623 名無しさん@ピンキー sage 2008/07/07(月) 01:49:45 ID:iAvP0AJG
ラビット1投下開始ー。
内容アルトとランカで、
かわいい内容でーす。
ラビット1投下開始ー。
内容アルトとランカで、
かわいい内容でーす。
エピソード11で、
もしアルトが公園に来ていたら?
の話でーす。
もしアルトが公園に来ていたら?
の話でーす。
624 裏ミッシング・バースデー sage 2008/07/07(月) 01:51:23 ID:iAvP0AJG
#Another6
裏ミッシング・バースデー
「はっ・・はっ・・はっ・・」
たそがれた森の道を、ランカ・リーが走っていた。
落とさないように、力を入れすぎないように、しっかりと胸に紙袋を抱いて。
たそがれた森の道を、ランカ・リーが走っていた。
落とさないように、力を入れすぎないように、しっかりと胸に紙袋を抱いて。
そこはグリフィス公園の中央にある、シンボルタワーにつづく道。
ここに来るまでに20分ほど使ってしまったランカの心に、エルモ社長の困り顔が浮かぶ。
『しかたありませんねえ・・2時間だけですよ。ランカちゃん』
ハードな10分刻みのスケジュール。そこを無理して2時間も空けてもらった彼女は、
約束したタワー広場への階段をいっきに駆け上がるまで足を止めなかった。
「アルトくん・・」
走ったあとの荒い息のまま周りを見回すランカの目が、タワーの陰から現れた人影を見た。
(来てくれた・・アルトくん。来てくれたんだね)
時間のない焦りも、来ていなかったらと思う不安も忘れて笑顔をこぼしたランカは、タワーの足元まで駆けよる。
「アルトくんっ!」
ここに来るまでに20分ほど使ってしまったランカの心に、エルモ社長の困り顔が浮かぶ。
『しかたありませんねえ・・2時間だけですよ。ランカちゃん』
ハードな10分刻みのスケジュール。そこを無理して2時間も空けてもらった彼女は、
約束したタワー広場への階段をいっきに駆け上がるまで足を止めなかった。
「アルトくん・・」
走ったあとの荒い息のまま周りを見回すランカの目が、タワーの陰から現れた人影を見た。
(来てくれた・・アルトくん。来てくれたんだね)
時間のない焦りも、来ていなかったらと思う不安も忘れて笑顔をこぼしたランカは、タワーの足元まで駆けよる。
「アルトくんっ!」
呼ばれてふり返ったアルトが、ニコッと笑った。「よう、ランカ。うまく抜けてこれたのか?」
「うん。でもね、2時間しか・・もらえなかったの」アルトのいるところまで、ランカは階段をのぼる。
「いいのか。そんなに穴空けると、あとがツラいぜ?」
「だって、今日のうちに渡したかったんだもん・・誕生日のプレゼント」
(平気だよ。わたし)ランカは心の中でそっと告げる。(アルトくんが来てくれたから)
「・・プレゼント?」
「あっ、うん。はいこれ。ハッピーバースディ。アルトくん」
プロのカメラマンも舞い上がりそうな愛嬌と、瑞々しい可愛さをこめた笑顔で、ランカが紙袋をさしだした。
「サンキュー。開けてみてもいいか?」
それを受け取ると、彼はタワーの足元にある階段に腰掛ける。
「へえ、クッキーか。うまそうだな」
袋の中から飛行機の形をしたクッキーをつまみ出したアルトがそれを空にかざすと、隣に座ったランカの頬がうっすら染まる。
「あのね・・お菓子作るの、初めてなの。ちょっとぶさいくで・・ゴメンね」
「ハハッ、気にすんなよ。見た目より味だろ?んむっ・・」
口にぽいっとクッキーを放り込んだ彼の動きがピタッと止まり、みるみる複雑な顔色になった。
「・・?どうしたの?アルトくん」
「ゴフッ・・おいランカ・・このクッキー・・なんか変わった材料、使ったか?」
「ううん。普通のクッキーだよ?」
「・・だよな・・じゃあなんでこんなにニガいんだ?これ・・」
「えええぇーーーッ!?ウソっ!!」
「うん。でもね、2時間しか・・もらえなかったの」アルトのいるところまで、ランカは階段をのぼる。
