扉の向こうへ◆HoYWWMFJdI


(オイオイ、魔物に魔界だって……?)

ガッシュから聞いた情報を整理するために、コナンは片手で頭を抑える。

(光彦が好きな仮面ヤイバー……いや、むしろ漫画のYAIBAの方が近いか。
 あれも雷だの炎だのの力を使ってたりしてたが……)

以前コナンは、YAIBA……漫画の世界の住人と出会ったことがある。
―――無論、『夢』の中で、だが。

子供部屋から出て、壁の黒く焦げた跡を触ってみる。
熱を帯びていて、壁の一部が崩れている。
トリックの類では、勿論ないのだろう。

「……どうやら、信じないといけないみたいだな」
「ウヌ、当たり前だ。私は嘘などつかないぞ!」

心外だとでも言うように、金髪の少年が憤る。

「あ、ああ。すまなかった。
 ……切り替えよう」

どうやらこの島にいるのは、コナンの常識が通用する世界から連れて来られた人だけではないらしい。
己の常識だけで動けば、待っているのは死、だろう。
切り替え、状況に適応していかなければならない。
まずは情報。
情報を多く集め、固定観念を排除しなければならない。

コナンは自分の頬をパシン、と叩く。


「そもそも、何故コナンがそれを読めるのだ。
 その本は清麿にしか読めないはずなのに」
「そうだな……」

ガッシュから聞いた話では、『魔物の子』と『パートナー』は1対1でなければならないという。
パートナーの少年『清麿』と共に、ガッシュは闘ってきたのだと。

(考えられるのは、ガッシュを攫ってくる時に、その清麿って人が殺されたか、)
「……或いは、世界が隔絶されたことで、契約が一回切れてしまった、か。
 なあガッシュ。パートナーがいなくなった『魔物の子』とかは見たことないのか?」
「ウヌ……そういえば、千年前の魔物達も、元のパートナーがいないはずなのに術を使えていたな」
「なるほど……。
 これは仮説だけど。
 ガッシュがこの島に連れて来られた時に、パートナーとの線……みたいなものが一度切れたんじゃないか。
 それで多分、真っ白な状態で俺と会ったことになり、俺をパートナーとして本が認識したんじゃないだろうか」
「ウヌウ……では清麿との約束は!?やさしい王様になるって約束はどうなるのだ!?」

必死な顔でゆさゆさとコナンを揺さぶるガッシュ。

「まままま待て、落ちつけ」

どうどうとガッシュを落ち着かせる。

「俺が居たところと、ガッシュの居たところは、恐らく世界……が違うんだろう。
 この島自体もそうだ。
 ―――多世界解釈ってやつだな。
 だから、もし元の世界に帰ることができたのなら、俺とガッシュは別々の世界に帰ることになる。
 その時もう一度、本の契約は白紙になるはずだ。
 だからきっと、清麿って奴もガッシュを待っているはずさ」
「……すごい、すごいぞコナン!!
 まるで清麿みたいな頭の良さだぞ!!
 途中よく分からなかったが、帰ればまた清麿とやさしい王様を目指せるのだな!!」

どうやら最大級の賛辞を受けているらしいことは、ガッシュの表情を見れば分かる。
このガッシュという奴は、本当に真っ直ぐな心の持ち主なのだろう。

「ああ。だから帰るまでの間、よろしくな相棒」

手を差し出す。

「ウム!もちろんだコナン。こちらこそ頼むぞ!」

力強く握り返す。


■■■


ザケル、ラシルド、ジケルド、バオウ・ザケルガ、ザケルガ、ラウザルク、ザグルゼム。

声に出さず、読めた文字を子供部屋の机にあったノートに書いていく。
術を使う際、ガッシュは気を失ってしまうそうだが、
分かる範囲でその術の効果をコナンに伝えていく。

「すごいな……」
「ウム。だが術を使うと、コナンの心の力を消耗してしまうのだ。
 清麿は闘いの際、実に的確に作戦を考え、術を活用していた。
 コナンも安易に術の威力に頼らず、うまく術を活用するのだぞ」
「ああ、努力するさ」

