(投稿者:天竜)
エレスは、人型のGに向けて猛進していた。
近づくにつれ、その姿がはっきりと分かる。
両腕の巨大な爪が、間違いなく最大の特徴だ。
「……」
エレスは、無言で剣の状態のアポカリプスを構える。
敵もそれに気付き、両腕の爪を構える。
「…上等!」
エレスが斬りかかる。後続のGの到達までは少し間がある。既に自分の後方のGは
どりすが殲滅している。
進軍も開始された。後はこいつを片付ければ障害は無い…急がなくては!
敵が、振り下ろしたアポカリプスを左腕の爪で抑え、右腕の爪を振り下ろす。
「なんのッ!!」
振り下ろされた爪を左腕の機械爪で止める。
そのまま、敵を蹴り飛ばし、アポカリプスを銃に変形させる。
「でえええええええいっ!!」
連射、連射、連射。
雷弾の雨が、容赦なく敵に襲い掛かる。しかし、敵の甲殻は、それをものともしないほど堅牢だった。
「成る程、ラグナバーストを受け止めるだけの事はあるわ…!」
アポカリプスを剣に戻し、再び斬りかかる。
「…フッ」
「!?」
敵が、鼻で笑った気がした、いや、確かにそう聞こえた。
「スピードはあるが、一撃が軽いな…ならば」
腕の部分が肩の部分から二股に分かれ、四本の爪になる。
そして、外側の爪で斬撃を抑え、もう一本の腕でエレスに拳を叩き込む。
「ぐっ…!」
エレスは吹っ飛ばされるが、瞬間的に体勢を立て直す。
「…若いな、少女よ」
敵の眼が、微かに笑っている気がする。
「さっきから…まさか、喋れるの…!?」
エレスが斬りかかる。
「フッ…まぁ、そういう事だ」
敵がそれを爪で抑えようとする。
エレスが体勢を落とし、そのまま敵の懐に飛び込んで体当たりする。
「ぬうっ!?」
そのまま回し蹴りで敵を吹っ飛ばす。
「まぁ、喋れるにしても、あなたが敵という事に変わりは無いわね…!」
エレスは更に追撃をかけようと踏み込む。
「フフッ…違いない」
「喰らいやがれ!!」
どりすが、対Gライフルを敵の脳天に向けて放つ。
「っと、良い狙いだ…筋も良いが、相当な努力の賜物と見た…賞賛に値するな」
敵が、その弾丸を肩の爪で叩き落し、もう一方の爪をエレスに向けて振り下ろす。
その爪に向けて機械爪を叩き込みながら、再び懐に踏み込み、斬りつける。
「…なっ!?」
しかし、その刃は敵の腕の爪に遮られていた。
「上手いタイミングでの攻撃だが、残念だったな、踏み込みがもう一歩だ」
敵がエレスに見事な回し蹴りを叩き込む。
「ぬああっ!?」
「これで、さっきの回し蹴りの借りは返した」
エレスが、地面に手を着き、一回転して体勢を戻す。
他の大量のGがエレスのいる場所に到達する。
「…くっ…!」
周囲にいる雑魚を片っ端から倒しながら、戦線を後退させる。
「けど、まずい…これ以上戦線を後退させたら後方への被害が拡大する…何としても!!」
最も数の多い一団に、アポカリプスを向ける。
「ラグナバースト…ファイア!!」
巨大な雷弾がその一団を吹き飛ばす。しかし、数はまだまだ多い。
恐らく、ここに配備された戦力でこれだけの勢力と戦う事は無謀だろう。
エレスが指揮官に連絡する。
「彼我戦力差が大きすぎます!私が時間を稼ぎますので、後退を…!!」
「くっ…救援が来るまで持ちこたえられんか…!」
「く…流石にこれはまずいわね…」
敵の攻撃を受け止めながら、エレスが静かに呟く。
一方、後方でどりすも冷や汗をかいていた。
「おうおう!上等じゃねえか…と言いてェが…こいつは、まずいな…。
敵の数だけならあーしとエレスでどうにかなるだろうが…あの敵、並じゃねェ…」
今もどりすのライフルは的確に敵を撃ちぬいている。しかし、一向に敵の数が減らない。
ライフルの弾が尽きた。どりすは、サブウェポンの対G用強化ハンドガンを二丁取り出す。
先程のラグナバーストも確かにかなりの敵を倒してはいたが、それでも敵の数は依然として非常に多い。
それに、エレスもカートリッジを全て使い切っている。このままでは、ジリ貧だ。
「私は…絶対に諦めない!私の体が、指の一本でも動く限り!!」
エレスが、敵と戦いながらも後退し、Gの数を減らし続ける。
「無理なんて…言ってやるもんか!!」
「フ…その若く、強き心…美しい、と言っておこう…好意に値するな」
Gの群れの奥でそう言った黒いGの眼は、明らかに微笑んでいた。
「なっ…!?」
「しかし…君のその戦い方…下着が上の方まで丸見えだぞ…。
上下共にフリルつきのピンクか…なかなか良い趣味をしている…」
「う、うるさい!メードの土産って奴よ!!」
エレスが真っ赤になって叫ぶ。
「フッ…上手い事を言う…君の言うとおり、私も少しラッキーな気持ちになれたよ。
座布団を二枚程差し上げたいが、生憎ここには無いので、この爪でも差し上げるとしよう!!」
敵が踏み込む。
「何のッ!!」
エレスがそれに応じて踏み込む。
一撃が、交差する。
「…名を聞いておこう、少女よ!!」
「…私の名は
エレスティア!
