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  • ろりしょたばとるろわいある@ うぃき
  • 殺意×不殺×轟く雷光

ろりしょたばとるろわいある@ うぃき

殺意×不殺×轟く雷光

最終更新:2009年04月22日 23:57

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だれでも歓迎! 編集

殺意×不殺×轟く雷光  ◆sUD0pkyYlo



満月が、街外れの平原に立てられた2つの墓を煌々と照らしていた。
片方は巨大な鉄の板。片方は墓標もない質素な盛り土。
2つの死を悼む2つの記念碑を前に、それぞれを作った少年たちの姿があった。

「俺は行くけど、お前は?」
「俺は――」

キルアの問い掛けに、明神弥彦は少しの間逡巡する。
ある意味、彼らしくもなく――思い悩む。

犯人を追う。
いましがた弥彦が墓を作った、名も知らない少年を殺した、その犯人。それを追う。キルアはそう言っていた。
その目標は明確で、とりあえず進む方向も分かっている。
対する弥彦は、懸念事項は多いものの、どこから手をつけていいのか分からない状態。
行方の分からない千秋も、本名も顔も分からぬ『バンコラン』も、生死さえも怪しいニアも、全て手掛かりなし。
だからキルアの「お前は?」という短い問いかけは、言外に「お前も一緒に来るか?」という意味だろう。

彼とはこの場で少し話しただけの関係でしかないが、それでもお互いの性格はかなり理解できた。
弥彦の見たところ、少し口は悪いが悪人ではない。
真っ当に知り合いの死を嘆くことが出来、真っ当に知り合いの死に怒ることのできる人物だ。
そしてまた、彼は頭がいい。カンがいい。
先程のシャナも交えての情報交換の場では、少ない説明でこちらの意を的確に汲み取ってくれた。
きっと弥彦の性格も、弥彦がキルアを理解している程度には、理解してくれている。
彼が真っ直ぐな性格であることも、一箇所にじっとしていられない性分であることも、分かってくれている。
分かっているからこそ、「一緒に来ないか」と、誘ってくれている。

そこまで分かっていて……理屈ではなく、直感的にそこまで解しておいて、しかし、弥彦は迷う。
いや、そこまで解しているからこそ。
簡単に同意を返すより先に、確認しておかねばならないことがあった。

「俺は――いや、俺がどうするかより先に、聞いておきたいことがある」
「ん?」
「キルア、お前……その『犯人』を見つけて追いついた後、どうすんだ?」

問い掛けた弥彦のその手の平に、思わず汗が滲む。
そうであって欲しくない。けれども、予想がついてしまう答え。弥彦の受け入れることの出来ぬ答え。
果たしてキルアは、弥彦の予想通り。
何の気負いも力みもなく、さらりとその答えを口にした。

「どうするって……そりゃ、殺すに決まってるだろ」


      ※     ※     ※


キルア=ゾルディックは、元・殺し屋である。

世界最高レベルの暗殺者一家に生まれ、一族内でも抜きん出た資質を認められ、闇のエリート教育を受け。
家業を嫌って家を飛び出し、紆余曲折の末にハンターとなった今も、それらの過去は彼の中に生きている。
念能力を身につけ、オーラを電気に換える技を習得した後も、彼の強みはその殺し屋の技。

だから……彼が後悔するとしたら、ただ一点。
大した理由もないのに殺しを躊躇ってしまった、その部分。

今思い返せば、キルアが「のび太」を生かしておく必要などなかったのだ。
できればニアの話の裏を取りたい、と欲張ってしまったが、あの時の優先事項はあくまで首輪の確保。
だから……速攻で殺していれば良かったのだ。
最初から殺す気で挑んでいれば、下手なプライドを気にすることもなかった。隠蔽工作など考えなかった。
太一を長時間放置したりしなかった。太一を騙して殺そうとした奴を、きっと返り討ちにすることもできた。
実際「最初から殺す気」で対峙した銀髪の殺人狂少女は、あっさり心臓を抜き取れたのだ。

「どうするって……そりゃ、殺すに決まってるだろ」

自らの言葉で、キルアは自分のやるべきことを改めて認識する。
犯人を追う。そして、見つけたら殺す。物事はやっぱりシンプルがいい。
そりゃあ犯人かどうかを判断するためにも、多少は言葉を交わすことになるのだろうが……
そうと分かりさえすれば、即殺す。疑わしいくらいで殺してもいいかもしれない。間違いを怖れてはいられない。

とりあえずは、さっきトンネルの中で死んでいた少年を殺した奴。そいつを探して殺す。
そいつだけじゃない。
殺し合いに乗ってる者。殺し合いに乗ろうとしている者。出会って気付けば、全部殺す。
そうやって殺して殺して殺していけば、きっと太一とゴンの仇とも遭遇できる。2人の仇も討てる。
誰が仇だったかなんて、殺した後に確認すればいい――3人殺しの、ご褒美の権利で。
いや、太一の方は犯人が持ち去ったゴーグルで確認できたのだっけ。

ともかく……殺していけばいい。
2人の仇を取ったあとどうするかなんて、その時になってから考えればいい。
この島から、優勝なんて狙う馬鹿野郎が全部いなくなってから考えればいい。
キルアの口元が、楽しげに吊りあがる。酷薄さも孕んだ、危険な笑みを形作る。
どこか楽しげに、どこかからかうように言葉を紡ぐ。なぜなら。

