SILVERMOON
日常
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日常
「ん~、今朝もいい天気だな」
窓を開け放ち新鮮な空気を吸い込む。
そして、朝の光を浴びながら、クリスはひとつ”のび”をする。
そして、朝の光を浴びながら、クリスはひとつ”のび”をする。
コンコンコン―と、
いつものノックの音が、新しい一日の始まりを告げる。
「クリス様。おはようございます。」
ルイスがにこにこと愛らしい笑みを浮かべ朝の挨拶をかわす。
「ルイス、おはよう。」
おなじくにっこり微笑むクリスをルイスはまぶしそうに見る。
ほんとうに、いつみてもお綺麗だな…と思うルイスである。
ほんとうに、いつみてもお綺麗だな…と思うルイスである。
「どうした?ルイス。」
何も言わないルイスをクリスがいぶかしむ。
「あ、いえ…なんでもありません」
あわてて首を振り、いつものように一日の予定をクリスに伝える。
「え、と…
今日は特に早急に行う業務はないからご自由に…とサロメ殿が仰っていましたが
クリス様、どうしますか?」
今日は特に早急に行う業務はないからご自由に…とサロメ殿が仰っていましたが
クリス様、どうしますか?」
「そうだな…では皆の様子でも見て回る事にするよ。」
そういってまずはサロンへと足を運ぶ。
そこにはコーヒー片手に書類に目を通すサロメがいた。
「これはクリス様おはようございます。」
クリスに気づくと書類をテーブルに置き、立ち上がってクリスへと挨拶する。
まったく、少しは仕事を回せばいいのに…
「こんな時間からもう仕事か?朝食くらいゆっくりと…」
自分に対しては仕事はないといっておきながら、朝から書類に目を通しているサロメが心配で、ついとがめるような口調になってしまうクリスである。
「ええ。ゆっくりしようと思いまして、朝食はまだいただいていません。
もうそろそろいらっしゃる頃かと思っていましたのでそれまで…と」
もうそろそろいらっしゃる頃かと思っていましたのでそれまで…と」
はたしてクリスの言葉などお見通しなのか、それとも単にクリスと共に朝食を摂りたかったからなのか、サロメはそのように答えた。
「それではたのんできますね」
ひとしきりのやり取りの後、ルイスがそう言って厨房へと向かっていった。
そして
侍女が朝食を運んでくる。
「おや?ルイスはどうしましたか?」
ルイスの姿が見えないのでサロメが侍女に尋ねた。
「今日は朝からボルス殿に剣の稽古をつけるといわれたそうで、厨房にこられた後、鍛錬場に向かわれましたよ」
「早くから張り切っているようだな。」
立派な騎士になるべく励むルイスの事を考えて、うれしそうに微笑むクリスである。
「ではいただきましょうか?」
「ああ。」
食事も終わりサロメは書類と向き合う。
真剣な表情で書類に目を通し着々と仕事をこなしていく。
真剣な表情で書類に目を通し着々と仕事をこなしていく。
いつもながら、その処理能力に感心させられて、その様をじ~っと見ているクリス。
「……どうか、しましたか?」
ふとその視線に気づき、サロメはクリスに問いかける。
「ん?…何でもない」
そういいつつもまたもやじ~っとサロメを見るクリス。
「…あの、そのように見られると仕事がしづらいのですが?」
「気にするな。見てるだけだ。」
気になりますっ!!