白竜工業最強のメードよ!!」
エレスティアが、高らかに叫ぶ。
「エレス君…か、恐らく語源は天界を意味するカエレスティア、という言葉から来ているな。お前に似合う…良い名だ。
…名を尋ねておいて名乗らないのは無礼か…私の名は
オリノ・リ・ヨーリ…オリノ、とでも呼ぶが良い」
オリノと名乗ったGは、言葉を続ける。
「しかし、私に便乗して行動を開始した此奴ら…恐らく『彼奴等』の手のものだろうな…。
…どうでも良いが彼奴等の思い通りに事が進むのは少々癪だな…」
オリノが小声で呟く。そして、次の瞬間…
「…おっと、手が滑った」
オリノは、突如、周囲にいたワモンを切り裂いた。
「!?」
「おっと、足がもつれた」
そう言いながら、Gの群れの中に舞い込んで行き、片っ端からGを薙ぎ払い始める。
「一体、何のつもり…!?」
エレスが、周囲に残ったGを倒しながら、呟く。
後方で戦闘を開始していた兵士達も、突如の敵の仲間割れに唖然とする。
「何、簡単な話だよ…私は君たちの敵だ、だが、此奴らも私の敵だ、ただ、それだけだ」
そう言ってGの群れから再びエレスに向けて突っ込む。
「ど、どういう事よ!」
振り下ろされた爪を、エレスは左腕の機械爪で受け止める。
「Gの世界でも、今、大きな変革が起ころうとしている…そういう事だよ。そう、『人間と同じように』ね…」
「Gの世界の…変革…!?」
「さて…それはともあれ、エレス君、話をしている暇はない。早くしなければ君の仲間や人間たちが傷つくことになるぞ」
「う、うるさい!言われなくても!!」
エレスが叫び、周囲のGを回転斬りで薙ぎ倒す。
「けど…このままじゃ…いえ、その言葉を口にする事は許されない!」
エレスが、冷や汗をかきながら、叫ぶ。
突如のオリノの同士討ちで混乱こそしているが、明らかに劣勢だった。
このままでは、しかし、エレスはその先の言葉を口にしなかった。
負けは、それを認めた瞬間に訪れる。だから、エレスはその言葉を口にしないと誓っているのだ。
しかし、現実は、簡単にはいかないことを目の前で証明していた…。
「負けられない…負ける、ものか!!」
エレスが叫んだ、その、次の瞬間だった。
「白髪の君!ここは僕に任せて!」
その一声と、Gの群れを凄まじい勢いで薙ぎ払う大斧。
大柄な影が、エレスの横を駆け抜け、オリノに斧を叩き込んだ。
「ぬっ!?」
頭に角がある大柄な男、そして、大きな斧。
間違いない、彼もメードだ。
「
アピス君、君かね!!」
叩き込まれた斧を四本の腕で止めたオリノが、男の名を叫んだ。
「…またお前なのか、オリノ!」
「アピス君、元気そうで何よりだ!」
そう言ってオリノが一歩下がり、反撃の姿勢をとる。
「…君は後方で、もう一人到着したメードと合流して!」
アピスと呼ばれた男は、一瞬だけ振り向き、エレスに指示を出した。
「アピス、とか言ったわね…あなたは大丈夫なの!?」
「…大丈夫、僕はここで死ぬわけには行かないから」
その声には、温かさと、強さがあった。
エレスは、その声を聞いて少しだけ安心した気がした。
「…了解。正直…かなりまずかったと思う…ありがとう」
エレスが少し照れながら礼を言うと、周囲のGを倒しながら後方に下がる。
「…私自身が彼女達の力量を試し、引き出してみようと思ったが…彼奴らめ…これでは台無しではないか…」
「お前は…一体何を企んでいるんだ!!」
アピスが、再び斧を構える。
「今はまだ話すわけには行かんな…殿方と踊る趣味は無いが止むを得ないな…
さぁ、アピス君、私の踊りの相手を務めていただこうか!!」
オリノが、腕を二本に戻し、構える。
「…しかし、君が出てきた、と言う事は君の小さな恋人さんも一緒か…フフ、これは彼奴等も予想しないだろう。