「いいのか。そんなに穴空けると、あとがツラいぜ?」
「だって、今日のうちに渡したかったんだもん・・誕生日のプレゼント」
(平気だよ。わたし)ランカは心の中でそっと告げる。(アルトくんが来てくれたから)
「・・プレゼント?」
「あっ、うん。はいこれ。ハッピーバースディ。アルトくん」
プロのカメラマンも舞い上がりそうな愛嬌と、瑞々しい可愛さをこめた笑顔で、ランカが紙袋をさしだした。
「サンキュー。開けてみてもいいか?」
それを受け取ると、彼はタワーの足元にある階段に腰掛ける。
「へえ、クッキーか。うまそうだな」
袋の中から飛行機の形をしたクッキーをつまみ出したアルトがそれを空にかざすと、隣に座ったランカの頬がうっすら染まる。
「あのね・・お菓子作るの、初めてなの。ちょっとぶさいくで・・ゴメンね」
「ハハッ、気にすんなよ。見た目より味だろ?んむっ・・」
口にぽいっとクッキーを放り込んだ彼の動きがピタッと止まり、みるみる複雑な顔色になった。
「・・?どうしたの?アルトくん」
「ゴフッ・・おいランカ・・このクッキー・・なんか変わった材料、使ったか?」
「ううん。普通のクッキーだよ?」
「・・だよな・・じゃあなんでこんなにニガいんだ?これ・・」
「えええぇーーーッ!?ウソっ!!」
サッと袋からクッキーをつまんで食べたランカの顔が渋くなり、髪がビョンッと跳ねた。
「うぇ・・ホントだ・・ニガぃ・・」
「だろ?何か材料の量・・間違えたんじゃないか?」
「うぅ・・アルトくんごめんね・・初めてなのに大急ぎだったから・・こんなの食べさせてごめんね・・持って帰るね」
髪がペタンとしょげ垂れたランカが言うと、プッと吹いたアルトが、とつぜん笑いだす。
「ハハハッ・・ハハ・・ウハハハ・・苦い・・クッキーか。こりゃ・・プッ・・クク・・ケッサクだ」
クッキーの出来を笑われたと思い、消えてしまいたいほどしょんぼりするランカの頭に、アルトの手がそっと触れた。
「うぇ・・ホントだ・・ニガぃ・・」
「だろ?何か材料の量・・間違えたんじゃないか?」
「うぅ・・アルトくんごめんね・・初めてなのに大急ぎだったから・・こんなの食べさせてごめんね・・持って帰るね」
髪がペタンとしょげ垂れたランカが言うと、プッと吹いたアルトが、とつぜん笑いだす。
「ハハハッ・・ハハ・・ウハハハ・・苦い・・クッキーか。こりゃ・・プッ・・クク・・ケッサクだ」
クッキーの出来を笑われたと思い、消えてしまいたいほどしょんぼりするランカの頭に、アルトの手がそっと触れた。
「ひゃっ!」ふいに触れられ、ランカは顔を赤くするのと驚くのと、
髪をぶわわっと逆立てるのを一度にやった。
そのスキに彼女の手から袋をひょいと取り返したアルトが、クッキーを2つ一気にかじる。
「うわぁっ!ダメっ!もう食べなくていいよ!アルトくん!」ランカは両手をブンブン振って止めようとする。
かまわずアルトはくそ真面目な顔つきで、みっちり苦いクッキーをボリボリ噛みしめた。
(ちょうどいい・・いまの俺には、これぐらい苦い味のほうが・・お似合いだ)
髪をぶわわっと逆立てるのを一度にやった。
そのスキに彼女の手から袋をひょいと取り返したアルトが、クッキーを2つ一気にかじる。
「うわぁっ!ダメっ!もう食べなくていいよ!アルトくん!」ランカは両手をブンブン振って止めようとする。
かまわずアルトはくそ真面目な顔つきで、みっちり苦いクッキーをボリボリ噛みしめた。
(ちょうどいい・・いまの俺には、これぐらい苦い味のほうが・・お似合いだ)
先日、歌舞伎の兄弟子、弥三郎に芸事への未練をみごとに看破されたうえ、
はじめは愛しそして今は呪う、梨園の男の血を認識させられたアルトは、自分がよって立つアイデンティティを
ぐらぐら揺さぶられて気分が沈んでいた。
(顔を出せば、勘当を解くと)弥三郎がどう話をつけたか知らないが、
あの父、嵐蔵との確執をそれで乗り越えられるものだろうか。
