……。
(って、え? それって、まさか)
広範囲をカバーし、尚且つ思い通りに動かせる目くらまし。
それは、戦いを避ける手段としては申し分ない代物だ。
白い濃霧で視界を塞ぎ、攻撃意志を完全に封印することも可能かもしれない。
銃を持った相手からも安全に逃げれる。
長大な刀を振り回す女の子も怖くない。
火炎瓶を投げてくる男の子からも距離を取れる。
――そして何より、顔を見られずに済む。
この醜く焼け爛れた顔を、見られずに済むのだ。
「…………」
心が、ほんの少しだけ軽くなった。
同時に、今まで自分のことにしか向いていなかった思考が猛烈に恥ずかしくなる。
ベルフラウも、たった一人で戦っているのだ。
それも、島からの脱出のために。
あんな小さな子供が走り回っているのに、大人の自分が自暴自棄になってどうするの?
偶然にも、今現在私は戦う力を持っている。
銃がある。超能力が発動できる帽子がある。姿を隠せる霧がある。
これだけの道具を持っているなら、きっと何か出来ることがある。
なら、動こう。動いてみよう。
ひょっとしたら、動くことで顔の火傷を忘れようとしているだけなのかもしれない。
それでも、何もせず腐っているよりはずっとマシなはず。
だから。だから――
「……ベルフラウちゃん。私、もうちょっと頑張ってみる」
脳は混乱の極みに達していた。それこそ涙も忘れるほどに。
目の前に突然湧き起こった白い霧はみるみるうちに密度を増し、今や足元さえも見えなくなっている。
突然手の中から消失した金属板も含めて、何がなんだかわからない。
前を向いても横を向いても霧霧霧。世界の全てが白く染まっていた。
「これじゃ何も見えな……」
そう言った途端、目の前を覆っていた霧が左右に割れた。
視界が少しだけ開け、自分が地面にへたり込んでいる姿がよく見える。
「……あれ?」
不思議に思った私は、試しに別のことを念じてみた。
右に集まれ。
左は薄くなれ。
密集して形になれ。
一部分だけ空洞を作れ。
『ただ念じた』、その結果、
「うそ……」
霧は、全ての命令に忠実に応えた。
原理は全くわからないが、どうやらこの霧は自分の思い通りに動くらしい。
(ベルフラウちゃんのカードみたいなものなの?)
消えた金属板と関連づけて考えると、霧は『魔法の道具』の一種だと言えるのかもしれない。
もしそうだとしたら、効果から見て視界や行動を遮断・妨害する類のものだろう。
この霧に阻まれた相手は、その視覚を封じられ……。
(って、え? それって、まさか)
広範囲をカバーし、尚且つ思い通りに動かせる目くらまし。
それは、戦いを避ける手段としては申し分ない代物だ。
白い濃霧で視界を塞ぎ、攻撃意志を完全に封印することも可能かもしれない。
銃を持った相手からも安全に逃げれる。
長大な刀を振り回す女の子も怖くない。
火炎瓶を投げてくる男の子からも距離を取れる。
――そして何より、顔を見られずに済む。
この醜く焼け爛れた顔を、見られずに済むのだ。
「…………」
心が、ほんの少しだけ軽くなった。
同時に、今まで自分のことにしか向いていなかった思考が猛烈に恥ずかしくなる。
ベルフラウも、たった一人で戦っているのだ。
それも、島からの脱出のために。
あんな小さな子供が走り回っているのに、大人の自分が自暴自棄になってどうするの?
