サグラダ・ファミリア ◆yX/9K6uV4E



――――サグラダ・ファミリアという、外国の言葉がある。







     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇









私(わたくし)は猫である。名前はペロ。
なんて、大昔にあった小説の書き出しを真似してみる。
聞くところによると、どうやら私の先祖はその小説の猫らしい。
……が、どうにも眉唾モノにしか思えないので、きっと父か祖父が嘯いたのだろう。
そもそも私は真っ黒の毛で、本家の猫は灰色の斑だ。色からしてすでに怪しいという。
父も祖父も吾輩といっていたが、現代に生きる私としては時代錯誤極まりないので、わたくしということにした。
それも時代錯誤じゃないか、気取ってないかといわれたら、私は余所見をして尻尾をくるくる回すことにしている。
気まぐれなのは猫の特権なのである。存分にあるものは使うし、何より猫の性分なのだから仕方ないのであった。

さて、私の出自から話してみると……割と普通の飼い猫としての人生である。
飼い猫が宿命付けられたように、そういうところで生まれて。
ある程度育ったら、ゲージに入れられ、外の景色をショップから眺める日々。
そうして、ある平凡そうな家庭に見初められ、買われた。
ショップの店長であり、元ご主人が私を只管、美辞麗句を並べて褒めていた。
そんな事、心の中ではきっと四割ぐらいしか考えていてないだろう。
だが、まぁ実際売り猫なんて、そんなものである。
元ご主人である店長にも生活がかかっているのだからと、売られる猫らしく達観してみた。
……ほんの少しだけ寂しかったのはうそではないが。
新たなご主人に色々と注意事項を説明していたのを聞いていて、ああ買われたのかと思って。
にゃぁおと元ご主人に向かって鳴いてみたら、ほんの少し切なそうな表情を浮かべてくれた。
まぁ、それでいいのだと私は納得して笑ってみた。
そしたら、元ご主人は受け取ったお金を満面の笑みで喜んで数えていた。
……まぁ、人間なんてそんなものである。
けれど、あの今畜生め。


で、新たなご主人、佐城家にお世話になることになったのであった。
佐城家がどんな家庭かといわれると……まぁ平々凡々などこにでもある家庭である。
東京の郊外に家を持つ……まぁ人間社会の一般的に見ると裕福に入る部類なのだろう。
とはいえ、富貴なだけで他はごく普通の家庭には違いない。
私としては安寧とした生活ができるのならばそれでよいのだ。
飼い猫として、安寧として、食事もしっかり貰える家庭に入ることは幸福である。
そういうある意味人生の岐路に立って、上手い具合に進めたのはまた、なんと幸運なことか。
よきかな、よきかな、である。

買われたのは、聖夜のちょっと前。
そして、ショップから佐城家に移されたのが聖夜前日。
まぁつまり俗に言うクリスマスプレゼントなのだろう。
漏れ聞いた話で、娘へのプレゼントらしい。
ふーんとか私は思いながら、セダンに乗せられて、佐城家へ。
雪がちらついて、寒い日だった。
家に慣れる間もなく、夜まで隠されて。
両親が夜にばっとかごをあけたのが、夜。
出ること期待されているのだから、まぁ出る。

そうして、私は


――佐城雪美にであった。




印象的には人形のような娘さん、だろう。
白い肌、黒い髪、そして兎角、喋らん。
けど爛々に輝いた目から喜ばれてるのが解った。
だから、にゃあと喋った。
彼女はびくっとしながらも、黙ってた。
でも、笑った。
その笑顔が猫から見ても素敵だったので。
私の新しいご主人様かぁと、改めて思ったのだ。



それからは、雪美嬢との長い長い付き合いになる。
まぁ……見た目通りの印象通りだろう。
極度な位、大人しい。
喋らないし、寡黙すぎる。
けれど感情は豊かな子だった。
絶対表にだすような真似を彼女はしないが。
なんでこの子がこうなったかというと……やはり環境なのだろうか。

月並みな意見にはなるが、鍵っ子特有なのだろうか。
そう、彼女は俗に言う鍵っ子である。
や、ある会社の信者ではなく。
両親が共働きで、家に殆ど居ない系の子だ。
聞くところによると、佐城家は本来京都に居たらしい。
それが、雪美嬢が小学二年になる直前に転勤がきまったそうだ。
言うまでもない栄転だ。
父の栄転に伴い、母も仕事を辞める……はずだったが。
母の能力の高さに、母を引き止める為、母を東京へ転勤させた。
凄い話だが、この家が裕福になるのも当然の、証左のようだった。

