ZAP!ZAP!ZAP! ◆.6msC4hQo6
泉研はジュラル星人殲滅のスペシャリストであり、戦力としては申し分ない。
だが、彼の世界の価値観は異質であり、他の参加者との断絶を生み出してしまう。
ゆえに、同伴する者は、万全の対策を練らなくてはいけない。
「お前はジュラル星人だな」
「ふぇっ、電は殺しに乗ってないのです」
少女は咄嗟にバックステップし、アルファガンの射線から離脱する。
そこへ慌ててフォローに入る二人組。
「研さん、撃つより先にスマホで確認でしょ。そんなやり方じゃ、なかまは増やせないわ」
タバサが間に割り込んで諍いを抑止し、
「いきなり怖い目に合わせちゃって、ごめんね。
研くんも思い込みが激しいだけで、ホントは頼りになる正義の味方なんだ」
のび太がお詫びにみずいろまんまる、つまりはソーダ味のペロペロキャンディーを差し出す。
「どうも、ありがとなのです」
少女はきょとんとした後、嬉しそうに受け取った。
「はぁ、はぁ、電さーん、僕をおいていかないで~」
そこに、彼女の味方らしき少年が呼吸を乱しながらやってくる。
電と真月は北の爆発を聞きつけて、争いを止めようと駆けつけたらしい。
「えっと、君たちも殺しに乗ってないってことでいいんだね?」
「のび太くん、タバサさん、一緒にポーキーを懲らしめましょう!」
研がひと通りのジュラル星人検査を済ませた後、情報交換が始まった。
最初は平穏に、つつがなく進んでいった。ジュラルの話題になった時、厄介ごとが発生した。
「よかれと思って、ジュラル星人を見つけたら仲間にしましょうよ」
「バカバカしい考えだよ。いいジュラル星人は死んだジュラル星人だけさ」
「ええっと、電は敵もできるだけ助けたい。もしかしたら、改心するかもしれないのです」
「ジュラル星人に心はない、信じても裏切られるだけだ!」
研と正反対のスタンスの真月、それをフォローする電。ひとりとふたりの意見は平行線だ。
実を言うと、研は彗星衝突の危機にジュラル星人と協力したことがある。
また、ごく稀にジュラル星人が人類愛に目覚めるケースもあった。
だが、研の固定観念が強すぎて、忘却の彼方だ。
「そもそも、この島にジュラル星人はいるのでしょうか」
「さあ……。僕もネッシーの証明なら大好きだけど、こんな場所まで来て熱くなれないや」
「ノビタさん、ネッシーとはいったいなんですか?」
「ええと、大昔の恐竜の生き残りで、イギリスのスコットランドにある――」
小声でささやく外野二人組。
研にジュラルの不在を説くのは、無駄と思い知ったので控えている。
そろそろ、不毛な議論を止めさせようと思った矢先、真月がさらなる爆弾発言を投下した。
「よかれと思って、殺し合いが潰した後に生き返らせちゃえばいいんです。
これで間違って善人を殺しても、うっかり悪人に殺されても問題ありません」
「ええっ!」
のび太は思わず目を丸くする。
彼はなんども危険な冒険をしてきたものの、ここまで割り切った発想をしたことはない。
どうしたものかと、タバサの様子を伺ってみる。なぜか無表情で心境を読み取れなかった。
「ジュラル星人が何度蘇ろうと、そのつど滅ぼし尽くしてやるぞ」
「ええと、ジュラルのことは脇に置いておいて、名案について詳しく知りたいな」
だが、彼は研をなだめるのに精一杯で、彼女がそうなる理由を察する余裕はなかった。
「はわわ、真月さんの言っていることが分からないのです。人間も艦娘も死んだら、生き返れないのですよ」
「ああ、まだ言っていませんでしたね。ランドセルにこんなものが入っていたんですよ」
少年は決闘盤から1枚のカードを取り出して見せた。
『No.96 ブラックミスト』、両胸に焔を宿す黒き悪魔のカード。
のび太はそれを見つめる内に、触りたい、自分のものにしたいという強いに思いに囚われた。
だが、真月がナンバーズをデッキに戻すと、奇妙な衝動もすぐに消えた。
不吉なものかもしれないけれど、特別な力があるのは間違いない。
「僕の世界に伝わる伝説なんですけど、ナンバーズを100枚集めると、
ヌメロンコードが完成して、どんな願いも叶っちゃうんですよ」
「それは素敵なのです。誰か願いを叶えた人はいるのですか」
