動き出した歯車

(投稿者:エアロ)




ヴォストラビア人で構成された旅団で、現在のヴォ連を打倒すべく設立された。
しかし集まったのは精兵とはいいがたいあぶれ者、鼻つまみ者、ならず者ばかりで、
さながら愚連隊の様相を呈していた。
さらに、前旅団長ミロスラフ・エメリンスキーは44年末に事故死している。
表向き事故死だが、軍内部では忙殺説がまことしやかにささやかれている。
曰く、エメリンスキーは前の親衛隊長官の弱みを握っていたために汚れ仕事を引き受けていたが、
今のベルクマン長官になってから切り捨てられたのだ、とか、
グリーデル人の少女をさらって無理やりMAIDに仕立て、「黒旗」の頭目である、
グライヒヴィッツ前内務大臣に人質として差し出した、
などの噂がまことしやかにささやかれていたのだ。

頭を失ってなお、彼らは存続していた。
しかしもはや軍組織としての体を成しておらず、
強盗、強姦、暴行、窃盗、恐喝など多数の犯罪行為をしらっとした顔で行っていたのだ。
こうなるともはや愚連隊という呼称すら使うのをはばかられる。
彼らはもはや路傍の犯罪者集団とさして大差はなかったのだ。

トラックから出てきた連中は車の運転手と巻き込まれた商店の店主を囲んでいる。
「まったく、あんな連中がわが軍所属なのかと思うと反吐が出る・・・
 無論俺は純血主義などではないが、あんな連中と一緒に語られるのかと思うと・・・」
グレゴールは嘆息しつつそう漏らす。
「卿の気持ちはわかる、俺もあんな奴ら野放しにはしておけんとは思うさ、だが交通事故は警察の管轄だ。
 しかし、話を仲裁はできるはずだ。 待ってろ、今舞台を整えてやるから」
ヴォルケンはそう答えると電話のほうへと歩いてゆく。

以下会話
<親衛隊公安部交換室>
「ヴォルケンだ。シュミットを出してくれ」
<おやおや、今をときめくマイスターシャーレの校長殿が何の御用ですかな>
「卿はエメリンスキーの弱みを握っていると聞く。これまでの彼らの犯罪履歴を調べておいて欲しい」
<ほほう、例の「作戦」を実行するのですか>
「そうだ、アシュレイやほかの連中にも号令かけておいてくれ、公安部の卿なら造作もなかろう」
<こんな大胆な策を実行して、長官に知れたら事ですよ>
「長官だって奴らのことは嫌悪しているに違いないさ、事後承諾でもいいから実行する」
<わかりました、そこまで言うなら私も深入りはいたしません。あなたに大神オーディンの加護あれ>

しばらくしてヴォルケンは電話ボックスから戻ってきて、
「準備は整ったぞ、親衛隊のほうは。次は卿の番だ」
とグレゴールに呼びかけた。
グレゴールもそれを合図に電話ボックスへと向かう。


以下会話
<第一師団司令部交換室>
グレゴール・フォン・シュタイエルマルクだ、師団長か憲兵隊を出してくれ」
<お待ちを・・・おりますのでおつなぎします>
<私だ、何用かなシュタイエルマルク中将>
「閣下、エメリンスキー旅団に対する弾劾案を今こそ、軍務省に出すべきではないかと」
<またその話か、何度も言うが、彼らがどんな悪弊組織であれ、われわれが関知すべき事では・・・>
「資料がまもなくそちらに届くはずです、それをご覧になれば、私の言うところが明らかになるはずです、閣下!
 私は一時の汚辱を被ってもいい!しかし悪弊があることが我慢ならないのです!」
<しかし・・・んっ、なんだね・・・っと・・・これか、ふむふむ・・・わかった、何とか軍務大臣に掛け合ってみよう、
 第2、第3の師団長も私が説得しよう>
「感謝します、閣下」
<なぁに、君の真っ直ぐさは士官学校から変わらんな>

グレゴールも電話を切り、ドアへと向かっていた。
「しかし卿の電話の相手は手際がいいな、いくら師団長が担任だったとはいえ、こうまですんなり話が通るとは」
「親衛隊公安部きっての見栄っ張・・・もとい優秀な奴だからな、これくらい朝飯前さ。
 さて、なつかしのあのころに戻るか?」
「賛成だ」
そういうと、二人は交差点へと歩いていく。


最終更新:2009年02月20日 11:34
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