だが、家が富貴だからといって、娘も幸せなのかと言われると、多分それは娘にとって違う。
当然のように両親は家にいない。
家政婦が料理を作ってくれるし、大体の家事はしてくれる。
私のえさの用意もそう。
だが、そこに肉親の愛情があるかと言われると、まぁないだろう。
この家政婦は、仕事に感情を持ち込まないタイプらしい。
きびきび仕事はこなすが、あくまで仕事上の付き合いでしかなかった。
それは解るが、なんとまぁ寂しいことか。
私なんてブラッシングすらしてもらってない。
だから彼女はいつも一人だ。
けど、そうだからといって彼女の両親に愛情がない訳ではない。
むしろ逆に愛情に溢れているのだろう。
娘が喜ぶようにプレゼントをあげたり、沢山褒めたり、怒る時はしっかり怒って。
休みの日はしっかり一緒に出かける。
理想の両親であろうとしている。

けれど、時間がどうしても、短い。
敏腕であるが故に、働く時間が長い。
その結果、娘といる時間が短い。
その分短い時間で愛情をできる限り注いでいるが、それでも。

この頃の娘にとって、何よりも両親にいる時間こそが大事なのだから。
逆に愛情を知ってるからこそわがままをいえない。
もっと一緒に居てほしい。
そんなささやかな願いすら、雪美嬢はいえない。
あぁ、やんぬるかな。

そう、そんな感じで一人だった娘の拠り所が私になったのも、まぁ仕方ない事だろう。
私としては家猫、飼い猫としての領分を全うするように彼女に寄り添った。
まぁ、同情した面もあったのだが、それはそれ。これはこれである。
そうしたら、自然と雪美嬢は私に話しかけるようになった。

人間が話す言葉……というより日本語だが。
私ら猫はそれを割りと理解するのだ。
特に飼い猫として生まれた定めなら尚更。
散々飼い主が話してる言葉なのだ、生まれたときからずっと聞いていればそれはある意味当然である。
だから、理解したうえで鳴く。
残念ながら、私含めた猫は日本語、人間の言葉など喋れる訳がない。
喋れると言うならそれはただの化け猫だ。
まだ存在しているのか、解らないが。
だから鳴き声で感情を表して。
大体は通じないだけど、時たま、人間にはそれを理解する者がいる。
なんとーなくだが、確実に。
なんでそんな人が居るかは……まぁ大昔はそうだたったらしいから、そういう太古のDNAとかいうものだろう。
文明ができた直前か直後、人間がもっと自然や動物と寄り添ってた時代のDNA的な。
うん、自分で言うのもなんだがうさんくせぇ。
兎角、理由はどうでもいいのだ。
とりあえず彼女はなんとーなく理解できる。
そういうことだ。

だから、私と彼女はなんとなーく話していて。
その過程で、『ペロ』と名付けられた。
よく舐めているかららしい。
それは単なる習性でしかないのだが、まぁ猫の名前なんてそんなもんである。
私自身、親から貰った名前があるのだが、飼い猫は飼い主から貰った名前を大切にするものである。
何故って?
両親はさっさと死ぬが、飼い主は基本的には私たちより後に死んで。
死ぬ間際まで、寄り添ってくれるからだ。
そんな人がつけた名前を大切にするのは、当然である。

ただ、それは野良猫でも一緒らしい。
『おじょう』と呼ばれる私が住んでいる界隈のボスメス猫がいるのだけど。
彼女は、よく私の家の庭に来てたむろいながら話をしているんだが、おじょうという名前は近所の人間の餓鬼共がつけた名前の短縮系らしい。
名付けられた名前は、『大鷲のジョー』

……何故に今時ガッチ○マンなのだ。
しかも間違ってるし、そもそもメスだ。
いや、パッと見区別つかないのだろうけど。
それにしたってなぁ。
でも、それを大切にするのは、死んだ時に呼んでくれるかもしれないらしい。
いつ死ぬか解らない野良猫。
下手したら、一時間後に車に引かれて死ぬかもしれない。
そんな時、せめて、人間が名前を呼んで、葬ってくれるなら。
それを考えると大切にしたいらしい。

……野良猫の考えはよく解らない。だって私は家猫だし。
野良猫はあくまで野良で。飼い猫はあくまで飼い猫だ。
根本的に考えが違う。
だから理解しろというのは、きっと無理だ。
だってそういう風に生まれたのだから。
けれども、まぁ、最期にはきっとそう思うのだろうというぐらいはなんとなく思ったのだ。
しかし、それで「おじょう」という通称になるとは。
歳を考えろ、歳を。
そういったら、尻尾で全力で殴られた。


まぁそんなこんなで。
一人だった雪美嬢に付き添うように私は居て。
彼女の話を聞いて。
彼女の孤独を癒して。
適度に私自身も一人で居ながら。
近所の野良と話したり。
寝たり。