「で、それをわざわざ聞いて、明神弥彦はどうすんだ?」
「なら……俺は、お前を止めなきゃならねぇ」

なぜなら――
弥彦がキルアの返答を予測できたように、キルアも、なんとなく弥彦の答えが分かっていたのだから。


      ※     ※     ※


明神弥彦は、未熟な身ながら神谷活心流の剣士である。

神谷活心流が目指すのは、人を殺さずして人を活かす、活人剣。
そして背に負うた刀は、かつての人斬り抜刀斎が不殺(ころさず)の信念を誓った逆刃刀・真打。
明神弥彦は、その双方を自らの目標とし、生きる道としたのだ。

だから……彼が後悔するとしたら、ただ一点。
手の届かない者を助けようとして突っ走り、手の届く位置にいたはずの者を守れなかったこと。

目に映る者全てを守りたいと思っても、弥彦はまだまだ未熟な身だ。
けっきょく、カツオも、太一も、ニアも、守ることが出来なかった。
出会っていたのに……守れたかもしれないのに、届く距離にいたかもしれないのに、守れなかった。
もう、あんな思いは嫌だ。あんな思いを誰かにさせるのも嫌だ。
だからせめて、手の届くところにいる者だけでも。
手の届くところにいる者が、間違った道に進もうとしているのなら。

「なら……俺は、お前を止めなきゃならねぇ。
 事情も聞かずに殺すつもりの奴を、そのまま行かせるわけにはいかない」
「おいおい。オレが殺すって言ってるのは、殺人犯だけだぜ?」
「それでもだ。もう、人が殺すのも殺されるのも、御免なんだ。
 どんな奴だろうと俺は、この手が届く限り、誰1人たりとて死なせねぇ!」

気に入らない奴・悪い奴は見殺しにしていいのなら、ニアの破滅に心を痛めたりはしない。
きっと、ニアに反発しニアの下から離れ、ニアを破滅させることもなかっただろう。
敵や悪党であっても出来るだけ殺さずに済ませたいと願うのが、明神弥彦という少年なのだ。

弥彦は背に負うた刀をすらりと抜く。
あいにくと今の彼の体躯では、腰に常時差しておくには長すぎる。重すぎる。
大人が野太刀を背負うように、いつも竹刀を背負っていたように、肩口から突き出した逆刃刀の柄。
掴んで、抜いて、構える。
その切っ先は自らの正中線上、中段の高さ。教科書にそのまま載せられるような、綺麗な正眼の構え。

「あ? なんだその剣。峰と刃が逆じゃねーか。そんなモンでオレを止めるって?」
「逆刃刀・真打(さかばとう・しんうち)。不殺(ころさず)を誓った、最強のサムライの『魂』だ」
「へェ……。面白ェ。『不殺』と来たか」

キルアの顔が、歪に歪む。笑みと呼ぶにはあまりに攻撃的過ぎる表情。
互いの信念を論じ合っても、言葉だけでは誰も止まらない。
キルアは進もうとするだろう。弥彦は追いすがり立ち塞がろうとするだろう。
そして、いずれ衝突する。
殺し合いに乗っている「敵」と対峙した時か、その「敵」を倒した後かは分からぬが――いずれ、衝突する。

ならば、どちらにとっても、決着は早い方がいい。

弥彦は刀を両手で構え、キルアはだらりと両手を下げた自然体で。
町の外れ、満月の下、2つの墓の前。
じり、と2人は間合いを詰めた。


      ※     ※     ※


(――強さは、そうだな。大雑把に言ってズシと同じくらい、ってとこか)

相手の構えからその力量を推し量ったキルアは、油断なく観察しつつも考える。
才能はある。鍛錬も積んでいる。経験も年齢の割には相当なもののようだし、普通に言って相当に強いはず。
ただしそれも、キルアほどではない。
キルアほどの天性の才はないし、キルアほどの訓練は受けていないし、キルアほどの場数は踏んでいない。
自惚れではなく冷静な判断として、そう見切る。
キルアはポケットに入れていた『コンチュー丹』の容器を一旦手に取り、しかし考え直してまた戻す。
こいつは、今は必要ない。
キルアの性格上出来るだけ慎重を期したいところだが、貴重な消耗品を使ってやる程の相手とも思えない。

素の実力でも、油断や事故が無ければ負ける気はしない――だがしかし、その上でキルアは少し迷う。
弥彦には恨みもない。弥彦は殺し合いにも乗っていない。
弥彦には、殺しておくほどの価値すら見出せないのだ。
ただ、大事な所で邪魔されたくないから早めに対処しておこう、という程度の相手だ。
適当に彼我の実力差を思い知らせてやれば諦めるかな、などと考えた所で、ふと思いつく。

(そうだな……いい機会だし、いろいろ試させてもらおうか)


      ※     ※     ※


(逆刃刀が、やけに重いぜ……。あんまり、時間かけるわけにはいかねェな)

明神弥彦は手の内の得物の重さに、内心舌を打つ。
不殺の信念を背負わされているから――だけではない。それもあるが、もっと物理的な意味だ。
元々、それが普通の日本刀であっても、今の弥彦の身体には大きすぎ重過ぎる。
銀髪の大槍使いを前に、桜観剣そのものでなくその鞘を武器としたのも、1つにはそれが理由だ。
普段弥彦が振り回している得物は、木刀よりもさらに軽い竹刀でしかないのだ。

