834 名無しさん@ピンキー sage 2008/06/05(木) 09:14:55 ID:A8f22LRv
こちらラビット1、投下開始。
こちらラビット1、投下開始。
内容ミハクラですが、
エロ風味は次回までお待ち下さい。
エロ風味は次回までお待ち下さい。
835 名無しさん@ピンキー sage 2008/06/05(木) 09:17:02 ID:A8f22LRv
書き忘れました。内容は「ヴァージン・クィーン」で
アルトがうまい事やっているときに、ミハエルは何をしていたか?です。
連投すいませんでした。(・ω・:)
書き忘れました。内容は「ヴァージン・クィーン」で
アルトがうまい事やっているときに、ミハエルは何をしていたか?です。
連投すいませんでした。(・ω・:)
836 愛に時間を 1 sage 2008/06/05(木) 09:17:57 ID:A8f22LRv
SMS。マクロスフロンティア船団の防衛の要である彼らは、アイランド1に接続された戦闘艦、
マクロスクォーターで生活しているが、学生でありSMS隊員でもある者は学業を優先するとされ、
緊急時以外の出動ローテーションからは外され、
非番も週末に合わされており、ほぼ普通の一般市民と変わらない生活を送っている。
SMS。マクロスフロンティア船団の防衛の要である彼らは、アイランド1に接続された戦闘艦、
マクロスクォーターで生活しているが、学生でありSMS隊員でもある者は学業を優先するとされ、
緊急時以外の出動ローテーションからは外され、
非番も週末に合わされており、ほぼ普通の一般市民と変わらない生活を送っている。
「午前中はシミュレータ訓練しようと思ってる」SMSの制服を着ながら、アルトは言った。
「またか?お前、ヒマさえあればシミュレータだな。もっと人生を楽しめよ」
ミハエルが寝台に寝ころびながら茶化すと、アルトは彼にビシッと指を突きつけて宣言した。
「いーや。格納庫をグルグル回るのはもうゴメンだ!今日こそ完了してやる、あのシミュレータ」
アルトが部屋から突風のように出ていくと、ミハエルは真面目な顔になった。
(・・知らないってのは、怖いね)
今、アルトが挑戦している戦闘シミュレータのレベルはA-3++。彼ほど短期間で、
このレベルに挑戦できるパイロットは希だと、カナリア中尉もクランも、オズマ隊長ですら言っていた。
(俺もうかうかしてられない・・かな)
ライバルとも言えるアルトのパイロットとしての技量が、
自分のすぐ背後に迫っているのはひしひしと感じてはいる。が
(休むときは、休むのも仕事のうち・・と)
ミハエルは誰かヒマなガールフレンドを見つけようと、
コミュニケータ端末を取り出した。
「またか?お前、ヒマさえあればシミュレータだな。もっと人生を楽しめよ」
ミハエルが寝台に寝ころびながら茶化すと、アルトは彼にビシッと指を突きつけて宣言した。
「いーや。格納庫をグルグル回るのはもうゴメンだ!今日こそ完了してやる、あのシミュレータ」
アルトが部屋から突風のように出ていくと、ミハエルは真面目な顔になった。
(・・知らないってのは、怖いね)
今、アルトが挑戦している戦闘シミュレータのレベルはA-3++。彼ほど短期間で、
このレベルに挑戦できるパイロットは希だと、カナリア中尉もクランも、オズマ隊長ですら言っていた。
(俺もうかうかしてられない・・かな)
ライバルとも言えるアルトのパイロットとしての技量が、
自分のすぐ背後に迫っているのはひしひしと感じてはいる。が
(休むときは、休むのも仕事のうち・・と)
ミハエルは誰かヒマなガールフレンドを見つけようと、
コミュニケータ端末を取り出した。
メールのアドレスブックを開いた彼は、ABC順にズラリと並んだ彼女らの画像をスクロールさせながら、
今日はだれを遊びに誘おうか、楽しげにチョイスを始めた。
アイリーン、アニエス、エイミー、エリカ・・名前が次々と画面の下から上に流れるうち、
端末を操作する指の動きがぴたっと止まる。
今日はだれを遊びに誘おうか、楽しげにチョイスを始めた。
アイリーン、アニエス、エイミー、エリカ・・名前が次々と画面の下から上に流れるうち、
端末を操作する指の動きがぴたっと止まる。
そこに表示されている名前は“クラン・クラン”。
彼女の画像だけは他の女性たちのものと違って、恥ずかしげな表情で、切れ長の瞳をなかば伏せた、
ファインダーから顔をそむけるようなアングルに収まっている。
子供の時からいっしょに遊び、いっしょに育ち、今はいっしょに戦うまでになったクラン。
(・・そういえば)ミハエルは思った。
(クランとちゃんとデートしたことなんて、今まで・・一度もない)
それがなぜなのか考えてみても、たいした理由が思いつかない。たぶん、クランという女性がミハエルにとって、
そういう感情を持つには、近すぎるところにいるからだろうか。
彼女の画像だけは他の女性たちのものと違って、恥ずかしげな表情で、切れ長の瞳をなかば伏せた、