「ええっと、全部集めた人を見たことはないので分かりません。
でも、ホントだと思っていた方が希望を持てていいでしょ?」
のび太は真月と電の楽しそうな様子を見て、アイディア自体は悪くないと思い始めた。
当然、これに納得できない者もいる。
「すぐにそのカードと腕輪を捨てるんだ!」
「研くん、そんなに怖い顔をしてどうしたんです?」
「これはジュラル星人の罠だ。島に眠るカードを集めさせて、死んだジュラル星人を蘇らせるつもりなんだ」
「ナ、ナンダッテー!?」
のび太と電は同時に驚きの声を上げる。
「渡せません、よかれと思っても絶対に渡せません。これはみんなを救う希望のカードなんです」
真月は研の要求を拒み、必死に腕のデュエルディスクを庇おうとする。
「君は敵が何の理由もなしに怪しいカードを配ると思っているのかい?」
意に介さず詰め寄る研。両者とも悪い人間じゃないのだろうが相性は最悪だ。
のび太の胃がストレスで針を刺すように痛む。だから、思いつきの言葉で場を収めようとする。
「別にナンバーズで揉めなくても大丈夫だよ。ひみつ道具を使えば似たことができるから。
こっちは未来デパートに売っていて、ジュラル星人の計画と関係ないよ、うん」
ひみつ秘密道具には並行世界を移動する『もしもボックス』だけでなく、
ウソ800やアトカラホントスピーカーのように、因果を改変する道具も存在する。
それにも関わらず、未来は戦争もなく平和な社会が保たれている。
未来人に頼めば、悪人のちょっかいを受けずに皆を救えるだろう。
「未来世界はそんなに凄いんですか。聞いているだけでワクワクしちゃいますね」
「とんでも過ぎて、頭が追いつかないのです」
「ドラえもんは前に、いきものを生き返らせるのは無理だって言っていたけど、
ここまでポーキーに無茶苦茶にされたんだから、絶対に説得してみせるよ」
あのネコ型ロボットの無理とは、あくまで道徳的なものだろう。
実際、タイムマシーンと未来の薬を使って、しずかの愛犬を生き返らせたこともあるのだ。
のび太は周囲の反応を伺ってみる。
「そんな裏技があるのなら、ナンバーズは途中まで集めて様子見でも良いかもしれませんね」
「あの子を復活させて、深海棲艦を元に戻してあげて、スペシャルパフェの山盛りを頼んで、司令官さんと……」
タバサは無言。先程より顔色が悪い。風邪でもひいたのだろうか。
ともかく、この状況でサポートして貰えないのはかなり辛い。そして、肝心の研は、
「のび太くん、失望したよ。まさか、君にジュラル星人の友人がいたなんて」
「うへぇ、なんでそんな話になるのさ」
「自分の家にしか、ロボットが来ないことを不思議に思わなかったのかい。
ジュラル星人は500年先の科学力を持っているんだ。未来人と偽るのは簡単だろう?」
「もう勘弁してよー」
いつも通りの反応だった。
◆ ◆ ◆
のび太は誤解を解くのに、そこから、数十分も掛かってしまった。
結局、真月はナンバーズを捨てるつもりはないし、研もカードの破壊を諦める気はない。
また衝突が起こりかねないので、両者の同行は諦めることにした。
「我がまま言っちゃって申し訳ありません。島を脱出したら、みんなでデュエルしましょう」
「タバサさん、のび太さん、研さん、皆さんの武運を祈るのです」
のび太たちは二人を見送り、こうして今に至る。
「や、やっと、おわったぁ……」
電柱を背にもたれ掛り、ゆっくり膝を曲げる。
話術平凡な小学生にアクの強い二人を取り持つのは無茶な話なのだ。
目の前にいるのが年下の異性でなくドラえもんだったら、
彼は泣きながら不満を爆発させるところだろう。
「お疲れ様。研の面倒は私が見ているから、楽にしてて良いわよ」
タバサは公衆トイレの前に立ち、周囲を警戒しながら言った。
ちなみに研はトイレの最中である。
「具合の方は大丈夫なの?」
「だいぶん、心の整理がついたから平気よ」
彼女はそう言って、左右の緑のリボンを外して、新しいリボンをつけ直していた。
その血色はだいぶ回復したように見える。
(ああ、やっぱり病気じゃなかったんだ)
では、蘇生の話題であれだけ気分を悪くしたのはなぜだろう。
すると、のび太の頭にひとつの光景が再生された。
――ザオリク! ザオリク!