さらには、弥彦は今日一日で随分と走り回っている。
千秋と「バンコラン」を探し午後一杯走り回り、日没後にタワーまで駆け戻り、そのまま非常階段を登り切り。
さらには粗末なものとはいえ、人間1人が納まるほどの穴を掘り、墓を作って――
既に、相当に疲労しているのだ。
食事も休憩もロクに取っていない。年齢の割には体力がある方だが、それでも限界が近い。
刀の重さも考えに入れると、長期戦は自分に不利。弥彦はそう判断する。
『神谷活心流』はどちらかといえば守りに重点を置く流派だが、この際仕方ない。先手必勝で行くしかない。

(悪いけど早めに叩きのめして、そのやばい考えを捨ててもら――ッ!?)

自然体のまま、しかし打ち込む隙の見えないキルア。
それでもこちらから攻め込み状況を崩そうと、弥彦は踵を浮かして――驚愕した。
弥彦の呼吸を読んでいたのか、まさにその瞬間に静かに歩き出したキルア。
その姿が、唐突に「増えた」のだ。
鏡写しのようにそっくりの無数の『キルア』が音も無く出現し、弥彦を取り囲む。彼の周囲を歩き出す。

「な――!?」
「――『肢曲(しきょく)』、って言うんだけどな。その様子だと、『コレ』はちゃんと効いてるか」

早いのか遅いのかさえもよく分からぬ速度で周囲を回りながら、無数のキルア「達」が一斉にニヤリと笑う。
弥彦は瞬時に理解する……これは、あくまで「錯覚」だ。
実際にキルアの数が増えているわけではない。緩急のついた独特の歩方で、残像が残って見えているだけ。
四乃森蒼紫の『流水の動き』と同系統の、『技術』であり『体術』なのだ。
ならば。

「なら……キルアは『1人』だっ!」

幻惑して隙を突こうとしているのを承知の上で、弥彦は雄叫びと共に『キルア』のうちの『1人』に斬りつける。
たまたま『本物』に当たればよし、外れても『本物』のキルアが襲ってくるはずだから、そこを返り討ちにする。
かなり不利で危険な賭けだが、しかし他に策が思いつかない。長々と悩んでいる時間さえ惜しいのだ。
果たして逆刃刀は予想通りに空を切り、同時に弥彦の背後で『誰か』が跳躍する気配がする。

(上から?! って高っ! 剣心並みの跳躍じゃねーか!)

咄嗟に振り返って、また驚愕。
キルアの身体は、ちょっとした家なら飛び越えられるくらいの高さにあったのだ。なんという脚力か。
だがそこは、飛天御剣流の戦いを間近で見続けた弥彦だ。瞬時に気を取り直す。
頭上を取られたのは確かに痛いが、こっちにだって迎撃用の技くらいある!
逆刃刀を構えなおした弥彦は、そして。

「撃ち落してやるっ。龍翔閃抵(りょうしょうせんもど)――!?」
「ほとんど『練(れん)』はなし、だと、どうかな……『鳴神(ナルカミ)』」

空中のキルアの手元が小さく光ったかと思った次の瞬間。
小規模な落雷が、弥彦の身体を貫いた。
目も眩む閃光。過去に味わったことのない衝撃。形容の言葉も見つからない体の痺れ。
明治初頭の日本に生を送る弥彦には、「感電」という単語すらも咄嗟に思い浮かばない。
ただ、逆刃刀から伝わってきた正体不明の感覚に、ただ混乱する。
妖術か魔法としか思えぬその技に、とにかく混乱する。
膝を着きそうになるのを必死に堪え、ガクガクと震える脚で必死耐える弥彦。
その視界の片隅に、キルアがストンと着地する姿が映る。

(……やばっ! このままじゃ……やられるっ! 動け、俺の身体っ……!)
「ふ~ん、この程度のオーラ量で『発(はつ)』すると、こんなもん、っと……。
 じゃあ今度は――『拳』に『60』、『身体』に『40』。これだと、どうなるかな」

キルアが何やら意味不明なことを呟いているが、弥彦には詳しく考える余裕がない。
痺れの残る弥彦に無造作に近づいてきて、これまた無造作に殴る。避けようとするが、間に合わない。
まるで手甲でもしているかの如き硬い拳が、弥彦の鳩尾に突き刺さる。

(な、なんだこの硬さッ! 暗器を持ってる……ってわけでもねぇのか!?)

込み上げてきた酸っぱいものを吐きながら、それでも弥彦は「あえて殴り飛ばされる」。
瞬時の判断で、逆らわずに吹っ飛ぶことでその身に受ける衝撃を最小限に留める。
そういえば飯も喰ってない。胃液と唾液が混じっただけの苦い吐瀉物の味に、弥彦は顔を顰める。
それでも血の味が混じってないということは、内臓へのダメージは大したことではないということだ。
もっと酷い暴行を受けたことだってあるのだ。この程度なら、まだまだやれる!
むしろ間合いが開いた今が好機と、反撃に移ろうとして――

ぴたり。
いつの間にか爆発的に距離を詰めてきたキルアの手の平が、弥彦の胸に当てられていた。
ぞくり、と背筋が凍る。
そのあまりに素早い突進速度に、ではない。先ほどの情報交換の時に聞いた話が、ふと思い出されたのだ。
確かキルアは、銀髪の大槍使いの少女の、心臓を……!

