荒木の旅 #1-2

(投稿者:A4R1)


AM 10:12

「おっ!ここか!!」
紅の花の様に紅く明るい屋根を構えた建物を後藤さんが指差した。
「う、うーむ…馬車の荷台に乗せられた馬鈴薯はこのような感じなのだろうか…。」
助手席に座っていた後藤さんが頭を押さえながら頭を振った。
「じゃがいもって…私が思う以上に強いのね…。」
ベソ交じりのヌヌの声が後から…。

「お、おいヌヌ!どうしたんだ!?ボコボコじゃないか!!
「トウジュウの運転が安全運転じゃなかった結果よコレ!!」
ちょっと眼を離していた隙に、暴徒かなんかにやられちまったってぇのか!?
「覚悟はしていたつもりだが…酷い乗り心地だったな…。
 座席のクッションはズタズタに裂かれているし、シートベルトに至っては…はぁ…
 筋肉自慢にでも引きちぎられたままなのか?」
まさしくオイラがやっちまったまんまです。
直す直すとウダウダ引き伸ばしていたら…こんな事に…
 「おのれ暴徒め!!」
 「アンタが原因だっつうの!!」


「しかし藤十郎君、なぜ修理せずに使い続けているんだ?。」
「いやまぁ、コレ弾薬を大量収納する、且、その上でそれなりの速度が出るように改造した物だし…。」
「そこは今は問題外でしょーがぁーッ!!」
「まぁ、内装ぐらいなら修理店で困る必要は無いだろう。」
吼えるヌヌくんを宥めながら後藤さんが店に入る。
それに続いてヌヌ君が入る寸前、車から降りたばかりのオイラに、
その子はトウジュウが運び込みなさいよ!!」
と言った。

ファリアちゃんッスか…。
仕方ないね。


さて…。

べあたっちから徒歩何分なのかはわからんが、入り口から出て左に救急施設がみえるな。
とりあえず、そこに連れ込む、もとい運び込まなくては。
布をめちゃくちゃ使っているドレスを着てるとはいえ、まぁ、担いで運べんことは無いだろう。
車で往復する程の距離でも無いし。
いや、まてよ…

無闇に担ぐ
 ↓
 目を醒まさせてしまう
 ↓
 抱きつかれる
 ↓
 ミシミシ
 ↓
 メディーーック!!
 ↓
 あぎゃ
 ↓
 戦死通知


なんて事になるかも!!
や、やばいって…。

そもそも本当に気絶しているのかも怪しいしな…。
万が一、真に気絶しているなら手刀打ちも無闇に出来ない。
神経に直接的に衝撃を与えるやり方らしいしなぁ、後遺症が出たとかなったら冗談抜きで処刑されかねない…。
詳しい原理?聞くな。
確認するのも怖いな…ガバリと起きる予感がしてならない。
どうすっかなぁ…車のエンジン音で追っかけてきた奴等に感ずかれるのも怖いし、
でも、とにかく運ばないことには始まらないよなぁ…。

やはり、俗に言う『半魚人持ち*1』で運ぶべきか。
とりあえず拝んでおこう。
この子の担当官の方々。失礼します。


さて、左腕でこの子の背中を支える形になってるわけだが、
生憎オイラ右利きだから上半身を左腕で支えるのはちょっと自信が無い…。
しかし、この「しつえーしょん」で誰かの手を借りるなど言語道断!!
やってやろうじゃないか!!

左腕を背中に、右腕を足に…足…。あ、あれ…。
スカート部分に指先が入らない…。
もしかしてこの子義肢を装着してる?
…いや、スカートの形とほぼ同じ形をした義肢なんて聞いた事が無い。
んじゃ、スカート型の防具を中に付けてるのか?
外さないと運びにくくて仕方が無いな。
うん。脱がしてあげましょう。
オイラも技師だけど、この子の技師の方お許しくださいませ。
我に帰ったら…おしまいだ…。

スカート捲りなんてガキんちょ時代以来だな…まぁ、運ぶためにやむをえないんだが…。
や、やむをえないんだからね!!
一旦回した腕を離し、では失礼・・・・

果たしてオイラの目の前に広がった光景は、スカートの裏に大量に備え付けられた大量の小銃、拳銃、散弾銃。
物言わぬ用心棒の群集に睨まれたかのような幻覚が、ザワリ、とオイラの頭髪を逆立たせた。
CE*2で銃器を操作するまいどがいたり、CEで操作できる銃器があったりするよね。
その言葉を思い出した瞬間、「死」の一文字に脳が汚染された。
恐怖に打ち勝って我に返ったつもりだったけど、両手は上げずにはいられなかった。

いや、落ち着け、この銃を処理しなければこの子のパ・・・あいや、未来が見えなくなるとかうんたらかんたら。
とりあえず、持ち上げられるぐらいまで軽くすればいいだろう。
それにしても、誰がこんな運用方法を考えついたんだ?
ガーターベルトに護身用拳銃を挟んだねーちゃんならまだ何人か見た事はある。
だが、この量はどう考えても一個人の護身用じゃないよな…武装組織に喧嘩売れるぞ…。

とりあえずオイラが持ち上げられそうなぐらいにまで、銃を後部座席に降ろしてみた。
ざっと見ただけでも2,30丁はあるな…。
一人のまいどが持ち歩くのに、こんだけの銃が必要か?
多くても3丁か4丁で十分すぎると思うんだけど…。
ひょっとして、どこかに任務で向ってる最中にオイラを見つけて我を見失ったのか!?
たとえまいどでも、オイラのようなちんちくりん一人を溺愛するだなんてアリえねぇ!!
この子の担当技師か教育担当官の口を裂いてやらねば…!!*3

それは後に回しておくとして。早いとこ精神科…じゃなくて耳鼻科系のお医者さんに診てもらわんと。
改めて、背と足を腕で抱えて…と。
「せーの…」と意気込んだ瞬間、彼女の唇に微かな動きを見てしまった。
起きた!!
「せい!!」
「きゅ!」
手刀一発で彼女はグッタリとした。
抱える前だというのに…腕の汗をかききった気分になるなんて…。




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関連項目

最終更新:2010年02月25日 20:43
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*1 別称:お姫様抱っこ

*2 コア・エネルギー

*3 口を割らせてやらねば…!!といいたかったらしい