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第三話:最新型対最新型

(投稿者:天竜)

エレスは、人型のGに向けて猛進していた。
近づくにつれ、その姿がはっきりと分かる。

両腕の巨大な爪が、間違いなく最大の特徴だ。
「……」
エレスは、無言で剣の状態のアポカリプスを構える。
敵もそれに気付き、両腕の爪を構える。
「…上等!」
エレスが斬りかかる。後続のGの到達までは少し間がある。既に自分の後方のGはどりすが殲滅している。
進軍も開始された。後はこいつを片付ければ障害は無い…急がなくては!
敵が、振り下ろしたアポカリプスを左腕の爪で抑え、右腕の爪を振り下ろす。
「なんのッ!!」
振り下ろされた爪を左腕の機械爪で止める。
そのまま、敵を蹴り飛ばし、アポカリプスを銃に変形させる。
「でえええええええいっ!!」
連射、連射、連射。
雷弾の雨が、容赦なく敵に襲い掛かる。しかし、敵の甲殻は、それをものともしないほど堅牢だった。
「成る程、ラグナバーストを受け止めるだけの事はあるわ…!」
アポカリプスを剣に戻し、再び斬りかかる。
「…フッ」
「!?」
敵が、鼻で笑った気がした、いや、確かにそう聞こえた。
「スピードはあるが、一撃が軽いな…ならば」
腕の部分が肩の部分から二股に分かれ、四本の爪になる。
そして、外側の爪で斬撃を抑え、もう一本の腕でエレスに拳を叩き込む。
「ぐっ…!」
エレスは吹っ飛ばされるが、瞬間的に体勢を立て直す。
「…若いな、少女よ」
敵の眼が、微かに笑っている気がする。
「さっきから…まさか、喋れるの…!?」
エレスが斬りかかる。
「フッ…まぁ、そういう事だ」
敵がそれを爪で抑えようとする。
エレスが体勢を落とし、そのまま敵の懐に飛び込んで体当たりする。
「ぬうっ!?」
そのまま回し蹴りで敵を吹っ飛ばす。
「まぁ、喋れるにしても、あなたが敵という事に変わりは無いわね…!」
エレスは更に追撃をかけようと踏み込む。
「フフッ…違いない」
「喰らいやがれ!!」
どりすが、対Gライフルを敵の脳天に向けて放つ。
「っと、良い狙いだ…筋も良いが、相当な努力の賜物と見た…賞賛に値するな」
敵が、その弾丸を肩の爪で叩き落し、もう一方の爪をエレスに向けて振り下ろす。
その爪に向けて機械爪を叩き込みながら、再び懐に踏み込み、斬りつける。
「…なっ!?」
しかし、その刃は敵の腕の爪に遮られていた。
「上手いタイミングでの攻撃だが、残念だったな、踏み込みがもう一歩だ」
敵がエレスに見事な回し蹴りを叩き込む。
「ぬああっ!?」
「これで、さっきの回し蹴りの借りは返した」
エレスが、地面に手を着き、一回転して体勢を戻す。

他の大量のGがエレスのいる場所に到達する。
「…くっ…!」
周囲にいる雑魚を片っ端から倒しながら、戦線を後退させる。
「けど、まずい…これ以上戦線を後退させたら後方への被害が拡大する…何としても!!」
最も数の多い一団に、アポカリプスを向ける。
「ラグナバースト…ファイア!!」
巨大な雷弾がその一団を吹き飛ばす。しかし、数はまだまだ多い。
恐らく、ここに配備された戦力でこれだけの勢力と戦う事は無謀だろう。
エレスが指揮官に連絡する。
「彼我戦力差が大きすぎます!私が時間を稼ぎますので、後退を…!!」
「くっ…救援が来るまで持ちこたえられんか…!」
「く…流石にこれはまずいわね…」
敵の攻撃を受け止めながら、エレスが静かに呟く。

一方、後方でどりすも冷や汗をかいていた。
「おうおう!上等じゃねえか…と言いてェが…こいつは、まずいな…。
敵の数だけならあーしとエレスでどうにかなるだろうが…あの敵、並じゃねェ…」
今もどりすのライフルは的確に敵を撃ちぬいている。しかし、一向に敵の数が減らない。
ライフルの弾が尽きた。どりすは、サブウェポンの対G用強化ハンドガンを二丁取り出す。
先程のラグナバーストも確かにかなりの敵を倒してはいたが、それでも敵の数は依然として非常に多い。
それに、エレスもカートリッジを全て使い切っている。このままでは、ジリ貧だ。