「――なっ」
「『雷掌(イズツシ)』――」

心臓を抜かれる、と思った次の瞬間、しかし弥彦の身体を襲ったのは先ほどの落雷の時と同様の衝撃。
今度は放電ではなく通電――スタンガンの如きもう1つの電撃技、『雷掌(イズツシ)』だ。
やられた当人には理屈も原理も分からない。
ただ、弥彦にも分かったことが2つある。
キルアはその超人的な体捌きに加えて、『雷』を自在に操れる神秘の力を持っている。
そして、それらの力を持っていながら。

「っと、なるほどね。この程度の力なら、このくらい、と。
 じゃあ次は――『拳』に『70』。続いて、『足』に『65』、だとどうかな」

電撃に痺れた身体に、さらに鉄塊を叩き付けるような拳撃と蹴撃を浴びながら、弥彦は確信する。
キルアは……こいつは、「実験」している!
弥彦と戦いながら、手加減しながら、自分の能力を、その威力を、ひとつひとつ確かめている!
弥彦を相手にしながら……全力を、出していない! 全力を出す価値すら、認めていない!

(ちく、しょうっ……!
 何が10歳としては「日本で」一番強いかもしれない、だ。やっぱりそんなの大した意味ねぇじゃねぇか!)

キルアとは何歳も離れていないようにしか見えないのに、この有様だ。
どう見ても日本人には見えぬキルアを前に、弥彦は己の無力さを呪う。
殴られ、蹴られ、反撃は悉く宙を切り、合間合間に電撃を受け、痺れ焼かれ。
手も足も出ない一方的な状況の中、弥彦は怒りと悔しさに涙を滲ませた。


      ※     ※     ※


(うん、大体分かってきたな……)

弥彦を一方的になぶるように痛めつけながら、キルアは1人自信を深める。
そう……弥彦の読みは、正しい。
キルアがやっていたのは、「実験」であり「テスト」である。
自らに課せられた「念能力」への「制限」。その程度を測るための「実験」だ。
電撃を放つ前に溜めるオーラの量。それによる稲光の強さに、実際に人に当てた時の反応。
念の基本技術である「流(りゅう)」による、拳や足の強化……それも、様々に度合いを変えて。
念ではないが、「肢曲」のような暗殺者の体術も。
実力差があるとはいえ、実戦の中で試し、用い、具合を確認していたのだ。

元々キルアは、精密なオーラの操作を得意としている。
1%の狂いもなくオーラを身体の各所に振り分ける「流」の正確さは、師の1人であるビスケも認めるところだ。
自らの能力を正確に把握し、理解し、使いきる。それがキルアの真骨頂。
だがしかし、だからこそ、だったのかもしれない。
彼は、このジェダによる殺し合いの場で……致命的なミスを犯した。
手加減の度合いを、間違えた。殺す気のない相手を、殺してしまった。
理由は、「制限」。
それはこの島に来て始めて本格的に使った念能力。実験も試し撃ちもない、ぶつけ本番の一撃。
そのせいか、自らの身に課せられた枷の重さを多めに見積もってしまい、強すぎる雷を撃ってしまったのだ。

己のプライドに賭けて、二度とあんなミスは犯さない。
そのために必要なのは、正確で精密な自らの能力の再認識。
「制限」でどの程度能力が落ちることになるのかを、自らの身で把握しなおすのだ。
どうせ弥彦を叩きのめさねばならぬのなら、これは一石二鳥。実戦の中でしか掴めないことも多いのだ。

そんなわけで、手加減しながらも正確さを志し、戦いを続けてきたキルアだったが。
色々と試したお陰で、ほぼそちらの目的は達したと言っていい。
「制限」によってどの程度の目減りが見込まれ、どの程度の威力低下があるのか、ほぼ完璧に把握した。
もうこれで「のび太」の時のようなミスはしないだろう――だが、計算違いは、別の部分にあったわけで。

「それにしても……タフな奴だな。おい、いい加減辛いだろ?
 そのまま寝とけよ。邪魔さえされなきゃ、オレはそれでいいんだからさ」
「まだ……まだぁっ……!」

キルアの計算違い――それは、殴れど蹴れど倒れない弥彦の存在だった。
確かに急所は打っていない。内臓も潰していないし骨も砕いていない。顎や頭も打っていない。
体中に青痣と、掠り傷と、電撃による火傷が刻まれていたが、いずれも致命傷には程遠い。
どれもただ「痛い」だけだ。
出来ればサンドバッグ役として長く立っていて欲しかったから、あえて決着を引き伸ばしていたのだが――
いい加減、うんざりしてきていた。
この辺で気絶でもしてくれれば、ちょうど都合がいいのだが。

「だってお前、勝ち目ねーじゃん。
 そっちの刀、全然オレの身体に当たってねーし。何回か惜しい時もあったけどさ。
 どうせ無理だから、さっさと諦めなって」
「神谷活心流は、活人剣……。活人剣を振るう奴には、どんな負けも許されねぇんだよっ……!」

いい加減苛立ちすら感じ始めたキルアの前で、そして弥彦は、言葉とは裏腹に、おもむろに刀を納めてみせた。


      ※     ※     ※


(そう、俺には敗北が許されない……!)

