降臨!正義の秘密結社!!

(投稿者:天竜)


帝都の外れで、黒い剣を構えた少女が、大勢の戦闘員の中央で戦っていた。
良く見ると、黒い剣を構えた少女はかなりボロボロになっている。
「正義の味方…いい加減うざったいのニャ!!」
戦闘員の遥か後方で、ネコミミをつけた少女が、黒い剣を構えた少女を睨む。
「…くっ…まさか、あんたらのような悪党相手に、この私が遅れを取る、なんて…!!」
「生憎、あなたのような正義の味方相手に、私たちが遅れを取ることなんて無いわ」
 ネコミミをつけた少女の隣にいた、金髪の女性が、そう言って笑う。
「…けど、こういうところからの逆転ってのが…正義の味方のやり方ってね!!」
 黒い剣を構えた少女が、そう言って剣を構えなおす。
「なら、正義の味方を止めさせてあげるニャ!」
 ネコミミをつけた少女が、黒い剣を構えた少女に電波を放つ。
「な、何…ッ…!?」
 少女が、黒い剣を落とす。
「…あなたは今日から私たちの一員ニャ!」
「まさか、これが情報にあった洗脳電波…!?聞いてはいたけど…私は、負けない…負けて、たまるか…!!」
 再び、少女が剣を拾いなおそうとする。しかし、身体が言う事を聞かない。
「ほら、何だかんだ言っても、身体は正直じゃない」
 金髪の女性があざ笑うかのように言う。
「…う、くっ…!!」
 抵抗はしているが、少しずつ意識が遠のいていく。
「社…長…ごめ…ん…」
 そして、黒い剣の少女は、気を失った…


 秘密結社デストロイヤー

 ―降臨!正義の秘密結社!!―


 その次の日、白髪交じりの紫髪の青年が、楼蘭刀を構えて帝都の外れに立っていた。
 白竜工業の若き社長、白竜獅遠である。
「奇襲の末に誘拐とは…随分と、卑怯な真似をしてくれるじゃないか…V4!!
 …ディナギアは、返してもらうぞ!!」
 彼の目の前には、たくさんの戦闘員がいる。さらに奥に、先程の二人組が立っている。
「悪いけどそれは出来ないニャ。」
「もう彼女は私たちの一員よ。返す必要なんて無いわ。」
「これ以上の問答は無駄か…白竜工業社長にして白竜家現当主、白竜獅遠、推して参る!!」
 獅遠が、戦闘員に向けて突進する。

「やーっておしまい、ニャ!」
 ネコミミの少女が、戦闘員をけしかける。
「イア!!」
 戦闘員が、そのかけ声とともに、獅遠に向けて突進する。

 一方、帝都の外からその場所に向かって移動している一団があった。
レジーナアンソレンスと獅遠が交戦しているか。獅遠は強いとはいえ、身体が弱く長くは持たぬ…急がねば!!」
 その一団の先頭で、黒い鎧を着用した、恐らく初老の男が叫ぶ。
「私が先行し、彼の援護を致しましょうか?」
 男の隣にいる、赤黒い色合いの魔法少女風の衣服を着用した赤髪ツインテールの少女が尋ねる。
「…頼む!我と戦闘員、ファリアの部隊が合流し次第一気に攻勢をかけるぞ!」
「了解!」
 少女が、乗っていた戦闘車両からジャンプし、走り始める。彼女はどうやらメードのようだ。

 数十人の戦闘員が、獅遠の周囲で気を失って倒れている。
 どうやら、獅遠が全てみねうちで倒したらしい。
「…さぁ、もう少ないぞ!!」
  獅遠が、ニヤリと笑って叫ぶ。
「…あらら…相変わらずやっぱり戦闘員じゃ勝負にならないニャー」
 ネコミミの少女がやっぱりかと言わんばかりにため息をつく。
「私が行くわ。所詮相手は人間だもの」
 金髪の女性が、乗っているオオトカゲを動かそうとする。
「いや…どうせなら…そうニャ!」