それなりに幸せな一生を送っていたのである。



そんな生活に変化があったのは、ある男が家に尋ねてきたからである。
良く言えば人のよさそうなオッサン。
悪く言えば胡散臭いオッサン。
そんな印象の人がやってきて、雪美嬢をアイドルにしたいという話だった。
そのオッサンはプロダクションの社長で、学校誌に乗っていた雪美嬢の写真を見てピーンと来たらしい。
突然降って沸いたスカウト話に彼女の両親は目を白黒とさせていたが、そこは流石、社長さん。見事な口説き文句だった。
口八丁手八丁、アイドルとしての活動語って、すばらしいものだといい。
けれど、ちゃんと目立つことになるデメリット、業界の厳しさも諭して。
それでも、なお雪美嬢をスカウトしたいという、なんとまあ情熱的な口説きだったことか。
結果として彼女の両親は乗せられたというか、ものの見事に乗り気になり。
雪美嬢にやってみないかと提案をしたのである。

彼女はその時、きっとアイドルというものをよくわかってなかっただろう。
けれどこくんと頷いていた。
ほぼ即答だった理由をきっと両親は知らないだろう。
単純な理由で、両親を喜ばせたい。
きっとそれだけだ。
自分がやれば両親の笑顔を見れる。
そんな孝行しか、考えてないのだろう。

私は彼女の決断というには、余りにも幼稚めいた、だが純粋な選択を複雑な気持ちで見守っていた。
余りにも彼女らしくて、けれど彼女は本当に幸せになれるのだろうか、これで。
そんな不安を抱えながら。

猫は猫らしく、人間の行く末を見守るしかなかったのであった。



そうして、


佐城雪美は一人の女の子から、アイドルへ変わろうとしていたのだ。










     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇











「もう一人担当を増やす……ですか?」
「そう。今、美優さん一人ですけど、もう一人担当して欲しいんですよ」
「……はあ」

気乗りしなさそうに、一人の男が千川ちひろの話を聞いていた。
机に肘をついてる様から気乗りしないですという態度を全面に出している。
その隣で、苦笑いしながら、それでも優しそうに見つめている女性が、その男のプロデュースするアイドルだった。
名前は三船美優といい、運命的な出逢いを男として、そしてその男と付き合い始めていた女性だ。
男の様子を千川ちひろは有る程度は想定していたのだが、見ていて腹が立つものは立つ。
やっとアイドルをプロデュースするようになったのはいい。
かなりの成果も挙げて、三船美優の評判も非常にいい。
公私混同をして、男女の仲になったのも、彼と彼女が出逢った顛末を知れば、許したくなる。
だが、目の前でいちゃつかれるのは、ちひろとはいえたまったものではない。

「うちも、そんな人材に余裕がある訳じゃないんですよ、解ります?」
「それは俺自身が事務やっていた頃を考えると、信じられないけどな」
「……こほん。あぁ、もうそういう御託はいいですし、こっちもはっきり言います。つべこべ言わず、プロデュースしろということです」
「……けれど、今は美優と『二人』でやってきて、上手くいっている。軌道に乗り始めた今だからこそ、此処でバランスを崩すのは許容したくないな」
「それは、そうですね」
「だろう? だから他をあたってほしいかな」

男が言う正論に、ちひろも思わず言葉が詰まった。
この前まで事務しかしてなかった男とはいえ、プロデュース能力は極めて高い事は周知の事実である。
三船美優という年齢的には大分辛いのに、彼女らしさを充分だしてアイドルとして成功させているのは、見事だ。
そして、今が昇り目という時に、プロデューサーとアイドルのバランスを崩したくないというのはちひろにとってもよく解る。
一人を増やすというのは単純に、プロデューサーの労力は増える。
そして、一人一人のアイドルに接する機会も減るということで。
三船美優というアイドルがまだ安定していないと踏んでるからこそ、許容できないという男の考えは最もだった。
だから、ちひろも男の断りを飲みたいのだが、飲めない理由がある。

「そうもいかないんですよねぇ」
「何でさ?」
「社長が拾ってきた子で、社長が貴方を指名してるんですよ」
「はぁ……俺?」
「そう。なぜか知らないけど……けど」
「……あの社長がそう指名するなら意味があるんだろうな」
「なんですよね。とりあえず、その子の書類ぐらいみてください」

今回、男にプロデュースして貰いたいアイドル候補は、プロダクションの社長が直々に拾ってきた子である。
その子を、男にプロデュースしてほしいという個人指名だったのだ。
男は眉をひそめながら、ちひろの顔を見てみることにした。
仕方ないですよねと言いたいような困った笑みである。
えてして社長の指名には何かしらの意味があるというのが、このプロダクションでの通例だ。
そして、社長の決断には大体間違えがないというのも、男は知っている。
だから男はため息をつきながら、ちひろから書類を受け取った。
つまり、元々断る術などないのだから。

