(投稿者:エアロ)
サーベルを手に踊りかかったジョアンナ。
しかし、カ・ガノはどこからとも無く無数の刀を出現させ斬撃をかわしてゆく。
どこから繰り出しても刀や手のようなもので防がれてしまうのだ。
「速い! 前よりも速くなっている・・・!」
ジョアンナは距離をとり、銃撃に変える。
しかしGの甲殻を容易く貫くはずの重機関銃弾が跳ね返されているではないか!
それも、簡単に折れそうな刀を数本集めただけの防壁に!
「さすがだな、ジョアンナ、アルトメリア最初のメードの名は伊達じゃねぇらしいな、これまで倒してきた奴らとは違う」
カ・ガノは余裕綽々そうな口調で言う。
「じゃあ、今度はこっちの番だ、いくぞ!」
言うや否や、カ・ガノの周りに集まっていた刀が矢のようにジョアンナへと飛んでいく。
そしてそれと同時にカ・ガノ自身も愛刀を手に踊りかかる。
ジョアンナはサーベルで刀をはじくが、かなりの数が同時に飛んできているため、
各所に刀傷が出来ていく。
メードゆえに痛みに耐えかね座り込むことも出来ず、防戦するしかない。
いつの間にか、白を基調とした彼女の
ドレスは、ところどころ赤黒いしみができていた。
しかし、それも限界に近づいていた。
ジョアンナはつばぜり合いに耐える力さえ残っていなかった・・・
「くっ・・・殺せ・・・!」
ジョアンナは土と血にまみれながらへたりこんだ。
もはやコアパワーも最低限命をつなぎとめるしか出来ない。
「ジョアンナ、お前はいい奴だった。
ブリュンヒルデと並んでな。
苦しませはしねぇ、楽にしてやる・・・」
カ・ガノはそう言うとジョアンナの首に刀を当てた・・・
しかしその瞬間、上空から機銃掃射が打ち下ろされた。
見上げれば空にはP-49ウォードッグ戦闘機の編隊が舞い、陸からはM4シェイマン戦車隊が迫り来る。
「ちっ、新手か。人相手ならどうにでもなるが兵器相手じゃ分が悪いな」
そう言うとカ・ガノは刀を納めた。
「まてっ、ヤヌス! 殺せ!ここまでしておいて逃げるのか・・・!」
ジョアンナは消え入りそうな声で叫ぶ。
「ジョアンナ、命拾いしたようだな。 次の機会までお前の命、預けてやる。
おまえ自身で来るもよし、弟子でもいい、待ってるぜ・・・」
そう言うとカ・ガノは不敵な笑みを浮かべながら砂嵐のかなたへと消えていった・・・
「以上が私の回想だ。あれ以来、彼には会っていない・・・」
そう言うと、彼女は少し寂しそうに窓から見える地平線を眺めていた。
「その後、あなたはこの施設を立てたのですよね。
負傷からわずかな間によくここまでにしたものだと、軍内部ではもちきりでした」
私はそつの無い言葉を返したが、彼女の目は違う光景を見ていたかのようだ。
そして彼女はこう、返したのだ。
「ああそうだ、私の弟子を紹介しておきたい。私の技を伝授したものだ」
弟子と聞いて私は驚いた。
「弟子・・・ですか? そのメードはあなたを師と仰いだのですか?」
メードが弟子を取る。
確かに帝国ではブリュンヒルデが
ジークフリートを教育したし、
他にもそういう例はあるにはあった。
しかし、殆どが格闘系メードであり、剣や刀を使うメードでの話のはず。
いったいジョアンナは何を伝授したのか?
「そうだ・・・何を教えたかって? わたしの持てる技術の全てだ。
CQC、潜入技術、戦術、銃、剣。ありとあらゆるものを教える」
そして彼女が手招きすると同時に、緑を基調としたドレスを来たメードが入ってきた。
私は彼女の空色の瞳をしばらく見つめた後、吐息して言った。
「メイ・ガウリン、ですか・・・変わった名前だ」
そして、原稿を書いている今現在、彼女は私が追う存在である。
なぜそうなったのか。
次の項ではその経緯を小説風にして追っていく。
最終更新:2009年04月02日 20:04