ファインダーから顔をそむけるようなアングルに収まっている。
子供の時からいっしょに遊び、いっしょに育ち、今はいっしょに戦うまでになったクラン。
(・・そういえば)ミハエルは思った。
(クランとちゃんとデートしたことなんて、今まで・・一度もない)
それがなぜなのか考えてみても、たいした理由が思いつかない。たぶん、クランという女性がミハエルにとって、
そういう感情を持つには、近すぎるところにいるからだろうか。
客観的に言えば、クランはSMSの男たちからの人気は高い。おそらくゼントラーディサイズのクランは、
フロンティアから半径5光年以内ではもっとも破壊力のあるプロポーションをしているのだ。
だが、ゼントラーディが地球に現れたときそのままの戦闘的な性格を残したクランには、
手はじめに軽くデートでも、と言い出せる気がしないのも確かだ。
それにクランは、マイクローンになると体も性格も子供に戻ってしまうという、よくわからない遺伝障害を持っている。
フロンティアから半径5光年以内ではもっとも破壊力のあるプロポーションをしているのだ。
だが、ゼントラーディが地球に現れたときそのままの戦闘的な性格を残したクランには、
手はじめに軽くデートでも、と言い出せる気がしないのも確かだ。
それにクランは、マイクローンになると体も性格も子供に戻ってしまうという、よくわからない遺伝障害を持っている。
(そういえば・・)ミハエルはいつだか、クォーターのガンルームで見た風景を思い出した。
クランのようなややこしい障害のないピクシー小隊のネネとララミア、それにボビー大尉が、
恋愛系の話で盛り上がるさまを横で聞いている小さなクランが、置いていかれたような、少し寂しそうな顔をしているところ。
クランのようなややこしい障害のないピクシー小隊のネネとララミア、それにボビー大尉が、
恋愛系の話で盛り上がるさまを横で聞いている小さなクランが、置いていかれたような、少し寂しそうな顔をしているところ。
近寄りがたい雰囲気と、子供に戻ってしまう障害という二つの理由で、
女性としてのクランはちょっと寂しい思いをしているところもあるのかもしれない。
それを思うとミハエルには、端末の画面で目を伏せているクランの顔が、
恥ずかしいと言うより、寂しい顔をしているように見えるのだ。
女性としてのクランはちょっと寂しい思いをしているところもあるのかもしれない。
それを思うとミハエルには、端末の画面で目を伏せているクランの顔が、
恥ずかしいと言うより、寂しい顔をしているように見えるのだ。
(・・決めた。きょうのお相手は・・と)
ミハエルは送信先アドレスにクランの名前を選ぶと、メールの内容をどうするか、考えはじめた。
ミハエルは送信先アドレスにクランの名前を選ぶと、メールの内容をどうするか、考えはじめた。
#Another2
愛に時間を
「非番の日に、早くから来てもらってすまない。クラン大尉」
カナリア・ベルシュタインが、消毒薬か何かを入れるための、
丸いプラスチックタンクに座って、足をブラブラさせているクラン・クランに言った。
「気にするなカナリア、ヒマだったからな。ところで話というのは、なんだ?」
「めんどうな説明は省く。ゼントラーディサイズからマイクローンサイズへの縮退時に、
オリジナルの外見を保てなくなる遺伝疾病の研究に、ある成果が出た」
「ふんふん」
「大尉も含め、同じ障害を持つゼントラーディ151人のDNAを調べたところ、全員が、
ある4つの遺伝子が持つ情報の転写エラーが引き金でこの障害を起こしていた事がわかった。
その成果を元にして、これを治療できる可能性のある薬品が作られた」
「なにっ、その薬を使うと、こんなにちっちゃくならなくてすむのか?」
びっくりしたクランは座っていたタンクから飛び降りて言った。
カナリア・ベルシュタインが、消毒薬か何かを入れるための、
丸いプラスチックタンクに座って、足をブラブラさせているクラン・クランに言った。
「気にするなカナリア、ヒマだったからな。ところで話というのは、なんだ?」
「めんどうな説明は省く。ゼントラーディサイズからマイクローンサイズへの縮退時に、
オリジナルの外見を保てなくなる遺伝疾病の研究に、ある成果が出た」
「ふんふん」
「大尉も含め、同じ障害を持つゼントラーディ151人のDNAを調べたところ、全員が、
ある4つの遺伝子が持つ情報の転写エラーが引き金でこの障害を起こしていた事がわかった。
その成果を元にして、これを治療できる可能性のある薬品が作られた」
「なにっ、その薬を使うと、こんなにちっちゃくならなくてすむのか?」
びっくりしたクランは座っていたタンクから飛び降りて言った。
「そう言うこと。試験はもう一次を終えて、その薬を151人全員で試用する二次試験だ。それに協力してもらおうと・・」
「する!協力する!その薬というのはどこだカナリア、私は今すぐ使ってみる!」ニコッと笑ったカナリアが、
