彼女たちが生きてこそと知るクラッシュフォーティー ◆John.ZZqWo



お前たちはもう傷だらけだ。頭の天辺から足の爪先まで痛みと苦しみと悲しみに塗れきっている。
けれど、誰もそれに気づいちゃいない。
気づいてしまえばその痛みに、苦しみに、悲しみに襲われる。そのことを恐怖しているのさ。
本当に、誰も気づいちゃいないのさ。

でも、そろそろ気づかなくちゃいけないんじゃないか?
お前たちが目を逸らしている痛みと苦しみと悲しみは放って置けばいつかはそのまま消えてしまうだろうさ。
けど、それは長い長い灰色の処刑台の階段を上り続けているのと同じなんだぜ?
それもわかっているんだろう?

だったら助けろよ。自分で自分を。痛みと苦しみと悲しみの中に自分を放り込め。それが生きてるってことだ。
賭けてみろよ。でなきゃ、お前ら全員死ぬぜ? 処刑台へとお前を導く連れ添い人はお前自身さ。


あぁ、お前ら死ぬよ。お前たちが思ってるほど猶予は残されていないんだ。


生きてこそ、なんだぜ?






 @


薄暗い廊下に足音がふたつ。小さい足音と大きな足音。
大きな足音の主である向井拓海は、小さな足音を立てながら自分の前を歩く小関麗奈の背を見つめながら思考を巡らせる。

「(……なんでだろうな)」

こんな小さくちっぽけな子供の背を今は追い抜けそうな気がしない。先頭はいつだって自分の場所だったというのに。
いつもは事務所でケチなイタズラをしては誰かにお灸を据えられているこいつが、レッスンもさぼりがちで体力もないこいつに、どうしてなのか。
特攻隊長・向井拓海。腕っ節も潜った修羅場の数も違うはずだ。根性比べじゃ事務所のどのアイドルにだって負ける気はしない。……なのに。

思い返し、これまでの何かが間違っていた……のではないと、思う。
けっして最善ではなかったかもしれない。けれど、向井拓海はそれでも自分なりにできることはしてきたつもりだ。多少、日和ったところもないではないが。
そしてなすべきことも解っている。今の仲間を守り、未だ間に合うはずのヤツらを助け出す。その為にこの島中を駆けずり回る。
悔しいことだが、首に嵌っている輪っかの外し方やプロデューサーの監禁場所なんかは見当もつかない。
しかし、それは向井拓海の仕事ではない。それは考えてくれるヤツがいるのだ。仲間にはそれぞれ得意なこととできることがある。

「(……で、アタシは特攻隊長向井拓海サマなんだろ?)」

そうだ。それでいい。なにも変わらない。先頭に立ち、旗を振る。旗を振っているだけ? かまわない。それが特攻隊長の仕事だ。
先の見えない未来にその身を曝し身体を張る。それは特攻隊長にしかできない。それができるヤツのことを特攻隊長と呼ぶ。

「(……ようは、『覚悟』の問題なんだろうな)」

目の前の小さなヤツはこのおっかない世界の中で覚悟を決めている。
どこでその覚悟を決めた? 元々、そんな根性の据わったヤツだったか? いいや、そうじゃない。なにかがあったんだ。
向井拓海は小関麗奈との日常を思い浮かべる。誰に対してでも臆せずイタズラを仕掛けるという意味では小関麗奈は大したヤツだった。
そして、すぐに思い至る。小関麗奈と古賀小春。このふたりはふたりだけではなく、いつもはもうひとりを加えて三人だったことに。

「(小春は“アイツ”が残していった大事な“オンナ”……ってのは違うか。でも、遠くはねぇよな)」

納得し、同時に向井拓海は自身を省みる。
佐々木千枝が自分の胸の中で死んでいた時のこと。松永涼の足を切らなくてはいけなかった時のこと。それらが自分に『覚悟』を齎しただろうか?
もしこれから先、小早川紗枝やプロデューサーが死ぬことがあれば、その時こそ心の底から『覚悟』を決めることができるだろうか?