神谷活心流は、活人剣。
人を守るために振るう剣であり、人を守るための剣だ。
1本の剣に、自分と守ろうとする者、2つの命運を賭ける。それが活人剣。
ゆえに、負ければ自分は勿論、守ろうとした者の命運をも尽きてしまうのだ。

ここでキルアを逃したら、彼は必ずやあの犯人に追いつき、殺すだろう。
釈明も弁明も改心も懺悔も許さず、雑草を刈り取るように命を奪ってしまうのだろう。
そしてそれは、弥彦にとって望ましい話ではない。

剣心の過酷な戦いを間近で見続けてきた弥彦は、よく知っているのだ。
悪党と一言で言っても、進んで悪の道に堕ちた者ばかりではない。
哀しい過去、致し方のない経緯、理不尽としか言えぬ運命。
そういったものを背負った、被害者とでも呼ぶべき殺人者たちを、どれだけ見てきたことか。
彼らの存在を思い出せば、「殺し合いに乗ってる奴は全部殺せばいい」なんて、安易に言えるはずもない。
だから。

刀を一旦納めて、鞘ごと背から外す。
外したそれを、改めて左腰に差しなおす。余裕なのか好奇心からか、幸いキルアは動かない。
そのまま左手を鯉口に、右手を柄に添えて腰を落とせば――その姿勢は。

「へぇ、居合いか。なるほど、考えたもんだ」
「…………」

キルアが楽しそうに口笛を吹く。が、その細められた目は笑っていない。
彼も分かっているのだ。この構えの特性が。
数多の剣術の中でも、居合いは「後の先」を取ることに特化した構え。カウンターこそがその本領。
これなら、キルアのスピードも捉えうる。
素手と刀のリーチの差で、先に攻撃を叩き込める可能性がある。
あまり慣れていない技、長すぎる刀、抜刀には向かぬ逆刃の刀……不利な条件は揃っていたが。
それでも、この構えに賭ける。
この構えから繋がるわずかばかりの勝機に、全てを賭ける。

(さっきまでだって、ただ殴られてたわけじゃねぇ。
 既に手は1つ打ってる……そしてまだキルアは、「気付いてない」。
 だけど、「それだけ」じゃきっと「届かない」。「それだけ」で勝てる甘い相手じゃねぇ……!)

己の懐にある「あるもの」を意識しつつ、今はキルアの動きに集中する。
基本的に「待ち」の姿勢である居合いの構えだが、しかし持久戦になれば弥彦が圧倒的に不利。
しかし、弥彦はその部分は心配していなかった。何故なら。

「気付いてるだろうけどさ。オレ、ずっと手加減してたんだよね。
 これ以上やるってんなら、もう手加減やめるぜ? お前、本気で死ぬぜ?」

余裕を見せているキルアの声に、微かに抑えきれない苛立ちが混じり始めている。
もう一押し。あと一押しで、きっと、望んでいたチャンスが。

「やって、みろっ……! 出し惜しみしか出来ないお前に、出来るもんならなっ……!」
「ふーん、そう。じゃぁ……」

キルアが何気ない呟きを漏らした、次の瞬間。
彼の身体が、掻き消える。
いや、消えたのではない――人間の意識が追いづらい、タテ方向の高速移動。
空中のキルアの手の間に、紫電が走る。
念能力者でなくとも分かる、素人目にも分かる。今までの比ではない威力の電撃、その予備動作。
刀も届かぬ距離、まともに喰らえば黒焦げになること必至の大技を前に、それでも、弥彦は。

「じゃあ……死になっ!」
(剣心――技を借りるぜ!)

弥彦は、未だ勝負を諦めていなかった。


      ※     ※     ※


「じゃあ……死になっ!」

両足に念を込めて、一気に跳躍。
頭上を取って、「練(れん)」で練り上げた大量のオーラを両手の間に溜める。
「制限」下における、今のキルアの最大出力だ。

弥彦が居合いの構えで刀の間合いを制するのなら、「そのさらに外側」から攻撃すればいい――。
幻影旅団のノブナガよりは遥かに劣る相手、突進して接近戦を挑んでも十分に勝ち目はあったろうが。
間合いという一点に限れば、ナイフやブーメランを投げても良かったのだろうが。
なんとなく……腹が立って仕方なかった。
弥彦の諦めを知らない瞳に、責められているような気分になってしまった。
どこか見覚えのある瞳。それはそう――ゴンが追い詰められた時のような。太一が垣間見せたような――!

(……ふざけるな! あいつらと一緒なんて……認められるかっ!)

思わず脳裏に浮かんでしまった、気の迷いを振り払うにも。
全力で叩き潰さないと、気が済みそうにない。
弥彦がこれで死んでも知ったことか。
全オーラを電気に換え、弥彦の頭上から叩き付ける。
並みの人間はもちろん、生命力あるキメラアントが相手でも即死しかねない出力で。

「見様見真似――」
「遅ぇ! ……『鳴神(ナルカミ)』――!」

2つの墓の傍、眼下の弥彦が「何か」をしようとしている。
抜刀術の構えで、身体ごとその場で一回転。
だけど、この距離、この高さだ。何をしようとも、雷が落ちる方が早い!

必殺の確信を持って、キルアは電撃を放って――
落雷の轟音が、弥彦の技の宣言の後半を掻き消して――
同時に、弥彦の左腰から、「何か」が弾丸のような勢いで撃ち出されて――
けれどその方向は、キルアに当てるには、狙いがズレていて、技の出だしを潰すにも遅すぎて――

キルアは、目を見張った。

(な……? 『鳴神』が……電気が、曲が、るっ……!?)

