「な……」
弥彦は突然の終幕に呆然としながら、少女の姿を観察する。
緋色かと思われた長髪は、よくよく見れば不可思議な色をしている。
銀色に、透明な赤を乗せたような……形容し難い輝きを放っていた。
と思った次のときには、幻であったかのようにその髪から赤が消え、完全な銀髪が現れた。
どこからか、重厚な男の声が響く。
緋色かと思われた長髪は、よくよく見れば不可思議な色をしている。
銀色に、透明な赤を乗せたような……形容し難い輝きを放っていた。
と思った次のときには、幻であったかのようにその髪から赤が消え、完全な銀髪が現れた。
どこからか、重厚な男の声が響く。
『シャナ、良いのか? タワーに立ち入れるのは、19時までのはずであろう。
我らには一刻の猶予も残されていないはずだが?』
「分かってる。でも、見つけたからにはアイツを放っておくわけにはいかなかった。
アイツには、大きすぎる借りがあったから。それに、もう用は済んだから大したロスじゃないわ」
我らには一刻の猶予も残されていないはずだが?』
「分かってる。でも、見つけたからにはアイツを放っておくわけにはいかなかった。
アイツには、大きすぎる借りがあったから。それに、もう用は済んだから大したロスじゃないわ」
泰然と立つ少女はシャナというらしい。確か名簿にもそんな名前はあった。
弥彦はゆっくりと立ち上がりながら自分の状態を確かめ、シャナに話しかける。
弥彦はゆっくりと立ち上がりながら自分の状態を確かめ、シャナに話しかける。
「……シャナっていったか? 俺の名前は明神弥彦だ。助けてくれたことには感謝している」
「別におまえを助けたかったわけじゃないから気にしなくていい。
私は、私の敵を倒しに来ただけ。アイツが他の参加者を殺して、
装備やご褒美を得るのを防ぎたかっただけだから」
「別におまえを助けたかったわけじゃないから気にしなくていい。
私は、私の敵を倒しに来ただけ。アイツが他の参加者を殺して、
装備やご褒美を得るのを防ぎたかっただけだから」
ぶっきら棒な返事が来たが、弥彦はさほど気にしない。
今はそれ以上に気になることがある。
今はそれ以上に気になることがある。
「タワーってあの赤い鉄塔だよな? そこに何かあるのか?」
「ジェダの手下、リリスが今あそこにいるはずなのよ」
「な……本当かよ!?」
「恐らくね。ここに立ち寄ったのもそのついでだった。
『しろがね』の力を試せて、リリスを倒すための踏み台にもなったから丁度良かったけど」
「ジェダの手下、リリスが今あそこにいるはずなのよ」
「な……本当かよ!?」
「恐らくね。ここに立ち寄ったのもそのついでだった。
『しろがね』の力を試せて、リリスを倒すための踏み台にもなったから丁度良かったけど」
「あら、人のことを踏みつけて悦ぶなんて、随分いい趣味を持っていたのね」
「「!?」」
「「!?」」
高く、透き通るような声が響く。
シャナと弥彦は声の出所に振り向き、警戒を一気に臨界まで引き上げた。
先ほど割れた事務所の窓。そこから、銀色のカツラの位置を手で調節しつつ、這い出てくる影がある。
無論、グレーテルだ。
ガラスによってできた切り傷がいくつか見えるが、グレーテルは確かな足取りで路地に降り立っていく。
シャナと弥彦は声の出所に振り向き、警戒を一気に臨界まで引き上げた。
先ほど割れた事務所の窓。そこから、銀色のカツラの位置を手で調節しつつ、這い出てくる影がある。
無論、グレーテルだ。
ガラスによってできた切り傷がいくつか見えるが、グレーテルは確かな足取りで路地に降り立っていく。
『莫迦な、人間が先の攻撃を受けて健在であるなど……』
「……いいえ、不可能ではないわアラストール。
衝突の際、持っている武器を盾にすれば可能性は0じゃない。
あのランスが宝具の類のものなら尚更ね」
「……いいえ、不可能ではないわアラストール。
衝突の際、持っている武器を盾にすれば可能性は0じゃない。
あのランスが宝具の類のものなら尚更ね」
アラストールに説明してから、けれど、とシャナは思う。
本当にそれだけなのだろうか?