両手を鳥みたいにバタバタさせるクランの後ろを指さして「それだよ」と言った。
「いま大尉が座っていたそのタンクに入ってる。ゼントラーディ用の注射器を使うんだ」
「する!協力する!その薬というのはどこだカナリア、私は今すぐ使ってみる!」ニコッと笑ったカナリアが、
両手を鳥みたいにバタバタさせるクランの後ろを指さして「それだよ」と言った。
「いま大尉が座っていたそのタンクに入ってる。ゼントラーディ用の注射器を使うんだ」
「なになに。注意・・限定・・使用禁止・・」台車に重いタンクを乗せ、
いっしょうけんめい台車を押してマイクローン装置のある部屋までやってきたクランはいま、
しゃがみこんでタンクに貼られた説明ラベルを読んでいた。
その内容はとても多くて字も細かく、彼女自身も思うことだが、
マイクローン状態のクランは「ほんの少しだけ」忍耐というものが欠けている。
いっしょうけんめい台車を押してマイクローン装置のある部屋までやってきたクランはいま、
しゃがみこんでタンクに貼られた説明ラベルを読んでいた。
その内容はとても多くて字も細かく、彼女自身も思うことだが、
マイクローン状態のクランは「ほんの少しだけ」忍耐というものが欠けている。
はたして、がまんして説明書を半分まで読んだクランはついに
「んあーー!もうぜんぶ大丈夫ってことにするー!」と叫ぶと、
その場でポイポイと服を脱ぎ捨てて全裸になると、マイクローン装置に入ろうとした。
その時、服といっしょに床に置いた携帯コミュニケータが鳴りはじめ、メール受信を知らせてきた。
「ナニヤツだ!この大事なときに!つまらん話だったら反応弾を・・食らわして・・」
コミュニケータを拾いあげてミハエルからのメールを読んだクランの手から、それがポトッと落ちた。
「んあーー!もうぜんぶ大丈夫ってことにするー!」と叫ぶと、
その場でポイポイと服を脱ぎ捨てて全裸になると、マイクローン装置に入ろうとした。
その時、服といっしょに床に置いた携帯コミュニケータが鳴りはじめ、メール受信を知らせてきた。
「ナニヤツだ!この大事なときに!つまらん話だったら反応弾を・・食らわして・・」
コミュニケータを拾いあげてミハエルからのメールを読んだクランの手から、それがポトッと落ちた。
カルテの整理や、負傷者についての治療スケジュールなどをまとめる作業をしていたカナリアが
ふと時計を見ると、クランが出て行ってから1時間半ぐらい過ぎていた。
(あの薬、うまく効くといいがな・・まあ一次試験も済んでいるから、心配はないと思うが)
その時、デスクの上の艦内電話が鳴った。
「こちら医務室、カナリア中尉」電話から取り乱した声が飛び出してきた。
<カっ、カナリア!私だ、クランだ。ちょっと頼みがある。マイクローンルームに来てくれ。頼む!>
ふと時計を見ると、クランが出て行ってから1時間半ぐらい過ぎていた。
(あの薬、うまく効くといいがな・・まあ一次試験も済んでいるから、心配はないと思うが)
その時、デスクの上の艦内電話が鳴った。
「こちら医務室、カナリア中尉」電話から取り乱した声が飛び出してきた。
<カっ、カナリア!私だ、クランだ。ちょっと頼みがある。マイクローンルームに来てくれ。頼む!>
表示が使用中のままのマイクローン室にカナリアが入っていくと、クランの姿は見えなかった。
床に脱いであるクランのマイクローン服や空になった薬のタンク、
壁の高い所にあるゼントラーディサイズの注射器などを見回したカナリアは
「クラン大尉?無事ですか?」と、部屋の中に声をかける。
「カナリアか?私は大丈夫だ。でも・・問題がある」
どこか背後からクランの声が答えた。振り向いたカナリアは、
ロッカーの陰から現れたクランのヌードを見るなり、思わず口笛を吹いた。
その体はゼントラーディ時の見事なバストサイズを持ったグラマーのまま、
カナリアと同じマイクローンサイズに、きれいに縮退している。
「服が・・この部屋にある服はぜんぶ・・合わないんだ」困りはてたクランの言葉ですべてを察したカナリアが快活に笑う。
「そりゃそうでしょ、クラン大尉」カナリアは白衣を脱ぎ、首を振りながら言った。
「そんなミサイルを2発も装備してちゃね」
床に脱いであるクランのマイクローン服や空になった薬のタンク、
壁の高い所にあるゼントラーディサイズの注射器などを見回したカナリアは
「クラン大尉?無事ですか?」と、部屋の中に声をかける。
「カナリアか?私は大丈夫だ。でも・・問題がある」
どこか背後からクランの声が答えた。振り向いたカナリアは、
ロッカーの陰から現れたクランのヌードを見るなり、思わず口笛を吹いた。
その体はゼントラーディ時の見事なバストサイズを持ったグラマーのまま、
カナリアと同じマイクローンサイズに、きれいに縮退している。
「服が・・この部屋にある服はぜんぶ・・合わないんだ」困りはてたクランの言葉ですべてを察したカナリアが快活に笑う。