「……それは違ぇよな」

くっくっく……と肩を揺らす向井拓海に小関麗奈が振り返る。当然、その顔には怪訝な表情を浮かべていた。

「なんか言った……? それに、なに笑ってんのよ?」

若干、引いているようにも見える小関麗奈に向井拓海はよりおかしくなり、喉を鳴らす。
そして力強く彼女の両肩を掴むと、この島では今までに見せたことのない爽やかな笑顔を浮かべてみせた。

「わかんねぇ。けどよ、わからないなりに考えることはできたからよ。その分だけは今の内に礼を言っておくぜ。あんがとな、麗奈」
「は、はぁ? ……んまぁ、いいわ。アンタがヘコんだままじゃアタシらの命にも関わるからね。せいぜい頑張ってもらうわよ」

ああ――と、力強く答えると向井拓海は小関麗奈の隣に立ち、そして彼女の先へと大股に歩き出して行く。
なにか正解に辿り着いたわけでもない。目の前の靄も晴れてはいない。怖いものは怖いままで、ましてや『覚悟』なんかできてはいない。
それでも、ひとつだけわかったことがあった。

「まっすぐ、だ……」

右や左に避けて通るのは性分じゃない。向井拓海は“アイツ”の言葉を思い出す。

『――アイツみたいにしよう、コイツの真似をしよう、なんてのは必要ないんだよ。
 俺が連れてきたのはお前なんだからさ。半端な恥かくよりかは派手にこけてもいいからまっすぐいけよ。これが向井拓海だ!ってな』

特攻隊長なのだから。
向井拓海はありのままの自分で暗く長い廊下を進む。その先には眩しいほどの明るい光があった。


 @


「随分、怪我人らしくなったじゃねぇか」
「うっせ……」

車椅子の上で管に繋がれ、真新しい包帯で巻かれた松永涼を見て、処置室へと戻ってきた向井拓海は軽口を叩く。
返す松長涼の言葉に覇気はない。車椅子の中でぐったりと身体を崩し、表情も非常に気だるげだ。

「痛み止めがよう効いてるんやと思います」

不安げな表情を浮かべた向井拓海にそう告げたのは小早川紗枝だった。
見上げ、にこりと微笑まれると心の中で絡まっていたものが解け、少し楽になった――そんな気がする。

「眠たくなるような薬なのか?」
「ううん、そやのうて。苛んでた痛みが引いてようやく身体から力が抜けたんやと思います。
 それにこれまでは傷の痛みでえらい体力も消耗しとったやろうし」

そっか。と、納得すると向井拓海はぽんと松永涼の肩を叩き、「ゆっくりくたばっておきな」と声をかけた。そして改めて部屋にいる全員を見渡す。
車椅子にぴったりと寄り添う白坂小梅。一番大きくて一番目立つ諸星きらり。逆に空気のような静かさを持つ藤原肇
人形の置物のような古賀小春に、部屋に戻ってくればすぐ彼女の隣へと移る小関麗奈。そしていつも自分の隣にいる小早川紗枝。

「で! これからどーすんのよリーダー!」

声を上げ、向井拓海を“リーダー”と呼んだのは小関麗奈だった。不敵な眼差しと微笑みに向井拓海も応じるように表情を作る。

「おう、そうだな。とりあえずはここを出るぞ。さっき決めた通りに島の東側を回って、できれば夜明けまでには天文台に行くつもりだ」

その方針は事前に打ち合わせていた通りだった。しかし、些か性急ではないかと隣の小早川紗枝が声を上げる。

「その前に、拓海はんも一度休んどいたほうがええんと違う? それに夜道は暗うて危険やで?」

もう何度か目の彼女の言葉に、向井拓海は今度は優しく首を横に振る。

「いや、きらり達が来た以上、ここで足を止めてる理由はもうねぇ。休むのならどこでもできるし、なにより今は足を止めたくねぇんだ」

真っ先に賛成したのは藤原肇だった。そこに小関麗奈も続く。

「私も動ける時に動くべきかと思います。何も私達を待ってはくれないんですから……」
「アタシも賛成よ。ぼさっとしてる暇はないと思うわ。またいつどこで誰がバカするかわかったもんじゃないしね」

