SILVERMOON

オトナの遊び?

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mayusilvermoon

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とある土の曜日。
定例報告のあとレイチェルからおこづかいを受け取ったエンジュは、その足でセレスティアのショップのひとつであるカンセールへと向かっていた。


そして、ショップについて十数分後、
お目当てのものが手に入ったらしく上機嫌でエンジュが店から出てくる。

「ふふっ、楽しみだな~。」

そういっててくてくと贈物の園を歩いていくエンジュであった。



「ん?あれはエンジュじゃねェか。」

ちょうどそのころレオナードもまたセレスティアに来ていた。
ゲートをくぐったあたりで遊びの園へと向かうエンジュの姿が目に入った。

「ひとり…だよな?一体どこに行こうってんだァ?」

レオナードは首を傾げる。
遠目だったがエンジュは誰かと連れ立っている様子は全くないものの足取りは軽く楽しそうなかんじだった。

「よ~し、行き先変更。」

もとより面白いことや楽しそうなことといったら首を突っ込まずにはいられないたちのレオナードである。
セレスティアにも特にそれといった目的もなくふらりと立ち寄っただけだったので早速エンジュを追いかけることにした。



「お~い、エンジュ!」

ちょうど乙女の噴水にさしかかったところでレオナードがエンジュに追いついた。

「あっ、レオナードさま。こんにちは~」

振り返ったエンジュはレオナードに挨拶をしにっこりと笑う。

「よ~ォ、どうしたんだ今日は?ずいぶんとゴキゲンだよなァ?」

「はい。実はですね~」

エンジュはごそごそとカバンの中を探り、さきほど買い求めたものを取り出した。

「じゃ~ん!新発売のお菓子です!!」

「ナンだこりゃあ?チョコレートか?」

エンジュが取り出したものはお菓子の箱であった。
パッケージにはスティック状のクラッカーにチョコレートがコーティングしてある菓子の写真と「POCKY」の文字がプリントされている。

「はいっ!今回出たのは普段のより細くなっててチョコの味わいがとっても楽しめるらしいですよ!」

「ふ~ん…。」

どうやら新製品が出たらしく、エンジュはそれを買い求めていたようだ。
甘いものにはあまり興味ないといったふうにレオナードはその箱を眺めた。

「あ、よかったらレオナード様も一緒に食べませんか?」

なるほど、すぐにでも評判の味を確かめたいがゆえにここにきたということなのだろう。
エンジュは早く食べてみたくて仕方が無いといった様子でベンチへと腰掛けレオナードを待ち構える。
レオナードは甘いものを食べる気はさらさら無かったが、こんなに楽しそうにしているエンジュの申し出を断ることもないだろう。

