恋 ◆yX/9K6uV4E
―――どうして、私じゃ駄目なの? どうして、貴方でなくちゃ駄目なんだろう?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
わたし、
小日向美穂は、とっても恥ずかしがり屋でした。
自分でいうのも恥ずかしいけど、本当にそうで。
そんな、わたしがアイドルになるか不安で仕方なかったけれど。
わたしの担当プロデューサー……とても優しい人。
優しい目をして、穏やかな人。
常に、わたしの隣で見守ってくれた人。
わたしとそんなに年が離れてないのに、落ち着いた人でした。
その人が、ゆっくりと、わたしを見守ってくれて。
わたしが、辛くて泣いたときでも。
わたしが、幸せで笑っていたときも。
傍に居てくれた人でした。
だから、わたし、頑張ろうと思ったんです。
わたし、あの人の笑ってる姿が好きだったから。
だから、あの人の為にも、アイドル投げだしちゃいけないなって。
とても恥ずかしかった事もあったけど、とても充実したアイドル生活を送れたのは……
きっと、あの人のお陰でした。
そんな、あの人に、私は、生まれて初めての恋をしていました。
自分でも不思議なぐらいに。
あの人に惹かれていて。
あの人は私のプロデューサーなのに。
駄目なのに、駄目なのに。
どうしても、心が惹かれていました。
その想いが、恋なんだなと気付いた時は恥ずかしくて、何か爆発しそうでした。
顔を真っ赤にして、枕に思いっきり顔を埋める始末で。
でも、それがとても幸せで嬉しかったんです。
そして、その恋がアイドル生活にも良い影響を与えていました。
ドラマや演劇で、演技が上手くなったと評判になったけれど、きっとそれは想いのお陰で。
その想いが私を昇華させて、くれたんだろうと想います。
――――だけど、それは、きっと叶わぬ、初恋になるのでしょう。
偶然、偶然でした。
オフの日に、プロダクションの近くを歩いていたら。
あの人を見かけたんです。
お似合いの彼女と一緒に腕を組んで歩くあの人を。
どう見ても、カップルでした。
ただ、絶句しました。
お似合いの彼女も――私にとって大親友のアイドルだったから。
どうして、なんで。
そんな言葉ばかり浮かびながら。
でも、それよりなによりも。
わたしの前では見せる事無い笑顔を浮かべていたのが悔しくて。
もう、どうにもならない気持ちが溢れてきて。
ただ、苦しくて、息も出来なくて。
でも、わたしは、親友を恨む事もできなくて。
けれど、祝福なんて出来るわけなくて。
何度も 諦めようとして
何度も 嫌いになろうとしてみたけど
そんなの無理に決まっていて。
だから、わたしはいつも、呟いてしまうんです。
―――どうして、私じゃ駄目なの? どうして、貴方でなくちゃ駄目なんだろう?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……って、ちょっと聞いてるー? 美穂ちゃーん?」
「って、は、はい、きいてますよっ、なんでしょう?」
「……はぁー、聞いてないよね」
「……ご、御免なさい」
「ま、いいけどー」
唐突に呼びかけれて、私は現実に戻ってくる。
思いっきり、思いふけていた。
いけないなと思っても、あんまり現実をみたくないかも……
だって、こんな状況だから……
「お腹すいたーん」
「は、はぁ?」
「だから、お腹すいたなーって折角街にいるんだから、ご飯でも、漁ろ?」
「そ、そうですね」
そういって、わたしが出会った妖精のような少女は小悪魔的に笑う。
少女……
塩見周子は本当にお腹すいてそうで。
私は困ったように笑い、彼女に追随する。
この肌がとても白い……というより色素の薄い周子ちゃんと出会ったのは偶然で。
たまたま一本道がスタートだったわたしが歩いていたら、出会っただけ。
最初はびくびくして不安だったけど、彼女はこのように呑気だったから、わたしもすっかり気が抜けてしまった。
こんな場所で、抜けてしまったら困るのに。
でも、殺し合いなんて、絶対出来ない。
それがわたしのアイドルとして矜持でもあったから。
周子ちゃんも、
――殺し合いなんて、やんなーい。だるいでしょ
といって乗り気じゃなかったから、一緒に行動する事にした。
ただ、それだけといえば、それだけの関係なのかも。