しっかりと頷く。


―――そして今二人は情報をより得るため、野比家を改めて調査している。

コナンは一階でテレビを付けてみたり、コンロを付けてみたりしている。

「電気は通ってるみたいだが……流石に映らないか。
 水も出るし火もつく……見たところ、俺の居た世界と変わらないように見えるが……」

居間、浴室、トイレ、台所。
どこもコナンの世界となんら変わりはないように見える。

「そういや子供部屋があったな……教科書なんかも見てみるか」

一階には特に不可思議なものはなく、ガッシュのいる二階に行こうとするが―――

「うわあああああああああああああ!!!!」

ガッシュの悲鳴が聞こえる。


「しまった!これがトンデモ世界なら、二階から襲撃が来てもおかしくないか……!!」

急いで階段を駆け上る。
子供部屋の脇で一度止まり、部屋を覗くと―――

「……ガッシュ!?おいガッシュ!!」

ブリの骨の残骸、そして調査(?)したであろう本等が散乱し、
机の引き出しや本棚なども開きっぱなしの部屋。
そこに、ガッシュの姿はない。

「窓は……。鍵が閉まったまま、か……」

ガラスが破られた後などもなく。
もうひとつの二階の部屋にも姿はない。

ガッシュだけが、消えてしまっている。

(……考えられるのは、
 あのモンスターボールをガッシュが使い、その効果が現れた、か)

コナンが腕を組み、部屋の中央で思案に耽っていると、机の引き出しからにょきりと手が出てくる。

「うわああああああ!?」

沈着なコナンも流石に予期しないことだったらしく、思わず悲鳴をあげてしまう。
机の引き出しからもう一本手が出てきて、次いでガッシュの顔が出てくる。

「ふー。びっくりしたぞコナン。大きな声を出すでない」
「が、ガッシュ!?なんてところから出て来るんだ……」

ジャンプして部屋に着地するガッシュ。

「ウム。その机の引き出しを開けたら、中に吸い込まれてしまってな。
 なにか別の場所に繋がっていたぞ」
「べつのばしょー!?」

何がどうなって引き出しが別の場所に繋がるというのか。
コナンは頭を振る。
机を覗き込むと、空間が渦巻きのように回転している。

「…………。
 もう、何が来ても驚かないぞ、俺。
 ガッシュ、もう一度行ってみようか」
「ウム!ついてくるのだコナン!」

颯爽とジャンプして再び引き出しに入るガッシュ。
イスを使って一度机の上に乗り、恐る恐る足を入れてみる。
――足がつかない。

「ハハハ……ファンタジーすぎるだろ、これ……」

目が据わったコナンも思い切って机の中に入る。


■■■


―――何か不思議な空間を漂った後、
目の前にガッシュと、何か荘厳な雰囲気の場所に居ることを確認する。

「何なんだよこれ……」
「ははは、中々面白いな、コナン!」

はしゃいでいるガッシュを尻目に、ランタンをつけ、辺りを見回す。
後ろには女神の像を中心にした泉があり。
やはりその泉も渦を巻いている。

周りはパルテノン神殿のような大きな円柱で囲まれた部屋になっており、
天上は高く、大きな扉がひとつそびえ立っている。

「ウヌ、窓とかはないみたいだな」
「ああ。全く別の空間に出たのか、或いは……」

コナンはスマートフォンを取りだし、現在地を確認する。

「E-7……『天空への塔』の中に、どうやらいるらしい……」

地図をガッシュに見せる。

「おお、我らは飛んだのか!?」
「……信じられないが、どうやらそうらしい……」

敷き詰められた柱を触ってみる。
偽物などではなく、本物の石材でできている。

「コナン!こっちに箱があるぞ!」
「ああ、了解。すぐに開けたりしないようにな」

ガッシュが呼ぶ場所へ行ってみると、
ゲームや映画で出てくるような、絵に描いたような『宝箱』がある。

「セオリーだと、罠とかが掛かってたりするんだが……。
 ロープ、とかは支給されてなかったよな……」

確認した持ち物には使えそうなものは無かった。
野比家で色々雑貨を調達した方が良いかもしれない。

「ウム。では私が開けよう。コナンは下がっていろ」
「すまない。気を付けてな」

念のためコナンは魔本を構え、後方で待機する。


「行くぞ……えい!!」

カチャリと宝箱を開けるガッシュ。
特に矢が飛んできたり、煙が出てくるようなこともなく。

「……なんだコレ?」

宝箱に入っていたのは、一粒の種。
ガッシュが首を傾げる。

「ご丁寧に紙も入ってるな。
 えっと……『力の種』。
 これは食べることで数秒間だけ筋力を倍増させる種です、だってさ」
「おお、まさにおたからではないか!」
「そ、そうだな」
(なんだってこんなゲームじみた……いや、奴はこれを『ゲーム』だと言ったな……。
 どこかで見て楽しんでいるとでもいうのか……?)