「ま、いいぜ。お前の食いっぷり見ているだけで飽きねーし。」

そういってエンジュのとなりに腰掛けた。

「もう、意地悪言わないでください。」

新発売のお菓子という乙女のロマンをわかってくれないレオナードにぷうっと膨れるエンジュであった。

「ったく、そんな膨れてたらカワイイ顔が台無しだろ?ほら、見ててやるから早く食えよ。」

「もう…」

カワイイという言葉に頬をそめつつも、レオナードに促されエンジュはお菓子のパッケージを開け一本取り出す。

「それじゃあ、いただきま~す!」

ぱくっと口に入れたとたん、チョコレートの味わいが口に広がる。
クラッカーの部分も細いがゆえに歯ごたえが軽くとても食べやすい。

「おいし~い。」

エンジュの顔がほころぶ。

「そうか、そいつはよかったなァ。」

幸せそうなエンジュの表情についついレオナードの表情も緩むのであった。



ぱくぱくと食べているエンジュを見ていてレオナードはふと思い出した。

「あー、どっかで見たことがあると思ったらよく酒場で食べてるやつがいたなあ。」

「酒場で?ですか。」

酒場でお菓子というのが結びつかないのかエンジュは菓子をくわえながらきょとんとした表情でレオナードをうかがう。

「そそ、こうやってだな…」

くいっとエンジュのあごを持ち上げたかと思うと、レオナードはエンジュがくわえている菓子のもう一方の先端をぱくっとくわえる。

「~~~~!」

驚いたエンジュは思わず口を離した。

「ハハッ、離したら負けだって~の。」

そう笑いながらレオナードはくわえていた菓子をエンジュの口へと放り込んだ。

「そういうことは先に言ってください。」

頬を真っ赤にしたまま、それでも、口はもぐもぐと動かしながらエンジュは抗議する。

「じゃあ、もう一回やってみる?」

にやりと好戦的な笑みを浮かべてレオナードがけしかける。

なんとなく挑戦しないと子供だと思われそうで、
他の人とやってたのかなと思うとなぜか悔しい感じがして、
エンジュは受けてたつことにした。



「先に口を離したら負け。端から食べて行くのな。」

「わかりました。」

楽しそうに説明するレオナードと、それとは逆に真剣な表情でこっくりとうなずくエンジュ。
レオナードは箱から菓子を一本取り出し端をくわえてエンジュを見下ろした。

「ほら」

レオナードにうながされ、エンジュも思い切って一方の端を口にする。
ふと前を見ると真正面にレオナードのアップ。
エンジュはそれだけで心臓がはね上がりそうになる。

これから食べ進めるってこと、もっともっと顔が近づくわでけで…

そう思うとますます鼓動が激しくなっていく。
しかしこれでは勝負にならない。
レオナードに小バカにされるのも悔しいのでエンジュは思い切ってちょこっとだけかじってみた。
恥ずかしい気持ちを押し殺して、エンジュはちらりとレオナードの様子をうかがった。
しかしレオナードはにやにやとエンジュを見据えたまま端っこをくわえているだけだ。

「ひょっと、レオナードさまも食べてくらはい!」

「やなこった。」

もごもごとお互い菓子をくわえたまま言葉を交わす。

「お前チョコ好きだろ?俺は甘いもの苦手なの。」

ずるい!いじわる!とエンジュは目で訴える。

「コムスメには無理かあ?」

「!」

言われてカッとなってエンジュはどんどんと食べ進む。

ゴッツン!

二人に衝撃が走る。

「ってェ!」

勢いあまってエンジュの鼻がレオナードの鼻にぶつかったようだ。
その拍子にレオナードはのけぞり、口を離してしまった。

「お前なァ…まっすぐ突っ込みすぎ。ああ、いてェ…」

そういってレオナードはおおげさに鼻を押さえて見せる。

「す、すいませんっ。」

ついカッとなってしまった自分が恥ずかしくてエンジュはうつむいた。

「まあ、負けは負けだ。チッ…」

「ふふっ。」

潔く負けを認めたレオナードだが、ひどく不満げである。
その様子にエンジュは思わず笑ってしまう。

「そんなに勝ちたかったんですか?」

「いや、勝敗のことじゃなく、な…。」

レオナードが何を言ってるのかわからずエンジュは首をかしげる。

「負けたから悔しいわけじゃないんですか?」

「このゲームの醍醐味は、最後まで離さなかったらいただけるゴホウビだろ?」

「ご褒美…って?……あ!」

そこまで言われてようやく気づき、レオナードの言うところのご褒美を想像してしまいエンジュの頬がかあっと赤くなる。

「なァ、まだ残ってるんだろ?」

「え?」

そういってレオナードはエンジュの手元をのぞきこみ、ひょいっともう一本とりだした。

「さ~てと、2回戦…行くぜ?」

「えええ~?」

「今度はゴホウビよろしく、な?」

「も、もうっ…レオナードさまったら。」

ぱちりとウインクをして笑いかけるレオナードに、再び顔を真っ赤にしてうつむくエンジュであった。

袋に残っているお菓子はあと十数本はある。
もうしばらく甘い試食会は続きそうである。

(おわり)




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