「和食、洋食……やっぱ、洋食かなぁ」
そんなことを呟いてる周子ちゃんを見ながら、わたしは独り考える。
それは、あの人と親友の事だ。
あの人は当然人質に取られていて。
且つ、親友のあの子も此処にいる。
あの子は、どうするんだろう。
恋人であるあの人の為に、殺し合いをするのかな。
最も殺し合いなんて似合いそうもない子なのに。
わたしすらも殺そうとするのかな。
……わかんないや。解かりたくないや。
そして、わたしはどうするんだろう。
あの子にあったら、わたしは何を言うんだろう。
笑顔で居られる自信が、無い。
プロデューサーをとったあの子に。
こんな狂いそうな殺し合いの状況で。
わたしはどうするんだろう。
そして、プロデューサーに、わたしはどうすればいいんだろ。
わたしと彼が残っても。
彼の恋人が死んでいたら。
あの人は、泣くのかな。
わたしを見ないで。
そしたら、わたしはどうするのかな。
どうするの――
「ちょっとー、何か考えすぎじゃない?」
「ふ、ふぇ!?」
「何、考えてるか解からないけどさ、こんなところで考えても気が滅入るだけだって」
「……そうですね」
「もっと気楽にいこうよー。あたしみたいにとはいわないけどさ」
周子さんは笑って、私を励ます。
励ましてくれてるんだろう。
うん、考えすぎなんだろう。
今はただ、皆が幸せになる方法を考えよう。
それがアイドルのわたしが出来る事なんですから、ね。
うん、そうしよう。
「じゃあ、ご飯ご飯! 美穂ちゃんゴー!」
「わわ、背中押さないでくださいよぉぉ~~!?」
わたしは背を押される感じで、歩き出す。
でも、遠い所で、もう一人の自分が囁く。
―――あの人とあの子が幸せになって……わたしは幸せになれるの?
それを、わたしは聞かない振りをしたんです。
【G-6/一日目 深夜】
【小日向美穂】
【装備:なし】
【所持品:基本支給品一式×1、不明支給品1~2】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いに乗らず、皆と幸せになる方法を考える
1:腹ごしらえする
2:親友に対して……?
※小日向のプロデューサーは、小日向とその親友をプロデュースしています。他にも担当アイドルが居るかはお任せします。
親友が誰については後継にお任せします。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(本当、考えすぎだよねー……そんなんじゃ、いつ死ぬか解からないよ?)
あたしは、美穂ちゃん見て、まずそう思った。
何か考えてるか解からないけど、まあどうでもいいかなー。
興味ないし。御免、ほんのちょっとあるかな。
幸せになれる方法ね。
……流石に、あたしはそんな日和見にはなれないかな。
とはいっても、殺し合いする気もなれないけどー。
だから、精々自分の命を無くさないように気をつけるだけ。
プロデューサーの命がかかってる。
そんなのは知ってる。
知ってるけど、限界まで見極めないとねぇ。
これ自体日和見なのかな。
美穂ちゃん笑えないや。
ま、でも賢い選択じゃないかな。
最期にどうすれば自分がどうすればいいか決める。
それが出来ればいいというわけで。
まあ、そんな感じでいきましょー。
(そういう風に、やっていかなきゃ、やっていけないよ、まったく)
心中毒づいて、あたしは無理に笑う。
あたしにプロデューサーの命がかかってる?
……笑えないなぁ、笑えない。
笑えなくて、震える。
らしくないから、とりあえず、ご飯にしよう。
美穂ちゃんの悩みも気になるし。
……あれ、結局、興味あるじゃん。
やれやれ、可笑しいの。
色々、あたしがさっ。
結局、世話焼きなんだよねーあたしも。
自分で言ってて、世話ないや。
あはは、まあ、それがあたしのとりえだしー。
プロデューサーも苦笑いしてそう。
ま、それがあたしなんで。
だから、そんな感じでいくんでよろしく。
待っててね……――さん。
【塩見周子】
【装備:なし】
【所持品:基本支給品一式×1、不明支給品1~2】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いに一旦乗らず、ギリギリなるまで見極める
1:腹ごしらえする
2:美穂に着いていく
最終更新:2012年12月20日 09:27