実のところシャナは、ヘンゼルと弥彦の間に割って入ったとき、
弥彦の安全を確認した上で、槍が来るよりも前にヘンゼルに一撃を叩き込もうとしていた。
だが、偶然なのかそれとも否か。
咄嗟にヘンゼルが槍を引いたことでその目論見は失敗に終わり、
大槍と逆刃刀がぶつかり合うという結果となっていたのである。
つまり、シャナが弥彦に迫っていた大槍を意図して防いだわけではない。
ヘンゼルが、シャナの斬撃を大槍で防いでいたのである。
廃病院で戦ったときに、ヘンゼルの実力は測ったつもりだ。
それを鑑みて、シャナは改めて思う。
果たして、ヘンゼルに先のような芸当が可能だったのだろうか。
本当に、フレイムヘイズとしろがねの攻撃に反応できたのだろうか。
しかも、取り回しの悪い大槍を使って、だ。
現実味は限りなく薄い。だが、考えて答えが出るものでもない。
シャナと弥彦が用心を重ねる中。暗色の地面に立ったグレーテルは、
二対一という状況に物怖じすることなく、シャナに向かって言葉を紡ぐ。
本当にそれだけなのだろうか?
実のところシャナは、ヘンゼルと弥彦の間に割って入ったとき、
弥彦の安全を確認した上で、槍が来るよりも前にヘンゼルに一撃を叩き込もうとしていた。
だが、偶然なのかそれとも否か。
咄嗟にヘンゼルが槍を引いたことでその目論見は失敗に終わり、
大槍と逆刃刀がぶつかり合うという結果となっていたのである。
つまり、シャナが弥彦に迫っていた大槍を意図して防いだわけではない。
ヘンゼルが、シャナの斬撃を大槍で防いでいたのである。
廃病院で戦ったときに、ヘンゼルの実力は測ったつもりだ。
それを鑑みて、シャナは改めて思う。
果たして、ヘンゼルに先のような芸当が可能だったのだろうか。
本当に、フレイムヘイズとしろがねの攻撃に反応できたのだろうか。
しかも、取り回しの悪い大槍を使って、だ。
現実味は限りなく薄い。だが、考えて答えが出るものでもない。
シャナと弥彦が用心を重ねる中。暗色の地面に立ったグレーテルは、
二対一という状況に物怖じすることなく、シャナに向かって言葉を紡ぐ。
「少し見ない間に素敵な姿になったのね。髪の色私とお揃いじゃない」
「おまえなんかと一緒にされたくない」
「あら残念だわ。みんな壊して滅ぼす終焉の色、とっても綺麗な銀色なのに」
「おまえなんかと一緒にされたくない」
「あら残念だわ。みんな壊して滅ぼす終焉の色、とっても綺麗な銀色なのに」
グレーテルが柔らかな笑みを見せる。
「さすがに今のあなたを相手にするのは分が悪いみたいね。
そっちのお兄さんもなかなか強かったし……。
だから次の機会に楽しみはとって置こうと思うの。
きっと、今度はもっと楽しく遊べるわ」
「何を勘違いしているの? おまえに次なんて来ない。
ここで私に討滅されて、おまえの生は終わるんだから」
「そう? 仕方ないわね。…………武装、錬金」
そっちのお兄さんもなかなか強かったし……。
だから次の機会に楽しみはとって置こうと思うの。
きっと、今度はもっと楽しく遊べるわ」
「何を勘違いしているの? おまえに次なんて来ない。
ここで私に討滅されて、おまえの生は終わるんだから」
「そう? 仕方ないわね。…………武装、錬金」
再び空中に出現した槍を、グレーテルは手で掴み取る。
シャナは油断なく、逆刃刀をきつく握り締めた。
ダメージの残る弥彦は事態を静観し、両者を交互に見回していたが――。
その視線が、ピタリとグレーテルのほうで止まった。
グレーテルが突撃槍の刃に、飾り布を巻きつけ始めている。
シャナは油断なく、逆刃刀をきつく握り締めた。
ダメージの残る弥彦は事態を静観し、両者を交互に見回していたが――。
その視線が、ピタリとグレーテルのほうで止まった。
グレーテルが突撃槍の刃に、飾り布を巻きつけ始めている。
「シャナ、気をつけろ! あの飾り布は爆発するぞ!」
弥彦は大槍の能力、その応用性の高さに改めて舌を巻いた。
グレーテルは、今まで推進力に使っていた飾り布を刃先に巻きつけている。
つまり、推進力を破壊力に転化させようとしているのだ。
察するに、厄介な敵であるシャナを一撃で粉砕する腹積もりなのだろう。
弥彦とシャナが睨みつける最中で、大槍に巻かれた布から電気のような光が迸り始める。
充分なエネルギーが蓄えられた槍をグレーテルは逆手に持ち。
次の瞬間。
ザン! と深々と突き刺した。――自分の真下、灰色の地面に。
その意図を計りかねたシャナは、グレーテルの斜め後方の、“あるもの”を見てはっとする。
(――マンホール!?)
