マクロスFRONTIERでエロパロ まとめwiki

6-328

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匿名ユーザー

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328 :黄昏れの丘で… :2009/02/24(火) 02:20:45 ID:mqbcFLas
アルト×シェリル (エロなし。なのに長くてスミマセン><)
後日談です。



最後の戦いが終わり、復興に向けて人々は慌ただしい日々を過ごしていた。
もちろん、早乙女アルトもその一人だった。
そして…復興から数カ月、荒廃の中でも人々が秩序を取り戻した頃…

シェリルが姿を消した。

彼女に身寄りはない。
アルトは思い付く限りの場所を探した。
V型感染症の恐怖は消えたとは言え、彼女は病み上がりなのだ。

…しかし、どれだけ探しても彼女は見つからなかった。

…任務の間にシェリルを捜す、そんな日々を過ごして彼は気付いた。
-シェリルは俺を避けているのか?-

フロンティアからの知人はアルトと共通のものだし、歌を歌っているなら消息はつかめる。
この星から出た形跡もない。
「なぜだ?シェリル!」
アルトはやるせない思いを抱えながら、与えられた任務をこなし…未だ見つからないシェリルを探し…
哀しい答えにたどり着いたのだった。



…そして1年以上の月日が流れる。


「アルトくん、ごめんね。付き合わせちゃって」
「いや、いいんだ。おまえも頑張ってるな。無理してないか?」
「そ、そんな事ないよ。…たくさんの人を悲しませから…あたしが出来る事、したいんだ!」
「そうか…。あ、ちょっと待ってくれ」
-戦いの後、ランカをよく思わない人間はかなりいた。それもあって、ランカは今でも一人で外出することはない。
こうして慰問やチャリティライブに行く際は、アルトやブレラ、オズマ等が付き添っていた。
そんな帰り道…アルトは携帯メールが届いた。ランカはそんな彼をじっと見つめる。

戦いの後、「恋も歌も負けません!」そう言った。恋敵であり憧れだった人は笑って頷いてくれたのに…
今は消息はつかめない。
居なくなってすぐは「じゃあアルトくんは私のものかも!」なんて脳天気に思った事もあった。けれど…。
「ランカ、クランが用事があるって………ミシェルの所で待ってるって言うんだが…」
「あ、そうなんだ?
…もし、迷惑でなければ…一緒に行ってもいいかな。ミシェルくんのお墓参り…しばらく行ってないから」
「ああ…」
アルトが微笑む。

(綺麗だなぁ…)
ランカは初めて会った時と同じように彼に見惚れ…あの頃から遠くに来た自分たちを思った。
ランカは本当はクランの前に立つのは辛い。
彼女の誰より大切なひとを奪ったのは自分も同然だから。
ミシェルの墓前に立つのも、どんな気持ちでいたらいいのかわからない…それが正直な気持ちだ。
でも…少しでもアルトのそばにいたい…それもランカの偽れない気持ちだった。


黄昏れの中、アルトとランカはミシェルの墓標へ向かう。
並んでではなく、アルトの少し後をランカが追って。
声をかけられない。
…アルトの心はきっと失った友人で占められているのだ。

アルトは空が茜色になるのを見ながら、ミシェルの言葉を思った。
恋と友情の区別も付かずにいる自分に業を煮やしていたのを思い出す。
(いろいろ、心配させてたみたいだな)
ミシェルの呆れたような心配そうな顔を思い出し、苦笑する。
そして自分の恋には正直になれずにいた男を思い、…同じように意地っ張りだった姿を消したひとを思う。
元気でいるのか?一人で泣いていないか? 建前と裏腹な彼女が心配でならなかった。
(バカだな…)
彼女はたぶん…あえて自分の前から姿を消したのだ。それでも…心配だった。


