SILVERMOON
ネコねこ狂想曲♪
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ネコねこ狂想曲♪
「さて…と、仕事も片付いたし…紅茶も美味しかったし……。」
軽く伸びをして、クリスは共に仕事をしていたサロメへと声をかける。
「どうしようか…そろそろ食堂に行こうか?」
「そうですな。今日は早く片付きましたからな…、よろしければ、私が一つ腕を振るわせていただきましょうか な。」
窓の外はまだ日も沈もうかといったところである。
「いいのか?」
「ええ、もちろんです。」
「サロメの料理は絶品だからな。楽しみだ。」
「今日は港よりいい魚が入ったと聞いていますので腕が鳴りますな。ちょうど新しいレシピを入手しましたからそ れをご披露いたしましょう」
こうして今夜の夕食はサロメの手料理を食す運びとなるのだった。
「お待たせしました」
「初めてみる料理だな。…これは?」
「タイの煮付けに肉じゃがです。異国の料理ですな。」
「そうか。それではワインではなくあの酒ものめるんだな♪」
あの酒とは日本酒のことである。
クリスは以前1度口にした事があり、どうもその味を気に入っている様子である。
クリスは以前1度口にした事があり、どうもその味を気に入っている様子である。
ただ、そのときはほんの少量で酔いがまわってしまったため、サロメはそれ以来日本酒を食卓には出さなかっ た。
しかしクリスがその酒を飲みたいというなら、”話は別”なのである。
「そうですな。それではとって参りましょう。」
クリスの願いを叶うべく、あっさりと意思を翻し、部屋を後にするサロメであった。
「…少しだけですよ」
一応念を押してから、サロメは瓶から小さなグラスに日本酒を注ぐ。
「わかってるよ」
「では、いただきましょうか」
「ああ。」
食事も終わり、サロメが後片付けを終え、厨房からもどってきた。
その手には茶器を携えている。
その手には茶器を携えている。
「クリスさま。」
「………」
返事がない。
「クリスさま?……入りますよ。」
そっと扉を開ける。
クリスはというと、上半身は起こしているものの、グラス片手にソファに横すわりになっている。
頬は紅潮し、眼差しはとろんとしている。
頬は紅潮し、眼差しはとろんとしている。
「もしや…」
サロメはテーブルに置かれた瓶を振ってみる。
水音は……しない。
「……あの……空っぽなんですが?」
少し責めるように、上機嫌のクリスに聞く。
「呑んだ」
即答である。
「……全部?」
わかっていても聞いてしまう。
クリスは手にしたグラスを一気に煽る。
「ぷはぁ……これで…全部だ♪」
やっぱり即答である。
”少しだけだって言ったのに…”
罪の意識の欠片もないクリスの様に、酒の力はおそろしい…と頭痛がしてくるサロメであった。
「うにゃ~」
ソファに座るサロメの膝元にもたれかかるクリス。
完全に出来上がっているようである。
完全に出来上がっているようである。
「しかし…」
クリスを見ながらサロメはつい呟いてしまう。
仕草といい、鳴き声(?)といい、これではまるで…
「……ネコ、ですな…」
いつもの凛々しいクリスとは、あまりにもギャップがある。
それでも、そんな姿はついぞ見られたものではなく
かわいい…
と、思ってしまい、つい口許がゆるんでしまうサロメである。
「わたしも…そうとう重症ですな…」
そんなことをひとりごちて、ひざの上のクリスの背を撫でてみる
こんなこと、正気のクリスさまにしたら打ち首ものかもしれないな…
しかし、今のクリスは撫でられることがお気に召しているようで
「ん~」
ニコニコとしている。
あまりに可愛い笑顔に、サロメもつられてにこっと笑い返す。
その笑顔を見て、クリスは満足げに頷く。
そして、クリスはおもむろにサロメの顔に自分の顔を近づけ…
そして、クリスはおもむろにサロメの顔に自分の顔を近づけ…
ぺろっ
サロメの頬を舐める。
「な、なっ!!!???」
サロメは心底驚いて、思わずのけぞりかえる。
しかし勢いがつきすぎて、クリスもろともソファから転げ落ち…
しかし勢いがつきすぎて、クリスもろともソファから転げ落ち…
ゴン
鈍い音がサロメの脳裏に響く。
どうやら頭をしたたか打ったようで……
どうやら頭をしたたか打ったようで……
「……サロメ、サロメ!!大丈夫か!?」
自分の名を呼ぶ声にサロメは目をあける。
目の前には自分を心配そうに除きこむクリスの顔がある。
目の前には自分を心配そうに除きこむクリスの顔がある。
「クリス様……?だ、大丈夫です」
まだ完全に晴れない意識の中で、それでもクリスに心配はかけまいとサロメはそう答え、身を起こす。
「よかった…ふと見たらお前が床に倒れているから…」
クリスの酔いは醒めているようである。
「申し訳ありません。」
「全くだ。本当に心配したんだからな。」
クスン、とクリスが鼻を鳴らす。
見るとクリスの瞳は僅かながら潤んでいる。
見るとクリスの瞳は僅かながら潤んでいる。
「本当に…ご心配をおかけしたようですな…」
サロメはそっと指をクリスの目元に添え、それを拭う。
「な、何を…」
真っ赤になり、クリスは顔をそらす。
「もう、心配させるな。」
顔はそむけたままでクリスは小さくつぶやいた。
「承知しました」
「しかし本当に驚いたんだぞ」
ティーカップを手にしながらクリスがしみじみと呟く。
「は?」
「お前が倒れていて。……なぜかその……私も隣で寝転んでいたけど……」
語尾が小さくなってしまうクリスである。
「あの、よく聞こえませんが?」
「とにかく!!あの酒はお前は飲むなということだ!」
「は!?私が…ですか?」
まさか自分がクリスにそんなことを命じられるとは思ってはおらず、サロメは思わず聞き返す。
クリスのその言動から、クリスは自分の行動を全く覚えていないということは明白で…
”クリスさまが”の間違いでしょうに……
そう思いながらも、訂正してそのときの状況をクリスに説明するわけにもいかず…
「…承知しました。」
渋々ながら了承し、もう決して日本酒は飲ますまい。…と再び心に誓うサロメであった。
(終わり)