アルトは夜どおし、眠らずにこのことを思い続けた。
はじめは愛しそして今は呪う、梨園の男の血を認識させられたアルトは、自分がよって立つアイデンティティを
ぐらぐら揺さぶられて気分が沈んでいた。
(顔を出せば、勘当を解くと)弥三郎がどう話をつけたか知らないが、
あの父、嵐蔵との確執をそれで乗り越えられるものだろうか。
アルトは夜どおし、眠らずにこのことを思い続けた。
「父様のような役者になる」と約束したときの、うれしそうな笑顔の母。
病没した母親の最後をもかえりみず舞台に登る、歌舞伎にあっては"人外"と呼んでも差し支えない父。
そんな人間を創りだす歌舞伎に恐怖し、歌舞伎によって修羅と化した嵐蔵から逃れたアルト。
だれが約束を破り、だれが失望し、失望させ、だれが悪者なのか。
「クソッ!」クォーターの隔壁をゴンッと殴ったアルトは、
いつか嵐蔵に投げつけた自分の言葉を思い出した。
『なにが平常心だ!なにがお役の心だ!血も涙もない役者が欲しけりゃ、歌舞伎ロボットでも作れ!
どうせ450年も同じこと繰り返してんだ、それで十分だろうが!』
(俺は、なりたくない。大事なひとの生き死にに、悲しみも辛さも感じないような、ただの演劇マシーンには)
病没した母親の最後をもかえりみず舞台に登る、歌舞伎にあっては"人外"と呼んでも差し支えない父。
そんな人間を創りだす歌舞伎に恐怖し、歌舞伎によって修羅と化した嵐蔵から逃れたアルト。
だれが約束を破り、だれが失望し、失望させ、だれが悪者なのか。
「クソッ!」クォーターの隔壁をゴンッと殴ったアルトは、
いつか嵐蔵に投げつけた自分の言葉を思い出した。
『なにが平常心だ!なにがお役の心だ!血も涙もない役者が欲しけりゃ、歌舞伎ロボットでも作れ!
どうせ450年も同じこと繰り返してんだ、それで十分だろうが!』
(俺は、なりたくない。大事なひとの生き死にに、悲しみも辛さも感じないような、ただの演劇マシーンには)
朝になってアルトは、シェリルから告げられていた慰問公演の護衛を志願しようとオズマを訪ねたが、
彼からその任務にはミハエルを回すとはっきり告げられると、よけい気分が落ち込んだ。
「先方さんはお前をご指名だったんだが、ガリア4の情勢が・・あまりにキナ臭いんでな」
「・・キナ臭い?何か起きそうなんですか?」
「ああ。火のないところのハズが、煙だけはモクモク出てやがる。そんなとこにお前を行かせるのはまだ早い。俺と艦長の判断だ」
「だったらなおさら!俺がミハエルのバディなら・・」
彼からその任務にはミハエルを回すとはっきり告げられると、よけい気分が落ち込んだ。
「先方さんはお前をご指名だったんだが、ガリア4の情勢が・・あまりにキナ臭いんでな」
「・・キナ臭い?何か起きそうなんですか?」
「ああ。火のないところのハズが、煙だけはモクモク出てやがる。そんなとこにお前を行かせるのはまだ早い。俺と艦長の判断だ」
「だったらなおさら!俺がミハエルのバディなら・・」
彼らの背後から、キャシー・グラスが説明した。
「それも無理ね。なぜなら、わたしとオズマがそう提案したら、新統合軍はヴァルキリー1機以上の投入を却下したわ」
「なんだって・・」
腕を組んでイスにどっかり座ったオズマがため息をついた。
「そういう事だ。現地もキナ臭いし、おまけに上はウサン臭い。そんなところに、お前みたいな熱血バカは行かせられん。
腕の問題じゃない。ミシェルみたいに、クールでいられるヤツが適任なんだ」
拳を握って下を向いたアルトに、オズマがぼそっと言った。
「非公式だが、何かあってもいいように待機だけはしとけ。呼び出しにはすぐ応じろ」
「それも無理ね。なぜなら、わたしとオズマがそう提案したら、新統合軍はヴァルキリー1機以上の投入を却下したわ」
「なんだって・・」
腕を組んでイスにどっかり座ったオズマがため息をついた。
「そういう事だ。現地もキナ臭いし、おまけに上はウサン臭い。そんなところに、お前みたいな熱血バカは行かせられん。