「……なんだ、子供か」
「そうですね、ジュニアアイドルになるでしょうか」
「佐城雪美……日本人形みたいな容姿だな、うん、可愛いと思うよ」
「……むぅ」
「美優も可愛いよ」
「……はい」
「頼むから外でやってもらえます?……で、どうですか?」

男は書類に目を落とすと、女の子の写真と簡単な紹介が載せられていた。
ざっと写真を見て客観的にも、可愛いと思う容姿でこれならスカウトされてもおかしくはないだろう。
まさしく人形のような可愛らしい女の子だった。
男は美優をあやしながら、げんなりしているちひろに答える。

「悪くない……けど、なんだろうな」
「なんでしょう」
「この笑顔といい……なんか、こう寂しそうだ」

この写真から感じる違和感を、男は言葉にしないけど理解している。
それは男も、美優も抱えていたものだ。
男や美優ほど深いものではないけれど、子供にとっては大きいモノ。
きっとこの子は…………


「まったく、あの社長は全部解って寄越してくるんだから、タチが悪いな」
「というと?」
「断れないってこと。こんな子をあえて俺にプロデュースさせたいって言うんだから……本当に、もうあの人は」
「そういう人ですよ。本当に」
「全く……こんな『独り』の子。放っておけないだろ」

自分たちと一緒のものを抱えているのだろうと男は思う。
独りで寂しくて、でもそれをいえなくて。
なら、どうすればいいか。
その解決の仕方を、男は知っている。
とても簡単なことだ。

孤独が辛いなら分け合えばいい。
孤独を分け合って、そして独りじゃなくなる。
そんな簡単なことだ。

男はそれを隣の女性から教えてもらったから。

「なぁ、美優……いいかな?」
「ふふっ……いいですよ、独りより二人……そして『三人』なら、もっといいと思いますよ」

男が最も愛している人も、微笑んで了承してくれる。
美優も同じ思いなのだから。
写真を見て、彼女も男と同じことを考えて、三人で居ようと。
それはきっと、幸せなことなのだから。



「あぁ、ありがとう……よし、ちひろさん、この子にあわせてもらえないかな?……俺がプロデュースするよ」



孤独が寂しいなら。

二人でいよう。


二人でも足りないなら。



三人で、幸せになっていけばいいのだから。









そうして――――



「こんにちは、佐城雪美ちゃん。 俺が君をアイドルにする、プロデューサーだよ」
「アイドル………私……あなたが……私を…………うん……約束、して…………手、つないで……、……これで…大丈夫……迷わない……から」




独りの子は、二人に出会ったのだ。











     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







雪美嬢が、アイドルになってから私の生活が変わったかというと、素直に変わったというしかあるまい。
当初、私はのほほんと気楽に構えていた節がある。
何故なら、変わるのは雪美嬢がアイドルになるだけで、佐城家そのものには大きな変化はない。
そして、私は佐城家の飼い猫として、家猫として、一生この家にいる宿命だと考えていた。
だが、冷静によくよく考えてみたら、彼女は私にべったりというか、私を放さない。
ともすれば、私が一緒に雪美嬢と行動を共にするのも考えられた事ではある。
ぽっかりと忘れていた、気づいてなかったが。
そうして、雪美嬢に抱えられていくか、かごのなかに入れられて、どんぶらこどんぶらこと連れられていく。
家猫として、自分の世界は、あくまで佐城の家の中だけだと思っていた私は。
アイドルプロダクションの事務所という、新たな世界が増えてしまったのである。
率直に言うと驚いたし、生活が変わるのにも戸惑った。
戸惑ったが、素直に受けとめるしかなかった。
何故ならば、私は佐城家の飼い猫で。
そして、佐城雪美が、愛する猫なのだから。
飼い主に従うのは、当然といえば、当然なのである。

そうして、私は事務所でも過ごすようになったのだが、私を構う事務員やアイドルも当然いた。
筆頭ともいえるのが常に眼鏡をかけているアイドルだ。
猫がプリントされている服を着るくらい、猫が好きなのは触れ合ってみてよく解る。
甘やかしてくれるし、餌もくれる。素晴らしい人だ。現金なものだが、そんなものである。
ただ、事あるごとに眼鏡をかけさせようとするのが、玉に瑕だが。

続いて構ってくれる……というか、何故か張り合ってる、にゃあにゃあうっさいアイドル。
猫に猫を張り合って勝てると思うのか、あの猫女め。
そして、当然のごとく負けて、自分を曲げないなどといいながら退散する姿は、妙に切ない。
ただ、いつも猫アイドルの癖して食えない魚をくれるのは、とても嬉しい。
現金だが、そんなものである。これを言うのは、二度目だがそんなもんである。