「そりゃそうでしょ、クラン大尉」カナリアは白衣を脱ぎ、首を振りながら言った。
「そんなミサイルを2発も装備してちゃね」
ふたりの足元に転がった、からの薬品タンク。その注意書きの最後には
【マイクローンサイズの衣服を用意して使用すること】と書いてあった。
【マイクローンサイズの衣服を用意して使用すること】と書いてあった。
「タイッヘンよおおぉぉぅーーっ!!」
カナリアに呼ばれてきたボビーが、白衣だけ着て医務室にいるクランを見た瞬間、
こう叫びながら飛び出していった15分後には、
クォーター建造以来の一大事と聞いてきた非番の女性隊員が全員、
服を持ってやってきてキャーと驚き、口々にクランのプロポーションを賞賛した。
「スッゴい。これこそわがままボディってヤツね。うらやましいです、大尉」
「私もちょっと分けてほしいなあ・・」
カナリアに呼ばれてきたボビーが、白衣だけ着て医務室にいるクランを見た瞬間、
こう叫びながら飛び出していった15分後には、
クォーター建造以来の一大事と聞いてきた非番の女性隊員が全員、
服を持ってやってきてキャーと驚き、口々にクランのプロポーションを賞賛した。
「スッゴい。これこそわがままボディってヤツね。うらやましいです、大尉」
「私もちょっと分けてほしいなあ・・」
クランはみんなの差し出した服をつぎつぎ試したが、常人離れしたグラマーのため、
着られるものが一着もなく、これには彼女もさすがに困ってつぶやいた。
「進退きわまったか・・これではアイツに会いにいけん」
オペレータのモニカが大声を出した。
「アイツにって、大尉、これから男の人とデートなんですかっ?」
「あ・・ああ。男に会うという行為は・・デートだな」
その気迫に押されたクランが答えると、医務室がいっきに騒がしくなった。
着られるものが一着もなく、これには彼女もさすがに困ってつぶやいた。
「進退きわまったか・・これではアイツに会いにいけん」
オペレータのモニカが大声を出した。
「アイツにって、大尉、これから男の人とデートなんですかっ?」
「あ・・ああ。男に会うという行為は・・デートだな」
その気迫に押されたクランが答えると、医務室がいっきに騒がしくなった。
「なに人ごとみたいに言ってるんですか!ボビー大尉!もはや一刻の猶予もないのでは」
「ええ。これは第1級非常態勢ね。メジャーをちょうだい、カナリア。
クランはそこに立って。それから誰か、ファッション雑誌を持ってきて」
メジャーを手にしたボビーはすばやく、すみずみまでクランのサイズを計ったあと、
ベッドの上に広げられた5冊のファッション雑誌をものすごい速さで次々にめくってゆき、
メモ用紙にあっという間に全身コーディネートを書き出してゆく。
「いつ見てもお見事です、ボビー大尉」メモ用紙を受け取ったモニカが
「みんな!手分けしてこのリストの服、買いに行くよ!」
と号令すると、スクランブルのかかったバルキリー隊のように、女たちがいっせいに医務室から飛び出した。
「ええ。これは第1級非常態勢ね。メジャーをちょうだい、カナリア。
クランはそこに立って。それから誰か、ファッション雑誌を持ってきて」
メジャーを手にしたボビーはすばやく、すみずみまでクランのサイズを計ったあと、
ベッドの上に広げられた5冊のファッション雑誌をものすごい速さで次々にめくってゆき、
メモ用紙にあっという間に全身コーディネートを書き出してゆく。
「いつ見てもお見事です、ボビー大尉」メモ用紙を受け取ったモニカが
「みんな!手分けしてこのリストの服、買いに行くよ!」
と号令すると、スクランブルのかかったバルキリー隊のように、女たちがいっせいに医務室から飛び出した。
あとに残されたクランはあっけにとられて言った。
「なんだあれは・・私のデートが、これほどの重大事か?」
とことんズレているクランの肩をぽんと叩いて、カナリアが笑った。
「決まってるじゃないか。女ってものはみんな、こういうもんなのさ」
「まだ終わってないわよクラン」ボビーはイスから立ち上がり、ウットリと言った。
「服だけじゃ、女は輝けない・・そう、完璧なメイクが加わったその時こそ、女の真の美しさは完成されるのよ」
「メイクか。別にアイツに会うのにそれほどの・・」
「だまらっしゃい!!このボビー・マルゴ、全身全霊を込めてメイクいたしやす!」
「よ・・よろしく頼む」
クランの笑い顔が少しひきつった。
「なんだあれは・・私のデートが、これほどの重大事か?」
とことんズレているクランの肩をぽんと叩いて、カナリアが笑った。
「決まってるじゃないか。女ってものはみんな、こういうもんなのさ」
「まだ終わってないわよクラン」ボビーはイスから立ち上がり、ウットリと言った。
「服だけじゃ、女は輝けない・・そう、完璧なメイクが加わったその時こそ、女の真の美しさは完成されるのよ」
「メイクか。別にアイツに会うのにそれほどの・・」
「だまらっしゃい!!このボビー・マルゴ、全身全霊を込めてメイクいたしやす!」