腕の問題じゃない。ミシェルみたいに、クールでいられるヤツが適任なんだ」
拳を握って下を向いたアルトに、オズマがぼそっと言った。
「非公式だが、何かあってもいいように待機だけはしとけ。呼び出しにはすぐ応じろ」
そんなことが午前中にあって、正直ここにやって来るのも、ちょっと気が滅入った。
弱気になっている気持ちがひっきりなしに「落ち込んだからランカに慰めてもらいに行くんだろう」と囁いてきて、
やるせない気分がさらに膨らんでいたからだ。
だが、そのランカがけんめいに心を込めて作ったクッキーは、頭痛薬を食っているかのように苦かった。
その味にアルトは、ランカから"人生はそれほど甘くないんだよ。アルトくん"と言われた気がして、
その皮肉さ加減に笑ってしまったのである。
弱気になっている気持ちがひっきりなしに「落ち込んだからランカに慰めてもらいに行くんだろう」と囁いてきて、
やるせない気分がさらに膨らんでいたからだ。
だが、そのランカがけんめいに心を込めて作ったクッキーは、頭痛薬を食っているかのように苦かった。
その味にアルトは、ランカから"人生はそれほど甘くないんだよ。アルトくん"と言われた気がして、
その皮肉さ加減に笑ってしまったのである。
「ありがとうな、ランカ。俺、ちょっとヘコんでて・・このクッキーのおかげで、すこし気分が晴れたよ」
「え?このクッキーで・・?よく分からないけど、どうしたの?アルトくん」
「ん・・ああ。気にするなよ。こっちの話さ」
「まちがってたらゴメンね・・お家のこと?」ハッとしたその表情から、ランカはそれが正しい問いだったのを知った。
「知ってたのか?俺の・・家のこと」
「映画の撮影の時にシェリルさん・・とルカくんが教えてくれたの」
自分だけアルトのことをまるで何も知らないと分かった時の、
シェリルに感じた敗北感まで思い出したランカが、アルトと一緒に暗い表情をする。
「あの映画に出たのが・・家にバレちまって。芝居に未練があるなら・・戻れって言われたよ」
「そうだったんだ・・」
「え?このクッキーで・・?よく分からないけど、どうしたの?アルトくん」
「ん・・ああ。気にするなよ。こっちの話さ」
「まちがってたらゴメンね・・お家のこと?」ハッとしたその表情から、ランカはそれが正しい問いだったのを知った。
「知ってたのか?俺の・・家のこと」
「映画の撮影の時にシェリルさん・・とルカくんが教えてくれたの」
自分だけアルトのことをまるで何も知らないと分かった時の、
シェリルに感じた敗北感まで思い出したランカが、アルトと一緒に暗い表情をする。
「あの映画に出たのが・・家にバレちまって。芝居に未練があるなら・・戻れって言われたよ」
「そうだったんだ・・」
しばらくの沈黙のあとで、ランカが空を見上げながら、話し始めた。
「あのね。わたしが今こうしているのは、全部アルトくんの・・おかげだと思うの」
「俺の・・おかげ?」
話し始めたランカの記憶が、今までアルトと交わした言葉や、
直接的に、間接的に彼に助けられ、励まされたときの事を、どんどん鮮明によみがえらせる。
「あのね。わたしが今こうしているのは、全部アルトくんの・・おかげだと思うの」
「俺の・・おかげ?」
話し始めたランカの記憶が、今までアルトと交わした言葉や、
直接的に、間接的に彼に助けられ、励まされたときの事を、どんどん鮮明によみがえらせる。
「わたしがバジュラに襲われたとき・・アルトくんがいなかったら、わたしきっと・・死んでたと思う。
それにアルトくんが、この丘で、できたらとか、自分なんかって言ってるうちはダメだって言ってくれたから、
ミス・フロンティアに応募できたし、それを支えにしたからフォルモでも歌えたし、エルモ社長にもスカウトされたの。
お兄ちゃんを説得するときもアルトくんのことを思ってたし、
映画の撮影のときもアルトくんは、ヒュドラに襲われたわたしを助けてくれたよ?