「何をヒソヒソ話をしている!隙だらけだぞ!!」
 獅遠が、その隙を突いて突進する。
「!?」
 しかし、その直後、上からの気配を感じ、咄嗟に回避する。
「…成る程、先程の言葉はこの事…」
 地面が抉れている。
 そこに立っていたのは見覚えのある黒い剣を構えた少女…
「…かァ!?」
 しかし思わず獅遠は素っ頓狂な声を上げた。
「…ディナ…お前…なの…か?」
 ディナと呼ばれた黒い剣を持つ少女は、獅遠が思いもよらない服装をしていた。
 ピンクだ、無茶苦茶ピンクで乙女チックな服装だ。所謂『姫系』というのだろうか?
 黒い剣の柄の部分にもリボンが結ばれている。色々な意味で原形を留めていない。
「…社長…ごめん、身体がいう事を聞かないんだよ…」
 どうやら、流石は白竜工業の正義のメード、辛うじて意識を保ち続けているらしい。
「…逃げて!!」
 しかし、体は完全に掌握されており、ディナが獅遠に突進する。
「っ!」
 咄嗟に受け流すが、それで精一杯だ。
 ディナの剣術は獅遠が教えたものであり、よって動きは読めるので回避する事は出来るが、
 いかんせん身体能力に差がありすぎる。
「くっ、ガハッ…!」
 獅遠が咳き込む。獅遠自信の体力が限界に近くなってきているようだ。
 いわゆる、カラータイマー点滅状態だ。
「…長くもたんか…!」
 獅遠が、ディナの攻撃を必死に受け流しながら、
 電波を放ったネコミミ少女を狙おうとするが、受け流すので精一杯で攻撃できそうに無い。
「…ウフフ…社長の命まで、もう少し、かな?…はっ、私は今、何を…!?」
 そして、ディナの意識も、若干電波の影響を受けているようだ。
「うおっ!?」
 獅遠の刀が弾かれる。
「くっ…ここまで、なのか…!?」
「駄目!社長…逃げて!!」
「すまん、ディナ…もう、身体が言う事を聞かん…」
「わ、私も…そろそろ、限界…社長、ごめん、ね…」
 ディナの眼から光が消える。
「…ウフフ、私の手で天国に昇天させてあげるから、光栄に思いなさい…!」
 ディナが、既にキャラの原形を留めていないような妖艶な笑みを浮かべ、剣を振り下ろした。
 しかし、剣は獅遠を捕らえる事は無かった。
「そこまでです!!」
 振り下ろされた剣を、赤髪の少女が大鎌で抑えている。
「…お前は…!?」
「私の名はラディア!総帥の命令にて、助太刀致します!!」
 ラディアを名乗った少女は、振り下ろされた剣を強引に押し返す。
「ラディア…また私たちの邪魔をするの!?」
 金髪の女性が叫ぶ。
「アンソレンス!私たちの組織がいる限り、V4に好き勝手な真似はさせません!!」
「…戦闘員の増員を要請したニャン」
 ネコミミ少女が、隣のアンソレンスと呼ばれた女性にボソッと呟く。
「あら、気が利くわね」
 アンソレンスが笑う。
 次の瞬間、アンソレンスとネコミミ少女の背後に、凄まじい量の戦闘員が何処からか現れてずらりと並ぶ。
「雑魚が何人来ようと!!」
「あら?私も雑魚?」
 再びディナが突進する。
「ッ…何て娘を洗脳したんですかあなた方は!!」
 回避してカウンターを叩き込もうとするが、その踏み込みの速さに、回避どころか受け止める事しか出来ない。
 ディナのその戦闘能力に、思わずラディアが叫んだ。
「いやあ、私も驚いてるのニャ。まさかあそこまで上手く行くなんて、よっぽど馬鹿で単純なのニャン」
「馬鹿で単純、だと…!?」
 咳き込みながら、社長が再び立ち上がる。
「それは俺であってディナは違う!!」
 そして、吹き飛んだ刀を拾い、構えなおす。
「…部下達を、そしてディナを馬鹿にする奴は…この俺が許さん!!」
 再び襲い掛かってくる戦闘員を、咳き込みながらも少しずつ倒していく。
「…総帥が気にかけるわけです…何と言う精神力と根性…!!」
 しかし、劣勢は変わらず、少しずつ追い詰められる。
「何か逆転の手は無いか…!?」
「もう少し待てば、総帥が到着なされます!それまで何とか持ちこたえてください…!!」
「だが、いくら俺でも…これ以上は…!」
 獅遠が、倒れかける。
「獅遠よ!」
 しかし、それに手を差し伸べるものがあった。
「…誰、だ?」
「我は秘密結社デストロイヤー総帥、破壊総帥…デス・エンペラー!!!」
 男は叫んだ。鎧から顔は見えないが、その声は、どこか懐かしい響きがあった。
 彼の後ろには、どこかで見たような覆面を被った戦闘員が大勢立っている。
「獅遠、よくここまで戦った。後は我等に任せておくが良い!!
 …戦闘員01から04!獅遠の手当てを!!残りの戦闘員はラディア、『戦闘員』と共にV4と戦闘を開始する!!」
 デスエンペラーを名乗った男は、剣を構える。
「ラディア!良く持ちこたえてくれた!」
「総帥の命とあらば、この命、いかようにも!!」
「フ…ラディアよ、貴公の忠誠には何時も感謝しているぞ!
 …さぁ、全軍、突撃ィ!!」
 デスエンペラーが剣をかざすと、戦闘員が一斉に敵の戦闘員に突進する。
「ラディア、『戦闘員』と共にディナを止めよ!ファリアは幹部二人を頼む!!」
他の戦闘員と同じ服を着ながら、明らかに一人だけ異様に筋骨隆々の男が、無言で頷く。
さらに、その隣に立つ、ファリアと呼ばれた、真っ赤に染まったウェディングドレスを着用した女性が、
ネコミミ少女とアンソレンスに向けて突っ込む。
「レジーナ、アンソレンス!この私が相手です!!」
レジーナとはネコミミ少女の名称だろう。
「はぁ…旗色が悪くなってきたみたいね…レジーナ、どうする?」
「申しわけ程度に戦ったら逃げるニャン!」
「…聞こえていますよ?」
ファリアが静かに言うと、二人はビクッとなる。
そして、ファリアが二振りの剣を構え、突進する。