礼を言うぞ、アピス君…君のおかげで、どうやら彼奴等の思惑は失敗に終わったらしい」
「何を言っている…?」
「今は知る必要はない…いずれ君は嫌でも知らねばならない…君とも無関係ではない事だからな……お喋りは終わりだ、始めよう!」
オリノが、アピスに向けて爪を叩き込む。
「!」
アピスが、斧を振り下ろす。
非常に重い金属音が、戦場に響き渡った…。
一方、少し後方で戦っていたどりすはと言えば…
既に、Gの群れとの混戦に突入していた。
「おっ、アピスが増援に来やがったか…これでエレスも無事だな…こりゃ形勢逆転だぜ…だが…あいつが来るとなれば…」
「旧式~!援護に来たわよ~!!」
どりすの前に、金髪の縦ロールの少女が立つ。
「やーっぱり来やがった!ネイト!いい加減あーしを旧式って呼ぶのをやめろ!!」
どりすが思わず叫ぶ。
「だって事実でしょ?」
「うぐぐ…ええいもう!新型だって言うんなら仕事してくれよな!」
「うるさいわね!」
ネイトと呼ばれた少女が目の前に迫ってきたワモンを掴む。
ワモンが、まるで電子レンジにかけられたかのように、過熱、爆砕する。
「どうよ旧式!」
「相変わらず、使い勝手は悪いがかっこいい能力だよな、あれ…」
どりすが呟く。
「…ほら!ぼさっとすんな!次が来るぜ!」
更に呟きに続けて、ネイトに叫ぶ。
「い、言われなくても分かってるわよ!」
ネイトが手をかざす。
周囲のワモンが過熱し始める。
しかし、一体のワモンがそれを抜けて突っ込んできた。
「くっ!?」
次の瞬間、ネイトの前方から雷弾がそのワモンを黒焦げにしていた。
突破したワモンが黒焦げになるのと、周囲のワモンが爆砕するのはほぼ同時だった。
「だ、誰…!?」
「おう、戻ってきたか、エレス!」
そこには、銃形態のアポカリプスを構えたエレスがいた。Gを凄まじい勢いで蹴散らして戻ってきていたのだ。
「アピスさんからの命令で、後方の増援と合流しろ、って事なのでね…悔しいけど」
「おう…そうか、残念だったな」
「…けど、そんなんで落ち込んでる暇は無いから…私は、もっともっと強くなれる!私の力はこんなもんじゃない!!」
そう言って、そのまま周囲のワモンを斬り裂く。
「おう、その意気だ!あーしも応援するぜ!
それはそうとよぉ、お前からも何とか言ってやってくれよ!こいつ、あーしの事を旧式呼ばわりすんだよ!」
ハンドガンの銃弾を的確にGの急所へと叩き込みながら、どりすが喋る。
「あ、あの…せめて、先輩、とか、そういう呼びかたしてあげたほうが…」
更にGを叩き斬りながらエレスがネイトに言う。
「うるさい!旧式!」
Gを爆砕しながら、ネイトが返す。
「き、旧式…私が…旧式!?何処に目をつけてるのよ!私は開発されたての新型の新型よ!!」
エレスがネイトに返す。
雑談をしながらに見えるが、事実、人的被害が最も少ないようにGを撃破している。
彼女達はメード、まがりなりにも、兵器なのだから。
「むかつく奴ね…名を名乗りなさい!」
エレスがまだ名前を聞いていなかったことに気付き、少し喧嘩腰だが名を尋ねる。
「私はネイト!
ネイト・グレン…ザハーラの『最新型』よ!」
「…私はエレスティア…白竜工業『最新最強』のメードよ!」
お互いが、同時にGを撃破しながら名乗りを上げる。
「…成る程ね、最新型…」
「…成る程、最新最強…」
そして、エレスとネイトが同時に頷き、不適に笑う。
「…上等」
エレスが呟く。
「こいつには…」
ネイトが呟く。
「「…負けられない!!」」
二人の闘争本能に、火がついた。
「…おうおう!面白い事になってきやがったが、ここは戦場だって事も忘れんなよ!