だからわたし・・アルトくんがどう思ってても・・わたしだけは、アルトくんがパイロットを目指してくれたから、
わたしはこうして生きて、歌っていられるんだって思う」
それにアルトくんが、この丘で、できたらとか、自分なんかって言ってるうちはダメだって言ってくれたから、
ミス・フロンティアに応募できたし、それを支えにしたからフォルモでも歌えたし、エルモ社長にもスカウトされたの。
お兄ちゃんを説得するときもアルトくんのことを思ってたし、
映画の撮影のときもアルトくんは、ヒュドラに襲われたわたしを助けてくれたよ?
だからわたし・・アルトくんがどう思ってても・・わたしだけは、アルトくんがパイロットを目指してくれたから、
わたしはこうして生きて、歌っていられるんだって思う」
ランカの心から、口から、彼に対する秘めに秘めてきた想いが堰を切り、ほとばしり出た。
「それに・・もしアルトくんがいなかったら、わたし・・」
「それに・・もしアルトくんがいなかったら、わたし・・」
(もうダメ・・ぜんぶ言っちゃいたい。ぜんぶ伝えたい・・いいよね?アルトくん・・)
ランカは見つめる瞳と言葉に想いのたけを全てこめた。
「きっとアルトくんに出会って、アルトくんを・・こんなに好きになることもなかった」
「・・ランカ・・おまえ」
「きっとアルトくんに出会って、アルトくんを・・こんなに好きになることもなかった」
「・・ランカ・・おまえ」
そのときアルトは、あの海の中で、彼にキスをしようとする寸前のランカと同じ表情をそこに見た。
(わたしを見て。わたしだって、あなたの事を・・・)
あの映画でそのシーンにつけられたセリフは、そう告げていたはずだ。
いま、同じことばが、頬を染めて潤んだ目をしたランカから聞こえてくる。
(アレは、演技じゃなかったって事か・・まいったな)
彼は彼女の手をスッと握ると、引き寄せた。されるままに、ランカの小さな体がアルトのふところに収まると、
彼女は自分が主演の恋愛映画にでも出ているような、不思議な気持ちに満たされた。
いま自分は、アルトの胸元に引き寄せられて、そこに顔を埋めている。
映画でなければ夢、さめてほしくない夢。
(わたしを見て。わたしだって、あなたの事を・・・)
あの映画でそのシーンにつけられたセリフは、そう告げていたはずだ。
いま、同じことばが、頬を染めて潤んだ目をしたランカから聞こえてくる。
(アレは、演技じゃなかったって事か・・まいったな)
彼は彼女の手をスッと握ると、引き寄せた。されるままに、ランカの小さな体がアルトのふところに収まると、
彼女は自分が主演の恋愛映画にでも出ているような、不思議な気持ちに満たされた。
いま自分は、アルトの胸元に引き寄せられて、そこに顔を埋めている。
映画でなければ夢、さめてほしくない夢。
「あれが"21世紀最高のキスシーン"って言われるわけがわかったよ」
「・・えっ?」見上げたランカに、アルトが微笑んだ。
「ぜんぶ本気のキスなんだから、いいに決まってるよな。あの監督もそこは見抜けなかったわけだ。ハハハ」
アルトが何を言っているのかわかって、ランカの顔がボッと赤くなった。
「あ!あぁう・・あれはね・・気持ちが入りすぎてて・・今見ると・・恥ずかしいの」
「そうでもないぜ・・いいシーンだった。俺も観て照れた。本人が言うんだから間違いない」アルトがランカの肩に手を回した。
「やっぱりアルトくんは・・時々いじわるなこと言うね」唇が触れそうなところに、ランカが顔を寄せる。
「・・よく言われるって、前に言わなかったか?」
寄りそってキスを交わす二人の頭上、夕空を写す天蓋パネルのはるか彼方で、
2つの小さなフォールド光がピカピカッと輝いて消えた。
「・・えっ?」見上げたランカに、アルトが微笑んだ。
