ダイナマイトコネクト◆1Udq39SlSU
「どうして私、ここに居るんだろう……?」
鹿目まどかは因果律をも超越した概念という存在となった。
過去と未来、全ての魔女を生まれる前に消し去りたい。
その祈りを叶える為にキュゥべえ―――正式な名はインキュベーター―――と契約をかわし、魔法少女となった少女の末路だった。
人々の記憶から忘れ去られ、存在すら感知されない。
全てを書き換えた世界でまどかを忘れず、記憶や想いを受け継いでいるのは暁美ほむらただ一人。
なのに、今まどかは肉体を持ち世界に存在し、干渉している。とても、考えられないことだった。
「どうして」
溜まらず、また繰り返してしまう。
自分で言うのもなんだが、今のまどかは神といっても過言ではない存在だ。
それを無理やり拉致し殺し合わせる。まどかが行った世界の書き換えよりも有り得ない話だ。
ポーキーと名乗る老人は一体何者なのか。
もしこの場にキュゥべえが居れば、頼まれても無いのにエントロピーがどうだのと、目の前の異常事態を詳しく解説してくれた事だろう。
「それに、この衣装」
纏っているピンク色の衣装をまどかは見つめる。
これは別の時間軸において、魔法少女へと変身したまどかが着用していた衣装だ。
形だけ見繕ったものかとも思ったが、弓矢が取り出せたことから全ての力を失ったわけではないらしい。
つまりポーキーは程ほどに弱体化させながら、まどかを殺し合いに放り込んだ。
「私は……」
神すらも凌駕し得る存在。
殺し合いに、まどかは従うしかないのかと弱気になってしまう。
常識的に考えれば抗えるわけがない。
人を殺したくはない。でも、従わなければ―――
―――まどか
脳裏を一人の少女が過ぎった。
「ほむら、ちゃん……?」
100、いや1000すら超える戦場をたった一人で戦い抜いた少女が居た。
勝てるはずがない。変えられる筈がない。
最早、無謀以外の何物でもない戦いを少女は戦った。
ある少女との約束の為に、友達を救うために。
諦めず、ただひたすらに戦い続けた少女をまどかは知っている。
「そうだよね……。諦めちゃいけないよね……」
こんな場所で挫けてしまっては、自分の為に何度でも何度でも立ち上がり、戦い続けた友達に顔向けが出来ない。
例え勝ち目が無かろうとも、無謀であろうとも、必ず抗ってみせる。
自らの思いを受け継いでくれた友達の為に……。
「私は、こんな殺し合い、必ず壊してみせる!」
ここに神となった少女の叛逆の物語が幕を開けた。
「お菓子好きかい?」
「ええー!?」
と、思い立ったのが数分前。
まどかはそんな決意を固めた後とは思えない程、間の抜けた叫び声を上げていた。
何せ配られたランドセルを開け中身を確認してみたら、中からスーツを着た老人が現れたのだから驚いてしまっても無理はない。
明らかにランドセルの質量を無視した収納と、何で人間が入っていたのか、まるで訳が分からなかった。
「あ、あの……」
「おや? 君は?」
「それは私の台詞なんですけど……」
辺りをキョロキョロと見渡す老人を見て、まどかは戸惑いながらもこの場で何が起こっているのか。
どうして自分達は出会ったのか経緯を話す。
話に耳を傾ける老人は、見るからに驚いた顔をし困惑していた。
……一番、困惑したいのはまどかなのだが。
「うーむ、信じがたい出来事だね。
だが、私も心当たりが無いわけではない」
「え? それって……」
「この場に来る前、謎の男達にわしは誘拐されたみたいでね」
老人が言うには、映画館で飲み物を買っていたら複数の男に囲まれ銃を突きつけられ発砲。
意識を失い、再び意識を取り戻した時には、ランドセルの中に居たらしい。
「どういう事なんでしょう。
その男の人達が……えーと」
「ボルガ、こう見えても博士でね」
「すいません。ボルガ博士……で良いですか?
