(投稿者:A4R1)
救護の方々に今までの経緯を離して(疑われながらも)彼女を匿って貰うように頼んだ。
仮に誰かの襲撃を受けたとしても、彼女はまだたっぷりの銃と弾を持っていたから、
それが身を守る力になるはずだ。pntはpnk…。
しかし、日の当たりは悪くない立地条件なのに、歩く人の量がいやに少ない気が…。
そんな地域なんだろうな、この辺。
「少年。」
ん?
施設から出た瞬間に誰かに呼びかけられた気がした。
周囲には、呼びかけたっぽい人の姿はない…。隠れたまま声をかけてきたか?
あいにく、かくれんぼよりも影踏み派なんだなこれが。十中七六負けるけどね。
「せっかくボインちゃんのチャンスがあったにも拘らず、誘惑に手を染めなかったか。
吾輩には出来ぬ意思の強さを持っているな。」
オイラに向けて言ってたっぽいけど、オイラはどっちかっつーと青年寄りだと思ってるんだけど。
ってか、誰の声さ?
「もったいないとは思うのだがねー。一時ぐらい堪能しておいたほうがいいと思ったぞ、藤十郎君~!!」
声の主が…足元にいるじゃないか…。
Gじゃない正真正銘(?)のゴキブリがァー!!
「やっはっは。察しがいい。こんな姿の奴に話しかけられるとは常人は予想しないだろうからな。」
ご、ごきぶりの説教を受けるなんて生涯初だ…。
軽い絶望の臭いを嗅ぎ、現実を受け入れてやっとこさ言葉が口から出てくれた。
「知らないゴキブリの性癖を聞かされるのも予想できなかったんですがッ。」
「吾輩は君の母上の幼い頃に出でた者だから、君の事はちょっとは分かるぞ。」
50歳越えのゴキブリ…。え、ちょっと、
ありえない。
「いったい何者なの…。」
「生まれは『若本』たる姓の家。『
若本 亜門』と名乗っているのがマイブームでねぇ~。」
背中の星型の紋様がやけに鮮やかなのがまたなんとも…。
「名乗りは流行ってるわけじゃないと思うけど…流行ってないのはオイラの近所だけか…。」
「それはそうと、ククちゃんの発育は順調だぞ。」
「その報告をされても…まぁなんというか…素直に喜べない…。」
「喜ばしい事じゃないか!将来がますます楽しみだ!!」
あぁ、なんで長生きしてるのかがわかる気がする。
むちゃくちゃ生き生きした語り口だもの。
もう、どうしてこんなゴキブリが流暢な楼蘭語を喋れるのかとかいう疑問なんかどーでもいいや。
「藤十郎君は女性は好きなのだろう?」
「好きだね。」
年にはあまりこだわりはないなぁ。20以上離れているとちょっと悩むけど。
「バストはどうかね?」
「あー…。(頬をポリポリ掻く)」
「大きい物はいいものだ。浪漫をまさしく体現したものだと思うのだが、どうか?」
「やみくもにでかいのもどうかなーとは思うんだ。」
「軟さと温もりは至高ではないかね?」
「それに違いはないと思う。けど、しっかりとした一面も持ち合わせてると一層いいと思う。」
「そうはいってもだな――」
五分後、その論争は個人の価値観に委ねるという結論に達した。
もはや、亜門がゴキブリだという事が気にならなくなってきた。
「ところでだ。藤十郎君。吾輩独自の情報網で得た情報なのだが、
君が運んだ女の子の名は
ファリアというらしい。」
名字が無いのか。つけてあげよう。
「姓はマーガレットかな?」
「彼岸花もオツだがな。」
「それお墓を連想させるから縁起が悪い!!」
あんまりな発言をしてたから握って制裁した。
一尺ぐらいの全長に4・5寸程の幅の体が軽々と瓢箪形に変形した。
「ああああー!!何故なのかはわからんが吾輩が悪かったああーー!!放しておくれーええ!!」
おまけで叩きつけを見舞った。
甲殻類っぽい見た目のくせして水風船みたいな感触だったな。
本当に何この生物。
「あ、あれえ…綺麗な花なのにダメなのかい?」
「不吉な花の一つとして有名だし、殺虫剤の材料でもあるんだぞ!!」
「な、なんとぉー!?」
「『貴方一人を想う』とかいう花言葉もあるらしいけど…いやまさか…。」
他にも、「情熱」「独立」「また会う日を楽しみに」とかも意味していた覚えが…。
「オイラの先は短いんだろか…。」
「何故血涙を流しているのだ!?」
「どうしよう…どっかのワルい組織の四角とかだったらどうしよう…本当に比されちゃうよ。
そんな市に肩は嫌だよ釘宮さん…。」
「若本だ!!我輩の知る限りだが、彼女は組織の者だ。」
「えーー!!そんな…。」
「急に落胆するな!!組織名は『
デストロイヤー』というまさに物騒な物だが…。」
その名前がオイラの中に電流を通わせた・・・ッ!!