後は……構ってとは正確には違うのだが。
いつもこっそり私を見ているクールビューティ風のアイドル。
どうやらアレルギーがあるらしく、猫は好きだが触れられないらしい。
流石に、可哀想に。けどどうしようもない。やんぬるかな。
一回無理に触って大変な事になったこともある。
なんとも切ない話だ。
そんな彼女はよく、高い猫缶を用意してくれている。
実にいい人だ。現金なものだが、そんなものである。
三度目というのも、言い飽きた。


アイドルに構われない時間、そして雪美嬢がそばにいない時間。
私が事務所で、何処にいるかと言うと、ペットが集まる部屋にいることになった。
委託所というか、そんな感じのところである。
……が、そこに集まる動物が珍妙奇天烈極まりない。
人間共は動物同士なら会話できると思うらしいが、そんな訳があるか。
自分自身が他の動物と話せないのに、なぜそんなことも解らないのか。
全く、不可解だ。
そして、そこの部屋に集まるペットたち。


まず、犬。
アッキーという小型犬。
いつも困ったような表情で此方を見ている。
だが、その意味が解らん。
とりあえず、こっち見んな。

次に、イグアナ。
ヒョウくんというイグアナ。
……イグアナと何を話せというのだろうか。
外国の生き物で、異文化なのに。
言葉も通じるわけがない。
しかも無表情なのが不気味すぎる。
お前も、こっち見るな。

そして、トナカイ。
ブリッツェンというトナカイ。
今更だが、この事務所はいったいなんなのだ。
なぜトナカイがいるのだろうか。
イグアナはまだ百歩譲って、ペットでいるだろう。
しかしトナカイはペットではあるまい。断じてだ。
此処は動物園なのだろうか。頭が少し痛くなってきた。
兎にも角にも、鼻水すすれ。


そんな吃驚仰天の動物達に囲まれながらも、唯一の救いが同属がいることだろう。
そう、私と同じ猫だ。
捨て猫だった時に、ヤンキーアイドルに拾われて、事務所に居つくことになった猫。
ヤンキーアイドルのプロデューサーの家と事務所を寝床にした、オス猫だ。
名前は、アンジェリーナ。オスなのに。
またこのパターンである。
ええい、人間共、さっさと顔だけでオスメス判断できるようにならんか。
人間同士は出来ているのだろうに。
というか、ついてるのぐらい確認してから名前をつけたまえ。
アンジェリーナとかついてるが、拾われる前の名前は、古風すぎる名前で。
その名前は源十郎という。
しかし、今はアンジェリーナかアンジェとしか呼ばれない。

「拙者としてはとても複雑なのだがな……」
「まぁ、そうですねぇ」

と彼は切なそうに言っている。
申し訳ないが、結構大爆笑モノである。
流石に不憫を通り越して笑いすらでてきそうなぐらいに。
目の前ですることは絶対ないが。
また尻尾でビンタされたくはない。
そして、女の名前で言うのもなんなので、源さんと彼のことを私はそう呼ぶことにしている。
自分のためにも。アンジェさんとか私が言ったら笑いを耐え切る自信がない。

とはいえ、ゲンさんと話すのはとても楽しくてためになる。
言うまでもなく猫として壮烈で数奇な人生送ってる方ではあるのだから。
何を話すかというとその日時々で違う。
その日のご馳走とか日常的なことや、なんか猫的な哲学なものである。
まあつまり雑多の事を適当に話すのだ。
みもふたもない事を言うなら雑談ともいえる。
そんな雑談を今日も今日とて、ゲンさんとしている。
今日の話題は…………家族の愛についてだ。


「なあ、ペロよ。お前は母親の記憶は持っているか?」
「一応は……けれど、案外よく覚えてないもので。すぐに離れる事になりましたし」
「飼い猫だから仕方ないな」
「正しく……とはいえ、温かいことは覚えています」
「そういうものだ……母親とか家族というものは」
「そうですか……いまいちピンと来ないですね」
「何を言う。飼い猫は飼い主も家族であろう」

それもそうだ。
飼い猫にとって飼い主がすべてで。
そして、それは言ってしまえば共に暮らす家族なのだろう。
種族は違えど、人も猫もそれは変わらぬものかもしれない。

「されど、恋人や夫婦以上に……愛情を感じるのは、家族というのは、難しいものだな」
「そうですか? 恋愛関係も一緒ではないでしょうか?」
「別に交われば大体感じるだろう」
「………………まぁ、そうですね」

凄い納得はするが、私自身凄い微妙な表情をしている確信が妙にあった。
その通りなのだが、もっと言い方というものを。
一言でいえば、風情がない。

「ある意味、拙者はお前が羨ましい」
「何故です?」
「飼い主が、お前の言葉を理解できる。そして、互いに必要としている」
「前者は兎も角、後者は普通じゃないですかね」
「普通であれば、拙者は捨てられなかった」
「……すいません」
「よい、気にしなくてもいいことだ……だが、普通であると感じる事は幸せな事だ」
「そうですね」

