SILVERMOON
ハロウィン・フランシス編
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ハロウィン・フランシス編

「失礼しま~す。」
「あぁ…ようこそ。かわいいレディ…お待ちしていました…!」
「こんにちは!フランシス様。」
いつものようにエンジュがフランシスの執務室へと向かうとフランシスがにこやかに出迎えてくれた。
さぁどうぞ…、とエンジュは私室へと通され、紅茶の振る舞いをうける。
ほんのひとときではあったが、ここでのティータイムはエンジュに心地よい休息を与えるものだった。
さぁどうぞ…、とエンジュは私室へと通され、紅茶の振る舞いをうける。
ほんのひとときではあったが、ここでのティータイムはエンジュに心地よい休息を与えるものだった。
「おや?…レディ、そのブローチは…?」
フランシスの視線の先にはエンジュのバッグ。
そこには見慣れないオレンジと黒のリボンがあしらわれている花のブローチがつけられていた。
ほんの一瞬だけフランシスの瞳が曇る。
そこには見慣れないオレンジと黒のリボンがあしらわれている花のブローチがつけられていた。
ほんの一瞬だけフランシスの瞳が曇る。
「あ、これですか?」
良くぞ気づいてくれましたとばかりにエンジュが笑みを浮かべる。
「これはですねー、ハロウィンの期間限定発売のブローチなんですよ!」
ジャルダンナチュールで買ってきたのだとうれしそうにエンジュが話す。
表情にこそ出さないが、他の人からの贈り物でなかったことに内心ほっとするフランシスであった。
表情にこそ出さないが、他の人からの贈り物でなかったことに内心ほっとするフランシスであった。
「あぁ…、そういえば週末はハロウィン、なのですね。」
「はい。」
二人は卓上の暦に目を落とす。
「…レディの週末のご予定は、いかが?」
できれば自分のために休日をあけて欲しいとは思うものの、ハロウィンということを考えるとそれは無理な願望なのかもしれない。
しかし、一縷の望みを託してフランシスはエンジュに問いかけた。
しかし、一縷の望みを託してフランシスはエンジュに問いかけた。
「はい、それなんですけど、週末は聖地でもハロウィンの催しをやろうって事になったようなんです。」
「それはそれは…、とても楽しそうですね?」
「はい。今からすごく楽しみで!それでわたしも仮装をすることにしたんです。」
「仮装…ですか?」
フランシスが興味深げにエンジュの顔を覗き込む。
「何の仮装かはまだ内緒です。」
えへ、といたずらっぽくエンジュが笑う。
「あぁ…レディ…、レディならばたとえどのような仮装をしようともその魅力は隠せず…、わたしは新しいレディの魅力にとりつかれて……」
どんな仮装を想像したのか、フランシスが陶酔したように語りだす。
「あ、ありがとうございます。」
フランシスの言葉はとてもうれしいのだが、ストレートなほめ言葉に慣れていないエンジュは少しだけ恥ずかしい思いもあって、フランシスの言葉をさえぎり、赤くなってうつむいた。
そんなエンジュの様子もやっぱり魅力的なようで、フランシスは彼女をいとおしげに見ている。
そんなエンジュの様子もやっぱり魅力的なようで、フランシスは彼女をいとおしげに見ている。
「あ、あの、それで…、ハロウィンの日にフランシス様のところにもおじゃましてもいいですか?」
「ええ…!もちろん構いませんよ。」
大歓迎とばかりにフランシスが優雅に微笑む。
ハロウィンのしきたりというものは仮装した子供が大人たちにお菓子をもらいに回るというもので、フランシスはそれを十分承知していた。
ハロウィンのしきたりというものは仮装した子供が大人たちにお菓子をもらいに回るというもので、フランシスはそれを十分承知していた。
「レディのために部屋いっぱいのバラとお菓子をご用意しておきましょう。」
「フランシス様ったら…。」
困ったような、それでもうれしいような、そんな複雑な表情をエンジュは浮かべる。
「あぁ…!けれど、お菓子を差し上げてしまえばレディは帰ってしまうのですね…。いっそのこと何も用意せずお化けに扮したレディにとり憑かれてしまいましょうか……」
フランシスは本気で困ったという表情を浮かべている。
「ですが、わたしはすでにレディの魅力にとり憑かれているといっても過言ではなく…」
苦悩に満ちた表情でフランシスがかぶりを振る。
「あのっ…」
「どうしました?レディ。」
「皆様のところに回ったらその後は皆様とパーティを開く予定なんです。もちろんフランシス様も…」
フランシスのところにいたいのも山々なのだが、フランシスとともに聖地の皆で参加するパーティというのもやはり魅力的である。
エンジュは少し申し訳なさそうに切り出した。
エンジュは少し申し訳なさそうに切り出した。
「パーティ…ですか。」
「はい。」
「レディが参加されるのであれば、わたしが参加を断る理由がどこにあるでしょうか?もちろん、参加させていただきますよ。」
そういってフランシスはいつもの微笑を浮かべる。
「それで、その……」
「…レディ…?」
急に口ごもってしまったエンジュをフランシスは訝しげに伺う。
「その…、パーティが終わったら…ご一緒できます……ので…。」
最後のほうはうつむきながらもごもごとつぶやく。
耳まで赤く染まっているのが見て取れた。
小さいつぶやきではあったが、フランシスがそれを聞き逃すはずもなく、
フランシスの表情はみるみる晴れていく。
耳まで赤く染まっているのが見て取れた。
小さいつぶやきではあったが、フランシスがそれを聞き逃すはずもなく、
フランシスの表情はみるみる晴れていく。
「あぁ…、レディ…本当にあなたは……!」
望むものを理解して、そしてそれを与えてくれる目の前の少女にフランシスは言葉にしきれない思いを抱く。
そして、それを少しでも伝えたくて、フランシスは隣に座るエンジュを抱き寄せそっと髪に口付けた。
そして、それを少しでも伝えたくて、フランシスは隣に座るエンジュを抱き寄せそっと髪に口付けた。

(おわり)
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