(投稿者:マーク)
ザハーラからの資源の輸入によって成り立っている
楼蘭皇国にとってザハーラが堕ちることはそのまま楼蘭の滅亡に直結する
そのためこの時期の楼蘭皇国焦りからかはろくに訓練も教育も施されずにメードを派遣することが多かった
だがいかに潜在能力が優れていてもろくに教育も訓練も受けていないメードが激戦区で生き残れるはずもなく、次々と散っていった。
藍羅は自ら志願して楼蘭から出奔、ここアムリア戦線に配属された。
彼女は生き残った、だがそれは凄惨な現実を直視することにもなった。
「はあぁぁぁ!!」
横薙ぎに払われた
マンティスの鎌を飛び上がってかわすと持っていた刀をそれの頭部に突き刺し、真上から突っ込んできた
フライに短刀を投げつけ瞬時にその場を離脱する
「!!」
着地したと同時に後ろから飛び掛るワモンを恐ろしいまでの反射速度でその頭部に刀を突き刺し新たな刀を抜いては斬りかかる、その繰り返し
永遠に続くかと思われるこの戦い、それを終わらせたのは容赦のない無差別砲撃だった
「クッ!」
自分がさっきまで立っていたところにまで容赦なく飛来する砲弾、藍羅はよけるので精一杯だった
「藍羅!!こっちだ!!」
その声に振り向けば第五小隊を率いる隊長、閃姫が数人を伴ってこちらに向かっていた
「正面から行けば砲撃に巻き込まれる 迂回していくぞ!!」
編隊を組みGを追い払いながら砲撃の嵐から逃れようと走り出す、
「クソッ数が多すぎる!! これじゃあ突破できん!!」
戦闘で走る伊超が
ワモンをその大槌で叩き潰し、跳ね飛ばすがすぐに道をふさがれることに悪態をつく
「もういや……いやだよぉぉぉ」
隊のなかでもわずか生まれて5ヶ月で配属された星夜が泣き出しうずくまってしまう、藍羅は自らの腕に彼女を抱き速度を落とすことなく走り続ける
「星夜!!しっかりつかまっていろ!!」
その言葉に星夜は嗚咽をあげながらもコクンとうなづく
嵐のような砲撃、飛び掛る飢えた蟲を打ち払いながら確実に歩を進めていた
が
「! 伏せろぉぉぉぉぉぉ!!」
藍羅の後方にいた麗騎が叫びとっさに藍羅は刀を離し両腕で星夜をしっかりと抱く。
その刹那、彼女達の目の前に砲弾が着弾し、すさまじいまでの轟音と衝撃、そして爆発が隊を襲った。
藍羅は後方に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる
「かはっ…」
その衝撃に意識が飛びそうになる、だが仲間のことが頭に浮かびどうにか意識がつなぎとめられる
「た、隊長!! 伊超!! 麗騎!!」
叫ぶがなんの反応も返ってこない
「みんな……」
そこで藍羅の目に入ったのは倒れ伏して動かない閃姫。
「あ…」
そのそばには首から上をなくした伊超が。
「ああ・・・・・」
半身が吹き飛んで無残な姿になった麗騎。
「う…あ……ああ……」
はっとして腕に抱いていたはずの星夜を捜す。
そして見つけた。
砲弾の破片が身体中に突き刺さった、その変わり果てた姿を。
「うああああああああああああああああ」
「!!うあっ・・・・はぁはぁはぁ……」
目が覚めた時、そこは座敷の布団の上であった、一瞬混乱するがすぐに記憶を整理する。
昼間のいざこざから助けた事への恩返しと神楽に招待され、料理を振舞われあれやこれやのうちに泊まることとなったのだ。
隣にはその神楽が静かに寝息をたてて眠り、いつのまに忍び込んだのかもう1人少女が-確か雷花といったか-が神楽にひっついて寝ている。
「っ……またあの夢か…」
独り言をつぶやき、布団から上半身を起こす、よほどうなされていたのか胸に巻いたさらしはほどけかかっているし額には玉のような汗が浮かんでいる
心なしか息も乱れている
「……」
藍羅はさらしを巻きなおすと無言でそばにおいてあった刀、滅鬼怒を手に取り布を解いてその赤い刀身を指で撫でる。
それと同時に藍羅の中でなにかが首をもたげる
それを振り払うかのように刀を置くと夜風にでもあたろうと立ち上がり、ふすまを開けて縁側に座り空を見上げる
「満月か……」
空を見上げた藍羅の目に入ったのはまん丸の満月、だがそれは紅く、まるで血に染まったように光っていた
「紅い……な」
あんな夢をみた後にこの月、まるで何かを暗示しているように感じ、寝息をたてている少女二人に目を向ける
“似ているな……星夜に…”
彼女の、神楽の顔を見てあの・・・泣き虫で人懐こかった少女を思い出す。どこか懐かしさを感じたのはそのせいだろうか
“………”
藍羅は神楽から視線をはずし、空を見上げ月を見つめた。紅く光る月、それをただただじっと見ていた。
なにかに魅入られたかのように。
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最終更新:2009年03月03日 16:51