「……では、クリス様もここで仕事なさいますか?サインをしていただく書類などもありますし。」
「ああ。そうする」
結局サロメが折れる形となり、二人で仕事をすることになってしまった。
「しかし…騎士というのは体を動かせばいいものだと思っていたがこんなにこなす仕事があるとは思ってもいなかったよ」
なかなか片付かない書類の山を前に、思わず愚痴をこぼすクリスである。
「仕方ありませんな。これがゼクセン流というものですから。」
「でも…お前にばかりそういう仕事が増えて…」
その言葉と眼差しで、心配で仕方がないとサロメに訴える。
サロメは書類をテーブルに置き、クリスを見据える。
「好きでやっているのですよ。わたしは武力に秀でているわけではありませんから、こういうことでゼクセンの、そして我が騎士団長殿のお力になれるのがうれしいですから。」
クリスの気遣いをうれしく思いながらも、心配はかけたくないサロメである。
ここはきっちりと自分の気持ちを伝えておく。
ここはきっちりと自分の気持ちを伝えておく。
「まったく…お前はいつも…」
そういって苦笑を浮かべるクリスだがまんざらでもないといった様子で…
「感謝しているよ…ほんとうに。」
その一言でサロメの苦労はむくわれると言うもので、仕事の疲れなど吹き飛んでしまうのであった。
「クリス様、そろそろ一休みしますか?」
きりのいいところでサロメが声をかける。
「ああ、そうだな。」
その言葉でクリスも仕事の手を休める。
「今朝、ゼクセの交易商からめずらしい茶葉が手に入りまして…」
そういって立ち上がるサロメ。
「ほんとうか?サロメの見立てだからよい葉なのだろうな。」
その言葉にクリスがうれしそうに笑いかける。
「そうであればよいですな。では用意してきますのでクリス様はゆっくりとなさって下さい。」
そう言ってサロメは部屋を後にした。
サロメを待ちながら、クリスは窓の外を見る。
そういえばサロメはここからよく外を見ているな…
いつもここで何かを考えて…
いつもここで何かを考えて…
それはいつもゼクセンのため、騎士団のためで…
私はいつもそれに助けられているんだ…。
「おまたせしました。クリス様。」
「あ、ああ」
サロメの声にあわてて振り向く。
「どうされました?外に何か?」
テーブルにトレイを置き、サロメがクリスの隣へと歩み寄る。
そしてクリスと同じように窓の外を眺める。
そしてクリスと同じように窓の外を眺める。
「いや、おまえがよくここから外を見ていたな…と思って。」
「そういわれるとそうでしたかな。」
首をかしげ、そんなことがあったかとしばし考える。
「ああ、そうだった。それで、いつも何を見ていたのかと思ってな」
「考え事をするときの癖、なのかもしれませんな」
どうやら本人はあまり意識していなかったらしい。
「ふふ。」
まるで他人事のような発言につい笑みがこぼれる。
「それで、何か面白いものでも見えましたか?」
「何も。」
サロメの問いかけに首を振るクリス。
「サロメには何が見えていた?」
ずばり、聞いてみる。
「”なにが”…ですか…」
考えをめぐらせるサロメ
「…ゼクセンの民の事…、それともブラス城の騎士達か?」
「そうですな、それもありますが……」
「ああ、なんだ?」
肝心なところで言葉を止めるサロメに対して、クリスは半身を乗り出して詰め寄る。
「やはりクリス様の事でしょうか。」
「なっ……」
サロメの言葉に思わずのけぞり、そして赤面するクリス。
いつもいつもここから外を眺めては、わ、私のことを考えているとっ!!??
「じょ、冗談を言うな!」
のけぞった後は今度はサロメに向かってかかる、まったくもって忙しいクリスである。
「冗談ではありませんよ。騎士が忠誠を誓った主人のことを第一に考えるのは当然です。」
クリスの狼狽に気づいていないのか真顔できっぱりと答えるサロメである。
「そ、そんなものなのか?」
「私にとっては。」
「そ、そうか。」
な、なんだ…、そう、なのか
まったく、びっくりさせて…
まったく、びっくりさせて…
まだどきどきしする胸をおさえながら息を整えるクリスであった。
聞き様によっては愛の告白めいた言葉なのだが
クリスへの忠誠心が強すぎて、あまりにもさらりと、そして当然のように言ってのけるものだから、騎士道とはそのようなものなのかな、とクリスもその言葉を受け入れることになるのである。
クリスへの忠誠心が強すぎて、あまりにもさらりと、そして当然のように言ってのけるものだから、騎士道とはそのようなものなのかな、とクリスもその言葉を受け入れることになるのである。
「そうですよ。クリス様の助力となるために私はここにおります。」
「そうか…では民や騎士達に逆らってもいい…と?」
自分ばかりが翻弄されるのがくやしくて、つい意地悪な質問をしてしまうクリスである。
「クリス様がそのようなことはなさらないことは私が一番わかっているつもりですが…、クリス様がそうすることを望むのなら…。」
「ま、まったく…バカな事を言う」
やっぱり真顔で答えるサロメに、悪態をつきながらも、クリスはまたまた赤面してしまう。
「バカで構いませんよ。」
そういってクリスをあたたかい眼差しで見つめるサロメは正真正銘の”親バカ”ならぬ”クリスバカ”といったところか。
「バカ…」
「はい。」
「バ、バカといわれて返事するな!」
「ではどうすれば?」
「もう…いい。」
降参するクリスである。
「さて、お茶にしますかな?」
「ああ。」
こうやって交わされる、傍から見ればおもわず赤面モノの会話も
二人にとっては日常茶飯事になりつつあって…
二人にとっては日常茶飯事になりつつあって…
翌朝、クリスの部屋にやってきたルイスが尋ねる。
「クリス様、昨日は何をされていたんですか?」
「うん?…あ、ああサロメと書類を見ていた」
「なんだぁ、それじゃいつもと変わらないじゃないですか。」
「ふふ、そうだな。まあ…それで、いいんだよ。」
…と、まあ
こんな会話が繰り返されるのもいつもの日常―
終わり