こちら白竜工業対G兵装開発特務課 この戦いの先に答えは在るのか

(投稿者:天竜)


 何故あのような奴が白竜工業にいられる。
 そもそも白竜工業の前身となった白竜家を中心とした職人組合は刀匠の組合だったのだ、
 何故あのような浪漫も夢もあったものではない所謂『兵器』を造らねばならん。
 あのようなただの兵器、ただ引き金を引けば人が殺せるような、そんなもの、白竜工業の正義に反する。
 …我々は剣一本でもやっていけるはずだ。『奴』を、俺は断じて認めん。
                             ―ある刀鍛冶の嘆き

 今の戦場で剣一本で何が出来るというのだ。今の戦場、剣などただのサイドウェポンに過ぎない。
 時代は流れたのだ、我々もそれに対応しなくてどうする。
 時代錯誤の懐古主義者がこのままのさばり続けたら、白竜工業は終わりだ。
 もっと銃器の職人を増やし、強力な火器を戦士たちに与える事こそ、今最も必要な事だろう。
 剣など必要最低限…社長一人で十分だ。『奴』の存在は、ここには不要だ。
                             ―ある銃器製作者のぼやき


―このまま、『奴』が横行するのを許しては、白竜工業は崩壊する

―今日こそ、決着をつけねば


 エントリヒ帝国首都ニーベルンゲの片隅には、ひっそりと、そして、明らかに異質な存在感を放つ町工場が存在する…。
 その名は、白竜工業。
 かつて楼蘭に居を置いていた、気難しい職人達の溜まり場…。


こちら白竜工業対G兵装開発特務課 この戦いの先に答えは在るのか




 白竜工業の作業場の中心で、刀を構えた筋肉質の男と、二挺拳銃を構えたテンガロンハットの男が対峙している。
「もう何も言うこたぁない…決着をつけよう、平賀」
「それはこっちの台詞だぜ…土岐!!」
 白竜工業の職人を束ねる三人、平賀、土岐、真田。
 対峙しているのは、土岐と平賀だった。

「…行くぜ!」
 平賀が突進する。
「悪いな、その前に蜂の巣だ。」
 土岐が、銃を放つ。
 金属音。平賀が、刀で銃弾を叩き落したのだ。
「無駄だぜ!」
「どうかな!?」
 土岐が再び銃を放つ。
「何処に向けて撃ってやが…おおっとぉ!!」
 銃弾は、地面にぶつかって跳ね、平賀の顔面目掛けて飛来する。
 平賀が咄嗟に回避し、腰に下げていたナイフを投げつける。
「ッ!?」
 土岐がそれを回避し、罵声を浴びせる。
「刀一本じゃなかったのか!?卑怯者め!!」
「テメェだって今回、銃、二挺じゃねえか!!」
「チッ…。」
 平賀の反論に土岐が黙る。
「細かい事をとやかく言いやがって!!」
 接近した平賀が刀を振り下ろす。
「うるせえ黙れ古狸野郎が…!」
 土岐がそれを紙一重で回避する。
「くたばれ古狸筋肉…!!」
 土岐が至近距離から二挺同時に銃を放つ。
「くたばらねえよ似非ウエスタン!!」
 平賀が、それを冷静に刀の一振りで叩き落す。
 頭に血は上っているはずなのだが、二人とも戦いぶりは驚くほど冷静だった。

 一方、白竜工業の社長室から、銃声と金属音を聞きつけ、紫髪の青年が下りてくる。
「今日も戦ってるのか…って、あのままだと本当に洒落にならなくなりそうだな…。」
 彼こそ、この白竜工業の若き社長、白竜獅遠である。
「二人とも完全に我を失ってる…あれは本気で殺る気だ。止めないとな…」
 獅遠が、戦闘を睨む。
「…ったく、Gとの戦いで、銃だ剣だ言っていては勝てないと、いい加減気付いてもらいたいもんなのだがな…」
 獅遠が、腰に差した刀を抜き、更に、反対側に差した銃を抜く。
「行くぞ…!」

 そして、平賀と土岐の戦いは更に激化していた。
「いい加減、くたばってもらいたいんだがな…平賀…白竜工業の、未来の為に…!!」
 土岐が、再び銃を放つ。
「それはこっちの台詞なんだよ…土岐!!」
 平賀が、止めを刺さんと刀を振り下ろす。