「私は…絶対に諦めない!私の体が、指の一本でも動く限り!!」
エレスが、敵と戦いながらも後退し、Gの数を減らし続ける。
「無理なんて…言ってやるもんか!!」
「フ…その若く、強き心…美しい、と言っておこう…好意に値するな」
Gの群れの奥でそう言った黒いGの眼は、明らかに微笑んでいた。
「なっ…!?」
「しかし…君のその戦い方…下着が上の方まで丸見えだぞ…。
上下共にフリルつきのピンクか…なかなか良い趣味をしている…」
「う、うるさい!メードの土産って奴よ!!」
エレスが真っ赤になって叫ぶ。
「フッ…上手い事を言う…君の言うとおり、私も少しラッキーな気持ちになれたよ。
座布団を二枚程差し上げたいが、生憎ここには無いので、この爪でも差し上げるとしよう!!」
敵が踏み込む。
「何のッ!!」
エレスがそれに応じて踏み込む。
一撃が、交差する。
「…名を聞いておこう、少女よ!!」
「…私の名はエレスティア!白竜工業最強のメードよ!!」
エレスティアが、高らかに叫ぶ。
「エレス君…か、恐らく語源は天界を意味するカエレスティア、という言葉から来ているな。お前に似合う…良い名だ。
…名を尋ねておいて名乗らないのは無礼か…私の名はオリノ・リ・ヨーリ…オリノ、とでも呼ぶが良い」
オリノと名乗ったGは、言葉を続ける。
「しかし、私に便乗して行動を開始した此奴ら…恐らく『彼奴等』の手のものだろうな…。
…どうでも良いが彼奴等の思い通りに事が進むのは少々癪だな…」
オリノが小声で呟く。そして、次の瞬間…
「…おっと、手が滑った」
オリノは、突如、周囲にいたワモンを切り裂いた。
「!?」
「おっと、足がもつれた」
そう言いながら、Gの群れの中に舞い込んで行き、片っ端からGを薙ぎ払い始める。
「一体、何のつもり…!?」
エレスが、周囲に残ったGを倒しながら、呟く。
後方で戦闘を開始していた兵士達も、突如の敵の仲間割れに唖然とする。

「何、簡単な話だよ…私は君たちの敵だ、だが、此奴らも私の敵だ、ただ、それだけだ」
そう言ってGの群れから再びエレスに向けて突っ込む。
「ど、どういう事よ!」
振り下ろされた爪を、エレスは左腕の機械爪で受け止める。
「Gの世界でも、今、大きな変革が起ころうとしている…そういう事だよ。そう、『人間と同じように』ね…」
「Gの世界の…変革…!?」
「さて…それはともあれ、エレス君、話をしている暇はない。早くしなければ君の仲間や人間たちが傷つくことになるぞ」
「う、うるさい!言われなくても!!」
エレスが叫び、周囲のGを回転斬りで薙ぎ倒す。
「けど…このままじゃ…いえ、その言葉を口にする事は許されない!」
エレスが、冷や汗をかきながら、叫ぶ。
突如のオリノの同士討ちで混乱こそしているが、明らかに劣勢だった。
このままでは、しかし、エレスはその先の言葉を口にしなかった。
負けは、それを認めた瞬間に訪れる。だから、エレスはその言葉を口にしないと誓っているのだ。
しかし、現実は、簡単にはいかないことを目の前で証明していた…。
「負けられない…負ける、ものか!!」

エレスが叫んだ、その、次の瞬間だった。

「白髪の君!ここは僕に任せて!」
その一声と、Gの群れを凄まじい勢いで薙ぎ払う大斧。
大柄な影が、エレスの横を駆け抜け、オリノに斧を叩き込んだ。
「ぬっ!?」
頭に角がある大柄な男、そして、大きな斧。
間違いない、彼もメードだ。
「アピス君、君かね!!」
叩き込まれた斧を四本の腕で止めたオリノが、男の名を叫んだ。
「…またお前なのか、オリノ!」
「アピス君、元気そうで何よりだ!」
そう言ってオリノが一歩下がり、反撃の姿勢をとる。
「…君は後方で、もう一人到着したメードと合流して!」
アピスと呼ばれた男は、一瞬だけ振り向き、エレスに指示を出した。
「アピス、とか言ったわね…あなたは大丈夫なの!?」
「…大丈夫、僕はここで死ぬわけには行かないから」
その声には、温かさと、強さがあった。
エレスは、その声を聞いて少しだけ安心した気がした。
「…了解。正直…かなりまずかったと思う…ありがとう」
エレスが少し照れながら礼を言うと、周囲のGを倒しながら後方に下がる。

