SILVERMOON

ハロウィン・レオナード編

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注:冒頭部分に映画のコスプレと声優さんネタあり

ハロウィン・レオナード編



コンコン

”入れ”という声にエンジュはいきおいよくドアを開ける。
レオナードを驚かすためだ。
しっかりノックをしてしまうあたりがちょっと抜けてはいるのだが、真面目なエンジュらしいところだ。

「こんにちは!レオナード様。」

「よ~ォ、また今日はえらい格好だな。」

レオナードは、上から下へと値踏みするように遠慮のない視線をエンジュに向けた。
みんなに見せるために来ている仮装の衣装だが、このように見られることに慣れていないエンジュは彼の視線に恥ずかしくなってしまう。
エンジュの今日のいでたちは海賊のような格好。
エンジュにはちょっと大きめのジャケットや帽子から察するに、コンラッド船長たちに頼みこんで貸してもらったのだろう。

「えへん。どうですか?ジャックスパロウです!」

恥ずかしさを打ち消すように、エンジュはちょっと大げさにポーズをとってみせた。
ちなみにジャックスパロウというのは主星で流行っている海賊映画の主人公の名前である。
エンジュはどうやら彼の格好を真似ているようだ。
元々元気が有り余っているくらいの少女である。
このようなボーイッシュなパンツルックも彼女の活発なところが生かされていてなかなかに似合っていた。

「ジャックつったらバウアーに決まってるだろうが…、って違った。オーランタンだろうが、ジャックオーランタン。…なんてったってハロウィンなんだからよ。」

素直に似合っていると言ってやるのも面白くないので、レオナードはそんな軽口をたたいた。

「カボチャは作るのが難しくて…」

そういってエンジュは苦笑した。

「ぶっ、マジで作る気があったのかよ。」

「だって…ハロウィンなんですもん。」

レオナードに笑われてエンジュは頬を膨らましむくれる。

「あっ!そうだ!ハロウィンで来てるんだった。」

ついつい脱線しそうになっていたが、エンジュは当初の目的を思い出す。
そしてコホンとわざとらしく咳払いをひとつ。

「え~とそれじゃあ……、トリックオアトリート!」

「あ~ン?何だァ?それは」

お決まりのハロウィンのセリフを言ってお菓子が出てくるのをニコニコ顔で待つエンジュ。
しかしレオナードはそらとぼけ、わざとらしく聞き返す。

「も~、さっきご自分でおっしゃってたっじゃないですか?ハロウィンですよ~、ハロウィン!この前も説明しましたし、それにパーティの招待状だって守護聖さま全員に届いてるはずです!」

相変わらずなレオナードの反応にエンジュは口をとがらせる。

「招待状?…んなもんあったっけ?」

「もうっ!パーティはちゃんと出席してくださいよ。」

「へいへい。」

お小言モードに入っているエンジュに対し、レオナードはさも面倒くさそうに答えた。
せっかくのイベントをレオナードにも共に楽しんでもらいたい。
エンジュはそう願っているというのに、どこまでが冗談で、どこからが本気なのかわからないレオナードの言動。
エンジュはしゅんとなり、ぽつりと呟く。

「…レオナード様とご一緒するの楽しみにしてるのに…」

その言葉にレオナードの表情が一転する。

「へ~ェ、うれしい事言ってくれるねェ。そこまで言われちゃ出ないわけにはいかないなァ?」

満足そうにレオナードが口元を緩める。
それを見てエンジュもレオナードの意図に気づく。

要するにレオナードはエンジュに楽しみだと言わせたかったのだ。

レオナードの思惑にまんまとはめられてしまったのが悔しくて、言わなきゃよかったとちょっとだけ後悔する。
まあ、"それを聞きたかったんだ"と言わんばかりのレオナードの顔を見せられるとやっぱりうれしくもあるのも事実ではあったのだが。

「もう、レオナード様ったら…」

「パーティにはちゃんと出てやるから楽しみに待ってな。」

「はい。待ってますね」

「ああ。」

「あっ、それと……」

「なんだよ、まだナンかあったか?」

「トリックオアトリートって言ったらちゃ~んとお菓子をくれないとイタズラしちゃいますよ?」

他の人たちはお決まりのセリフを言うとすんなりとお菓子をくれたのに、一筋縄ではいかないレオナードにエンジュがもう一度催促する。

今度は少々脅し気味に。

「イタズラねェ…。ガキのイタズラなんざたいした事ねーだろ?」

「ガっ…」

あんまりといえばあんまりな言葉にエンジュは思わず言葉を詰まらせる。

「まァ、俺様がガキのころには相当やばいことやって来たけどなァ、それに比べたら大したこと無いだろうしな。」

ふふんとレオナードが鼻で笑う。

「それとも何か?ガキじゃねェってんなら大人のイタズラでもしてくれるワケ?まァ、こんなコムスメには10年早いよなァ?」

すっかりからかいモード全開のレオナードである。

「ふふふ……」

「お?」

真っ赤になって怒り出すかと思っていたのだが、いつもとは違う反応をみせるエンジュ。
レオナードの脳裏に"?"マークが浮かぶ。

「そうくると思っていました!」

勝ち誇ったような笑みを浮かべ、エンジュが言い放つ。

「な?」

「失礼します!」

予想外のエンジュの言動にレオナードは一瞬言葉を失い固まってしまう。
その隙にエンジュは計画を実行すべく次の行動に移る。
あっけにとられているレオナードの横を通り過ぎ、向かった先は私室備え付けのキッチンの戸棚。
がらりと扉をあけるとそこには瓶が数本並んでいた。
いずれも高級酒のラベルである。

「あ、コラ待て、それは…!」

ここに来てようやくレオナードはエンジュの意図に気づいた。

「没収します!」

そう宣言して、懐から取り出した手提げ袋に酒瓶を入れていく。

「おまえ、どうしてここに酒があることをっ!」

「フ~ンだっ!!お菓子くれない悪い大人には教えてあげませ~ん。」

べ~っと舌をだし、レオナードをかわしながらエンジュは出口に向かう。
その随分と手際のいいやり方からしてどうやら入れ知恵をした存在がいるようだ。

ちくしょう、あとで覚えてろよ。

思い当たる人物をレオナードは頭の中で列挙する。

「それではわたしはこれで失礼しますねっ。」

「あっ!」

気づいたときには時すでに遅く、エンジュは悠々と部屋を出て行った。

「持って帰るんじゃねェ!…オイっ。」

本当はちゃんと用意してあったお菓子をあわてて手にとり、戦利品をたんまり手に入れてしてやったりのエンジュを追いかけるレオナードだった。

(おわり)


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