眼下には、逆刃刀の鞘を突き出すように持つ弥彦の姿。
スローモーションのようにゆっくりと進む時間の中、キルアは確かに、弥彦の目が笑うのを見た。


      ※     ※     ※


それは、一瞬の出来事だった。

キルアの手から放たれた雷は、地上の弥彦を狙った雷は、しかし虚空で僅かに進路を変えて。
虚空に投げ出された「鉄の棒」……『逆刃刀・真打』に命中し。
刀を伝わった電光はそのまま逸れ、弥彦の傍ら、やや離れた位置にある巨大な鉄の板に誘導される。
そう、それは――トンネルを塞いでいた鉄扉を用いて立てた、八神太一の墓。
キルアが太一のために、と立てた「立派な墓」が、キルアの技を逸らす。受け止める。大地に放電する。
弥彦を傷つけることなく、弥彦を守る。

(よしっ、読み通り――!)

キルアの持ち技の1つ、『鳴神(ナルカミ)』。
変化系能力者が不得意とする遠距離攻撃、放出系能力であり――
不得意な部分を補うために、雷としての特性を模倣した技。
だからそれは、近くに「避雷針」があれば対象に当たらない。
明治時代の弥彦だって、雷が高い所に落ちることくらいは知っている。
門扉だけでは高さが足りず尖ってもおらず、雷が導かれることもなかったが……そこに逆刃刀を加えれば。
タイミングを合わせて、太一の墓に沿うよう逆刃刀を撃ち出せれば。
それは「読み通り」というより、髪の毛ほどに細い可能性に全てを賭けた一撃であったのだけど……!

『見様見真似・飛龍閃・改(みようみまね・ひりゅうせん・かい)』。
かつて緋村剣心が石動雷十太の『飛飯綱(とびいづな)』を前に撃ち放った抜刀術、『飛龍閃(ひりゅうせん)』。
居合い抜きの動作そのままに、しかし柄に手を添えず腰の捻りだけで剣を撃ち出す、奇想天外な飛び道具。
本来は地面と平行に撃ち出されるはずの刀、そこに弥彦は独自のアレンジを加えて。
撃ち出す瞬間、鯉口を押し上げ、足腰のバネも利用して、斜め上方に発射したのだ。

いわばこれは、弥彦オリジナルの対空迎撃技。
居合いの構えで牽制すれば、キルアがこの「刀よりも間合いの広い」技を使ってくることは容易に予想できた。
そして『飛龍閃』とは、剣士には不利な遠距離の間合いを制することに価値がある技。
優れた弟子は師の模倣だけに終わらない。
その術理の本質を見抜き、自分なりの応用をしてこそ、なのだ。

だがしかし、今この瞬間、これで終わってしまえば意味が無い。
絶妙のタイミングで、ぶつけ本番のオリジナル技を成功させはしたが、しかしそれは一撃を避けただけ。
あさっての方向に飛んでいってしまった逆刃刀・真打を拾うヒマは、おそらくない。
だが焦ることなく、素早い動きで、弥彦は懐から「とあるもの」を取り出す。
それは先ほど一方的に殴られていた時に確保した、「逆転の切り札」。
迷うことなく手に取ると、彼は「それ」を、口に含んだ。


      ※     ※     ※


(焦るな、たった一発、かわされただけじゃないか――!)

空中のキルアは、瞬時に意識を切り替えようとした。
ありったけのオーラを注いだ一撃をあんな方法で避けられたのだ、当然動揺はある。
避雷針代わりに太一の墓を利用されたことも、正直言って腹立たしい。
けれど、今考えるべきはそんなことではなく。

空高く跳躍したキルアは、未だ自由落下の途中にあって――
念を、電気を一旦使い切った今の状況では、空中での行動の自由はほぼなくて――
つまりは地面に着地までの数秒にも満たぬ時間の間、無防備になってしまう。
低威力でも『鳴神』が当たっていれば、そんな心配はせずに済んだのだが。

(いやしかし、奴は『隠し札』とも言えるあの技を使った直後だ。もう武器もないし、やれることは……!?)

もうやれることはない、と冷静に判断しかけたキルアは、そしてすぐに驚くことになる。
弥彦が何かを口に含んでいる。見覚えのある容器から出した丸薬を、口に放り込んでいる。
あれは……! キルアは咄嗟に自らのポケットを探る。ない。

(こ……『コンチュー丹』!? いつの間に掏り取られた!? 構えを変える前、こっちが色々試してた時か!?)

確かにあの時、手の届く距離に何度も入った。弥彦も空振りばかりだったが、何度も反撃してきた。
キルアも徐々に頭に血が昇ってきていたし、チャンスはいくらでもあったと言っていい。
しかし、こんなに鮮やかに……! キルアだってそれなりに心得があるのに!