――お兄ちゃん、もうやめてぇっ!
――ザオリク! ザオリク!
初めの会場で金髪の少年を止めようとしていたのは、タバサだったのではないか。
「ねえ、タバサ。ザオリクって――」
「ノビタさん、貴方のことは絶対に守りますだから、貴方も命を無駄にしないでください」
彼女は彼の問いかけを遮るように、真摯な瞳で念を押してきた。
良く分からないが、触れてはいけない話だったようだ。
「あ、うん……それにしても、研くんは遅いね。おおきい方だったのかな」
「ノビタさん、女の子の前でそういう下品な……あ、まさか!」
二人は顔を合わせ、そしてため息をつく。
のび太が慌てて男子トイレを確認すると、研は既にいなくなっていた。
◆ ◆ ◆
「島にもちゃんと川が流れていたんですねー」
電はしゃがみ込み、楽しそうに水の感触を味わっていた。
前日に雨が降った様子はないものの、川の水量はそれなりに高くなっている。
「全体
マップだと見られませんが、拡大モードなら載っているんですよ。
川沿いに東へ向かえば、鎮守府はすぐそこです」
「待ち遠しいけれど、変なことになってないか、ちょっぴり不安もあるのです」
彼女は真月の方を振り返る。そして突然、びっくりしたように南西を指差した。
「今、研さんがビルの谷間を飛び跳ねたのです」
「ええと、僕には暗くて見えませんが、電さんは目がいいですね」
スマホを見ているふりをして、こっそり首輪探知機で確認する。
真月はまだ、この装置の存在を他人には知らせてない。
確かに、赤い点がひとつ、急接近しているではないか。
(この点が研なら、こっちがヤツで……チッ、よからぬことが起きそうだぜ)
「今度は、はっきり見えるのです」
視線を上げる真月。人影はこちらの光源に気づいたのか、建物を飛び越え一直線に近づいてくる。
その軽妙な身のこなしは、日本古来に実在したとされる伝説のNINJAだ。
「おーい、研さーん。こっちですよー」
真月は嬉しそうにランタンを振って、存在をアピールする。
「なんか様子が変なのです、後ろに下がっていてください」
電は彼の前に出て、基本艤装を装着する。
研はガレージに飛び乗って仁王立ちする。街灯が鬼の形相を照らし出す。
服装は少し変化しており、奇妙なヘルメットをかぶっている。
電はそれを見て、小さな悲鳴を上げたものの、勇気を振り絞って言葉を紡ぐ。
「研さん、タバサさんやのび太さんはどうしたのですか」
「安全な場所で眠らせているよ。君達をジュラルの手下だって認めたくなかったみたいだからね」
研に宿る断罪の瞳は、正義に燃える少年ヒーローと害虫駆除に精を出す庭師が混在している。
「僕はジュラル星人じゃないですよ。信じてください」
真月は前に駆け出し、必死に誤解を解こうとする。
電は無防備すぎる彼をみて、咄嗟に庇える位置に立つ。
「騙されないぞ、ジュラルの悪者め!」
「君もスマホのファインダーで確認したじゃないですか」
「じゃあ、ジュラルの人間ロボットだな、死んでしまえ!」
その台詞を言い終えるや否や、光線銃を抜き撃ちしてきた。光線の標的は電の方だ。
背後には真月がいるので、避けるのは無理だ。ならば、自分の艤装で受け止めて見せる。
電がそう覚悟を決めた刹那、
「トラップ発動、《シャイニング・スタント》っ!