『戦闘員』と呼ばれた男が、ディナの振り下ろした剣を受け止めている。
「…成る程、確かに強力だな…だが、洗脳によって本来の力を発揮できなくなっているらしいな。
…フ、ならば、この一撃で終わりだ!!」
戦闘員が、ディナの背後に回りこみ、首筋に斜め四十五度からのチョップを叩き込む。
「かはっ!?」
その一撃で、ディナは気を失い、その場に倒れた。
「…何故か分からんが、首筋、斜め四十五度のチョップで洗脳が解ける。」
そう言って、戦闘員は笑った。
「何故知っているのに言わないのです…?」
ラディアが不機嫌そうに言う。
「…他に格闘戦を専門にしている奴で、メード相手に力を加減して斜め四十五度のチョップを叩き込める奴がいるか?
俄仕込みだと、後遺症が残ったり、下手をすれば殺してしまうかも知れん…これは、俺にしか出来ない事なのだ」
戦闘員が、静かにそう言うと、ラディアが頷く。
「…分かっていたらやっていたかもしれませんでした…分かりました、戦闘員、あなたを信じます」

「ディナの洗脳が解けた!?」
「総員、退却ニャン!!」
レジーナとアンソレンスが退却しようとする。
「待ちなさい!!」
ファリアが、それに向けてロケット砲を放った。

それは、一緒に逃げようとした戦闘員も全て巻き込んで爆発し、ドクロ型の雲が上がった。

「…やりましたか?」
ファリアの横にラディアが並ぶ。
「…いや、逃げたでしょうね…あの雲の上がり方から、多分そうです」

「暫く休ませれば目を覚ますだろう」
戦闘員が、気を失ったディナを獅遠に差し出す。
「…助かった、感謝する」
「礼なら総帥に言うんだな。総帥が急げと命令したのだ」
「ああ、分かった」
獅遠が、デスエンペラーに歩み寄る。
「…感謝する。おかげで助かった」
「礼など要らぬ。世のため人の為、そして全ては人類の未来の為に、だ。
…現在、楼蘭の武田勇一があの洗脳電波を打ち消す機械を開発中だ」
「武田先生が!?」
武田勇一…十代の獅遠に機械技術を教えた張本人であり、獅遠の師匠的な位置に位置する人物だ。
「…設計が終わり次第送れと伝えておく」
「武田先生はご健勝なのか!」
「ああ、ここに現れそうなほどにな」
そう言ってデスエンペラーは笑った。
「それは良かった!よろしく伝えておいてくれ!!」
「…分かった!では、また会おう、白竜獅遠よ!皆のもの、撤収だ、我に続け!!」
夕日の方角に向け、先頭車両に乗り込んで撤収していくデスエンペラーを、獅遠はただただ手を振り見送るのだった…



あとがき
急いで仕上げたデストロイヤーの紹介話です。
獅遠よ…武田先生…目の前にいるじゃないかぁ(笑)
しかし…出来れば誰か今回のディナの絵、書いてくれないかなぁ…(爆)
最終更新:2009年10月12日 21:27
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