そして次の瞬間には、キルアは自らの動揺そのものを後悔する。
動揺してポケットを探っているヒマがあったのなら、ナイフなり何なりを投げておけば良かったのだ。
ランドセルから殺虫剤を取り出そうにも、もう間に合わない。
気付いた時には、自由落下するしかないキルアに合わせ、弥彦が大地を蹴っている。
蟻のパワーと蝶の身軽さ、蜂の素早さ。いやしかしこのジャンプはまるでバッタの跳躍だ。
念能力者の本気の跳躍にも負けぬ勢いで、弥彦が迫る。
飛天御剣流の継承者にも匹敵する脚力で、弥彦が跳ぶ。
そして、その手には。

「おおおおっ、『龍翔閃抵牿(りゅうしょうせんもどき)』っ――!」
「くうぅっ!」

衝撃。
下からかち上げるように、黒い棒状の凶器が振り上げられる。
かろうじてキルアは両腕を交差させ、僅かに残ったオーラを集めてブロックする。止めてから、気付く。
刀のように振るわれた凶器の正体――それは『逆刃刀・真打』の鉄拵えの『鞘』。
飛天御剣流の抜刀術は、全て隙を生じぬ二段重ね。
ゆえに「二の手」として使われることの多い鞘にも、十分以上の強度が求められる。
もう武器がないなんてとんでもない。鞘だけでも、十分に『武器』になる。

(それでも、なんとか止めたっ! これでこっちにも、反撃のチャンスが――)
「まだだッ! 見様見真似・龍槌閃(みようみまね・りゅうついせん)っ!!」
「!!」

反撃のチャンスもなく、空中で弥彦が一回転する。剣心も得意とした2つの技のコンボを決める。
下からの攻撃を止めたばかり、姿勢を崩したキルアには対応しきれない。
念によるガードすら、間に合わない。
頭部に衝撃が走る。目の前に火花が散る。脳が揺さぶられる。意識が刈り取られる。

成す術もなく、気を失う直前。
最後の刹那にキルアは、ただ1つのことだけを考えていた。

(畜生っ……。
 やっぱコイツも、「最初っから」殺しにかかっておくんだったぜ……。
 もし、「次」があるなら、必ず……!)

もしもこの後、意識を取り戻すことがあるのなら。生き恥を晒し命を永らえることになるのなら。
次からは、容赦しない。
殺し合いに乗ってる奴は最初から殺す。疑わしい奴も最初から殺す。
そして、キルアを邪魔する奴も、容赦なく完全に殺す。
全部、片っ端から、殺す。
呪詛にも近いどす黒い誓いを胸に抱きつつ、キルア=ゾルディックは、そして意識を手放した。


      ※     ※     ※


居合いの構えで相手を威嚇し、遠距離技である『鳴神』をあえて撃たせる。
『飛龍閃』の派生技で逆刃刀を撃ち出し、それを避雷針にして直撃を免れる。
相手が驚いた隙を突き、予め掏り取っておいた『コンチュー丹』を口に含み、彼我の身体能力の差を埋める。
掏り取りの事実に動揺する隙を突き、逆刃刀の鞘で『龍翔閃』の模倣技。脚力の不足はコンチュー丹で補う。
そして、最後のトドメとして、『龍槌閃』の模倣技――。

要約すればたった5行。時間にすれば数秒にも足りぬ間の攻防。
しかしこれのみが、弥彦の見出した僅かな勝機だった。
単に掏り取ったコンチュー丹を使っただけでは、きっと勝てなかっただろう。
キルアが弥彦に勝っていたのは身体能力だけでなく、戦闘技術全般だったのだから。

「まったく、俺のスリ技はどこまでも役に立ちやがる……。喜んでいいんだか」

弥彦は荒い息をつきながら、飛んでいった逆刃刀を回収して戻ってくる。
二人の激闘の跡の残る墓の前には、白目を剥いて気絶したままのキルアの姿。
コンチュー丹で得た怪力で、思いっきり頭を殴ったのだ。簡単には目覚めるまい。
頭蓋骨の中でも特に硬い所を狙って振り下ろしたから、後遺症などはないと思うのだが……。

「で……どうするかな、こいつ」

疲労困憊、全身アザだらけ。戦いの前半は避けたいと思った持久戦にもなってしまっていた。
自分自身も倒れる寸前の身体で、それでも弥彦は思案する。
それは、そう。シャナに最初に会った時、彼女から出されていた「宿題」。

 『考えてみればいい。おまえが殺さなかった敵はその後どうするの?
  ここには犯罪者を捕まえる警察も、拘置しておく刑務所も、裁いてくれる裁判所もないのに。
  おまえの言う“不殺”はこれらなしでも成り立つものなの?』

後回しにしてきた問いかけが、今になって弥彦の所に戻ってくる。
このキルアをどうするべきなのか。
殺すべきか、放置すべきか、手足の腱でも切って身動きできないようにしておくべきか。
頭に浮かんだいくつもの選択肢に、しかし弥彦は。

「……どれも論外だろっ!!」

一声吼えると、頭から血を流すキルアの身体に手を伸ばす。
殺すことなんて出来ない。それをしたら、弥彦はキルアを否定できなくなる。
放置することも出来ない。「バンコラン」やそれに類する殺人者に見つかれば、そのまま殺されて終わりだ。
手足の腱を切る? 何だその悪趣味なアイデアは。考えるまでもなく却下に決まってる。

そう。敵対こそしたけれど。意見の相違こそあったけれど。
キルアもまた、弥彦が守りたいと思っている命の1つであることには変わりがない。
そして、そんなキルアが血を流し、怪我を負い、気を失っている。
となれば、今やるべきことは1つしかない。