地中から光が破裂し、間を空けずビシビシと。
グレーテルを中心に、地面に半径2メートルほどの亀裂が広がっていく。
グレーテルは、今まで推進力に使っていた飾り布を刃先に巻きつけている。
つまり、推進力を破壊力に転化させようとしているのだ。
察するに、厄介な敵であるシャナを一撃で粉砕する腹積もりなのだろう。
弥彦とシャナが睨みつける最中で、大槍に巻かれた布から電気のような光が迸り始める。
充分なエネルギーが蓄えられた槍をグレーテルは逆手に持ち。
次の瞬間。
ザン! と深々と突き刺した。――自分の真下、灰色の地面に。
その意図を計りかねたシャナは、グレーテルの斜め後方の、“あるもの”を見てはっとする。
(――マンホール!?)
地中から光が破裂し、間を空けずビシビシと。
グレーテルを中心に、地面に半径2メートルほどの亀裂が広がっていく。
「ッ!?」
「しま――!?」
『いかん!』
「しま――!?」
『いかん!』
全員がグレーテルの思惑を悟った。が、既に遅い。
グレーテルは槍を持ったまま恭しくスカートの裾を摘み上げ、
グレーテルは槍を持ったまま恭しくスカートの裾を摘み上げ、
「ごきげんよう」
別れの挨拶を告げると同時。耐え切れなくなった亀裂が陥没し、
崩落音とともにグレーテルが真っ暗な下水道へと落下していった。
崩落音とともにグレーテルが真っ暗な下水道へと落下していった。
「この、逃がすかよ!」
「止まりなさい弥彦!」
「止まりなさい弥彦!」
駆け出そうとした弥彦を、シャナが制する。
「止めるなよ! 今から追えばまだ!」
「馬鹿なこと言わないで。アイツは銃を持っているのよ?
狭い下水道で待ち伏せされたら手を出すのが難しくなる。
それに、いざとなったらアイツは槍を使って躊躇なく下水道を崩壊させるわ。
自分の身も省みずにね。忌々しいけど、策がないなら追うことはできない。
……それに、私はこれ以上時間を割くわけにはいかないの。
アイツよりも先に追わないといけないヤツがいるから」
「馬鹿なこと言わないで。アイツは銃を持っているのよ?
狭い下水道で待ち伏せされたら手を出すのが難しくなる。
それに、いざとなったらアイツは槍を使って躊躇なく下水道を崩壊させるわ。
自分の身も省みずにね。忌々しいけど、策がないなら追うことはできない。
……それに、私はこれ以上時間を割くわけにはいかないの。
アイツよりも先に追わないといけないヤツがいるから」
告げ終え、シャナは弥彦に背を向け飛び立とうとする。
その後姿を見て、何かを思い出した弥彦は慌てて口を開いた。
その後姿を見て、何かを思い出した弥彦は慌てて口を開いた。
「待ってくれ!」
「何?」
「何?」
弥彦はシャナの持つ刀を指で差して続ける。
「その刀、逆刃刀は……誰も死なせずに、敵も含めて多くを救うっていう、
“殺さず”の信念を掲げた、俺の仲間の刀なんだ」
「殺さず? ……成程ね。掛け値なしの名刀が、
どうしてこんな妙な造りになっているのかと思ったら……。それで?」
「単刀直入に言う。その刀を譲ってほしい。
勿論、ただじゃない。こいつと交換するのはどうだ?」
“殺さず”の信念を掲げた、俺の仲間の刀なんだ」
「殺さず? ……成程ね。掛け値なしの名刀が、
どうしてこんな妙な造りになっているのかと思ったら……。それで?」
「単刀直入に言う。その刀を譲ってほしい。
勿論、ただじゃない。こいつと交換するのはどうだ?」
弥彦はランドセルから桜観剣を取り出し、シャナに手渡す。
刀を見たシャナが、ほんの少し目を丸くしたのを弥彦は見逃さない。
シャナは重心を確かめるように数回素振りをして、その後じっくりと刀全体を観察し始めた。
刀を見たシャナが、ほんの少し目を丸くしたのを弥彦は見逃さない。
シャナは重心を確かめるように数回素振りをして、その後じっくりと刀全体を観察し始めた。
「この刀……感じは少し違うけど宝具? 多分、“吸血鬼”と似たタイプの……」