「ぜんぶ本気のキスなんだから、いいに決まってるよな。あの監督もそこは見抜けなかったわけだ。ハハハ」
アルトが何を言っているのかわかって、ランカの顔がボッと赤くなった。
「あ!あぁう・・あれはね・・気持ちが入りすぎてて・・今見ると・・恥ずかしいの」
「そうでもないぜ・・いいシーンだった。俺も観て照れた。本人が言うんだから間違いない」アルトがランカの肩に手を回した。
「やっぱりアルトくんは・・時々いじわるなこと言うね」唇が触れそうなところに、ランカが顔を寄せる。
「・・よく言われるって、前に言わなかったか?」
寄りそってキスを交わす二人の頭上、夕空を写す天蓋パネルのはるか彼方で、
2つの小さなフォールド光がピカピカッと輝いて消えた。
正真正銘のファーストキスが終わり、体を離したランカは、
今のキスの感触を確かめるように、頬の染まったポーッとした表情で唇にひとさし指を当てた。
(アルトくんの唇・・やっぱり女の子みたい。やわらかかったな・・)
「ふう・・なあランカ。そういえばお前、時間はいいのか?」
あっ!と驚いた顔で携帯くんを取り出したランカはそれをもにゅっと握って起こし、
表示された時間を見ると、ガバッと立ち上がって叫んだ。
「あぁーーっ!あと30分しかないよっ!!」
「いっ?お前、こんな事してる場合じゃないだろ!急げ!」
「あうぅ・・キスは"こんな事"じゃないよ・・だいじだよ・・アルトくん・・」
今のキスの感触を確かめるように、頬の染まったポーッとした表情で唇にひとさし指を当てた。
(アルトくんの唇・・やっぱり女の子みたい。やわらかかったな・・)
「ふう・・なあランカ。そういえばお前、時間はいいのか?」
あっ!と驚いた顔で携帯くんを取り出したランカはそれをもにゅっと握って起こし、
表示された時間を見ると、ガバッと立ち上がって叫んだ。
「あぁーーっ!あと30分しかないよっ!!」
「いっ?お前、こんな事してる場合じゃないだろ!急げ!」
「あうぅ・・キスは"こんな事"じゃないよ・・だいじだよ・・アルトくん・・」
立ち上がってかがみ込んだアルトが、ランカの頬にキスをした。
「ひゃうっ!」また顔を赤くしたj彼女の髪が、緑色の翼のように水平に広がった。
「いいから早く行け!遅れるだろ!」
「うっ、うん・・じゃあね、アルトくん!メール、するね!」
ランカは高揚した気分で、もと来た道を走り出した。体が軽い。アルトに気持ちを伝え、
それを受け入れてもらえたしあわせと嬉しさで、心が爆発しそうだった。
今なら、髪をパタパタ動かしたら、空を飛べるかもしれない。
「あはっ!最高!人生はワンッ!ツー!デカルチャー!ガンバれわたし!」
「ひゃうっ!」また顔を赤くしたj彼女の髪が、緑色の翼のように水平に広がった。
「いいから早く行け!遅れるだろ!」
「うっ、うん・・じゃあね、アルトくん!メール、するね!」
ランカは高揚した気分で、もと来た道を走り出した。体が軽い。アルトに気持ちを伝え、
それを受け入れてもらえたしあわせと嬉しさで、心が爆発しそうだった。
今なら、髪をパタパタ動かしたら、空を飛べるかもしれない。
「あはっ!最高!人生はワンッ!ツー!デカルチャー!ガンバれわたし!」
ピョンピョン跳びはねつつ、たちまち遠くへ走り去っていくランカを見送りながら、
アルトはやれやれと、ため息と苦笑いをうかべる。
「ハハッ。俺も、つまんないことでメゲてる場合じゃないってこと・・ん?」
ふと気が付くと、地面に置いたクッキー袋のところに、
見慣れない緑色の、丸っこい体をした生き物がいて、彼を見上げていた。
「・・なんだ、お前も食いたいのか?これ」
アルトがひとつ放ってやると、ピョイピョイと寄ってきて、ふんふんとクッキーの匂いをかいだその生き物は、