彼は、捨て猫だ。
本来必要とされた飼い猫である筈なのに。
捨てられて、どうにもならない所で、救われた。
そういう境遇であるというのは、一体どういうものなのだろうか。

「当たり前のように、愛情があると感じていた。飼われているのだから、当然だ」
「けど」
「ああ、捨てられた。愛情があったが無くなったか、もしくは最初から愛情なんてなかった」
「最初から愛情が無い事は無いんじゃないか……」
「拙者の親は飼猫であるのに、去勢されてなかった」

その言葉で察してしまう。
飼主の義務であるのに。
私らのどうにもならない所で生まれて、それは堪らないことだ。

「なぁ、餌も与えられて、寝床も与えられて、遊び道具もあって、時たま可愛がってもらって。それでも捨てられた」
「…………」
「どうすれば、愛を感じる事ができるのだろうかと。お前のように飼主が傍に居て、言葉を理解すれば、出来たことか?」
「それは、違うと思います」
「ああ、拙者をそう思う。それは理解できれば、助けになるだろうが、根源的には理解できないだろう」
「ですね……けれど、そうであるならば、どうすれば愛を感じるのだろうか」
「さぁて。それが、解れば、こんなにも拙者達は沢山の言葉を交わして、触れ合う事はしないだろう。実際、今の拙者は、十分に幸せだ」

何もかも与えられて。
何もかも傍にあって。
それでも、捨てられた源さん。
けれど、今同じような状況にあるというのに、愛を感じるという。
言葉を交わすことなど出来ないのは変わらないというのに。
違いは、なんだ。

「じゃあ、源さんは愛を感じるというものを、どう考えているのでしょう?」
「ふむ、それは、温もりというもの、なのだろう」
「温もり……」
「其処に緩い温かさを感じていれば、きっと愛を感じる事ができるのかもな」
「何故です?」
「母の手の中は、温かいものだから……といったら気障だろうか」
「……いえ、なんかそれは素敵です」
「そうか」

ヒトも猫も母に抱かれて生まれ、母の手を思い逝く。
母の事を想い、生まれ、そして、逝く。
きっと其処にあるのは、温かいもので。
それを感じるというのは、きっと愛を感じると一緒なのもかもしれない。

「だから、その為にヒトも猫も、言葉を重ね、触れ合う」
「温かいものを感じるために?」
「ああ、そうやって、愛を確かめるのだろう。想いや気持ちは、そうでなければ、伝わらない」
「そういうものですか?」
「結局のところ、物でも、居場所でも、何かをした経験でもないんだ」
「ふむ」
「それを通して、言葉を交わして、想いを、そして記憶を重ねるのが、大切なのだろう」
「成程」
「そして、それは一方的に与えるものでなくて、共に分かち合って、得ていくものだろう」


であるならば、雪美嬢はどうなのだろうか。
あの子はとても不器用だ。
言葉も重ねる事も思いを伝える事も全部だ。
だから、彼女はいつも与えられるだけ。
両親から、そうやって貰う記憶しかない。
そこに、言葉を重ねる事も触れ合う事も、きっと。

ふと、思うのだ。
愛情を雪美嬢は知っているだけで感じてはないのだろうかと。
確かに愛情なのだろう、両親が雪美嬢にやってるものは。
けれど、雪美嬢は本当に、温かさを感じているのだろうか。
言葉を交わす時間も、接する時間も少ない彼女が。
温もりを感じているのだろうか。
与えられるだけで、それは本物に感じているのだろうか。
温かさを、感じているのだろうか。


名前の通り、雪のような冷たさしか知らないというなら。




それは、とても寂しい事なのではないのだろうか。









     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








雪美嬢がアイドルになって暫くの時が進んだ。
最初は上手くいくのかと思ったが存外上手く言っている。
あの無口な子で大丈夫なのだろうかと思ったが、そこがいいらしい。
人間の趣味趣向は千差万別ということなのだろうか。
とはいえ、私としてもご主人が活躍するのは嬉しいことだ。

それに、アイドルをやる事は彼女にとってもいいことになった。
笑顔が、大分増えた。
感情表現が下手だった子なのに、それが出来るようになってきた。
アイドルのレッスンのお陰でもあるのだが、それよりも環境だろう。

それは、彼女のプロデューサーと同じアイドルの影響に違いない。
傍から見ても凄く懐いている。
まるで、両親のように。
愛を感じている。

三船美優というアイドル。
雪美嬢のプロデューサーの担当アイドルであり、まあ十中八九恋人。
不思議な母性を感じる大人の女性という感じで。
ちょっと天然も入っているヒトだ。
とりあえず「にゃあ?」と挨拶してくるのは簡便して欲しい。
日本語で通じるのだ、日本語で。