 しかし、その次の瞬間、いずれの攻撃もお互いを捉える事は無かった。
「…その辺にしておけ、二人とも。」
 その言葉が、作業場に響き、二人の間に一陣の暴風が舞い降りた。

 平賀の刀が宙を舞い、土岐の銃が放った銃弾が叩き落される。

 二人の間には、銃と刀を構えた、獅遠の姿があった。
 平賀の額に銃を突きつけ、土岐の喉元には刀を突きつけている。

 良く見ると、宙を舞った平賀の刀が見事に折れている。
 そして、土岐の二挺の拳銃も、銃身から真っ二つになっていた。

「「しゃ、社長…!?」」
 二人が唖然とする。
「…お前達が白竜工業の未来を真剣に考えてくれる事は俺にとっても嬉しい事だ。
 だが、だからこそ言いたい…その程度の事で争う事が、本当に白竜工業の未来に繋がるか?」
 獅遠が、刀と銃を元の鞘に収める。
「時雨が俺に渡した設計図があってな、製作するにはお前達二人の協力が必要だ。
 …何せ、戦闘中に、銃に剣に、自在に可変する武器だからな。
 恐らく、これが完成すれば、今までの白竜工業の作る武器では最強の威力を持ったものになるはずだ。
 俺の機械製作技術と、土岐の銃器製作技術、平賀の刀剣製作技術が完全に一致しなければ、それを完成させる事は出来ない」
 獅遠が、静かに言葉を続ける。
「そう…誰か一人欠けただけで、この武器は完成しないのだ」
 獅遠は、本来刀一本で戦う。しかし、今、獅遠は敢えて銃を持ち出した。
 そして、それぞれが否定しようとした武器で、それぞれを止めた。
 それが何を意味するか、二人は悟らざるを得なかった。
「…協力できるな?」
 獅遠の眼には、有無を言わさぬ迫力があった。
 どうやら、本気で怒らせてしまったらしい。
「しゃ、社長が言うなら…」
「お、おう…」
 二人が、気圧されて頷く。
「よし、それで良い。喧嘩するのは別に構わないが、度を過ごして殺し合いになるのは止めてくれ。
 …誰一人として欠ける事は許さない…全員そろって、白竜工業だ」
 そう言って、獅遠はニヤっと笑う。
「あ、それと、土岐。確かに俺個人としては刀剣は好きだが、決して銃器が嫌いなわけじゃない。
 平賀、俺が銃も使えるって事、これで分かっただろう?やっぱり、どっちも使えないとな」
 獅遠が歩き出す。
「やっぱ、社長はすごいな…」
「ああ、あの歳でもう俺達を圧倒しやがる…」
 やはり、獅遠社長には敵わない。社長室へと歩いていく獅遠の後姿を見ながら、二人は、そう思った。
「喧嘩は程ほどにしとくか…」
「ああ…今度作る武器ってのも気になるしな。
 どうやら、俺達が協力しないと完成しないみたいだからな、特別に一時休戦にしてやる」
 そう言って、二人はがっちりと握手した。
「…けどやっぱお前はムカつくんだよ!!」
 しかし、いつの間にかまた険悪な雰囲気になり、握り合いになり始める。
「当然の話だろうが…俺もお前が嫌いだ…!!」
 その直後、獅遠の後ろから、今度は殴り合いの音が響いた。

「やれやれ…結局お前らは、武器云々以前に、単純に仲が悪いだけなんだよ…」
 獅遠は、ため息をつきながら、社長室に向けて歩いていった…。


 果たして、この戦いの先に答えは在るのか…?


 ………ねーよwww



あとがき

………ねーよwww
どうも、天竜です。
久しぶりのこち白でした。
ごめんなさい、今回はメードが出てきませんでした…むさ苦しくて本当にすみません(汗)
ただし、恐らくお気づきの事と思いますが、これは実はアポカリプス開発秘話です。
馬鹿げた戦闘能力の二人の偏執狂のバトル。
そして、実力ではその達人二人すら圧倒する社長ですが、もう少し戦いが長引いたら多分倒れます。
こんな馬鹿共ですが、今後とも馬鹿を続ける予定ですので、よろしくお願いいたします。
最終更新:2009年07月08日 17:38
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。