…小さくため息をついて、アルトは目線を上げた。
赤く染まる墓標。
そこに………

捜し続けた姿を見つけた。


「シェリル…!」
細い後ろ姿。夕暮れに光るピンクブロンドが揺れる。
アルトは無意識のうちに走り出していた。後ろで驚いてランカが呼び掛ける声は耳に届かない。

白い後ろ姿は、アルトを見つけて身を翻す。
アルトはその後ろ姿を追い掛け…ついに細く白い手をその手に掴んだ。

「シェリル…!」
彼女は振り向かない。肩が小刻みに震えていた。
「シェリル…おまえ……」
アルトには山のように言いたい事があった。なのに今は、引き寄せた細い身体を抱きしめるだけだった。

後ろから抱きしめ、シェリルの柔らかな髪に顔を埋めアルトは声を搾り出す。
「どこに行ってた…」
「………アルト…」
シェリルの声が震えているように感じた。けれどシェリルはそれ以上なにも言わない。
アルトも何も言えず、ただゆっくりと赤い陽は沈み…


どこかで小さな泣き声が聞こえた。

アルトもシェリルもはっとして周囲を見回す。
…と、木陰からクランが…腕に幼子を抱いて姿を表す。
「クラン!」
クランに呼び出された事を思い出しアルトは少女の姿の彼女の元へ歩み寄る。
それより先にシェリルが駆け寄りクランから幼子を受け取ると頬を寄せた。
幼子は泣いていたのが嘘の様にシェリルに笑いかける。

「シェリル…?クラン…?」
アルトは状況が飲み込めず、茫然とその光景を見つめていた。
「クランったら」
シェリルがため息まじりにクランを見つめる。
「す、すまない。だがな、もういい頃だと思ったのだ!」
クランが頬を膨らませていた。
アルトは二人を代わる代わる見比べて
「何なんだ一体…?」
思わず呟いていた。

バチーン!
静かな夕暮れに不似合いな音が響いた。
「早乙女アルト!おまえは鈍過ぎる!」
クランが飛び上がってアルトに平手を打つ。
「な、なんだよ!」
「おまえは何も分かってない!シェリルの気持ちもランカの気持ちも!シェリルは、シェリルはなぁ…。ランカだって…」
顔を真っ赤にしてアルトに掴みかかるクランの前にランカが割って入った。
「ランカ…!」
「クランちゃん、ありがとう。でも、いいんだよ」
ランカが…あの時のように涙を浮かべて微笑んでいた。アルトの胸がズキリと痛んだ。
「ランカちゃん…」
幼子を抱いたシェリルがランカを見つめた。そんなシェリルにもランカは微笑む。
「あたしね、分かったんだ…
アルトくんはやさしい。あたしにも…クランちゃんにも、ナナちゃんにもルカくんにも。
誰にでも優しいんだよ。
でも、アルトくんはずっと探してたよ。シェリルさんの事。
怒った顔しながら探してたんだ…」
「ランカ…」
「あたしは、大丈夫!
お兄ちゃん達もついてるし!」
ニッコリ笑う瞳の端から零れた何かが夕日にキラリと光る。
と、ランカはそのまま踵を返し走り出した。
「ラ、ランカ!」
追い掛けようとするアルトを制して目配せすると、クランが後を追っていった。


残されたのは二人と幼子。
アルトはまじまじとシェリルの腕にいる幼子を見ていた。
黒髪に青い瞳の…。
「シェリル…この子供…」
「あんたには知られたくなかったんだけど」
「なんでだよ!それに、この子はあの時の……」
「…だからよ!」

シェリルら搾り出すように続けた
「私は死ぬはずだったの。
それに、戦いが終わったら…あんたはランカちゃんと一緒に… って思ってた
………
でも、子供がいるって分かって………どうしても産みたくって…

カナリアさんに聞いて、多分ちゃんと産めるって…
どうしても産みたくて、でも、言ったらアルトは困る、それにそんなんで選んで欲しくない…だから…
どうしようか悩んでた時にクランちゃんに会って…」