そういうことだ。と、向井拓海が彼女らの意見を受けて言えば、小早川紗枝も、そして部屋の中にいる全員も納得したようだ。
小関麗奈などはベッドから飛び降り、今にも飛び出して行きそうな構えを見せる。
他の皆にしても似たような感じではあったが、しかし向井拓海は彼女らの動きを一旦制止する。解決すべき問題がひとつ残っていた。

「おっと、待ってくれ。出発する前に少し探し物があるんだ」

全員の視線が向井拓海に集中する。みんな一様に怪訝な表情を浮かべていた。
さてなんだろうと皆がそれぞれに考え始めた時、向井拓海はポケットからひとつの鍵を取り出す。それを見て何人かは答えに気づいた。

「こいつはあのダイナーにあったボロっちぃ軽トラの鍵さ。まぁ、言うことは聞くんであれはあれで悪くないんだが……」
「あの“かわうぃー”トラックさんだときらり達全員が乗るのはちょっぴし難しいねぇ」

そういうこったな。と向井拓海は肩を竦める。
諸星きらりが言うようにあの軽トラが可愛いかというとそこは微妙なところだが、ここにいる8人が全員乗るには小さいというのは事実だ。
小関麗奈や古賀小春のように小柄な者もいるが、逆に大柄な者もいる。なにより松永涼の為に車椅子も積んでいかなくてはいけない。
無理をすれば荷台の上に全員が乗り合わせることもできるだろうが、この島ではなにが起きるかわからない。
どこかで誰かに襲われ、逃げようとスピードを上げた途端に荷台から仲間が転げ落ちる――なんてこともありえるのだ。

「で、ちょっとここで新しい足を見つけようと思うのさ。とりあえず全員乗っけれて、できれば頑丈な車をよ」
「それだと救急車がよいと思います。作りについては申し分ないですし、担架を立てれば怪我人や休みたい人を寝かせることもできるでしょうし」

藤原肇の言葉に向井拓海は頷く。彼女も同じ理由で次に移動手段とする車は救急車にしようと考えていた。
なにより簡単に、鍵も含めてこの病院の中ですぐに見つかるだろうと当たりをつけていたというのもある。だが、意外なところから別の意見があがった。

「そ、それよりも……、“X線検診車”がいいと、思う」

おずおずと手を上げて言ったのは白坂小梅だった。
X線検診車とはなんだろう? 誰もがそう思ったが、しばらくすると小早川紗枝がぽんと掌を拳で叩いた。

「それってレントゲン撮る、あのバスみたいなん?」
「そ、そう……それ」

こくこくと頷く白坂小梅に今度は全員がなるほどと納得する。それなら見たこともあるし、実際に乗って利用したこともある。
例えば学校の健康診断で。そして事務所の健康診断でも利用したことがある。なので、ここにいる全員はそれをよく知っていた。

「確かに、あれならその気になれば30人くらいは乗れそうだな。図体がでかい分、取り回しが難しそうだが……まぁ、なんとかなるか」
「でも、この病院に都合よくあれがあるやろか?」
「なかったらなかった時さ。その時はある中で一番でかい救急車を借りていけばいい。じゃ、小梅行こうぜ」
「えっ!?」
「こういうのは得意だろ?」

びくっと肩を震わせた白坂小梅の手を取ると、向井拓海は遠慮なく彼女を引きずっていく。
白坂小梅のささやかな抵抗も空しく部屋から出るまで後数歩……そこで不意に背後から声がかかった。声の主は小関麗奈だ。