「よ・・よろしく頼む」
クランの笑い顔が少しひきつった。
(そろそろ来るころだな)
目の前を流れていく人混みを眺めながら、
ミハエルはシブヤ・ストリートの待ち合わせスポット、モヤイ二世の前でクランが来るのを待っている。
ときたま、通り過ぎていく女性が意味ありげな目線を送ってきたし、
女性の方から2回も声をかけられたが、
そのたびミハエルは丁重にお断りしなければならなかった。
「申しわけありません。相方を待っているもので」ふだんの彼なら相手を気に入れば、
それに応じるのにやぶさかではないが、今日はもう約束がある。
いつものように、小さくて元気なクランが大騒ぎしながら走ってくるものと予想していたミハエルは、
ひとりの女性が、まわりの男の視線をぜんぶ釘付けにしながら自分の後ろに立ったとき、完全に不意を突かれた。
目の前を流れていく人混みを眺めながら、
ミハエルはシブヤ・ストリートの待ち合わせスポット、モヤイ二世の前でクランが来るのを待っている。
ときたま、通り過ぎていく女性が意味ありげな目線を送ってきたし、
女性の方から2回も声をかけられたが、
そのたびミハエルは丁重にお断りしなければならなかった。
「申しわけありません。相方を待っているもので」ふだんの彼なら相手を気に入れば、
それに応じるのにやぶさかではないが、今日はもう約束がある。
いつものように、小さくて元気なクランが大騒ぎしながら走ってくるものと予想していたミハエルは、
ひとりの女性が、まわりの男の視線をぜんぶ釘付けにしながら自分の後ろに立ったとき、完全に不意を突かれた。
「待たせてすまなかったな、ミシェル」
とつぜん名前を呼ばれて振り返ったミハエルの心臓が跳ねあがった。
そこには、文句の付けようがないほどの美貌とコーディネートに包まれた、
青い髪の、180センチのスーパーグラマーが立っていた。
「そんなに上から下までジロジロ見るんじゃない・・恥ずかしいだろ」
白いボヘミア風のショートワンピースと、
ビスチェに似せた豪華な雰囲気のキャミソールで上をまとめ、足元はやや高いヒールのパンプス。
シックにふくらはぎまで伸びたデニムスカートはかなり使い込んだユーズド風、
布を容赦なく押しあげている胸元に加えて、
スカートの両サイドに深く入ったスリットから見える素足の太股が、セクシーさをひとつまみ加えていた。
驚きのあまりミハエルは目前のクランに向かって、
いつものクールさが消し飛んだ間の抜けた言葉を発した。
「あの・・失礼ですが・・どちら様でしたか?」
「ミハエル・ブラン!キサマの目はカベの穴か!?私だ。クラン・クランだ」
「まいった・・オレ、やっぱり溜まってるんだな」
とつぜん名前を呼ばれて振り返ったミハエルの心臓が跳ねあがった。
そこには、文句の付けようがないほどの美貌とコーディネートに包まれた、
青い髪の、180センチのスーパーグラマーが立っていた。
「そんなに上から下までジロジロ見るんじゃない・・恥ずかしいだろ」
白いボヘミア風のショートワンピースと、
ビスチェに似せた豪華な雰囲気のキャミソールで上をまとめ、足元はやや高いヒールのパンプス。
シックにふくらはぎまで伸びたデニムスカートはかなり使い込んだユーズド風、
布を容赦なく押しあげている胸元に加えて、
スカートの両サイドに深く入ったスリットから見える素足の太股が、セクシーさをひとつまみ加えていた。
驚きのあまりミハエルは目前のクランに向かって、
いつものクールさが消し飛んだ間の抜けた言葉を発した。
「あの・・失礼ですが・・どちら様でしたか?」
「ミハエル・ブラン!キサマの目はカベの穴か!?私だ。クラン・クランだ」
「まいった・・オレ、やっぱり溜まってるんだな」
コーヒーショップの客の注目を一身に集めながら、クランはミハエルに、
けさカナリアからもらった薬のことや、そのあとの大騒ぎのことを説明した。
「こんなメイクも初めてで・・かなり恥ずかしいが、ボビーが止めても聞かなくて・・
なのに、お前はひと言目に、どちら様ですかと言う始末だ」
ミハエルは、そう言ってプイッと横を向いたクランの、
カールアップされた長くて美しいまつ毛から目を離せない。
「・・悪かったよ、クラン。そんな事になってるなんて知らなかったから」
「素直に言え。いつもの小さな私が、大騒ぎしながら来ると思ってたんだろう?」
カフェラテをコクッと飲むそのしぐさも、マグカップを両手で持って、んぐんぐと飲む小さなクランとは大違いの、落ち着いた動きだ。
「ああ。その通り。驚きすぎて覚えてないけど、たぶんオレ、さっきクランを見たとき、
口がパックリ開いてたんじゃないかな」
「開いてたぞ。閉めてやろうかと思ったが、面白いから放っておいた」くすっと笑ったクランのご機嫌が直ったのがわかって、ミハエルもいっしょに笑う。
「だが、他人と思われたのはちょっと心外だったぞ、ミシェル。だから・・」
ミハエルが先手を取って言った。