このカードの効果により、相手モンスターの攻撃を無効にし、バトルを終了させる!」
真月の渾身のシャウト。電の前に一枚のカードが現れ、緑色の閃光で赤い光線をかき消した。
「そして、その攻撃力の半分のダメージを―――――ボクが受ける!!」
苦痛に顔を歪ませながら、片膝をつく。
「はわわ、真月さん、大丈夫なのですか」
「はは、死んでもどうせ生き返れるんですから、僕の命なんて安いものです」
彼は弱々しく微笑む。
「気持ちは嬉しいけど、無理はいけないのです。
生き返りの話が本当でもウソでも、死んだらとても痛いのですよ」
「すみません、こんなヘタレでも電さんの役に立てると思ったら、つい張り切っちゃって」
電は真月を背負い、橋脚に向かって走り出す。
身長差のせいで、彼の足を地面に引き摺るかたちになっている。
「彼女を庇うなんて、やっぱり君もジュラルの手下だったんだね」
研は銃口を向ける。だが、指先が動こうとしない。
これは彼のバトルフェイズが一時的にスキップされたためだ。
ただし、この効果は数十秒経つか、敵が攻撃した時にキャンセルされる。
「おのれ、ジュラル星人、姑息なマネを」
真月は研な罵声を聞きながら、面倒なことになったと心で舌打ちする。
泉研とは、巡り巡ってこちらに被害を及ぼす、いわば無能な味方だ。
だから、善意を装って研と意見対立し、そのまま別れるつもりだった。
そのせいで研に命を狙われたのは、彼にとっても予想外である。
電は走りながら、駄目元で交渉を持ちかける。
「研さん、ナンバーズを渡したら見逃してくれないですか」
「お前たちはそうやって、こちらの隙を突こうとするんだろ」
少年は彼女を睨みつけた後、アルファガンの異変を確かめる。
「うぅ…ぜんぜん聞く耳持ってくれないのです」
「電さん、僕をおいて逃げて下さい。貴女だけなら助かります」
「そーゆー、ブラックな命令は司令官さん以外はしちゃいけないのです」
今の彼女は年相応の幼女ではなく、戦う兵士の覇気を纏っていた。
真月はそれに気づいて、秘かに口角を歪ませる。
(ホントはてめえの魂食らってライフ回復するつもりだったけどよ。
思ったより傷は浅えから、試食品から保存食に格上げしてやるよぉ。
手間暇かけて絶望させるのも面白そうだしな)
「しまった。うっかり麻酔銃モードにしたままだったよ。
これじゃ、人間ロボを撃っても破壊できないね」
研はアルファガンのスイッチを破壊光線モードに切り替える。
刹那、真月の威勢の良い掛け声を聞き、視点を川岸に戻す。
「よかれと思って、ライディングデュエル、アクセラレーションッ!」
電が水面走りで水飛沫を立てながら、その上に真月を肩車していた。
「はぅ、これはちょっと恥ずかしいのです」
「水適応Aの機動力で、僕がデュエルで牽制する。逃げるには完璧な布陣でしょ」
はしゃぐ少年に先ほどの疲労の色は見えない。
「そんな綺麗な目で語られると。何も言えなくなってしまうのですよ」
電は観念したような表情を浮かべる。
そして、充分に勢いをついたところで滑走モードへ移行、更に加速する。
彼らが目指すのは川の終着点、鎮守府近くの入り江だ。
「ジュラル星人め、今度こそぶっとばしてやる!」
研もガトロシューズから炎を噴出し、宙に浮いて並走してくる。
真月はデッキから得意気にカードをドローして、
「ここは僕に任せて下さい。シャイニング・スライを表側守備表示で召喚!」
モンスターゾーンにカードを横向きに設置する。
すると、三角帽を被る仮面男がローブを纏って現れる。
「わあ、元がペラペラのカードなんて信じられないのです」
「帽子の色と鼻の形がジュラルの魔王だ。やっぱりジュラル星人だったんだな!」
