SILVERMOON

グリフィン先生の人間講座

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グリフィン×女天使(アルメリア)



グリフィン先生の人間講座―恋のABC教えます―



「インフォスに平和が訪れた後も、ずっとここにいてほしい。おまえを守りてーんだ…」

インフォスに平和を導くために選ばれた勇者の一人―グリフィン―は自分を勇者として選んだ張本人である幼い天使アルメリアに、勇者とそれを導く天使以上の感情(それはまさに男が女に抱く恋愛感情そのものだった)をいつからか持て余していた。

最初はただの気の迷いでそのうち消えていく想いと思っていたが…

彼女に会うたびに、彼女と一緒の時間を過ごすたびに彼女への気持ちは大きく膨らんでいった。
彼女をもとめ、彼女にずっと自分のそばにいてほしいと思うようになっていた。 

天の使いである彼女には無理な願いだとわかってはいても…

それでも…

自分の気持ちだけでも伝えたかった。



アルメリアはその言葉を聞くと複雑な表情を見せた。



とまどい、驚き、困惑……そして…、



「…やっぱ、無理な話…ってか。……ちっ、よけいなこと言っちまったな…。」

今の自分の表情をアルメリアに見せるとまた泣きそーな顔されそうだから、
踵を返しずんずんと歩き出す。

グリフィンはアルメリアのその顔がすこぶる苦手だった。

大きな瞳をわずかに潤ませ、上目遣いにグリフィンをじ~っと見つめるのだ。

その顔に負けて依頼を引き受けたこと数知れず……

まあそんなアルメリアだったからぞっこんになってしまったのだが、その点をグリフィンは自覚してはいなかった。

「まって…待ってくださいグリフィン!あの…私、ガブリエル様にお願いしてみます!」

「ほ、ほんとか?!」

振り向くとアルメリアは頬を少し赤らめながらにこっとほほえむと、グリフィンの理性をとばすとどめの一言を発した。

「はい…わたしもグリフィンと同じ気持ちですから…」


グリフィントオナジキモチ


グリフィンはゆっくりとこの言葉の意味をかみしめる。


…俺と同じ気持ち…ってことは、……ってことだよ…な? 


グリフィンはあまりのうれしさにアルメリアを抱きしめていた。
背中の羽がちょっとじゃまだがそんなことはお構いなし、である。
ただ、心の欲するままに、もうはなさないといわんばかりにぎゅうぎゅうと抱きしめる。
そんなグリフィンに、アルメリアはただただ驚くばかりで、その熱烈な抱擁に抵抗することも、応えることも出来ないでいる。

グリフィンが何故、急にこんなことをするのか訳が分からなかった。

…そして、グリフィンの…人間の持つ激情が、なにも知らない無垢な天使にとっては無性に怖くて…不安だった。

「く、苦しいです。グリフィン…いったいどうしたというのですか?突然、こんな…」

グリフィンの腕の中でアルメリアはおそるおそるグリフィンを見上げる。
その肩は少し震え、目には明らかに未知の行為に対するおびえの色が浮かんでいた。


そうだった。こいつはこと恋愛に関しては3歳児以下だった…。





いつだったか…

イダウェルのところで意を決して、

「俺が興味ある女はおまえだけだ」

と、ほぼ愛の告白をしたときもアルメリアはきょとんとした顔をして、その後

「それは私は天使ですから人よりは珍しいでしょうけれど、人付き合いもきちんとしなくてはいけませんよ!
…ああっそうでしたか!グリフィンは天使に興味を持たれたのですね!
今度アカデミアから天使の生態について書かれた本をお持ちしますね」

と言ってにっこり笑ったのだった。

勝手にわけわかんねー解釈しだすしよ…あん時は訂正する気力もそがれちまったっけ。

ちくしょう。

このおおぼけ天使をどうしてくれようか…

まあ俺を好いてくれるのは確かそうだし…

いや、まてよこいつのことだからわかんねーな…


「な、なあアル…もし俺以外の勇者がインフォスに残ってほしいって言われたらどーすんだ?」


ちょっと答えを聞くのは怖かったが、グリフィンは腕の中の天使に訪ねた。

「はい…あの…何人かの方には言われたんですけど…」

「なっ…お、おれより先にそんなことぬかしたやつがいんのかっ!!でっ!!どーしたんだ?!」

アルメリアは急にグリフィンがものすごい剣幕でまくし立てるため、すっかり脅えてしまって小さくなってふるえている。
そのことにグリフィンが気づき慌てて手の力を緩め、小さな声でわりぃとつぶやく。

…それでも、まだ腕の中からは逃がさないようにしっかり腕を背に回す。

「あ…あの。お断りしました。だって天使である私がこの地に残るなんてとても無理だと思ったんです。」

もじもじとばつがわるそうに、うつむいてアルメリアは答えた。
その頬には心なしか朱がさしているように見えた。


俺は、俺はうぬぼれてもいいのか?なあ…アル





「俺には…断らなかったよな…どうしてだ」

期待ではやる気持ちを押さえきれずつい声がうわずる。

「はい…わたし、グリフィンとお別れしたくありません。どうしてでしょうか、あなたと同じことを他の方から聞いたときに勇者を導く天使として対応できたのに…あなたからその言葉を聞いたとき、私はうれしいと感じてしまいました。そしてあなたと一緒にいられたらうれしいな、などと……」

正直アルメリア自身この気持ちにとまどいを感じていた。

グリフィンのことは勇者としてスカウトした当初から気にかけていた。
何せ出会いが盗みを働いている最中だったのである。

あなたを信じています、とは言ったもののどう考えても盗みは辞めていそうもなかったから、少しでもやめてもらおうとできるだけ同行するようにしていた。

そして、折に触れグリフィンのいろんな面をかいま見ることが出来た。
小さい子にはとても優しくて、
ほめられるのが苦手で必要以上に悪ぶって、
自分を表現するのがへたで……。