「了解。食事でも映画でも、どこでもお供いたします。まずはショッピングでもいかがで?」
けさカナリアからもらった薬のことや、そのあとの大騒ぎのことを説明した。
「こんなメイクも初めてで・・かなり恥ずかしいが、ボビーが止めても聞かなくて・・
なのに、お前はひと言目に、どちら様ですかと言う始末だ」
ミハエルは、そう言ってプイッと横を向いたクランの、
カールアップされた長くて美しいまつ毛から目を離せない。
「・・悪かったよ、クラン。そんな事になってるなんて知らなかったから」
「素直に言え。いつもの小さな私が、大騒ぎしながら来ると思ってたんだろう?」
カフェラテをコクッと飲むそのしぐさも、マグカップを両手で持って、んぐんぐと飲む小さなクランとは大違いの、落ち着いた動きだ。
「ああ。その通り。驚きすぎて覚えてないけど、たぶんオレ、さっきクランを見たとき、
口がパックリ開いてたんじゃないかな」
「開いてたぞ。閉めてやろうかと思ったが、面白いから放っておいた」くすっと笑ったクランのご機嫌が直ったのがわかって、ミハエルもいっしょに笑う。
「だが、他人と思われたのはちょっと心外だったぞ、ミシェル。だから・・」
ミハエルが先手を取って言った。
「了解。食事でも映画でも、どこでもお供いたします。まずはショッピングでもいかがで?」
いま着ているもの以外にマイクローン用の服を持っていないクランを案内して、
ミハエルは午後いっぱいを使ってそのアイランド中を歩き回り、クランといっしょに服を選び、
クランが食べたそうな物があればいっしょに食べ、クランが行きたい所にはどこでも付いていった。
ミハエルは午後いっぱいを使ってそのアイランド中を歩き回り、クランといっしょに服を選び、
クランが食べたそうな物があればいっしょに食べ、クランが行きたい所にはどこでも付いていった。
さすがに今の彼女に合うブラジャーは簡単に見つからなくて苦労したのは別にして、
あのヘンテコな遺伝障害が治ったクランは生き生きとして楽しそうで、見ているミハエルも心から楽しくなった。
大量の買い物をクランの自宅に送るように手配した彼は、予約しておいたスペイン料理のレストランにクランを連れて行き、
その店自慢のレシピを使った夕食をたっぷり味わった。
あのヘンテコな遺伝障害が治ったクランは生き生きとして楽しそうで、見ているミハエルも心から楽しくなった。
大量の買い物をクランの自宅に送るように手配した彼は、予約しておいたスペイン料理のレストランにクランを連れて行き、
その店自慢のレシピを使った夕食をたっぷり味わった。
「ミハエル、私たちはなんだか、やたらに周りから見られていないか?」クランがサングリアをちびちび飲みながらそう言った。
「みんなが見てるのはクランだよ。私たち、じゃない」
「なぜだろうな?私は何か、変なふるまいをしているか?」
クランの、実に不思議だというズレた口調がおかしくて、思わずミハエルは吹きだした。
「クランが美しいからだよ。みんなクランを見ると立ち止まって振りかえる」
「うつくしい・・か。ゼントラーディは外見を重視しないから、ピンと来ない。
お前も私を美しいと思うのか?ミハエル」
「思うよ。いつも見ていたのに、今日までそれに気付かなかった感じだ。今は目が離せないよ」
「そんなに見つめるな。お前にそう言われると、私はなんだか・・恥ずかしい」
「これでも正直になってるんだけどな」
ミハエルは上着のポケットから細長い箱を取り出すと、クランの前にそれを滑らせた。
「みんなが見てるのはクランだよ。私たち、じゃない」
「なぜだろうな?私は何か、変なふるまいをしているか?」
クランの、実に不思議だというズレた口調がおかしくて、思わずミハエルは吹きだした。
「クランが美しいからだよ。みんなクランを見ると立ち止まって振りかえる」
「うつくしい・・か。ゼントラーディは外見を重視しないから、ピンと来ない。
お前も私を美しいと思うのか?ミハエル」
「思うよ。いつも見ていたのに、今日までそれに気付かなかった感じだ。今は目が離せないよ」
「そんなに見つめるな。お前にそう言われると、私はなんだか・・恥ずかしい」
「これでも正直になってるんだけどな」
ミハエルは上着のポケットから細長い箱を取り出すと、クランの前にそれを滑らせた。
「ミシェル、これはなんだ?」
「あのヘンテコな病気が治ったお祝い。開けてみろよ。似合うと思う」
ラッピングを外して箱を開けたクランは、彼女のパーソナルカラーと同じ、
赤い小さなルビーを3つあしらったプラチナのネックレスを見てため息をつくと、つぶやいた。
「あ、これは・・とても・・美しいものだな」
「そう思うだろ?」その言葉に顔を上げたクランは、自分をまっすぐ見ているミハエルの視線につかまって、
心を優しくつかまれた感じがし、頬がぽっと熱くなった。いまクランの前に座っているのは、
幼なじみのミシェルではなく、ミハエル・ブランという一人の男。彼女はそれを急に意識した。