考えるコナンをよそにウキウキとしているガッシュ。
なーこれ持っていていいか、と聞くガッシュにああと生返事を返し。

「あと部屋にあるのは……この扉くらいか」

これも映画に出てくるかのような、重厚な西洋式の扉。
宝箱の時と同じような体制で、ガッシュが扉の前に出る。

―――しかしガッシュが押しても引いても横にスライドしても扉は開かない。

罠などは無さそうだとガッシュがコナンを呼び、コナンも扉を調べる。

「んー。どうやら鍵が掛かってるみたいだな」

ガチャガチャ、と扉を弄ってみる。

「ウヌ……無念。扉の向こう側に行ってみたいのだがな」
「ああ、鍵を手に入れたら、また来てみよう。
 何か手掛かりがあるかもしれない」

二人は天空への塔の小部屋から引き返し、
女神の泉を通って野比家へと帰って行く―――


再び野比家の二階で整理する。

「……このワープする泉は、他の施設にもあるかもしれないな」

子供の足でこの広い土地を縦横に移動するには、やはり時間がかかりすぎる。
施設間の移動によって、他人と接触する機会を増やす目的かもしれない。

「ウム。あとはあの塔の扉を開ける鍵を探さねばな」
「ああ。誰かの支給品か、あるいはさっきみたいな宝箱にでも入っているんだろう」

コナンは頷き。

「それと……」
「ウム?」
「ここで少し雑貨を調達させて貰おう。あまりにも手持ちの道具が無さ過ぎる」
「それは泥棒ではないのか?」
「うっ……いや、借りるだけだ。
 そしてもしこの家の人に会ったら、無断で使わせて貰ったことをちゃんと謝ろう」
「ウム!」

そして二人して使えそうなものを集めてくる。
えんぴつ、ノート、ビニール紐、セロハンテープ、ガムテープ、タオル、ティッシュ、
お裁縫セット(糸、針、ハサミ)、+―ドライバー、トンカチ。

雑多なものが部屋に集められていく。

「ウヌ……こんなもの、戦闘では役に立たないのではないか?」
「まあね。
 でもこれから未知の土地へ行くんだ。
 準備をして、しすぎることはないさ」

雑貨をランドセルに詰めて行くコナン。
野比家にて、時間が過ぎてゆく―――


【C-5 野比家/一日目 黎明】

江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:赤い魔本@金色のガッシュ!
[道具]:基本支給品、サバイバルナイフ@現実、アクション仮面のフィギュア@クレヨンしんちゃん、バスケットボール@ロウきゅーぶ!
     えんぴつ、ノート、ビニール紐、セロハンテープ、ガムテープ、タオル、ティッシュ
     お裁縫セット(糸、針、ハサミ)、+―ドライバー、トンカチ
[思考・行動]
基本方針: 殺し合いを潰し、この島から皆で生きて帰る
1:ガッシュを相棒とし、元の世界に帰してやる。
2:情報を集める。
3:光彦を探してやる。
4:鍵を見つけて天空への塔の扉を開く。
5:他の施設にもワープする泉(旅の扉)があるかもしれない。
※ガッシュから魔物の王を決める戦いについて聞きました。
※魔本に表示されている呪文は第七の術〝ザグルゼム〟までです。七つの術の効果について理解しました。
※ガッシュとは別の世界から来ており、他の参加者も別の世界から呼ばれていると考えています。
※C-5『野比家』とE-7『天空への塔』が旅の扉で繋がっていることを知りました。
 天空への塔の先に行くには鍵が必要だと認識しました。
※他の施設にも旅の扉があるのではないかと推測しています。

ガッシュ・ベル@金色のガッシュ!】
[状態]: 健康、清麿と再会するための熱意
[装備]: なし
[道具]: 基本支給品、モンスターボール(中身不明)@ポケットモンスター、力の種@LSロワ2014オリジナル
[思考・行動]
基本方針: あの者(ポーキー)を倒し、殺した皆に謝らせる。清麿の元へ帰る。
1:コナンをパートナーとし、元の世界へ帰る。
2:鍵を見つけて天空への塔の扉を開く。
3:野比家の人間に会ったら、勝手に物を借りたことを謝ろう。
※千年前の魔物編終了後からの参加です
※コナンから魔本が使える仮説を聞きました。
※コナンから別の世界についての仮説を聞きました。
※コナンから施設間の旅の扉の仮説を聞きました。
※C-5『野比家』とE-7『天空への塔』が旅の扉で繋がっていることを知りました。
 天空への塔の先に行くには鍵が必要だと認識しました。


【力の種@LSロワ2014オリジナル】
ドラゴンクエスト5のちからの種と違い、
食べることで永続ではなく数秒間だけ筋力を倍増させる種。

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ガッシュ・ベルの登場SSを読む

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最終更新:2014年05月27日 23:03