研のアルファガンから、黄色の破壊光線が発射される。
仮面男は絶叫を上げながら、あっけなく蒸発した。
「ああっ、シャイニングスライが。黄色い光線は赤いビームよりも威力が高いみたいです」
「真月さん、ナンバーズのカードを召喚できないのですか」
「すみませんっ、あれはエクシーズ召喚しないと強くないんです。
でも、ボクはデュエルが下手で出し方が良く分からなくて……」
研の引き金は容赦なく、二発目の光線を放つ。
「全速前進なのです!」
電は急加速して、これを回避。そこから滑るように蛇行して、照準を合わせづらくする。
「素晴らしいですよ、電さん。この調子でアイツを引き離しましょう」
「ま、前に屈まれると、前が見えないのですよ」
電はバランスを崩し、単調な直線に戻ってしまう。
研はその隙を見逃さず、照準を彼らに合わせる。
「ご、ごめんなさい! 僕はシャイニングボンバーを守備表示で召喚!」
対爆スーツのモンスターが間一髪で、真月への攻撃を阻む。
けれど、肉壁が壊れるのも時間の問題。また撃たれれば、今の電に避ける余裕はない。
が、真月は姿勢を正し、研を見据えて宣言する。
「僕だってタダではやられません。
このモンスターは破壊された時、相手に爆発のダメージを与えます!」
シャイニングボンバーは起爆レバーを押し込む。研は閃光混じりの爆発に襲われた。
刹那、真月と電も背中に強い衝撃を受ける。
「しまった!? 効果の範囲が全員だったのを忘れていましたあああっ!」
爆風の力で電の滑走速度は爆発し、研との距離を一気に突き放す。
「ちょっと痛かったですが、人生塞翁が馬ですね」
「はわわ、勢いが止まらないのです」
減速は間に合わず、カーブを曲がり切れずに突っ込んだ。
その弾みに真月は後ろに放り出され、電は顔から地面に突っ込んだ。
◆ ◆ ◆
研は超能力を使って、電を生身の人間ではないと察知していた。
彼女は自分のことを妖精さんに建造された艦娘と誤魔化していた。
きっと、ジュラル星人に改造された人間ロボットに違いない。
真月の様子もおかしかった。機械ではないものの、ただの人間でもなさそうだ。
その上、ジュラル星人を庇うだけでなく、怪しいカードを集めているのだ。
いつぞやのミイラ怪人のように、ジュラルと同盟を組む宇宙人に間違いない。
地球は様々な敵性宇宙人に狙われているのだ。
それなら、彼らがスマートフォンに映らなかった説明もつく。
人間でなければ、アルファガンで一人残らず滅ぼしても構わないだろう。
けれど、仲間のタバサとのび太は彼らを仲間と信じて疑わない。
研はふたりを麻酔で眠らせて、ひとりで討伐に向かった。
だが、標的はいつものジュラル星人よりもしぶとかった。
「このモンスターは破壊された時に、相手に爆発のダメージを与えます!」
研は横転しながら受け身を取り、爆発のダメージを最小限に留める。
すぐに起き上り反撃を食らわせようとしたものの、敵は既に遠くへ逃げ去っていた。
思えば、電達の行動は妙だった。避けに徹して、必要最小限の反撃しかしてこなかった。
いつものジュラル星人なら、伏兵を用意して襲い掛かってきただろう。
その時、チャージマン研の灰色の脳細胞に電流が走る。
これは居残り組を襲うための陽動作戦だ。
電は、雷や響という仲間がいると言っていたではないか。
ジュラルの抹殺は大切だが、今はタバサ達の安全を優先だ。
ジェット噴射を全開にし、待ち合わせ場所へ飛び帰る。
「のび太くーん、タバサさーん、いたら返事しておくれよー」
口に手を当て、腹の底から呼びかける。されど、自分の声が夜の公園に響くのみ。
嫌な予感がして、彼らと最後に話した場所に戻る。
公衆トイレの近くの茂みを掻き分けると、心臓が止まりそうになった。