私はまどか、鹿目まどかです」
博士というだけあって知性、気品も感じられ落ち着いている。
何より神に等しい魔法少女とはいえ、中身はまだ13歳の少女、大人が近くに居てくれるのは心強かった。
「うむ、殺し合い……もしかしたら、他にも私のようにランドセルに入れられた者が居るかもしれない」
「でも何のために?」
「質問に質問で返して申し訳ないが、君は殺し合えと言われて、素直にそんな事するかい?」
「いえ、そんな事は……」
「これは推測だがね。殺し合いを開いたものは、わざと殺し合いに関係の無い者……部外者を数名呼んでいるのではないのだろうか。
その中に殺し合いの参加者の大切な身内を混ぜたりすれば、そうでなくても弱者の保護の為にと、戦いの火種は大きくなるものだよ」
なるほどボルガ博士の言うことはもっともだった。
戦いを広げるために部外者を何人も呼ぶ。悪趣味そうなポーキーならば考えそうな事だ
「状況は把握した。
微力ながらも力になりたい、先ずは君達が付けられている首輪の解析から始めようか。
話を聞く限りそれを外さねば、いつ殺されてもおかしくはないからね。
私も博士だ、これくらいは何とか外せるだろう」
「すみません、ボルガ博士……」
「何、君が謝ることじゃないさ」
話を纏めた二人は首輪の解析という方針を立てた。
「そうだ、地図を見せてもらえるかな?」
ボルガ博士にまどかは支給された地図を手渡す。
(鎮守府……明治時代から設置された日本海軍の本拠地だったか。
確か第二次世界大戦終了後に廃止された筈だが……。
後に相当するものが出来たとはいえ。何故、そんな時代遅れのものがあるのか分からんが、軍事施設なら多少の機材はあるかもしれんな)
顎に手をやりながら、思案を巡らせた博士はまどかに地図を返すとこう提案する。
「首輪解析に必要な道具が欲しい。
近場の鎮守府にでも行ってみようか」
「分かりました」
当面の目的地を鎮守府と定めた二人は夜道を歩みだす。
その時、無数の弾丸。いや何らかのエネルギー、まどか達の言葉で言うならば魔力の弾が降り注ぐ。
「下がって! 博士!!」
申し訳ないと思いながらも博士を突き飛ばし、まどか自身も弾丸の射程から外れる。
そのまま弾丸の軌道上から弾丸の射手を定める。
まどかは弓矢を取り出すと射手へと狙い打った。
上空に居た弾丸の射手は、その背中に付いた羽をパタパタさせながら下降し矢をかわす。
加速しまどかへと接近、ランドセルから一振りの剣を取り出し振りかざす。
「な、何て、思い攻撃……!」
「人間にしては頑丈なのね」
弾丸の射手はまだ幼い。
髪は金色で外人だろうか、目は赤く、まどかより頭一つ分程低い身長。
背中から生える異様な羽が特徴的だが、それ以外は至って普通な少女。
しかし、外見からは考えられないほどの怪力でまどかを切り殺さんと剣が迫る。
まどかは咄嗟に弓で受け止めたものの、弓はミシミシと音を立て長くは持ちそうに無い。
「!?」
少女の体が僅かにぶれる。
見れば、ボルガ博士が捨て身の体当たりを仕掛けてきていた。
少女からすれば大したこと無い衝撃だが、気を取られてしまったのが隙を作ってしまう。
少女の怪力が緩んだところへ蹴りを放つ。
もろに腹部へと、まどかの足が食い込み少女は溜まらず吹っ飛ばされる。
まどかは弓を携え、矢を放つ。
「博士、今の内に!」
「うむ」
少女の視界がまどかの矢によって引き起こされた砂煙によって塞がれる。
まどかが狙ったのは少女ではなく少女の足元、地面。
砂を巻き上げ、視界を悪くして逃亡を図ったのだ。
砂煙が晴れ視界が良好になった時には、もうまどか達の姿は無かった。
――――――
「危ないところでしたね」
「ん、……ああ」
「博士?」
殺し合いに乗った参加者から逃げ延び、安堵の息をつくまどか。
それに対し、ボルガは顔色が優れず体調が悪そうに見える。
まさか、何処か怪我をしたのではないかと心配をしたが、見た目は何処も悪そうには見えない。