「ちょっと待って。“探し物”ならアタシ達にもあるわ」

振り返る向井拓海に、小関麗奈はバツの悪そうな顔をし、隣に立つ古賀小春に発言を促す。彼女の声はいつもよりもか細く、そして震えていた。

「ヒョウくんがいなくなっちゃったんですぅ~……」

目尻に涙を浮かべる古賀小春の隣で小関麗奈が大きな溜息を吐く。

「ま、そういうわけ。悪いけど、こっちも少し時間をもらうわ」
「んー……しかたねぇな。じゃあ、きらり」
「おっすおっすばっちしぃ~☆ レイナちゃんと小春ちゃんのことはきらりに任せるにぃ☆」
「悪ぃな。じゃあ、藤原と紗枝は……」
「松永はんを見とったらええんやろ? あんじょう任せやす」

言い切らずとも通じる仲間達に表情を緩めると、向井拓海は壁にかかった時計を見て、今度はリーダーの顔と声で皆に指示を出す。

「出発は1時間後だ。それまでにアタシは車の都合をつけて戻ってくる。
 麗奈らもそれまでには戻ってくれ。イグアナが見つからなくてもな。悪いがその場合はそいつを置いてここを離れることになる。いいか?」

少し厳しいかもしれない。古賀小春にとってヒョウくんは常にいっしょのペット以上の存在と言える。
それと離れ離れになるというのは他の誰が想像するよりも彼女に辛い思いをさせることになるだろう。けど、向井拓海はリーダーとしての判断を下した。

「うっ、うぅ~……、ヒョウくん……」
「あー、もう。ここで泣いてどうすんのよ。探し出せば済む話じゃない。どうせすぐ見つかるに決まってるわよ。
 だいたい、放って行ったって、後でまた探しにくればいいじゃない。誰もアイツをわざわざ殺したりはしないだろうしさ」
「うんうん、レイナちゃんの言う通りだにぃ。小春ちゃんとヒョウくんは深~いキズナで結ばれてるから、きっと、絶対にまた会えるにぃ~☆」

涙を流す古賀小春に毒づきながらも慰める小関麗奈に向井拓海は内心感謝する。
所詮、イグアナ。放っておいても大丈夫。なんて、リーダーの立場からは軽々とは口にできない。
それを小関麗奈は言外から察しフォローしてくれたのだろう。先ほどの廊下の件といい、ああ見えて人の心の機微に聡い子だ。

「よし、じゃあアタシ達は行くぞ。みんな何かあったら大声を出せよ。どこでも飛んでいってやるからな」

そうして8人は3組に別れてそれぞれの行動を開始した。
向井拓海と白坂小梅は足となる車両の確保に。小関麗奈と古賀小春と諸星きらりはいなくなってしまったイグアナの捜索に。
そして、小早川紗枝と藤原肇は話をしている間にもう眠ってしまった松永涼の様子を見る為、この部屋に残る。

足跡が散り散りに。そして、夜の病院にそれらしい静寂の時が訪れた。






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真夜中の闇を悪魔の真っ赤な舌が嘗め回し、その足元で誰かが心無いキューピットの矢に射抜かれ悲鳴を上げた。

アイツの頭は真っ二つだ。全身切り刻まれて、最後はハロウィンが終わった後の南瓜みたいに捨てられた。

狭く暗い道の中を御伽噺の赤帽子が大勢で通り過ぎる。通り過ぎた後には死体だけ残る。

けたたましい音は狂った悲鳴かそれともポルターガイストか。あの子好みのホラー展開。

最後の最後に一回だけの拍手。静かな静かな声もでない凍りつく拍手。

誰も彼も、どうなっているかなんて解ってるのは一人もいなかったよ。

ただ、どいつもこいつも一歩遅かったんだ。たった一歩。

時計を見なよ誤魔化しで武装した灰被り達。

もう、寝ていなくちゃいけない時間だぜ?