そして、プロデューサー。
冴えない顔だなと私は正直、思っていた。
けれど、存外仕事は出来る。
雪美嬢とのコミニケーションは割りと完璧だ。
彼女の事を理解して、本当に必要なものを全部与えてくる。
それは優しさであり、父性というものを見せたり。
怒る時もあった。けれど、それは彼女の事を思って、だ。
そして、雪美嬢の魅力を全部出してくれる。
きっと、雪美嬢はプロデューサーを大きく見えていただろう。
まるで、父親のように。



そう、彼らは本当に、彼女の「両親」のようだった。
私はそれを見ていて、雪美嬢が幸せであるならそれでいいと思った。
ご主人様が幸せならそれでいいと。
なぜならば、其処には温かさがあったと思ったから。
雪美嬢が私に語る二人の話はとても温かいのだ。
大切な、大切な思い出を語るように。
そんな彼女を見るのは私にとって嬉しい。


だから、それでいい。


そう思っていた矢先。



事件は起きた。



でも、それは、起こるべくして起きた事件だった。
そして、乗り越えないといけない事件だった。
何故ならば、



美優も、プロデューサーも、彼女にとって、



所詮、本当の血の繋がった家族ではなかったのだから。









     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




その日は、私も珍しく番組の収録に来ていた。
いや、自宅から局に直に行ったからだけなのだが。
しかし、よりによってクリスマスにやらなくても思うが、芸能人の宿命だろうか。
実際スタジオの隅っこで待機だった。
とてもとてもに暇だったが、番組の見学していた美優の膝で丸まって寝ていた。
彼女の太腿はとても寝やすくて、素敵だ。
魔力が詰まってるといっても過言ではない。
三船美優、魔性の女だ。
隣に居たプロデューサーが微妙な顔をしていた。
ざまあみろと煽ってみたい。
煽っても根本的には負けているのだから意味がない。
人間と猫でそもそも種族が違うのだし、さらに意味が無い。
だから、寝ている。気持ちのいいものには勝てない。

番組の内容はよくある子供を集めた番組といえばいいか。
子供向け、家族向けののバラエティー特番だった。
VTRが流れて、スタジオが反応するまあ、よくあるもの。
収録もつつがなく進み、なんか人間用の感動的なVTRが流れて。
そして、出演者に振って収録も終わりだ。
VTRも終わって。
司会者が雪美嬢に話を振った。

「雪美ちゃんの家族との一番の思い出はなにかなー?」

他愛も無い質問だろう。
普通だったら、何か子供の思い出を言えばいい。
それを司会者が広げて、終わりの小さな質問だ。

でも、雪美嬢はこう言った。



「美優と……ケーキ……一杯作った……楽しかった」



きっと、彼女にとってとても楽しい思い出なのだろう。
彼女が幸せに感じた瞬間なのだろう。
温かいものだったのだろう。
彼女が家族と感じていたのだろう、美優を。
けれど、それは


「それは、家族じゃなくて、同じアイドル仲間かな?……えーと、じゃあ次に――――」


他人には、そうには見えない。
血縁もないのだから。
司会者は困ったように笑って、次の子に聞いた。
どうせカットされるだろう。
ミステリアスな子で雪美嬢は通っている。
天然ボケと思われたかもしれない。
今のVTRには、あわないだろうから、まあ番組的にカットすればそれでいいのだ。
いいのだが……雪美嬢にとってはよくない。



なぜならば、それはかけがえのないものを否定されたに、等しいのだから。








     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


収録を終えて、雪美嬢が見当たらなくなっていた。
さっと逃げるように姿を消していた。
私も美優もプロデューサーもあの質問のせいだとわかっていた。
小さな子が衝撃に受けるには充分だと解っていたから。

「クソッ……先延ばしにしていたツケが回ってきたか」

プロデューサーが頭を抱えながら、呟いた。
先延ばしにしていた問題。
言うならば、家族ごっこだったのだろう。
雪美嬢にとって父親母親の真似をすること。
それは雪美嬢の孤独を癒すには充分だったのだろう。
けれど、根本的な解決になっていないのは確かだ。

家族ごっこは、所詮家族ごっこでしかないのだから。

「プロデューサー」
「美優?」
「じゃあ、ツケを返す時……だと思いますよ」
「って、どうするんだ?」
「もう、決まってるじゃないですか」

三船美優は、真剣に、それでも、微笑んで言った。
きっと、彼女も考えていたのだろう。
この問題を。
私もどうなるか気になっていた。
ご主人様の事だから。
でも、きっと