偶然にも、今現在私は戦う力を持っている。
銃がある。超能力が発動できる帽子がある。姿を隠せる霧がある。
これだけの道具を持っているなら、きっと何か出来ることがある。
なら、動こう。動いてみよう。
ひょっとしたら、動くことで顔の火傷を忘れようとしているだけなのかもしれない。
それでも、何もせず腐っているよりはずっとマシなはず。
だから。だから――
「……ベルフラウちゃん。私、もうちょっと頑張ってみる」
※ ※ ※ ※
ぼろぼろの赤い布をゆっくりと顔に巻いていく。
額に押し付けるように布の腹を当て、両端を後頭部に回して交差させる。
そのまま耳の下を通るように前方へと運び、呼吸が出来る程度に口鼻を覆う。
解けないようにきつく縛ったら、即席マスクの完成だ。
なお、材料(服の生地)を拝借した人形さんには思いっきり謝っておいた。
次に、エスパー帽子を深く被る。
緊急退避用の大事な切り札だ。いつでも使えるようにしておかなければならない。
それから、蝶々覆面で目元を隠す。
これで火傷の跡は完全に見えなくなったはず。万が一、霧が突破されても安心だ。
そして最後に――球体間接が露になった人形を抱き締めた。
両腕が塞がったうえ無駄な荷物を背負い込むことになったが、これだけは譲れない。
なぜなら……一人では不安だから。
何かに縋り付いていないと、崩れてしまいそうだから。
額に押し付けるように布の腹を当て、両端を後頭部に回して交差させる。
そのまま耳の下を通るように前方へと運び、呼吸が出来る程度に口鼻を覆う。
解けないようにきつく縛ったら、即席マスクの完成だ。
なお、材料(服の生地)を拝借した人形さんには思いっきり謝っておいた。
次に、エスパー帽子を深く被る。
緊急退避用の大事な切り札だ。いつでも使えるようにしておかなければならない。
それから、蝶々覆面で目元を隠す。
これで火傷の跡は完全に見えなくなったはず。万が一、霧が突破されても安心だ。
そして最後に――球体間接が露になった人形を抱き締めた。
両腕が塞がったうえ無駄な荷物を背負い込むことになったが、これだけは譲れない。
なぜなら……一人では不安だから。
何かに縋り付いていないと、崩れてしまいそうだから。
「これで、よし……かな」
準備を整えた私は、勢いよく立ち上がった。
勢いよく、立ち上がれた。
「うん、大丈夫っ!」
まだ、生きられる。
準備を整えた私は、勢いよく立ち上がった。
勢いよく、立ち上がれた。
「うん、大丈夫っ!」
まだ、生きられる。
※ ※ ※ ※
鈴木みかは、人形を抱き締めながら歩き出した。
まるで、夜を怖がる子供のように。
まるで、母犬を頼る子犬のように。
首の無い人形に縋ることで、なんとか進み続けている。
白い霧は、そんなみかを覆い隠すように深く深く深く深く、
ただ、深く――
まるで、夜を怖がる子供のように。
まるで、母犬を頼る子犬のように。
首の無い人形に縋ることで、なんとか進み続けている。
白い霧は、そんなみかを覆い隠すように深く深く深く深く、
ただ、深く――
【G-5/平原/1日目/午後】
【鈴木みか@せんせいのお時間】
[状態]:顔面左側に大火傷(性別が判別できないほど)。精神不安定状態にあり、自分の服装について客観的に見れていない。
[装備]:エスパーぼうし@ドラえもん、FNブローニングM1910(1発発砲済み)、核鉄LXX70(アリス・イン・ワンダーランド)(発動中)@武装練金
赤いボロボロの覆面(真紅の服製)、パピヨンマスク@武装練金、首の無い真紅の残骸
[道具]:支給品一式
[服装]:『怪人パピヨンレッド』(赤色の覆面と蝶々覆面で顔を隠し、エスパー帽子を被っている)、真紅の残骸を抱き締めており、服は少ししめっている。
[思考]:……ぜえはあ。運動不足の脚がもう……
基本行動方針:ベルフラウ以外の他参加者を見つけたら基本逃げる。
第一行動方針:霧で姿を隠しつつ、ベルフラウを探す。
第一行動方針:銃を持った少年(永沢)、刀を持った少女(アリサ)、火炎瓶の少年(トマ)を危険人物と認識。警戒。
※みかは、ベルフラウの説明によりここが「リィンバウム」だと思っています。
※リィンバウムについての簡単な知識を、ベルフラウから得ました。
同時に、ベルフラウの考察を教えてもらっています。
【鈴木みか@せんせいのお時間】
[状態]:顔面左側に大火傷(性別が判別できないほど)。精神不安定状態にあり、自分の服装について客観的に見れていない。
[装備]:エスパーぼうし@ドラえもん、FNブローニングM1910(1発発砲済み)、核鉄LXX70(アリス・イン・ワンダーランド)(発動中)@武装練金
赤いボロボロの覆面(真紅の服製)、パピヨンマスク@武装練金、首の無い真紅の残骸
[道具]:支給品一式
[服装]:『怪人パピヨンレッド』(赤色の覆面と蝶々覆面で顔を隠し、エスパー帽子を被っている)、真紅の残骸を抱き締めており、服は少ししめっている。
[思考]:……ぜえはあ。運動不足の脚がもう……
基本行動方針:ベルフラウ以外の他参加者を見つけたら基本逃げる。
第一行動方針:霧で姿を隠しつつ、ベルフラウを探す。
第一行動方針:銃を持った少年(永沢)、刀を持った少女(アリサ)、火炎瓶の少年(トマ)を危険人物と認識。警戒。
※みかは、ベルフラウの説明によりここが「リィンバウム」だと思っています。
※リィンバウムについての簡単な知識を、ベルフラウから得ました。
同時に、ベルフラウの考察を教えてもらっています。
≪150:The worst selection | 時系列順に読む | 153:ゆとり教育の弊害?≫ |
≪150:The worst selection | 投下順に読む | 152:前に進もう≫ |
≪145:明暗 | 鈴木みかの登場SSを読む | 154:歪みの国のアリス≫ |