「それが、いま俺がクランに感じてる気持ちだよ。だけど、そんなネックレスより、今のクランはずっときれいだ」
「あのヘンテコな病気が治ったお祝い。開けてみろよ。似合うと思う」
ラッピングを外して箱を開けたクランは、彼女のパーソナルカラーと同じ、
赤い小さなルビーを3つあしらったプラチナのネックレスを見てため息をつくと、つぶやいた。
「あ、これは・・とても・・美しいものだな」
「そう思うだろ?」その言葉に顔を上げたクランは、自分をまっすぐ見ているミハエルの視線につかまって、
心を優しくつかまれた感じがし、頬がぽっと熱くなった。いまクランの前に座っているのは、
幼なじみのミシェルではなく、ミハエル・ブランという一人の男。彼女はそれを急に意識した。
「それが、いま俺がクランに感じてる気持ちだよ。だけど、そんなネックレスより、今のクランはずっときれいだ」
石畳の遊歩道を歩きながら、クランは胸の鼓動が収まらないのと、
となりを歩いているミハエルの視線や体の動きがどうしても気になってしまうのに、
つよい戸惑いを感じていた。はずみでふと手が触れたり、ミハエルが見つめていると感じれば、
ほんとうに見られていたり、そのたびにクランの心はふしぎに波立った。
となりを歩いているミハエルの視線や体の動きがどうしても気になってしまうのに、
つよい戸惑いを感じていた。はずみでふと手が触れたり、ミハエルが見つめていると感じれば、
ほんとうに見られていたり、そのたびにクランの心はふしぎに波立った。
「クラン。話があるんだ」
すみの方で流しのミニバンドが演奏しているラテン人街の中心広場へやってきたとき、
ミハエルはクランを呼び止めた。「なんだ?ミシェル」
胸元に赤いルビーを光らせたクランがドギマギしていると、ミハエルが真剣な表情で言った。
「俺たち・・今まで幼なじみだったから、今さらこんなこと言うのもなんだけど・・
俺と、ちゃんと付き合ってみる気はないか?」
「何を言いだす。飲みすぎたのか?」
「俺は本気だクラン!冗談で言ってるんじゃない」
「私のマイクローン化が正常になったから言ってるのか?」
「俺はずっと好きだったよ。小さなクランも、大きなクランも」クランは黙ってその言葉を聞いていた。
すみの方で流しのミニバンドが演奏しているラテン人街の中心広場へやってきたとき、
ミハエルはクランを呼び止めた。「なんだ?ミシェル」
胸元に赤いルビーを光らせたクランがドギマギしていると、ミハエルが真剣な表情で言った。
「俺たち・・今まで幼なじみだったから、今さらこんなこと言うのもなんだけど・・
俺と、ちゃんと付き合ってみる気はないか?」
「何を言いだす。飲みすぎたのか?」
「俺は本気だクラン!冗談で言ってるんじゃない」
「私のマイクローン化が正常になったから言ってるのか?」
「俺はずっと好きだったよ。小さなクランも、大きなクランも」クランは黙ってその言葉を聞いていた。
「でも今日、ほんとうに理解できた。理屈じゃない。俺が好きなのはクランだって」
「これをもらった時、それは気づいたよ。お前の口から初めて美しいと言われて、うれしかった」
ネックレスに触れながらクランは続けた。
「でも、それをあまりにあっさりと口にできるお前を、信じられない私もいるんだ」
ミハエルの表情が、痛みに満ちたものになった。
向かうところ敵なし、あちこちで数々の浮き名を流すプレイボーイが、
本気で心を捧げようと決めた一人の女に拒まれる。
それはあまりにも皮肉な悲劇だった。
「これをもらった時、それは気づいたよ。お前の口から初めて美しいと言われて、うれしかった」
ネックレスに触れながらクランは続けた。
「でも、それをあまりにあっさりと口にできるお前を、信じられない私もいるんだ」
ミハエルの表情が、痛みに満ちたものになった。
向かうところ敵なし、あちこちで数々の浮き名を流すプレイボーイが、
本気で心を捧げようと決めた一人の女に拒まれる。
それはあまりにも皮肉な悲劇だった。
「いくつもうわさは聞いてる。もう誰か、付き合ってる女はいるんだろう?」
「違う!うわさだけで、誰にも本気になったことはない!」
「だとしても」そこまで言うと、クランは目をそらした。
「・・お前の心のほんとうの中心に今でもいるのは、ジェシカだ。私はこんな性格だが、
死んだ今でも愛されている女に、勝てると思うほどバカじゃない。それに、
お前の心にあるジェシカの思い出を捨てろと言うことは、私の思い出も傷つける」
「ジェシカ姉さんのことは過去だ。それに今まで引きずられてたのは認めるよ。
だけど俺の心はクラン以外には向いていないんだ。俺がいまそばにいて欲しいのは過去の思い出じゃない。クランなんだ」
「違う!うわさだけで、誰にも本気になったことはない!」
「だとしても」そこまで言うと、クランは目をそらした。
「・・お前の心のほんとうの中心に今でもいるのは、ジェシカだ。私はこんな性格だが、
死んだ今でも愛されている女に、勝てると思うほどバカじゃない。それに、