クランは言ったそうだ。
「子供か?それはすばらしい事だ!愛する人の子供を産みたいのに、何を迷う。私が力になる
もし、後でシェリルが誰かと恋をして腹の子が邪魔になったら私が引き取ろう。
………私が子を産む事はないだろうからな」

(クランらしいな)
苦笑しながらアルトは相変わらず目を合わせようとしないシェリルを見つめた。
「それで…アルトが探しているって言われたけど、黙っていてもらって…」
「それでクランのやつ、家に行くって言ったら全力で拒否したのか…」
「そう…えっ?なんでアルトがクランの家に来るのよ!」
「はぁ?」
「クランはマイクロンの時はまだ子供だし、彼女は今だってミシェルくんの…」
アルトは邪推するシェリルに慌てた。が、そこまで言って、シェリルはミシェルの墓標へ視線を移していた。
腕には幼子に潰されそうな小さな花束。


「クランが…”子供も大きくなったし、たまには外に出ないか”って…
”ミシェルの墓参りはどうだ?”って…言ったの…」
シェリルの青い瞳が潤み、溢れ出した雫が頬をこぼれ落ちる。
「ああ…」
「私、ミシェルくんもクランも大好き」
「ああ…」
「…アルトはランカちゃんが好きみたいだし、身を引かなきゃって…」
「………シェリル、なんかつじつま合わないぞ…?」
「なによ、アルトのバカ!なんでランカちゃんと付き合ってないのよ」
「それは…」
「ランカちゃんを泣かせたら、お兄ちゃん達に殺されるんだから」
「…それはまあ…ありそうだな」
「でしょ、だから…」
「シェリル…」
アルトは幼子ごとシェリルを抱きしめる。
「何よ…!」
「シスコンアニキ達に殺されそうになったらおまえが守ってくれ」
「そんなの…できるわけないでしょ!」
シェリルの声はいつからか涙まじりになっていた。
「出来るって」
アルトの声も掠れていた。
「だって…」
「何よ…」
「おまえは銀河の妖精、シェリル・ノームだろ?」
「………何よもう、バカアルト!」
憎まれ口を叩く声は潤み、威勢の良さも形だけだった。
アルトは涙で濡れた…夢にまで見た唇にくちづける。
啄むように…貪るように。


「なぁ、子供を預かって来たほうが良いだろうか」
ふたりの姿を滝のような涙を流しながら見つめていたランカにクランは尋ねた。
「そんなこと、わからないもん!」
ぐしぐしと涙をぬぐいランカは答えた。
「おまえも辛いだろうが、男は早乙女アルトだけではないぞ!私もいつか………」
それきり口ごもり、クランは沈む夕日に目を向ける。
「クランちゃん…」
「ちゃんは止めろ!私は年上だ!」
「うん…」
ランカがしょんぼりとうなだれる。クランは慌てて尋ねた。
「な、なんだ?」
「うん。…クランちゃん、ゴメンね」
「な、何を謝るのだ。…ランカは悪くない。それに、ちゃんは止めろと…」
「うん、わかった。でも、ゴメンね。本当にゴメンなさい…」
ランカの声は涙で曇っていた。
「おまえが謝る事ではないのだ」
そういうクランの声もまた震えていた。

…ランカには分かっていた。
アルトは優しい。
決して自分を責めないけれど、彼の心が親友を想う時、その死のきっかけを作った自分を受け入れる事などできないこと。
そして、彼の前から姿を消した美しい人にはどうあがいても敵わないことも。
「クランちゃん…」
「だから、ちゃんは止めろと…」
ひしと抱き着く、自分より少し背の高い少女の背中をぽんぽんと叩きながらクランは呟く。
「ミシェル…私の周りは相変わらず泣き虫ばかりだ」

すでに日は落ちていた。
ミシェルの墓標の前の、寄り添う二つの影にクランは目を細める。
「ミシェル、泣き虫ばかりだが…心配事がひとつ減ったな」


END
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