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しんとした静寂の中、和久井留美は姿見で自身の格好を確かめると、「まぁこんなものかしらね」とひとり零した。
場所は彼女が寝所として確保したオフィスから少し市街の中心へと向かったスポーツウェア店である。
12時の放送を聞き、あそこから離れた彼女は行き道にこの店を見つけると、動きやすい衣装を求める為にドアを潜ったのだった。

「ビジュアルを求められるステージでもないしね……」

姿見に映る彼女の姿は、上にパーカーつきのスウェット、下は足元までを覆うジャージにスニーカーという格好だった。
上下ともにやや暗めの灰色。夜の間も日が昇ってからでもできるだけ目立たないようにという配慮である。
そして、自身の格好に満足すると彼女は最後に頭の上にネコミミを乗せ、少しだけ口を歪めた。

「……さぁ、行きましょう」

何の感傷もないという風に姿見に背を向けると和久井留美は荷物を背負い店の出口へと向かう。
目的は他の参加者との接触だ。

放送の前、和久井留美はしばらくは静観を決め込もうと考えていた。
休息を取りたかったという理由もあるが、予想通りに主催者側より“揺さぶり”があれば、殺し合いを否定する者らの中でも殺しあいが起きると考えたからだ。
そして彼女の考えどおりに12時の放送でそういった“揺さぶり”がきた。放送の中で千川ちひろは人質にしているプロデューサーの命をちらつかせたのだ。

この揺さぶりでアイドル達は動き出すだろうか? 和久井留美は逆だと思った。
千川ちひろの言葉は揺さぶりというには、“足りない”。
あれでは逆に殺し合いを忌諱する子らは、できあがっていると予想される臆病な子羊の群れの中に、波乱は起こらない。
むしろ色いろと理由を作り出して動かなくなる。仮初の結束を固め、これまで以上に大人しくなってしまう――そう和久井留美は想像した。

だとすれば、今こそが好機だとも言える。
害のない子羊を装うアイドル達。彼女達は殺し合いの勧めに反発し、今までになく頑なに自分らが誰かを殺す可能性を否定するだろう。
殺せと言われ、しかしまだギリギリまでに追い詰められてないからこそ“抗おう”とするのだ。
ならば、彼女らが一片たりとも殺意を持たないのだとすれば、殺意に対して無抵抗だというのなら、今こそ狩りの時間だ。

もし、この次の6時の放送で千川ちひろが脅しの言葉通りに新しいみせしめを出せば、その時こそ子羊は子羊でなくなるだろう。
そうなれば、迂闊にそこに顔を出すのは危険だということになる。なら、その時こそ和久井留美は静観へと回ればよい。

「……恐らく、この6時間が一方的に狩りをすることのできる最後のタイミングのはず」

真新しいスニーカーが雨に濡れたアスファルトを踏む。雨はもう上がっていたが、湿った空気は身体に纏わりつくようで些か不快だった。
灰色に包まれた和久井留美の姿は夜の中ではただの影となり、彼女の狙い通りに姿は判然としない。
その影がそろそろと道を歩き始める。できるだけ光を避け、夜の中へ溶け込むよう、溶け込むように――と、ただ一点灰色ではないネコミミがピクリと動く。

「……今の音は?」

それは聞き覚えのある音だった。どこでか? そう、飛行場で聞いた……五十嵐響子が投げたあの爆弾の音。
音は小さく、遠くから聞こえてきたように思える。ひょっとすれば幻聴だったのではと疑えるほどに。
君子危うきに近寄らず――そんな言葉が和久井留美の脳裏を掠めた。

だが、彼女は今、“猫”だった。

そろりそろりと、その灰色の身体を影の中へと滑らせて行く。






 @


カァーン! ……最初に皆の耳に届いたのはそんな甲高い音だった。
あれから再び、指定した時間通りに戻ってきた向井拓海と白坂小梅。結局ヒョウくんを見つけられなかった古賀小春達。
皆が揃い、出発の為に荷物を手に取ったところでその音は彼女達の耳に届いた。
全員がそちらに――処置室により伸びる細く長い廊下に振り向いた時、今度は光が、そして轟音が彼女達の目と耳を貫いた。