言ってしまっては悪いが、歳という事なのだろうか。
「少し疲れたみたいだ……すまないね」
「そうですか、少し休んでいきますか? 何なら、ランドセルの中に入って私が運びますよ」
「そうだな……そうさせて貰おうか」
まどかはランドセルを開けひっくり返し、中のものを全てぶちまける。
人が入るのだから居心地が悪くてはいけない。
出来る限り、手に持てる物は持っておこうと思った。
「えーとこれが地図で、スマートフォン、名簿……あれ、この紙なんだろう?」
予め支給されてると言われている物の他に妙な紙が一枚入っていた。
紙質や字面から、何らかの説明書のようだ。
まどかは手にとって折り畳んであった紙を広げてみる。
「人間、爆弾? 何これ」
読み進めてみると、頭の中にダイナマイトを埋め込み時限式で爆発すると書かれている。
ランドセルに入ると爆弾は止まり、ランドセル外に出ると約30分程で爆発するらしい。
最後に有効活用法として、人が集まった場所に人間爆弾を放ち。油断してるところを爆破させる等とある。
そして、その名称は。
「ボルガ博士……?」
説明書を読み終えたまどかの隣で博士がゆらりと立ち上がる
その姿はまるで、ゾンビのような不安定なもの。
気のせいだろうか、何やらちくたくとカウントを刻んでいるかのような音が聞こえる。
博士は生気の無い目でまどかを見て一言。
「すまない……許してくれ」
「博士が光っ―――」
まどかは優しすぎた。
もしも、これがほむらであったのなら、ボルガ博士が支給品として割り切っていたかもしれない。
だがまどかは違った。一人の人間として扱いすぎてしまった。
結果、爆破に巻き込まれ、彼女はソウルジェムごと肉片一つ残さず消し飛んだ。
――――
「鎮守府の辺りね」
天高く上る火柱を見て、
フランドール・スカーレットは呟く。
確か、先ほど戦闘を行った少女と老人が逃げた方角だったが、また誰かに襲われたのだろうか。
まあどっちしろ構わない。
無理に行って殺しあう必要性も感じられずフランは踵を返す。
ポーキーと名乗る老人に殺し合いをしろと言われた。
だから、殺し合う。フランの思考は至ってシンプルだ。
ランドセルを漁ってみると奇遇なことに、フランと同じスペルカードの名を持つレヴァンティンという剣が入っていた。
殺しあえというだけあって、中々の獲物を渡してくれたものだ。
そのご期待に沿うというわけではないが、早速目にした二人組みと剣で戦った。
ただの気まぐれだ。
「珍しいものが多いのね」
殺し合いに乗るとはいったものの、フランは積極的に乗っているわけではない。
取り合えず殺せば帰れるくらいの認識だ。
だからこそ、目先の狩より普段見たことの無い物に興味を示す。
どうせ帰っても、また幽閉されるだけなのだ。なら、その前に幻想郷の外を見て回るのも悪くない。
フランは好奇心に釣られ歩き出した。
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】死亡
【C-4/深夜】
【フランドール・スカーレット@東方Project】
[状態]:健康
[装備]:レヴァンティン@魔法少女リリカルなのはシリーズ(カードリッジ残り4)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~2
[思考・行動]
基本方針:殺し合って帰る
1:色々見て回る
【ボルガ博士@チャージマン研!】
人間爆弾へと改造された可哀想な博士。
本編では主人公、泉研の手により乗っていたスカイロッドから落とされ、ジュラル星人の乗っていた飛行船へとぶつかり爆発した。
【レヴァンティン@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
ヴォルケンリッターの将。烈火の将シグナムが持つ、剣型のアームドデバイス。
カードリッジにより様々な形態に変わる。
同梱のカードリッジ数は4発。
最終更新:2014年03月24日 16:06