「勇一!?勇一のおやっさんが創立して結構経つ組織じゃないか!!」
「知っているのか?」
「うむ、勇一は塩の先輩に当たるおやっさんだ。
機械工学の科学者で名を爆ぜていたすんごい科学者らしいけど、
人間同士の戦争を終わらすとか言って、さっき言ってた集まりを造ったんだと。
行動を起こす前にGが暴れだすわ、訳のわからないまいどの犯罪集団が現れるわで、
今一需要があるかどうか判断しづらい組織なんだけどね…。
しっかし…そんなおやっさんが建ちあげた組織の者だとは…。」
「活動内容は知っているか?」
「いや全然。」
「え。君が先ほど口にした方は、組織のトップの本名だぞ?
我輩はツテを頼ってその情報は仕入れたが、何故君がそれを知っている?」
「聞くだけ野暮よ、ってことで。」
「なんだい、ますます気になるじゃないか。」
「えへへへへへ…。」
「けったいな笑い方をしおって…。」
「理由はさておき、なぜそんな所が君にコンタクトをとる為にファリアちゃんを派遣したのだろうか…?
恐らくは唯一面識のある子として使いに出したのだろうが。」
「しかし、ぜんっぜん見覚えが無い娘なんだけど何事なんだか…。」
「本人から聞くのが早いと思うが。」
「こ、怖い…会うのが…。」
「何故なんだ!?女の子の方から接触してくれるのは喜ばしいことだと思うぞ!?」
「覚えの無い人に突然押し倒されたら普通怖い。」
「過度に積極的な娘は苦手…だと?」
「うん…まぁ…なんか、こう…力がうまく発揮できなくなるというか、
一旦体勢を立て直さなければ、なすすべもなく巻き込まれて終わってしまうと思いこんじゃう気になっちゃって…。」
「…回りくどい言い方だが、結局は苦手なのだな。」
「ああいう人って、往々にして執念を秘めた目をしているのがよく見られると思うんだ…。
気を抜いたら命をなくすと思ってる。」
ファリアちゃんがオイラに駆け寄ったときの目がまさしくそうだった。
ありゃあとても人間としての理性を持っているような目じゃなかった…。
「君が彼女が惚れるような、何か素晴らしい事をしてあげたんじゃあないのかい?」
「あれ?思い出すのが怖くなってきたぞ?」
「そんなことよか、オイラは洋服のお店のべあぁにむ…か…。」
「どうした?」
なんだなんだ?オイラの車にガラの悪い奴等が集ってるな。
オイラがカギを持ってるから、乗り逃げはされないだろうけど…いや待てよ、
ファリア君から外しておいた銃器を車内に置いた後施錠してなかった!!
まさか…。
「おいおめいら!!なにしてる!!」
叫ぶと、そいつらが手に何かを持って一斉に振り返った。
手には銃器が…さっき降ろしたばかりの銃器が握られていた!!
やっぱりかー!チキショー!!
「あやつら銃器を!?」
「ファリアちゃんが抱えていた銃器だ!
あれらを降ろしてやっとこさ彼女を運んだんだ!!」
奴らが銃を手にしてヘラヘラ笑いながら何か言ってるが、なんと言ってんのかさっぱりわからん!!