「………………っ!?」
「きゃぁっ!」
「ひぅ……っ!」
「なん…………!?」

8人いる内の皆が皆、咄嗟には何が起きたのかわからなかった。
わかったのは数秒の後。恐る恐ると目を開けた時のことで、見てしまえば、いや、感じてしまえばそれはとても明確なことだった。

「燃やす……爆弾っ!?」

目を剥いて歯を噛み締めていた向井拓海の耳に小早川紗枝の言葉が届く。そう、彼女達はこれを見るのは二度目だ。
他の皆もその跡形だけは見てきたが、爆発の瞬間を実際に見たことがあるのは彼女ら二人と松永涼だけで、見ればそれは一目瞭然だった。
そして、そうでなくともあれだけ気をつけようと話したのだから察しがよければなにかと気づける。この時、8人は皆同じ理解をしていた。

「くそっ……こんなところで、マズい……!」

廊下はすでに火の海だった。赤い炎は床を這い壁を舐めて今にも天井に届こうとしている。とてもあの中は突破できそうにない。
向井拓海はクーラーボックスの乗った台車の持ち手を握り締めると部屋の反対側、そちらにもある長く続く廊下を見た。
処置室は元々人の出入りが多く、ある意味ロビーとも言える場所だ。なので出入りする場所は多い。
そちらの廊下は暗く静かで火の気などは一切ない。さっそく小関麗奈が古賀小春の手を引いてそちらへと逃げようとしていた。

「待ってください。迂闊に動くと危ないです!」
「はぁっ!? この状況でなにのんきなこと言ってるのよっ!」
「待て麗奈! 藤原の言う通りだ!」

藤原肇が大きく透明な盾を構えて小関麗奈の前に立つ。
続く向井拓海の声を聞いて彼女は目を丸くした。だが、彼女はイタズラのスペシャリストである。それに気づくとあっと小さく声を漏らした。

「“爆弾のヤツ”は前もアタシらをハメようとしてきたんだ。条件反射で飛び出すのはヤツの思うままになるぞ」

その時の記憶が蘇ったのか、白坂小梅を背に車椅子に座っている松永涼は厳しい顔をしていた。
あの時は、一歩遅ければ足だけでなく全員が命を失っていたかもしれないのだ。

「それでどうすんのよっ!? じっとしてたらそれはそれでまずいでしょうにっ!」
「焦んなって。……おい、誰かアイデアはないか?」
「それやったら、そこの窓から庭に出る……いうんはどないどす?」

小早川紗枝の声に全員が窓を見る。その外は中庭になっており、照明がほとんどないせいかかなり暗い。そこに飛び出すというのは恐怖を感じた。
だが広さは十分にある。屋内だと簡単に火に巻かれてしまうことを考えればそのアイデアはとてもいいもののように感じることもできた。

「相手もアタシらが外に飛び出すとは考えない、か? ……よし。じゃあきらり、手伝ってくれ」
「おっすおっす、おっけーだにぃ!」

大きな窓を片手でがらりと開けると、諸星きらりはその大柄な身体にしては身軽に窓枠を飛び越えてみせる。
そして、最初に小さな子らが外に出るのを手伝うと、自分で立つことのできない松永涼を向井拓海より預かり、次に車椅子を出すのを手伝う。
台車と荷物も外に出し、残った藤原肇と小早川紗枝、そして最後に向井拓海が外に飛び出ると、また窓をぴしゃりと閉じた。
その向こう側ではすでに火の侵食が始まっており、入り口の傍にあったベッドが燃え始めている。カーテンに火が移れば火の海になるのすぐだろう。