「鞘はさっき壊れちまったから抜き身で扱い難いだろうけど……どうだ?」
「それは構わない。私がいつも使ってる刀も抜き身のものだった。……けど、」
「鞘はさっき壊れちまったから抜き身で扱い難いだろうけど……どうだ?」
「それは構わない。私がいつも使ってる刀も抜き身のものだった。……けど、」
シャナは胸に生まれた新たな疑問を吐き出す。
「おまえ、こんなものを持っているなら何でさっきは使わなかったの?」
弥彦は言葉を詰まらせる。
が、すぐに自分の意志をしっかりと口にした。
が、すぐに自分の意志をしっかりと口にした。
「……俺も、不殺の信念を貫きたいと思っているからだ」
「だから、刀を使わなかったってこと? 自分が殺されそうだったのに?」
「ああ、そうだ」
「だから、刀を使わなかったってこと? 自分が殺されそうだったのに?」
「ああ、そうだ」
答えを聞いたシャナは逡巡し……やがて、ゆっくりと逆刃刀を弥彦に差し出す。
「ありがてえ、助かるぜ」
「……一つ忠告しておく」
「何だ?」
「この交換は私にもメリットがあるから応じるし、逆刃刀っていうその刀もおまえに渡すわ。
けど、もしおまえがこの島で“不殺”を通しながら戦いたいのなら……。
悪いことは言わない。どこかにじっと隠れて、最後までやり過ごしていたほうがいい」
「……一つ忠告しておく」
「何だ?」
「この交換は私にもメリットがあるから応じるし、逆刃刀っていうその刀もおまえに渡すわ。
けど、もしおまえがこの島で“不殺”を通しながら戦いたいのなら……。
悪いことは言わない。どこかにじっと隠れて、最後までやり過ごしていたほうがいい」
弥彦は愕然として、反論する。
「な……! 確かに俺の力なんてちっぽけなもんだよ!
この逆刃刀が不釣合いだってことも分かってる! だけど!」
「私だって人の信念を否定する気なんてない。その大きさは当人にしか量れないものだし。
だから、ただ忠告しておくだけ」
この逆刃刀が不釣合いだってことも分かってる! だけど!」
「私だって人の信念を否定する気なんてない。その大きさは当人にしか量れないものだし。
だから、ただ忠告しておくだけ」
シャナは毅然とした口調で告げる。
「おまえが今のまま進むのなら、おまえはいつか誰かを殺すわ。
それが敵なのか味方なのか、或いは自分なのかは分からない。
けど間違いなく、おまえはいずれ後悔する。理想と現実の乖離に耐え切れなくなって、
身も心も磨り潰されるときが必ずやって来る」
それが敵なのか味方なのか、或いは自分なのかは分からない。
けど間違いなく、おまえはいずれ後悔する。理想と現実の乖離に耐え切れなくなって、
身も心も磨り潰されるときが必ずやって来る」
な、と弥彦は絶句し、瞳を震わせた。
シャナは語調を変えずに続ける。
シャナは語調を変えずに続ける。
「考えてみればいい。おまえが殺さなかった敵はその後どうするの?
ここには犯罪者を捕まえる警察も、拘置しておく刑務所も、裁いてくれる裁判所もないのに。
おまえの言う“不殺”はこれらなしでも成り立つものなの?」
「それ、は……」
「おこがましかろうと何だろうと、誰かを守りたいなら倒すべき敵を倒して、
私たち自身の手で裁かなければ誰も守れない。
……ありえないとは思うけど、まさかジェダもリリスも殺さずに、
ここから脱出できるなんて思ってないでしょうね?
ジェダに対峙したとき、もしおまえが『殺すな』なんて喚くようなら――」
ここには犯罪者を捕まえる警察も、拘置しておく刑務所も、裁いてくれる裁判所もないのに。
おまえの言う“不殺”はこれらなしでも成り立つものなの?」
「それ、は……」
「おこがましかろうと何だろうと、誰かを守りたいなら倒すべき敵を倒して、
私たち自身の手で裁かなければ誰も守れない。
……ありえないとは思うけど、まさかジェダもリリスも殺さずに、
ここから脱出できるなんて思ってないでしょうね?
