chapter2 Another Daybreak

(投稿者:マーク)


シュヴェルテ死亡の知らせの数時間後その区画のGの殲滅が完了し作戦は終了した

その後はひどいものだった

戦友が死んだことに沈んでいるディートリヒをなんとか自室に戻らせたダリウスは即座にヴォルケンに連絡をとりシュヴェルテの遺体をあらゆる捜索したが結局行方知れずだった 
徹夜明けで眠い目をこすりつつ翌朝の新聞を広げたダリウスは見出しを見た瞬間眠気が吹き飛び愕然とした

   ジークフリート、ヴォ連スパイを断罪!

 昨日未明、ヴォストルージアより派遣されしスパイMAIDが正義の下に断罪された。
 反逆者の名はシュヴェルテ。
 彼の者は我々エントリヒの民に混じり、あろう事か国家転覆の毒を撒いたのだ。
 配備間も無くGを退けたシュヴェルテは我ら民衆を扇動。
 その戦果に紛れて事実無根のデマを流していた。
 この忌まわしきスパイに、遂に正義の鉄槌が下された!
 
 事の詳細は以下の通り。
 
 先日の作戦にて、ジークフリートはシュヴェルテの不審な行動を目撃。
 ジークフリートは即座に見抜き、一瞬且つ一刀にして叩き伏せたのである。
 神がかりの速度で叩き伏せた姿に、その場の兵士が感服。
 作戦終了後、盛大な拍手を以って賞賛を送った。
 
 この件を含め13人ものスパイを全て断罪した功績は大きく、今後のジークフリートの躍進への足掛かりとなるだろう。
 この活躍を受け本日の午後、ジークフリートには金柏葉・剣・ダイヤモンド付騎士鉄十字勲章が
 エントリヒ皇帝陛下から直々に授与される事をご決定なされた。
 
 我々エントリヒ帝国国民は、卑劣なスパイに決して屈してはならない。
 それをジークフリートが剣の一振りを以ってして伝えたのである。
 我々国民は真実の眼と正義の剣を以って、スパイを断罪せねばならないのだ!
 其れこそが正統たるエントリヒの義務であり、またエントリヒの歴史より与えられし権利でもある。
 ジークフリートに続くべし!

その記事のすぐ下には日の出を背にしたジークフリートがシュヴェルテの胴体に、剣を突き刺している写真がある
いくら軍事ジャーナリストが凄腕だとしてもこれはできすぎており合成写真であることは明白だった
だがいくらなんでもジークフリートを持ち上げすぎだ仮にあの話が彼女の素体が皇帝の末娘--あの宰相ギーレンが唯一心を開いたという妹--だという噂が本当だとしてもここまでするものだろうか? 


思案をめぐらせていると不意にノックの音が響いた

「ダリウス君いるかね」

まさにベストタイミングそう思いながらダリウスが勢いよくドアを開けると顔が少しやつれダリウス以上に大きなクマを作ったホラーツ・ヴォルケン中将その人が立っていた
立ち話では誰に話を聞かれるかわかったものではないので部屋に招き入れた

その間両者とも無言であった

先に沈黙を破ったのはヴォルケンのほうだった 

「いい知らせと悪い知らせがある。まず良い方から話そう」

そういうと一度大きく深呼吸し言った

「確実ではないがシュヴェルテはおそらく生きている」

「・・・・・・やはりこの記事は合成ですか」

「ああ真っ赤な大嘘だ、彼女は拉致された」

「・・・拉致・・・・?」

そういうとヴォルケンはゆっくりとうなずき口を開いた


「やはり・・・!!!」

思わずテーブルを思い切り殴りつける

エメリンスキー旅団近年設立された外人部隊だがあまりの素行の悪さからエントリヒの恥部とよばれている部隊だ
裏では人身売買を行っているとも聞いたことがあるがまさか・・・・・

「シュヴェルテはやつらに拉致され奴隷として売られた、と?」

「するどいな、私の調べではこれまで行方不明または戦死とされながらも遺体が発見できなかったメード達の任務には必ず奴らがいることがわかった」

「そんなことが・・・・」

「残念ながら現実だ。おそらく黒幕は"皇帝派"だろう。金さえ積まれれば奴らはどんなことでもするともきいた」

「やはり裏で"皇帝派"が・・・・」

不意にダリウスは先ほどきっちりと閉めたはずのドアが全開しておりその前で大男が呆然と立っているのに気がついた

「どういう事だ・・・・?」

ディートリヒは感情のこもらぬ声でつぶやいた

「全部上層部の意向だったってのか・・・?・・・・・・ヒルデガルトが撃たれたのも・・・・・・・・」

彼は淡々とこないだ味方の誤射で死んだ戦友の名をつぶやく

「ディートリヒ君少し落ちつきたま

「ふざけるんじゃねぇ!!!」


ディートリヒのあまりの剣幕にヴォルケンは思わずのけぞった

ブリュンヒルデの姐御はなんのために・・・・!!!」

こんな国を守ってきたんだ・・・・そういうとディートリヒは荒々しく部屋を出て行った

「・・・・・・申し訳ありません」

「いや、彼の怒りはもっともだ・・・しかしあのディートリヒがああも動揺するとは・・・・」

なにもなければよいのだがな・・・・というヴォルケンの言葉がむなしく部屋に響いた

最終更新:2008年12月08日 19:33
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