そんなグリフィンを私だけは分かってあげたいと思った。

そして知れば知るほどもっとグリフィンを知りたいと思った。

そしてグリフィンもまた自分に心を開いてくれいろんなことを語ってくれた。
少しずつ心を開いてくれるグリフィンがうれしかった。

思い出すのもつらい過去を私に聞かせてくれたときは天使として、あろう事か、涙を見せてしまった。

本当につらいのはグリフィンなのに…

元気付け、慰め、支えてあげるべき私の方が泣いてしまうことが情けなくて、ますます涙が止まらなくなって逆にグリフィンに慰められる羽目になってしまった。

そういえば私はグリフィンの前でよく涙を見せてしまう。

他の勇者の前や、妖精達の前では見せない弱さを彼の前ではさらけ出してしまうのだ。
そんなとき彼はいつも口では悪態をつきながらも私の願いを引き受け、私が落ち着きを取り戻すまで慰めてくれる…。


ああ…私は天使失格だ。私は彼を求めているのだ。





自分の気持ちに気づいてしまった今、うそをつけないこの天使は正直に思いの丈をうち明けるしかなかった。

「私は、天使失格です。ずっとあなたのそばにいたいのです。インフォスの平和を導く天使ではなく、あなたの、いえ、あなただけのアルメリアになりたい。」

そう言ってすがるように自分を見つめ返すアルメリアのあまりの愛しさに
焼き切れそうになる理性を何とか保ちながら、グリフィンは思案する。


よし!アルの気持ちは確認できた。

あとはこっから先のことを教えるだけだ。

できるだけ怖がらせないように、けれどしっかりと分からせる…

男と女の愛がどんなものかということ、俺にはおまえしかいないんだということ、そしておまえにも俺しか必要ないということを。


俺だけしか知らないアルメリアを見せてもらう…。


それも俺だけにしか見せないように…。



我ながら狂気にも似た独占欲だと思う。


恋愛に関しては淡泊だと思っていた。
うざったい男女の色恋沙汰に巻き込まれるくらいなら商売女を相手にする方がよかった。

だがアルメリアにあって本当の恋というものを初めてしたような気がする。


しかもよりにもよって天使なんかに…。

まったくもって面倒な相手を好きになったと思う。
だが、心の中でこの状況を楽しんでいる自分がいるのもまた事実だった。


さて、どっから教えるか…


彼女との同行は始まったばかり。

時間はたっぷりある。




…その前に自分が我慢しきれるかが問題だが。





ひとつ、ゆっくりと呼吸して腕の中のアルメリアを見つめ、彼にしては珍しい、出来るだけ優しい声で、甘くささやく。

「アル…それは俺を愛してるってことだ。」

「愛…ですか。」

「ああ…そうだ。俺もおまえのこと…愛してる、ぜ」

言ってて正直、顔から火が出るほど照れくさい。

はっきり言ってこんなことグリフィンの柄ではないのだ。
だが、こればっかりは自分が教えたい。

他の男は当然ながら女にだって譲りたくない。


ちくしょー!最初だけだからなっ


一方アルメリアの方は、優しく、甘く愛を語ってくれるグリフィンに身も心もとろけきっていた。

彼女の方も彼女なりにグリフィンのことはよく分かっている。
こんな風に照れることなく自分の思いを語ってくれるなんてこと滅多にないことだから(彼女が気づいていないだけとも言う)ストレートな愛の告白は胸にくるものがあった。

「うれしいです。…私も、私もあなたのこと愛しています。…やっと気づきました。」

「それじゃあ、俺達は今日から、こ、恋人同士だ。」

「恋人同士…」(うっとり)

「アルは恋人同士がなにをすればいいのか分かるか?」

「え…ただ、そばにいて寄り添うだけじゃ、だめ…なんでしょうか。」

「そうだな、そばにいるってのは大事だ。けどそれじゃあいつもの同行と変わらないだろ?」

「そうですね…ええと…」

「恋人同士なんだ。愛し合っていることを確認しあわなきゃならねーだろ。」

アルメリアは必死で以前読んだ書物のことやインフォスで見てきた数々の思い出をたぐり寄せる。

ふと、こと男女の恋愛に強そうな勇者のことを思い出す。

「あっ!分かりました。こうやって抱き合って…」

とある舞踏会の夜、シーヴァスが女性と抱き合っていたことを思い出したのだ。
アルメリアはグリフィンの首に手を回しそっと目を閉じ唇をグリフィンのそれに重ねる。



アルが、俺に、キス、してる…それも自分から!!



グリフィンはめまいを起こしそうな歓喜に襲われる。


も、もうだめだ。我慢できねー!!


突如、グリフィンはアルメリアの首筋に手を添え、角度を深くする。
それは触れるだけののキスからより濃いものへと変わっていく合図。

「ん、んぅ~!!」

恋人の突然の変貌に驚き、ささやかな抵抗を見せるアルメリアだったが、聞き入れてもらえるはずもなく…。



ようやく解放してもらったときにはすでに息も絶え絶えであった。


「はあ、はあっ…。グ、グリフィン、急に、こんな…。い、息が…」

「これが、恋人同士のキスってやつだ。あの、な…息は鼻からするんだ。」

「は、はい。」

「じゃあ、もう1回だ。今度はアルも応えてくれよ。」

「ええっ?私に出来るでしょうか。」

「出来るまでやりつづけるぜ?!」



こうして何度もキスをかわすうちに夜のとばりが降りていった。



グリフィン先生とアルメリアの受難?の日々はまだまだ始まったばかり…


終わり












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