ジェダに対峙したとき、もしおまえが『殺すな』なんて喚くようなら――」
弥彦の鼻先に、桜観剣が突きつけられる。
冷たい刀がその身を揺らし、鋭い音を立てた。
冷たい刀がその身を揺らし、鋭い音を立てた。
「私は、おまえを斬り捨てる。
おまえだけじゃない、ジェダの討滅を妨げるやつは全て消す。
そして、最後に一人残ったジェダの存在を、トーチ一つにも満たないほどに細断して、
存在の欠片一つ残さずにこの手で焼き尽くす。誰にも、邪魔なんかさせない……!」
おまえだけじゃない、ジェダの討滅を妨げるやつは全て消す。
そして、最後に一人残ったジェダの存在を、トーチ一つにも満たないほどに細断して、
存在の欠片一つ残さずにこの手で焼き尽くす。誰にも、邪魔なんかさせない……!」
微かに現れていた憤怒の形相を打ち消し、シャナは弥彦に向けていた刀を下げる。
「……一応、忠告はしておいた。分かったなら、この辺りの建物の隅にでも隠れていることね。
さっきも言ったけど、おまえが私の障害になるならそのときは覚悟しなさい」
さっきも言ったけど、おまえが私の障害になるならそのときは覚悟しなさい」
銀髪に赤い炎の揺らめきが乗る。
身を翻したシャナは、今度こそ赤い翼をはためかせて、振り返ることなくタワーへと飛び去った。
身を翻したシャナは、今度こそ赤い翼をはためかせて、振り返ることなくタワーへと飛び去った。
暗い路地裏に取り残された弥彦は、逆刃刀を手に沈思黙考する。
襲ってきたやつにも、助けてもらったやつにも同じことを言われた。
殺さないのか、と。
意味合いは大きく違うが、それは心の持ち方の問題だろう。
殺し合いに乗るのか、乗らずに人を守るのか、という心の持ち方の違い。
共通しているのは、人を殺す覚悟がなければ戦いの場には立てないということ。
ならば、不殺の信念を持ち続ける限り、自分は戦場に立つことは出来ないのだろうか?
あらゆる経験が不足している弥彦には、その判断を下すことはできない。
襲ってきたやつにも、助けてもらったやつにも同じことを言われた。
殺さないのか、と。
意味合いは大きく違うが、それは心の持ち方の問題だろう。
殺し合いに乗るのか、乗らずに人を守るのか、という心の持ち方の違い。
共通しているのは、人を殺す覚悟がなければ戦いの場には立てないということ。
ならば、不殺の信念を持ち続ける限り、自分は戦場に立つことは出来ないのだろうか?
あらゆる経験が不足している弥彦には、その判断を下すことはできない。
(……だとしても、立ち止まれるかよ)
弥彦は顔を上げ、駆け出した。行き先はシャナの飛び立った方向、タワーだ。
保護しようとしていた少女、南千秋の足取りは杳として掴めない。
見捨てるつもりなど毛頭ないが、闇雲に捜しても時間の無駄だろう。
少し前までは他に指針がなかったから、それでも良かった。
だが、今は違う。シャナのもたらした情報により、
命の危機に瀕しているはずの人間の所在を知りえたのだから。
保護しようとしていた少女、南千秋の足取りは杳として掴めない。
見捨てるつもりなど毛頭ないが、闇雲に捜しても時間の無駄だろう。
少し前までは他に指針がなかったから、それでも良かった。
だが、今は違う。シャナのもたらした情報により、
命の危機に瀕しているはずの人間の所在を知りえたのだから。
(リリスがタワーに居るならニアのやつが危ねえ!)
