観客席に人影は無かった。
控室でパンデモニカと名乗るマスコットに参加者を観客として呼べるがどうすると聞かれ、ジャスティスファイアは千秋を呼ぶように要請した。
生身で殺し合いの舞台に待機させるより、いっそ観客席に呼んだ方が安全であること、また万が一自分が死亡した場合でも、相手の魔法少女の能力を伝えることが出来ると考えたからだ。
が、これは相手方が拒否すれば通らないという。
控室を出てリングに向かう時、観客席に人影が無いことを確認し、ジャスティスファイアはヒートハウンドが観客を拒否したことを知った。
ヒートハウンドは自分の魔法が他者に伝わることを恐れている。
控室でパンデモニカと名乗るマスコットに参加者を観客として呼べるがどうすると聞かれ、ジャスティスファイアは千秋を呼ぶように要請した。
生身で殺し合いの舞台に待機させるより、いっそ観客席に呼んだ方が安全であること、また万が一自分が死亡した場合でも、相手の魔法少女の能力を伝えることが出来ると考えたからだ。
が、これは相手方が拒否すれば通らないという。
控室を出てリングに向かう時、観客席に人影が無いことを確認し、ジャスティスファイアはヒートハウンドが観客を拒否したことを知った。
ヒートハウンドは自分の魔法が他者に伝わることを恐れている。
思えばこの瞬間から、ジャスティスファイアはヒートハウンドをゲームに乗った魔法少女だと疑っていたのだ。
「ムクク……それじゃあ、決闘開始……!」
黒山羊のマスコットがリング上で宣言する。
同時に。
同時に。
「烟火(yānhuǒ)」
ヒートハウンドの手から1000℃の炎が発射された。
プロレスリングは、あくまで人間と人間が戦うために設計されている。
魔法少女同士が戦うにはリングは狭すぎるのだ。
人間の基準で例えるなら、至近30cmで向き合った状態で試合を開始するような状況。
となれば、必然的に訪れるのは——一瞬の決着である。
ヒートハウンドの炎はリング全てを呑み込む。
相手次第では初手で終わる一撃。
しかし相手はジャスティスファイア。
プロレスリングは、あくまで人間と人間が戦うために設計されている。
魔法少女同士が戦うにはリングは狭すぎるのだ。
人間の基準で例えるなら、至近30cmで向き合った状態で試合を開始するような状況。
となれば、必然的に訪れるのは——一瞬の決着である。
ヒートハウンドの炎はリング全てを呑み込む。
相手次第では初手で終わる一撃。
しかし相手はジャスティスファイア。
「ジャスティス・ファイア!」
自らの魔法少女名を叫ぶと同時に、槍を咥えたその口から、炎が発射される。
炎を炎で相殺する。
人間界では発生しない事象が、魔法少女は容易く引き起こす。
炎を炎で相殺する。
人間界では発生しない事象が、魔法少女は容易く引き起こす。
◇
「おおっとっ! いきなり大技のぶつけ合いだぁ~!
共に炎系の魔法少女! どちらが相手を燃やせるのか、まさしく熱戦です!
アリアさん、二人の火力はどちらが優勢なのでしょうか」
共に炎系の魔法少女! どちらが相手を燃やせるのか、まさしく熱戦です!
アリアさん、二人の火力はどちらが優勢なのでしょうか」
「鉄屑の方が優勢だな。所詮犬は犬なのだ」
「なるほど、火力はジャスティスファイアに分があるようです!」
◇
事実、炎は徐々にヒートハウンドの方に押され始める。
ヒートハウンドの顔が苦痛で歪んだ。
ジャスティスファイアは、油断しない。
敵はもう一人居る。
炎の中、空中3mほどの地点に浮遊したヒートちゃん(仮)。
ヒートハウンドの顔が苦痛で歪んだ。
ジャスティスファイアは、油断しない。
敵はもう一人居る。
炎の中、空中3mほどの地点に浮遊したヒートちゃん(仮)。
ただ、ジャスティスファイアを誤認させるだけのブラフとしてリング内に持ち込んだわけではないのだろう。
(何をするつもりでしょうか)
「ヒートちゃん——投下してください」
「了解」
ヒートの足元に魔法陣が展開され——空対地ミサイル、マーヴェリックが出現する。
「っ!?」
◇
「うわああああああああああああっ! ミサイルだぁあああああああああああ!?」
◇
クイックローラーの絶叫と同時に、魔法少女に向けるにはあまりにもオーバースペックな兵器が落下を始める。
(ジャスティス・シールドで防御? 無理! 避ける? 射程範囲は軽くリングを超えている、ファイアやメテオで迎撃? 誘爆するだけだ!)