「病院は……アッチか。待ってろよ、すぐに手当てしてやるからな」

脱力しきったキルアの身体を背負い、彼の荷物も両手に提げて、弥彦は沼の中央を抜ける道を走り出す。
ニアのことも、千秋のことも、「バンコラン」のことも、全て後回しだ。
キルアが追うつもりだった「犯人」のことも、後回し。
もう少し具体的な手掛かりがあったら違う判断をしていたかもしれないが、今は苦渋を呑んで後回しだ。
ひょっとしたら後で後悔することになるのかもしれないが、今はまず、キルアを助ける。
目に映る全ての人を守れる程の力はまだないけれど、せめて、手の届く所にいる命だけでも守りたい。

「目が覚めた時に気が変わっててくれりゃ、いいんだけどな……。
 そうじゃなかったら、また仕切り直しだ。何度でも、叩きのめしてやる」

正直、再戦するとなったら弥彦が圧倒的に不利。あんな奇策、そうそう何度も通じるものか。
それでも、弥彦は諦めない。弥彦は折れない。弥彦は挫けない。
自分は決して強くない、だからこそ何度でも挑もう。何度でも繰り返そう……他に手段が、無いのなら。

「ぐっ……おおっ……! お、重てぇっ……!」

跳ぶように沼地の間を走りぬけ、古びた塔が見えてきたところで。唐突に弥彦の動きが鈍くなる。
コンチュー丹の効果が切れたのだ。
元より疲れきった満身創痍の身、荷物がなくとも限界間近。
蟻の怪力・蜂の素早さがなければ、とてもではないがヒト1人を背負って歩けるコンディションではない。
思わず意識が遠のきかける。膝を屈したくなる。何もかも投げ出して眠りたくなる。
だけど。

「負けるっ……もんかっ……! 見捨てる、もんかよっ……!
 それじゃこいつと、キルアと、一緒になっちまうっ……!」

あと少し。あと少しで廃墟の町に辿り着き、立派な病院にまで辿り着けるのだ。
だから、そこまでは。

頭上の満月は変わらず煌々と輝き続け、辺りには人の気配もなく。
忘れ去られたかのような静かな廃墟の町。
弥彦は蛞蝓が這うような速度で、しかし決して歩みを止めることなく、足を踏み入れた。


【F-8/廃墟群外周部/1日目/真夜中】

【明神弥彦@るろうに剣心】
[状態]:疲労(極大)、全身に打撲と青痣と擦り傷と火傷。背中にキルアを背負っている
[装備]:逆刃刀・真打@るろうに剣心、サラマンデルの短剣@ベルセルク
[道具]:基本支給品一式、首輪(美浜ちよ)、核鉄(バルキリースカート)@武装錬金
     コンチュー丹×5粒@ドラえもん、
[服装]:道着(ドロと血と吐瀉物で汚れている。右腕部分が半焼け、左側袖も少し焼けてる)
[思考]:負けねぇ、ぞっ……!
第一行動方針:ひとまず病院に向かってキルアの手当てをする。キルアを死なせない。
第二行動方針:キルアが目覚めたら、人を殺さないよう説得を続ける。必要なら何度でも叩きのめす。
第三行動方針:いい加減、休息と食事を取りたい。
第四行動方針:出来れば南西市街地に点在する死体(しんのすけ・ちよ・よつば・藤木)を埋めてやりたい。
基本行動方針:この手の届く限り、善悪問わず一人でも多くの人を助ける(目の前にいる人を最優先)。
         それ以外のことはあえて今は考えない。
[備考]:バルキリースカートは、アームのうち3本が破損した状態です(現在自己修復中)。
     コンチュー丹の効果は、既に切れています。

【キルア@HUNTER×HUNTER】
[状態]:疲労(中)。頭を強く殴られ気絶。頭から流血。
[装備]:ブーメラン@ゼルダの伝説、純銀製のナイフ(9本)、
[道具]:基本支給品×3、調理用白衣、テーブルクロス、包丁×2、食用油、 茶髪のカツラ
    天体望遠鏡@ネギま!、首輪(しんのすけ)、水中バギー@ドラえもん、
    殺虫剤スプレー、ライター、調味料各種(胡椒等)、フライパン
[思考]:…………。
第一行動方針:殺し合いに乗っている者・乗ろうとしてる者は容赦なく殺す(間違えても気にしない?)。
第二行動方針:キルアを邪魔しようとする者も容赦なく殺す。
第三行動方針:太一とゴンの仇をとる。ゴーグルも取り返す。
基本行動方針:仇討ちも兼ねて、殺し合いに乗っている者を積極的に探して殺していく。
       いわゆるマーダーキラー路線。その後のことはあえて今は考えない。
[備考]:自らの念にかけられた制限、制限下における念能力の効果を、ほぼ完璧に把握・理解しました。
    キルアの怪我の程度(特に、最後の頭部への打撃のダメージ)は、後続の書き手にお任せします。

≪240:新たな武器と共に 時系列順に読む 242:許されざる者(前編)≫
≪240:新たな武器と共に 投下順に読む 242:許されざる者(前編)≫
≪235:分岐 明神弥彦の登場SSを読む 245:臨時放送、あるいはイレギュラー≫
252:非常灯だけが見ていた≫
≪235:分岐 キルアの登場SSを読む 245:臨時放送、あるいはイレギュラー≫
252:非常灯だけが見ていた≫

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