お前の心にあるジェシカの思い出を捨てろと言うことは、私の思い出も傷つける」
「ジェシカ姉さんのことは過去だ。それに今まで引きずられてたのは認めるよ。
だけど俺の心はクラン以外には向いていないんだ。俺がいまそばにいて欲しいのは過去の思い出じゃない。クランなんだ」
ミハエルの思いを代弁するように、ミニバンドが、ある愚かな男の恋の歌を歌い始め、
ギターやカスタネットのリズムと、哀調を帯びた声が広場に広がっていった。
<<おお 愛するひとよ 許しておくれ この胸を揺さぶる気持ち
俺はそれを伝えられない愚かな男 お前がその目を開いてくれた もうあなたしか見えない・・>>
ギターやカスタネットのリズムと、哀調を帯びた声が広場に広がっていった。
<<おお 愛するひとよ 許しておくれ この胸を揺さぶる気持ち
俺はそれを伝えられない愚かな男 お前がその目を開いてくれた もうあなたしか見えない・・>>
「私にはわからない。心がどこにあるかなんて。そんなの、ただの言葉だ」
「今はそうかもしれない。時間をくれ、クラン。俺はそれを証明してみせる」
ミハエルがためらいがちにクランの肩に触れ、ぎゅっと力を込めた時、
死の直前、ジェシカが同じようにクランの肩を握って言った言葉が胸に浮かんだ。
(ミハエルに時間をあげて。クラン・・そうすればあの子はいつか、私のことを忘れられる。そして代わりにあなたを想うなら、私はもう・・何も心配はないわ)
「今はそうかもしれない。時間をくれ、クラン。俺はそれを証明してみせる」
ミハエルがためらいがちにクランの肩に触れ、ぎゅっと力を込めた時、
死の直前、ジェシカが同じようにクランの肩を握って言った言葉が胸に浮かんだ。
(ミハエルに時間をあげて。クラン・・そうすればあの子はいつか、私のことを忘れられる。そして代わりにあなたを想うなら、私はもう・・何も心配はないわ)
「ひとと・・ゼントラーディは」クランがそっと言った。
「50年かけてここまでわかりあえた。言っておくが、私はそんなに待たないぞ?」クランがミハエルの腕に手をかけた。
「50年もいるもんか・・今夜ひと晩でじゅうぶんだ」ミハエルがクランの腰を抱いて、引き寄せる。
お互いの鼻の先が触れ合い、吐息と共にクランは挑発した。
「生意気だな。今夜のお前は、今まででいちばん生意気だぞ?ミシェル坊や」
「だったらどうする?」
なにか言うかわりにクランは目を閉じ、ミハエルはぎゅっと抱いて、唇を重ね、キスをした。
「50年かけてここまでわかりあえた。言っておくが、私はそんなに待たないぞ?」クランがミハエルの腕に手をかけた。
「50年もいるもんか・・今夜ひと晩でじゅうぶんだ」ミハエルがクランの腰を抱いて、引き寄せる。
お互いの鼻の先が触れ合い、吐息と共にクランは挑発した。
「生意気だな。今夜のお前は、今まででいちばん生意気だぞ?ミシェル坊や」
「だったらどうする?」
なにか言うかわりにクランは目を閉じ、ミハエルはぎゅっと抱いて、唇を重ね、キスをした。
とつぜん二人の周りから拍手と歓声、口笛がわき起こった。驚いて見回すと、
遠くからこの成り行きを見守っていたラテン系の住民たちがいま、ミハエルとクランを祝福してくれている。
「ビバ!いいぞ色男!そう来なくちゃ男じゃねえ」
「そんなべっぴんを、二度と泣かすなよ!ドン・ファン」
ミニバンドの男たちも二人をはやし立て、拍手している。
「おいコラそこの色男!ハラハラさせやがって。でも、終わりよければ何とやらだぜ!」
一転して底抜けに陽気な曲が始まると、広場はにぎやかに鳴り響き、踊りの輪ができはじめた。
遠くからこの成り行きを見守っていたラテン系の住民たちがいま、ミハエルとクランを祝福してくれている。
「ビバ!いいぞ色男!そう来なくちゃ男じゃねえ」
「そんなべっぴんを、二度と泣かすなよ!ドン・ファン」
ミニバンドの男たちも二人をはやし立て、拍手している。
「おいコラそこの色男!ハラハラさせやがって。でも、終わりよければ何とやらだぜ!」
一転して底抜けに陽気な曲が始まると、広場はにぎやかに鳴り響き、踊りの輪ができはじめた。
それを見て、抱かれたままのクランが笑い、笑いすぎの涙をふきながら言った。
「なんだこれは。われわれの事が、そんなに重大だったのか?」
クソ真面目な顔をしたミハエルが言った。「そんなの決まってるじゃないか」
「人間ってのはみんな、こういうもの。そうだろう?」
「あたり。デカルチャーだろ?」
「なんだこれは。われわれの事が、そんなに重大だったのか?」
クソ真面目な顔をしたミハエルが言った。「そんなの決まってるじゃないか」
「人間ってのはみんな、こういうもの。そうだろう?」
「あたり。デカルチャーだろ?」
それだけ言うとミハエルはもう一度クランにキスをした。
重なった唇は、今度は周りがどんなに騒いでも、離れることはなかった。
重なった唇は、今度は周りがどんなに騒いでも、離れることはなかった。
了