——奥の手を、切るしかない。
「くっ!」
ジャスティスファイアはその場を飛び上がり、ミサイルに自ら近づく。
そして、口に咥えた槍を器用に振り——ミサイルを、刺し貫いた。
大破壊は——起こらない。
あらゆる魔法効果を問答無用で打ち消せる槍は、当然魔力によって構成されたミサイルも打ち消しの対象に入る。
ミサイルを無力化したジャスティスファイアはその勢いのまま、ヒートちゃんに一閃を振るう。
ヒートは恐るべき機動力で持ってその一閃を回避し
大破壊は——起こらない。
あらゆる魔法効果を問答無用で打ち消せる槍は、当然魔力によって構成されたミサイルも打ち消しの対象に入る。
ミサイルを無力化したジャスティスファイアはその勢いのまま、ヒートちゃんに一閃を振るう。
ヒートは恐るべき機動力で持ってその一閃を回避し
「ジャスティス・ファイア」
回避した先に待ち受けていた炎の直撃を浴びる。
全身を焦げ付かせながらも、ヒートちゃんは耐えきる。
全身を焦げ付かせながらも、ヒートちゃんは耐えきる。
(思った以上に頑丈……クライオニクスとは別ベクトルで強敵ですね)
何はともあれ、ミサイルを無力化したジャスティスファイアは燃え盛るリングに舞い戻る。
魔法少女でも耐えきれない灼熱地獄だが、ジャスティスファイアの装甲は防熱性が非常に高いのだ。
魔法少女でも耐えきれない灼熱地獄だが、ジャスティスファイアの装甲は防熱性が非常に高いのだ。
「その槍……」
ヒートハウンドはじっと槍を見据えている。
「知っている槍でしたか? それとも、この槍が怖いですか」
「…………武器が怖くない魔法少女なんかいませんよ」
「本当は奥の手として隠しておくつもりでしたが、バレてしまったので明かしましょう。
——この槍は、あらゆる魔法効果を無効化します。
例えば貴女が自らの身体を炎に構成して活動できるとしても、この槍で貫かれれば終わりです」
——この槍は、あらゆる魔法効果を無効化します。
例えば貴女が自らの身体を炎に構成して活動できるとしても、この槍で貫かれれば終わりです」
「……そうですか」
◇
「さぁ、信じられない攻防が展開されました! ミサイルが投下されたと思ったら、何と槍でミサイルを刺して無効化してしまいました。
ふむふむ、私の魔法で解析したのですが、あの槍は魔槍〝ダーマット〟。あらゆる魔法効果を問答無用で貫く魔槍。次元を隔てた障壁であろうとも、空間を切断する斬撃であろうともそれが魔法であるならば打ち消されるそうです!
とんでもないチート武装です! これにより、ヒートハウンド最大の強み、物理攻撃&火力攻撃無効化が、完全に意味を為さなくなりました。
更に火力もジャスティスファイアの方が上、頼みの綱の支給品も一蹴されています。
ここからヒートハウンドの逆転は出来るのでしょうか。アリアさん、どう思われますか?」
ふむふむ、私の魔法で解析したのですが、あの槍は魔槍〝ダーマット〟。あらゆる魔法効果を問答無用で貫く魔槍。次元を隔てた障壁であろうとも、空間を切断する斬撃であろうともそれが魔法であるならば打ち消されるそうです!
とんでもないチート武装です! これにより、ヒートハウンド最大の強み、物理攻撃&火力攻撃無効化が、完全に意味を為さなくなりました。
更に火力もジャスティスファイアの方が上、頼みの綱の支給品も一蹴されています。
ここからヒートハウンドの逆転は出来るのでしょうか。アリアさん、どう思われますか?」
「天才である吾輩なら無限にできるが、犬畜生には無理だろう。
一つ言えるならば、多目的用コピーロイド死者の巻は、魔槍に並ぶ大当たりだ。
それをどう使うかで犬畜生が駄犬かそうでないかが分かれるだろうな」
一つ言えるならば、多目的用コピーロイド死者の巻は、魔槍に並ぶ大当たりだ。
それをどう使うかで犬畜生が駄犬かそうでないかが分かれるだろうな」
「なるほど、ポイントはアイテムなのですね!
おおっと、何て話している間に、リング内で動きがありました。
ああ、あれは……!」
おおっと、何て話している間に、リング内で動きがありました。
ああ、あれは……!」