ニアは確かに気に入らない。かといって見捨てていいはずがない。
やり方が相容れないだけで、ニアもまたジェダに抗しようとしているのだから。
それに、危険が迫っていると分かっている人間を見放したりなどしたら、
結局は自分の信念を否定し、ニアのやり方を肯定することになってしまう。
(それに、タワーにいたはずの太一が死んだってことは、リリスにやられたのかもしれねえ)
ならば、ニアもいつまで生きていられるのか知れたものではない。
自分に何ができるのか、リリスに会った時どうするのか、生かすのか、殺すのか……。
分からないことが多すぎる。簡単に答えが出せるものでもないだろう。
それでも、たった一つだけ、心に決めた信念がある。
罅だらけで、不確かで、風化したようにボロボロでも、まだ傷がついていない芯がある。
やり方が相容れないだけで、ニアもまたジェダに抗しようとしているのだから。
それに、危険が迫っていると分かっている人間を見放したりなどしたら、
結局は自分の信念を否定し、ニアのやり方を肯定することになってしまう。
(それに、タワーにいたはずの太一が死んだってことは、リリスにやられたのかもしれねえ)
ならば、ニアもいつまで生きていられるのか知れたものではない。
自分に何ができるのか、リリスに会った時どうするのか、生かすのか、殺すのか……。
分からないことが多すぎる。簡単に答えが出せるものでもないだろう。
それでも、たった一つだけ、心に決めた信念がある。
罅だらけで、不確かで、風化したようにボロボロでも、まだ傷がついていない芯がある。
「一人でも多くを助けるんだ……!
剣心みてえにはいかねえだろうけど、俺は、今の俺にできるやり方でッ!」
剣心みてえにはいかねえだろうけど、俺は、今の俺にできるやり方でッ!」
きつく握り締めた逆刃刀から、小さな音が返ってきた。
* * *
刻限は夜。仄暗い路地を弥彦はひた走る。
ビルの隙間から、夜闇を吸った猩紅の鉄塔が顔を覗かせる。
不気味な目的地を視界に収め、弥彦は踏み出す脚に更なる力を込めた。
ビルの隙間から、夜闇を吸った猩紅の鉄塔が顔を覗かせる。
不気味な目的地を視界に収め、弥彦は踏み出す脚に更なる力を込めた。
【B-7/路地裏/1日目/夜】
【明神弥彦@るろうに剣心】
[状態]:両腕に軽い火傷、疲労(中)、四肢に打撲と擦り傷、背中に打ち身
[装備]:逆刃刀・真打@るろうに剣心、サラマンデルの短剣@ベルセルク
[道具]:基本支給品一式、首輪(美浜ちよ)
[服装]:道着(ドロ塗れで血が結構隠れた。右腕部分が半焼け、左側袖も少し焼けてる)
[思考]:今度は間に合わせてみせる!
第一行動方針:気に入らないが、ニアを助けに行く。
第二行動方針:チアキを探し出して保護する。「犯人『バンコラン』」らしき人物と先に遭遇したら取り押さえる。
第三行動方針:パタリロを完全には信用できないが、信用したいとは思っている。
第四行動方針:ニアの力量は認めるが考え方には反対(強い不信感)。
第五行動方針:のび太がどうなったか不安。
第六行動方針:出来ればあの子たち(しんのすけ・ちよ・よつば・藤木)を埋めてやりたい。
基本行動方針:ジェダ達を倒す。一人でも多くの人を助ける。
[備考]:パタリロと簡単に情報交換済み。
よつばと藤木の死について、パタリロが語った最初の仮説をほぼ信じきっています。
【明神弥彦@るろうに剣心】
[状態]:両腕に軽い火傷、疲労(中)、四肢に打撲と擦り傷、背中に打ち身
[装備]:逆刃刀・真打@るろうに剣心、サラマンデルの短剣@ベルセルク
[道具]:基本支給品一式、首輪(美浜ちよ)
[服装]:道着(ドロ塗れで血が結構隠れた。右腕部分が半焼け、左側袖も少し焼けてる)
[思考]:今度は間に合わせてみせる!
第一行動方針:気に入らないが、ニアを助けに行く。
第二行動方針:チアキを探し出して保護する。「犯人『バンコラン』」らしき人物と先に遭遇したら取り押さえる。
第三行動方針:パタリロを完全には信用できないが、信用したいとは思っている。
第四行動方針:ニアの力量は認めるが考え方には反対(強い不信感)。
第五行動方針:のび太がどうなったか不安。
第六行動方針:出来ればあの子たち(しんのすけ・ちよ・よつば・藤木)を埋めてやりたい。
基本行動方針:ジェダ達を倒す。一人でも多くの人を助ける。
[備考]:パタリロと簡単に情報交換済み。
よつばと藤木の死について、パタリロが語った最初の仮説をほぼ信じきっています。
【B-7/空中/1日目/夜】
【シャナ@灼眼のシャナ】
[状態]:しろがね化。炎の翼で飛行中
[装備]:楼観剣(鞘なし)@東方Project、コキュートス@灼眼のシャナ
[道具]:支給品一式(水少量、パン一個消費)、包帯
[思考]:リリス……絶対に逃がしたりしない!