「危ないからそれを戻しなさーい!!」
上着の左裏に収められていた拳銃に手を添えて叫んでみるが…。
言葉の通じない者同士が叫びあっても効果なんか無いよなぁ。
奴らとの距離は恐らく十間(18メートルぐらい)、道幅はわからんが、歩きの人と車が別々に通れるようになっている。
道の形状は直線。遮蔽物はブリキのゴミ箱、明かり(街灯)、建物の出っ張りぐらいか。
一般の歩行者も車両も通っていないのは不幸中の幸いだと思う。
だけど、ドンパチしたら文句は来るんだろうなー…。でも、やるっきゃないもんなぁ。
とか亜門を踏みつけてでも物陰に駆け込みながらも途方に暮れていると、
突然ベアーなんかたらと言う店の中から、ボロボロの反物が数個そいつら目掛け飛んだ。
それが全員の頭部に残らず命中した。
ぶつけられた奴等が大きくふらついて、何人か地面に膝を着けた。
脳震盪起こしたんじゃないかっていうような動きをしたけど、あれ反物だよな!?
そいつ等は飛んできた店の中を見るや否や、顔を真っ青にし、銃を地面に落として、
蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
その内の一人がすっ転んだところを、店の人と思しき女性がのしかかって取り押さえた。
一般の店員さんにしては怖いぐらい手馴れた動きだ…。
「すんませーん!!」
銃を抜くハメにならずに済み内心ホッとしつつ、その人の元へ駆けだした。
逃げ遅れた男が「もひかん」部分を引かれ、苦しみ、叫んでいる。
その男を押さえている人がオイラを叱っている…ようだけど、なんて言ってんだか…。
と思ったら。何かに気付いたような表情をしてすぐさま、
「アンタも呑気ね!このあたりでカギ掛けないのは『ご自由に持ってってください』
って言ってるようなもんよ!!」
なんと、楼蘭の言葉で言い直してくれた。
「あ、あれ?アンタ、もしかして藤十郎?」
「あ、あぁ、オイラ、もしかしなくても藤十郎。」
そう言われると、この店員さんに対する覚えが浮かび上がってきた。
「ホホ…かい?ホホだよね?」
「えぇ!しっかし久々に会ったっていうのが、こんなみっともない形でだなんてねぇ。
相変わらずだらしないみたいね!!」
呆れられた。ごめん。
ホホは確か衣服とか包帯とかの布製品を強化できる娘だっけな。
ウォーリアの鎌でも切れないやつや、
タンカーの酸から守ってくれるやつを作ったりできる。
時々、その能力にブーたれる馬鹿がいるが、何考えてんだろうな全く。
それ以外にもいろんな効能をつける事が出来るんだって。
直接戦闘には向かない。…そんなわけでもない。
さっきのように取り押さえが出来るしなぁ。売られた喧嘩を買いそう。
「ほら!この人に謝罪の意味も込めて謝りなさい!!」
ホホが男の髪をムンズと掴みあげた。
ヒィヒィいって一向に名乗らない男にまた何か言った。
「やめてー!!離してー!!」
男が観念したらしく、淀みない楼蘭語で泣き喚いた。
「楼蘭語しゃべれんのか!?」
「ポーラ姐さん!!痛いってー!!」
「町中で発砲してたらこれぐらいじゃ済まさなかったわよ!!
それに、この人バカだから、こうでもしなきゃ何時まで立っても話が終わんないのよ!!」
髪掴みに加え、頭皮にぐりぐりも投入された。冬では寒そうな髪型だ。
というかそれ以前にヒドい事いわれた。
「ホホ、それくらいでよしといてやれ…未遂で終わったんだし。
被害が無いんだったらそれだけでもいいよ。」
「(息をついて)それもそうね。とりあえずお店に入って。ホラ!アンタも!!」
「いたたたたた!!」
「あと…さっきのバカ呼ばわりは堪えた。」
「え、ウソ!?」
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最終更新:2010年04月03日 19:48