「家族ごっこで終わらせるか……終わらせないかです」
「……ああ」
「答えは……もうでてるんですよね?」
「…………勿論!」



猫がどう思うが、答えなんてもう決まっていたのだろう。
きっと、それはもう出会った時から。



「独りが嫌だから、二人になった。そして二人が嫌だから、三人になった……今更戻れないよな!」
「ええ!」

一度、握った手のひらの温もりはずっと残っている。
それは、二度と忘れる事が出来ないから。
また、手を重ねるのだろう。


「おい、ペロ、ご主人様をその鼻で探すんだ! 会いにいくぞ!」


私は犬じゃない。
臭いで解るか、この色男め。
美女に続いて、美幼女まで落としおって。
でも、人間の男にしてはかっこいいんだなぁ。
こういうのがもてるんだから、世の中しっかりしている。
そして、私は雪美嬢が去っていた先を見ている。


家族ごっこでいいかどうか。
猫も猫なりに考えてみた。
でも、飼い猫だから、答えなんて出ていたものだ。


仕方ない、案内してやるか。



答えは簡単だった。



私だって雪美嬢が好きだ。
私だって彼女の温もりが好きだ。



なら、好きな人の幸せを願うのは、当然なのだから。




それが、家族という、ものだろう?












     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








「雪美」
「――……美優……?」
「こんなところに居たんですね、非常口のすみなんて居ちゃ駄目ですよ」

雪美嬢は非常口の階段に座っていた。
寂しい猫のようだと私は思う。
いや、猫が猫のようだというのも変だが。
第一、猫と寂しいを結び付けているのはなんだ。
人間が考える言葉は時たま不思議である。

「………………家族じゃない…………って」


雪美嬢は子供だ。
だから、問いかけもストレートだ。
この問いに、絶対に、逃げてはいけない事ぐらい皆わかっている。


「あぁ、俺達は、本当の家族じゃない」
「…………!」
「血は繋がっていない。俺達はそういうものだ」
「………………」

彼女はぼろぼろと泣く。
でも、と彼は言葉は続ける。

「雪美はね、本当の家族も大切にしなきゃいけない」
「…………なんで?」
「雪美ちゃんが、家族じゃないといったら、お父さんもお母さんも哀しくなってしまいよ、寂しくて泣いちゃう」
「…………それは…………いや……」
「でしょう?……今は解らないかもしれないけど、きっとそれも大切だからね」
「……じゃあ……美優も……――も……かぞくじゃ……ないの?」

血の繋がる家族も大切にしなきゃいけない。
そりゃあ、そうである。
私はもう会えないが、大切にした方がいい
だって、父と母、二人に愛されて、生まれたに決まってるのだから。
自分の子を愛さない親なんて、寂しすぎる。
でもだからといって、


「本当の家族じゃない……だからといって、俺達が雪美を大切に思ってない訳がないということだ」
「……?……よく……解らない……」
「じゃあ、こういうことだ」


そういって、男はそっと雪美嬢を美優ごと、抱きしめる。
きっと、温かいものだろう。


「………………温かい…………」
「だろ……? 家族ごっこかもしれない。でも、俺はそれでいい。終わらせたくない。だって、俺はお前の事も大切だから」
「寒いのは寂しいから、雪美ちゃんは一緒にいたくない?」
「……ううん」
「じゃあ、それでいいんだよ、温かいなら、三人で居よう」
「……居て……いいの?」



雪美嬢の問いかけ。
縋る様な目だった。



「あぁ、雪美の心が温まるまで……温まっても、ずっといよう」
「……約束……して」
「あぁ、約束する。この手を離さない」
「私も約束です」
「……うん……うん!」





傍から見ると滑稽に見えるかもしれない。
所詮家族ごっこのままかもしれない。
でも、三人がそれでもいいなら。
それはきっと、何よりも尊いと思う。


この世界で、温かいものを、ずっと信じていられるなら。


愛を感じていられるなら。



きっと、幸せなのだから。



「……ペロも一緒!」


そうやって、私も温もりも入れられる。
不思議な不思議な家族の輪に。
抱きしめられた。温かい。
けど、抱きしめすぎて、逆に暑い。
まぁ、たまにはそれもいいか。






きっと、雪美嬢が成長して。

本当の家族の愛にも気付いて。
それも、大切だと思って。
温もりも知っても。



きっと、この幸せごと、本当の家族の幸せも大切にするだろう。


幸せは何個あってもいいのだから。




私は猫だから、きっと、彼女が大人になるまで生きてられないけど。


いつまでも、幸せで居てほしい。


それが、飼い猫が願う、ご主人への共通の想いなのだから。



サグラダ・ファミリアという言葉をふと思い出す。
建物が有名だが、日本語訳がある。


聖なる家族という、意味だ。



彼女たちは血は繋がっていないけれど、今、ここにいる家族は。



何よりも清らかで、幸せに見える。





サグラダ・ファミリア――――聖なる温かい家族に、永遠の祝福を。



そんな、願いを、猫なりに。



聖なる夜の日に思ったのだ。


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最終更新:2016年04月20日 00:33