…お前らの言う『旧式』からの忠告だ…冷静さを欠くと…死ぬぜ!!」
「「了解!」」
二人が空返事で聞いたのか、本当に理解して答えたのかは定かではない。
しかし、その直後から、確実にGの殲滅速度は上がり始めた。
闘争本能に火がつきながら、それと同時に、三人は団結を始めたのだ。
ネイトとエレスが切り込み、どりすがそれに的確に銃弾を叩き込む。
劣勢は、覆りつつあった…。
一方、戦場に、さらに増援が到着しつつあった。
「つきましたね、
キルシュさん」
肌の白い、腕に翼を持った少女が、杖を持った紫髪の少女と共に、戦場に駆けつけた。
「…そうね…けど、かなり混戦になってる…前方、イレギュラーと…アピスさんが単独で交戦中。
…後方は…ネイト、どりす…それと…新入り、かしら?」
キルシュさんと呼ばれた少女が、戦況を分析する。
「アピスさんと交戦中のイレギュラーは、以前にも何度か単独で攻撃をかけてきた
スポーンと断定。
それと…何か分からないけど仲間割れしてるわね…。
とりあえず、イレギュラーの相手はアピスさんに任せて、私達はどりす達と合流しましょう、Tl-ma…」
「はいです」
Tl-ma(テルマ)と呼ばれた少女は頷き、キルシュと二人でエレス達の元へと向かった。
「おう!?テルマにキルシュじゃねェか…お前らも増援か!?」
どりすが少し離れた場所でGと交戦を始めた二人に叫ぶ。
「はいです、どりすさん」
テルマが空中から、光の羽を敵目掛けて降らせる。
蜂の巣になったワモンが沈黙する。
更に急降下し、腕の翼で切りかかる。
「今合流するから…」
キルシュが、フィールドでワモンを吹き飛ばしながら言う。
戦線が、徐々に推し戻され始めた。人的被害はそう酷くはない。このまま何とかなってくれれば御の字だ。
そして、オリノとアピスは激闘を繰り広げていた。
アピスが横薙ぎに振るった斧を、オリノはその平面部分を蹴りながら爪を振り下ろす。
「くっ!」
爪を手で押さえ、そのまま背負い投げる。
「うぐおっ…流石だな、アピス君!」
オリノが四本の腕で強引に姿勢を立て直し、着地する。
「答えろ!お前は、いや、お前『達』は一体何を企んでいる!」
アピスが叫ぶ。
「『達』、と言うのが何を指すのか、それを君自身が気付けば、その時に私も答えよう!
だが、真実というものは残酷で、過酷なものだよ…できれば、知らぬ方が良い事もある…君も、それを知っているはずだ」
「…!」
アピスの過去の、忌まわしい記憶が、頭をよぎる。
「それでも、僕達はそれと向き合い、前に進まなければならない!」
しかしアピスは、まるでその記憶を振り払うかのように斧を振り下ろした。
「良い答えだ!」
オリノがそれを四本の腕を総動員して押さえるが、あまりの力にそのまま吹き飛ばされる。
「その覚悟があれば、いずれ君は真実を知る事になろう…私が語る必要は無い…近い内に必ず、『彼奴等』は本格的に動く!
…その時、我等『
クルセイダー』もまた本当に活動を開始する時となろう…!!」
「クルセイダー…だって?」
「…っと、君の熱意に押されて少々喋りすぎたか…どうやら、今日は私にとって厄日と吉日が同時に来ているらしい!
エレス君に、『君の下着、とても良く似合っていて思わず見惚れてしまった…君とは是非また戦いたい』と伝えてくれたまえ!
私は帰って食事の支度をせねばならぬ!さらばだ、そして、また会おう諸君!」
何やら少しGとしてはおかしい発言が混じっていたが、そう言ってオリノは凄まじいスピードで戦線を退いていった。
「オリノ…そして、クルセイダー…一体、何が始まると言うんだ…?」
アピスは、そう呟いた…。
既に、今回の戦いの勝敗は、決した。
後方から、戦線を押し戻してきた五人、そして、最前線からアピスが猛烈な勢いで敵を薙ぎ倒し、挟撃、と言う状態になった。
兵士たちの奮闘もあり、その後、数時間で戦闘は終了し、死者を一人も出さないと言う、驚異的な戦果が、残った…。
続く
あとがき
どうも、ここまで読んで頂きありがとうございます!
無茶苦茶長くなってしまいそうなので一旦区切ります。
取り敢えず、今回ちょっとしか出番がありませんでしたが、
テルマとキルシュとネイトは次回の話で大活躍します(爆)
口調などは遠慮せずに突っ込んでください。修正します。
今後もまた無茶をやらかしますので、よろしくお願いします!
最終更新:2009年04月23日 00:04