「…私自身が彼女達の力量を試し、引き出してみようと思ったが…彼奴らめ…これでは台無しではないか…」
「お前は…一体何を企んでいるんだ!!」
アピスが、再び斧を構える。
「今はまだ話すわけには行かんな…殿方と踊る趣味は無いが止むを得ないな…
さぁ、アピス君、私の踊りの相手を務めていただこうか!!」
オリノが、腕を二本に戻し、構える。
「…しかし、君が出てきた、と言う事は君の小さな恋人さんも一緒か…フフ、これは彼奴等も予想しないだろう。
礼を言うぞ、アピス君…君のおかげで、どうやら彼奴等の思惑は失敗に終わったらしい」
「何を言っている…?」
「今は知る必要はない…いずれ君は嫌でも知らねばならない…君とも無関係ではない事だからな……お喋りは終わりだ、始めよう!」
オリノが、アピスに向けて爪を叩き込む。
「!」
アピスが、斧を振り下ろす。
非常に重い金属音が、戦場に響き渡った…。

一方、少し後方で戦っていたどりすはと言えば…
既に、Gの群れとの混戦に突入していた。
「おっ、アピスが増援に来やがったか…これでエレスも無事だな…こりゃ形勢逆転だぜ…だが…あいつが来るとなれば…」
「旧式~!援護に来たわよ~!!」
どりすの前に、金髪の縦ロールの少女が立つ。
「やーっぱり来やがった!ネイト!いい加減あーしを旧式って呼ぶのをやめろ!!」
どりすが思わず叫ぶ。
「だって事実でしょ?」
「うぐぐ…ええいもう!新型だって言うんなら仕事してくれよな!」
「うるさいわね!」
ネイトと呼ばれた少女が目の前に迫ってきたワモンを掴む。
ワモンが、まるで電子レンジにかけられたかのように、過熱、爆砕する。
「どうよ旧式!」
「相変わらず、使い勝手は悪いがかっこいい能力だよな、あれ…」
どりすが呟く。
「…ほら!ぼさっとすんな!次が来るぜ!」
更に呟きに続けて、ネイトに叫ぶ。
「い、言われなくても分かってるわよ!」
ネイトが手をかざす。
周囲のワモンが過熱し始める。
しかし、一体のワモンがそれを抜けて突っ込んできた。
「くっ!?」
次の瞬間、ネイトの前方から雷弾がそのワモンを黒焦げにしていた。
突破したワモンが黒焦げになるのと、周囲のワモンが爆砕するのはほぼ同時だった。
「だ、誰…!?」
「おう、戻ってきたか、エレス!」
そこには、銃形態のアポカリプスを構えたエレスがいた。Gを凄まじい勢いで蹴散らして戻ってきていたのだ。
「アピスさんからの命令で、後方の増援と合流しろ、って事なのでね…悔しいけど」
「おう…そうか、残念だったな」
「…けど、そんなんで落ち込んでる暇は無いから…私は、もっともっと強くなれる!私の力はこんなもんじゃない!!」
そう言って、そのまま周囲のワモンを斬り裂く。
「おう、その意気だ!あーしも応援するぜ!
それはそうとよぉ、お前からも何とか言ってやってくれよ!こいつ、あーしの事を旧式呼ばわりすんだよ!」
ハンドガンの銃弾を的確にGの急所へと叩き込みながら、どりすが喋る。
「あ、あの…せめて、先輩、とか、そういう呼びかたしてあげたほうが…」
更にGを叩き斬りながらエレスがネイトに言う。
「うるさい!旧式!」
Gを爆砕しながら、ネイトが返す。
「き、旧式…私が…旧式!?何処に目をつけてるのよ!私は開発されたての新型の新型よ!!」
エレスがネイトに返す。
雑談をしながらに見えるが、事実、人的被害が最も少ないようにGを撃破している。
彼女達はメード、まがりなりにも、兵器なのだから。
「むかつく奴ね…名を名乗りなさい!」
エレスがまだ名前を聞いていなかったことに気付き、少し喧嘩腰だが名を尋ねる。
「私はネイト!ネイト・グレン…ザハーラの『最新型』よ!」
「…私はエレスティア…白竜工業『最新最強』のメードよ!」
お互いが、同時にGを撃破しながら名乗りを上げる。
「…成る程ね、最新型…」
「…成る程、最新最強…」
そして、エレスとネイトが同時に頷き、不適に笑う。
「…上等」
エレスが呟く。
「こいつには…」
ネイトが呟く。
「「…負けられない!!」」
二人の闘争本能に、火がついた。
「…おうおう!面白い事になってきやがったが、ここは戦場だって事も忘れんなよ!
…お前らの言う『旧式』からの忠告だ…冷静さを欠くと…死ぬぜ!!」
「「了解!」」
二人が空返事で聞いたのか、本当に理解して答えたのかは定かではない。
しかし、その直後から、確実にGの殲滅速度は上がり始めた。
闘争本能に火がつきながら、それと同時に、三人は団結を始めたのだ。
ネイトとエレスが切り込み、どりすがそれに的確に銃弾を叩き込む。
劣勢は、覆りつつあった…。