のび太が目を剥いて、仰向けで倒れているではないか。
ただ眠っているだけではないかと、僅かな期待を胸に脈と呼吸を確かめる。
けれど、悪い予想は的中してしまった。
「……ジュラル星人め、なんて卑劣なことをするんだ」
殺害方法はいつもの破壊光線ではないだろう。それだと肉片残らず燃え尽きるはずだ。
キチガイレコードのような特別な兵器を使ったに違いない。
麻酔銃で眠っていたために、逃げることさえできなかったのだろう。
無抵抗な人間を襲うとは、ジュラル星人らしい悪行だ。
研は後悔する。のび太達に気を遣わず、問答無用で射殺すべきだったと。
直観の命じるままにアルファガンを撃った時も、すべてジュラル星人だったではないか。
「のび太くん、君の仇を討つために、ランドセルを使わせてもらうよ」
続けてタバサを探してみるも、その遺体は見当たらない。
彼女がのび太の下手人とは考えたくない。おそらく、ジュラル星人に拉致されたのだろう。
彼らは研と有利に戦うために、家族や仲間を人質に取ることも多いからだ。
「ジュラル星人、必ず息の手を止めてやるから待っていろよ!」
研は拳を強く握りしめ、決意を胸にスカイロッド号へ向かって歩を進める。
通信手段なしに人質を取ってもあまり意味がないとか、
電達を独りで追いかけたのは、研の思い付きだとかは考えてはいけない。
経験則だと、ジュラル星人は決戦の場をお膳立てしてくれるのであり、自分は好きに動けばよい。
そして、今回も都合の良いタイミングで、南西に光の柱が天を貫いていた。
泉研は人道主義者である。たとえ銀行強盗であろうと、人間に破壊光線は使わない。
そんな彼のために、後日、アルファガンに麻酔銃機能が搭載された。
だが、それで眠らせたのはライオン、しかもジュラル星人が鍛えた個体だけだった。
その直後に、うっかり麻酔銃モードのまま撃って、相手を蒸発させている。
だが、それは宿敵のジュラル星人だったので、気にも留めなかった。
それは彼の大きな過失である。
普通のスタンガンでさえ、当たり所が悪ければショック死してしまうケースがあるのだ。
高出力の麻酔ビームを小学生に直撃させたならば、どんなことが起こるだろうか。
もっとも、研は真実を知ったとしても、深刻にとらえるかは別問題なのだが。
|【野比のび太@ドラえもん 死亡】
【D-4 市街地/早朝】
【泉研@チャージマン研!】
[状態]:ほぼ無傷
[装備]:アルファガン@チャージマン研!、スペクトルアロー@チャージマン研!
[道具]:基本支給品一式×2、まふうじのつえ@DQV、ランダム支給品×0~1
ランダム支給品(のび太)×0~2、みずいろまんまる×11@リリカルなのはシリーズ
[思考・行動]
基本方針:ジュラル星人に化けた老人を殺す
0:ジュラル星人に対する激しい怒り
1:スカイロッド号を目指す
2:タバサを浚ったジュラル星人を退治し、のび太の仇を討つ
3:あの光の柱は?
4:超能力で人外と分かった相手は全て警戒、もしくは殺害
※真月を敵性宇宙人、雷、電、響をジュラルの人間ロボットと考えています
※のび太の支給品を手に入れました
【みずいろまんまる@リリカルなのはシリーズ】
のび太に支給。ソーダ味のペロペロキャンディ1ダース分。雷刃の襲撃者の大好物。
【ガドロシューズ@チャージマン研!】
脚部に装着されているカセット式ジェット噴射靴。
これを使ってある程度自由に飛行することができ、いざという時には攻撃にも利用可能。
スペクトルアローで変装時、自動的に装着されるのでランダム支給品にはカウントされない
◆ ◆ ◆
わたしのココロは殺し合いの最初から、ちょっとヒビが入っていた
――ザオリク! ザオリク!