あっという間にそれをたいらげると、キュッキューとうれしそうに鳴いた。
「うっ・・すごいなお前・・平気なのかよ・・?」
つまんだクッキーをじーっと見たアルトは、試しにまた食べて、盛大なうめきをもらす。
「ブホッ・・さっき食ったのより・・ニゲえ・・」
アイランド1の空の端が、夕暮れから宇宙の星空に変わっていこうとする、たそがれ時だった。
アルトはやれやれと、ため息と苦笑いをうかべる。
「ハハッ。俺も、つまんないことでメゲてる場合じゃないってこと・・ん?」
ふと気が付くと、地面に置いたクッキー袋のところに、
見慣れない緑色の、丸っこい体をした生き物がいて、彼を見上げていた。
「・・なんだ、お前も食いたいのか?これ」
アルトがひとつ放ってやると、ピョイピョイと寄ってきて、ふんふんとクッキーの匂いをかいだその生き物は、
あっという間にそれをたいらげると、キュッキューとうれしそうに鳴いた。
「うっ・・すごいなお前・・平気なのかよ・・?」
つまんだクッキーをじーっと見たアルトは、試しにまた食べて、盛大なうめきをもらす。
「ブホッ・・さっき食ったのより・・ニゲえ・・」
アイランド1の空の端が、夕暮れから宇宙の星空に変わっていこうとする、たそがれ時だった。
了
630 裏ミッシング・バースデー おまけ sage 2008/07/07(月) 02:02:35 ID:iAvP0AJG
水平降下で降りてくるガウォークから、その場の全員に聞こえる大音量で、アルトの声が轟いた。
『おいお前ら!宇宙で最初のランカ・リー、シークレットライブ!届けに来てやったぜ!』
アルトは外部マイクに叫ぶと、後ろのランカに確かめた。
「開けるぞランカ!オマエの歌、奴らにたっぷり撃ち込んでやれ!」
「うんっ!開けて。アルトくん!」
キャノピーを開け放つと、ガリア4のさかまく大気に緑の髪と衣装をはためかせながら、
後部座席にランカがすっくと立ち上がる。
水平降下で降りてくるガウォークから、その場の全員に聞こえる大音量で、アルトの声が轟いた。
『おいお前ら!宇宙で最初のランカ・リー、シークレットライブ!届けに来てやったぜ!』
アルトは外部マイクに叫ぶと、後ろのランカに確かめた。
「開けるぞランカ!オマエの歌、奴らにたっぷり撃ち込んでやれ!」
「うんっ!開けて。アルトくん!」
キャノピーを開け放つと、ガリア4のさかまく大気に緑の髪と衣装をはためかせながら、
後部座席にランカがすっくと立ち上がる。
(ヘヘ。いい顔してるじゃねえかよ!)その顔つきを見たアルトはニヤッと笑うと、
サウンドユニットのインタフェースに"Soundvolume MAXIMUM boost 100db"の最大出力を指示する。
「ブースト最大!ぶちかませ、ランカ!」
軽快なギターとドラム、タンバリン、そしてコーラスに乗せてマイクを強く握ったランカが、すうっと息を吸った。
(だいじょうぶ、歌えるよ。アルトくん!だって今のわたしは・・ぜったい無敵だもん!)
そしてガリア4の気圏いっぱいに、ランカのシャウトが響いた。
サウンドユニットのインタフェースに"Soundvolume MAXIMUM boost 100db"の最大出力を指示する。
「ブースト最大!ぶちかませ、ランカ!」
軽快なギターとドラム、タンバリン、そしてコーラスに乗せてマイクを強く握ったランカが、すうっと息を吸った。
(だいじょうぶ、歌えるよ。アルトくん!だって今のわたしは・・ぜったい無敵だもん!)
そしてガリア4の気圏いっぱいに、ランカのシャウトが響いた。
「みんなっ! 抱きしめて!! 銀河のっ・・は て ま で っ ! ! ! ! !」
おまけ了。
本編あんまりエロくなくてすいません