一方、戦場に、さらに増援が到着しつつあった。
「つきましたね、キルシュさん」
肌の白い、腕に翼を持った少女が、杖を持った紫髪の少女と共に、戦場に駆けつけた。
「…そうね…けど、かなり混戦になってる…前方、イレギュラーと…アピスさんが単独で交戦中。
…後方は…ネイト、どりす…それと…新入り、かしら?」
キルシュさんと呼ばれた少女が、戦況を分析する。
「アピスさんと交戦中のイレギュラーは、以前にも何度か単独で攻撃をかけてきたスポーンと断定。
それと…何か分からないけど仲間割れしてるわね…。
とりあえず、イレギュラーの相手はアピスさんに任せて、私達はどりす達と合流しましょう、Tl-ma…」
「はいです」
Tl-ma(テルマ)と呼ばれた少女は頷き、キルシュと二人でエレス達の元へと向かった。

「おう!?テルマにキルシュじゃねェか…お前らも増援か!?」
どりすが少し離れた場所でGと交戦を始めた二人に叫ぶ。
「はいです、どりすさん」
テルマが空中から、光の羽を敵目掛けて降らせる。
蜂の巣になったワモンが沈黙する。
更に急降下し、腕の翼で切りかかる。
「今合流するから…」
キルシュが、フィールドでワモンを吹き飛ばしながら言う。
戦線が、徐々に推し戻され始めた。人的被害はそう酷くはない。このまま何とかなってくれれば御の字だ。

そして、オリノとアピスは激闘を繰り広げていた。
アピスが横薙ぎに振るった斧を、オリノはその平面部分を蹴りながら爪を振り下ろす。
「くっ!」
爪を手で押さえ、そのまま背負い投げる。
「うぐおっ…流石だな、アピス君!」
オリノが四本の腕で強引に姿勢を立て直し、着地する。
「答えろ!お前は、いや、お前『達』は一体何を企んでいる!」
アピスが叫ぶ。
「『達』、と言うのが何を指すのか、それを君自身が気付けば、その時に私も答えよう!
だが、真実というものは残酷で、過酷なものだよ…できれば、知らぬ方が良い事もある…君も、それを知っているはずだ」
「…!」
アピスの過去の、忌まわしい記憶が、頭をよぎる。
「それでも、僕達はそれと向き合い、前に進まなければならない!」
しかしアピスは、まるでその記憶を振り払うかのように斧を振り下ろした。
「良い答えだ!」
オリノがそれを四本の腕を総動員して押さえるが、あまりの力にそのまま吹き飛ばされる。
「その覚悟があれば、いずれ君は真実を知る事になろう…私が語る必要は無い…近い内に必ず、『彼奴等』は本格的に動く!
…その時、我等『クルセイダー』もまた本当に活動を開始する時となろう…!!」
「クルセイダー…だって?」
「…っと、君の熱意に押されて少々喋りすぎたか…どうやら、今日は私にとって厄日と吉日が同時に来ているらしい!
エレス君に、『君の下着、とても良く似合っていて思わず見惚れてしまった…君とは是非また戦いたい』と伝えてくれたまえ!
私は帰って食事の支度をせねばならぬ!さらばだ、そして、また会おう諸君!」
何やら少しGとしてはおかしい発言が混じっていたが、そう言ってオリノは凄まじいスピードで戦線を退いていった。
「オリノ…そして、クルセイダー…一体、何が始まると言うんだ…?」
アピスは、そう呟いた…。

既に、今回の戦いの勝敗は、決した。
後方から、戦線を押し戻してきた五人、そして、最前線からアピスが猛烈な勢いで敵を薙ぎ倒し、挟撃、と言う状態になった。
兵士たちの奮闘もあり、その後、数時間で戦闘は終了し、死者を一人も出さないと言う、驚異的な戦果が、残った…。


続く


あとがき
どうも、ここまで読んで頂きありがとうございます!
無茶苦茶長くなってしまいそうなので一旦区切ります。
取り敢えず、今回ちょっとしか出番がありませんでしたが、
テルマとキルシュとネイトは次回の話で大活躍します(爆)
口調などは遠慮せずに突っ込んでください。修正します。
今後もまた無茶をやらかしますので、よろしくお願いします!
最終更新:2009年04月23日 00:04
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