あ兄ちゃんの必死なさけび。私は止めてと言いながら、冷めた心で気づいていた
神様のえこひいきがなくなって、全滅しても教会に戻れない
それどころか、ここで命を落としたら、二度と復活できなってしまう
ひみつ道具を使えば、そんな世界を作れてしまう
ノビタさんは分かってないけど、ドラエモンの言っていることは本当
復活できなくなった死人を生き返らせるのは、因果律がどうのこうので難しい
お父さんも過去世界でゴールドオーブを取り戻せても、おじいちゃんを救えなかった
大昔のロザリ―さんのような特別な奇跡は、誰もが受けられる訳じゃない
からだの震えが止まらない
防具を全部脱がされて、土砂降りに放り出されたような気持ちがする
いっぱい泣いて弱音を吐きたい
だけど、甘えていたら、誰も助けられなくなる
わたしはお父さんとお母さんの子どもだから、頑張れる
ぜんぶの参加者を救えないのは分かっている。元の世界もそうだから
それでも、一緒にいる仲間くらいは守り切れると信じていた
強い自分を演じて、ココロがバラバラになるのを抑えていた
でも、そんな私の決意はあっという間に粉々になった
――悪いけど、急がないといけないんだ。君達にはすこし眠っていて貰うよ
つまみ食いした子をお仕置きする調子で、ノビタさんの命を奪っていった
わたしは信じられなかった、あんな顔をしながら、人を殺せる子どもがいるなんて
ホントのアナタは非力な憶病者、誰も守れやしないのよ
そんなことないよ、ふいうちでなければ、ノビタさんを守れたもの
言いわけに意味はないわ、失敗したら終わりじゃない
止めて、そんなこと言わないで、私を責めないで
止めてもいいけど、どんどんみんな死んでいくよ
さあ、どうするの。さあ、さあ、さあっ!
なにかしなきゃいけないのに、まわりはぜんぶ真っ白で
ココロが脆いガラスみたいに割れていく
――待ち合わせは公園のベンチにしよう。すぐに戻ってくるから安心して
あたまがだるい。でも、もっともっと遠いところに逃げないと
はやくしないと、アイツに追いつかれちゃう
逃げないと、にげないと、
こわい こわい こわい こわい こわい こわい こわい
おとおさん、おかさん、おにいーちゃん、だれかタスケテ
【C-3 市街地 早朝】
【タバサ@ドラゴンクエストV 天空の花嫁】
[状態]:恐慌状態、麻酔銃による軽い倦怠感
[装備]:ようせいのリボン@MOTHER3
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~1(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:ポーキー・ミンチを倒す
1:研から逃げる
2:家族と合流
3:敵の排除
※この島で死ぬと蘇生は不可能だと思っています
※参戦時期は、両親の石化を治して以降です。
※ようせいのリボンのお陰で麻酔の影響を殆ど受けませんでした
【ようせいのリボン@MOTHER3】
タバサに支給。眠りに耐性を与えるリボン。防御力もそれなりにある。
◆ ◆ ◆
「あうぅぅ……」
電は両手抑えて痛みをこらえている。
真月は伏せた体勢のまま、首輪探知機で赤い点の移動を確認する。
「研さんは追ってこないみたいですね。鎮守府もすぐ傍ですし、ひと休みできそうです」
彼女の頭を優しく撫でる。
「これもみんな電さんのお陰です。僕は状況を悪くしてばっかりで、申し訳ありません」
すると、電は彼の方に向き直り、首を左右に振った。
「ぜんぜん、そんなことはないのです。
真月さんがモンスターを出してくれなかったら、アイツに撃たれていたのです」
実際、シャイニングボンバーの爆発で視界から逃れなければ、
研は仲間の元に戻るよりも、彼らを狩ることを優先しただろう。
「えっ、僕が役に立った……?」
「はい、二人でつかんだ勝利なのですよ」
電はのび太に貰ったみずいろまんまるを、包装ごしに二つに割って、真月の前に出す。
彼の顔を見ると瞳が僅かに潤んでいた。
「すみません、僕はよかれと思ってやっても、いつも裏目ばっかり出て、
だから、電さんの役に立てて、嬉しくなっちゃって……」
真月は零れる涙を拭い、まっすぐな笑顔でソーダキャンディを手に取った。
(ンフフフフヒャハハハアハハハ、チョロすぎて涙が出てくるぜえ。
ごほうびに、別れた連中がどんなことになってるか――――教えてやんねーっ!)