第一行動方針:19時になる前にB-7のタワーに到達してリリスと接触し、情報を引き出す。
第二行動方針:夜が明ける前に北東の市街地に向かい、いるはずの自動人形(トリエラ・リルル)を破壊する。
第三行動方針:要件が済んだら、インデックスや双葉たちと合流。
基本行動方針:ジェダを討滅する。自動人形(と認識した相手)は、全て破壊する。
[備考]:義体のトリエラ、及びロボットのリルルを自動人形の一種だと認識しました。
[備考]:これまでのインデックスの行動の全てを知っています。
神社を拠点にする計画も知っています。
【シャナ@灼眼のシャナ】
[状態]:しろがね化。炎の翼で飛行中
[装備]:楼観剣(鞘なし)@東方Project、コキュートス@灼眼のシャナ
[道具]:支給品一式(水少量、パン一個消費)、包帯
[思考]:リリス……絶対に逃がしたりしない!
第一行動方針:19時になる前にB-7のタワーに到達してリリスと接触し、情報を引き出す。
第二行動方針:夜が明ける前に北東の市街地に向かい、いるはずの自動人形(トリエラ・リルル)を破壊する。
第三行動方針:要件が済んだら、インデックスや双葉たちと合流。
基本行動方針:ジェダを討滅する。自動人形(と認識した相手)は、全て破壊する。
[備考]:義体のトリエラ、及びロボットのリルルを自動人形の一種だと認識しました。
[備考]:これまでのインデックスの行動の全てを知っています。
神社を拠点にする計画も知っています。
【B-7/地下下水道/1日目/夜】
【グレーテル@BLACK LAGOON】
[状態]:疲労(中)、全身に中度のダメージ及び軽い切り傷。右腕にダメージ。
喪われた心臓の代わりに核鉄(サンライトハート)が埋め込まれている
[装備]:ウィンチェスターM1897(1/5)@Gunslinger Girl)、サンライトハート(核鉄状態・胸の中)@武装錬金
[道具]:支給品一式、塩酸の瓶×1本、神楽とミミの眼球 、毒ガスボトル×2個
[服装]:いつも通りの喪服のような黒い服。胸の中央に大きな穴が空いている。
[思考]:楽しかったわね、兄様。
第一行動方針:一先ずこの場を離れ、適当なところで地上に戻る。
第二行動方針:誰か新しい相手を見つけて遊ぶ。
基本行動方針:効率よく「遊ぶ」 (兄様はもう探さない)
[備考]:キルアの名前は聞いていません。
【グレーテル@BLACK LAGOON】
[状態]:疲労(中)、全身に中度のダメージ及び軽い切り傷。右腕にダメージ。
喪われた心臓の代わりに核鉄(サンライトハート)が埋め込まれている
[装備]:ウィンチェスターM1897(1/5)@Gunslinger Girl)、サンライトハート(核鉄状態・胸の中)@武装錬金
[道具]:支給品一式、塩酸の瓶×1本、神楽とミミの眼球 、毒ガスボトル×2個
[服装]:いつも通りの喪服のような黒い服。胸の中央に大きな穴が空いている。
[思考]:楽しかったわね、兄様。
第一行動方針:一先ずこの場を離れ、適当なところで地上に戻る。
第二行動方針:誰か新しい相手を見つけて遊ぶ。
基本行動方針:効率よく「遊ぶ」 (兄様はもう探さない)
[備考]:キルアの名前は聞いていません。
≪194:少女Q | 時系列順に読む | 196:夢であるよう、あらぬよう≫ |
≪194:少女Q | 投下順に読む | 196:夢であるよう、あらぬよう≫ |
≪167:少し遅い(前編) ≪175:第一回定時放送 |
弥彦の登場SSを読む | 217:19:00、B-7にて≫ |
≪183:血と涙がまだ足りない | シャナの登場SSを読む | 217:19:00、B-7にて≫ |
≪163:Swan Song at Dusk (前編) ≪175:第一回定時放送 |
グレーテルの登場SSを読む | 219:闇と幻の狭間で≫ |