真月零ことベクターは、首輪レーダーでタバサとのび太の状況を推理していた。
彼らの内、どちらかが研の手により死亡、残りは心を折られて逃走か。
これを電に伝えると生き残りを保護する必要が出るし、首輪探知機の存在もまだ伏せておきたい。
それに、彼女はまだ、一度仲間になった相手を信じたい節がある。
だからこそ、研を積極的に攻撃する選択肢を取らなかった。
(落とすときは一気に落とすのがオレ様の美学だ。早々と覚悟完了されちゃつまんねえんだよ。
……ソーダキャンディ、悪かねえな。そういや、くれたメガネのガキが面白いこと言っていたな)
どんな願いも叶えるひみつ道具があるという。
ポーキーがそれを用いて殺し合いを開催したのなら、こちらに勝ち目はあるのだろうか。
ベクターはあると考える。ひみつ道具は誰でも使えるアイテムに過ぎない。
本来は、のび太を巻き込むのは愚の骨頂。友人の未来人に干渉される危険がある。
すると、ポーキーはひみつ道具よりも上位の力を持っていると考えるのが自然だ。
だが、そこに矛盾がある。
それだけの力を持ちながら、彼はなぜか苦しそうに咳込んでいた。
不老不死に飽きての病弱プレイか。いや、あれは見栄を張るタイプだ。
可能ならば健康体で他人の前に現れたはずだ。
(要するに、あのジジイは何かの『力』を完全には使いこなせてねえ。
下手すりゃ、奴自身も『力』の支配下にあるな)
お手軽な因果操作では太刀打ちできない、ヌメロンコードに匹敵、下手するとそれ以上の力。
それが人格を持つ黒幕なのか、強力なアイテムなのかは分からない。
だが何にせよ、ポーキー自身の力でないのなら、出し抜きやすくなったのは確かだ。
ベクターは全ての力を手中に収めんと胸の内で邪悪に哂う。
【C-4 鎮守府前/早朝】
【真月零@遊戯王ZEXAL】
[状態]:軽傷、疲労(小)、人間態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、決闘盤とカード(ベクターのカード)@遊戯王ZEXAL、首輪探知機@LSロワ2014オリジナル、
不明支給品×0~1
[思考・行動]
基本方針:良からぬことを企む
1:真月零の姿で殺し合いに乗っていない者達の中に潜む
2:電が利用できる存在か見極め、用済みならば魂を喰らう
3:遊馬とアストラルは必ずぶっ殺す!
4:主催者を乗っ取りさらなる力を得る
※アニメ130話、メラグとナッシュがバリアン世界に戻る直前からの参戦です
※バリアン体での分身能力、瞬間移動が可能かどうかは不明です
※バリアンズスフィアキューブなしでバリアルフォーゼは可能ですが、体力を消耗します
※電やのび太、タバサ、泉研と情報交換し、平行世界の存在を確信しています
※ポーキーの背後に黒幕、もしくは特殊な力が存在すると考察しました
※シャイニングスライ、シャイニングボンバー、シャイニングスタントは一枚ずつ使用済。デッキ内に何枚ずつ入っているかは後続にお任せします。
【電@艦隊これくしょん】
[状態]:軽傷、披露(小)
[装備]:基本艤装@艦隊これくしょん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない
1:真月さんと鎮守府に向かう
2:司令官や響、お姉ちゃんに会いたい
3:研さんと仲直りしたいが、今は会いたくない
4:ナンバーズとひみつ道具に関心
※真月零に信頼を寄せています
最終更新:2014年03月28日 18:18