「とりあえず、この中庭を突っ切って向かいの病棟に飛び込むぞ。そのまま玄関から出たら外をぐるりと回って裏口の車のとこまで走る。いいか!?」

全員が真剣な顔で了解の意をそれぞれの言葉で発する。
そして8人は藤原肇と小早川紗枝を先頭に、続いて諸星きらり、車椅子を押す白坂小梅と小関麗奈と古賀小春という形で庭を横切り始めた。
これは事前に打ち合わせていたわけではない。それぞれが自分の立ち位置を独自に判断した結果、自然とこうなったのだ。
中々のコンビネーションじゃないか――殿を務める向井拓海はこんな状況なににも関わらず口がにやけるのを我慢することはできなかった。

だが、しかし。

「きゃあっ!?」
「ぐぅ……!」

再び、轟音。そして闇の中に真っ赤に咲く大きな炎。

「足を止めるなっ!」

向井拓海は身を竦めている仲間達に大きく声をかける。
夜空へと吹き上がる炎は中庭の中をステージのように明るく照らしているが、まだ仲間達が火に襲われるような距離でもない。
なので、行け!と、向井拓海はもう一度仲間に発破をかけようとする。だが、不意に後ろから突き飛ばすような衝撃を受け、彼女はたたらを踏んだ。

「あっ!? …………な?」

咄嗟に振り返る。だがそこには誰もいない。なんだったのか。再び仲間のほうへと振り返ると、そこには変な表情でこちらを見る小関麗奈の顔があった。

「どうした麗奈?」
「ど、どうしたのはアンタよ! せ、背中っ! 矢っ! 刺さってる!」
「……な、は? マジか……うぉ、クソっ……」

麗奈の言葉は本当だった。いつの間にかに背中の肩に近いところに矢が刺さっている。気づけば途端に痛みが疼き始めた。
そして、耳を掠める風切り音。ゾッとした瞬間、頬を掠めて向井拓海と小関麗奈の間に短い矢が突き立つ。

「は、は、……走れぇえええええ!!!」

どう読まれたのかはわからない。だが間違いなく、ハメられた。そう解ってしまうと、付け焼刃の連携などあっという間に壊れてしまう。
とにかく庭を渡りきろう。そう考えて全員がそれぞれが向井拓海の怒声を合図に走り出す。
向井拓海も皆を追いながら走る。そして走る皆の上を何かが通り過ぎるのを見た。拳大のものが炎に照らされながらくるくると、放物線を描いて――。

「紗枝っ! 伏せろぉぉぉおおおおおおおおおぉぉっ!!!」

三度、轟音。そして閃光が向井拓海の目に突き刺さる。

「紗枝っ! おいっ!」
「うちは大丈夫どすっ! 藤原はんがかばってくれて!」

ようやく目を開けば、燃え盛る炎の前に倒れ伏す小早川紗枝と、彼女に覆いかぶさり盾を構える藤原肇の姿が映り、向井拓海は胸を撫で下ろす。
だが、そのように安堵している暇はないのだ。足を止めてしまえば当然……そのことに気づくより相手の行動は早かった。

「ふきゃっ!」
「小春っ!?」

向井拓海の目の前で古賀小春の二の腕に矢が突き刺さる。咄嗟に抱きかかえる小関麗奈の頭を掠めてもう一本の矢が芝生の上に突き立った。
そして続けて白坂小梅の悲鳴があがる。そちらを見やれば松永涼の左太股に矢が深々と刺さっているのが見えた。

「涼さんっ!?」
「……気にすんなっ! どうせもう使えねぇ足だ!」

自分と古賀小春と松永涼が矢に射られ、そして小早川紗枝と藤原肇はまだ地面に伏せたまま。そんな光景に向井拓海は血の気が引くのを感じた。
全滅――そんな言葉がちらりと脳裏を掠める。
ここでみんないっしょに殺されてしまおうか。それともひとり逃げ出し、その先で殺人鬼に追い詰められ殺されてしまおうか。
そんな、ひどく“甘い”誘いが胸の中に浮かび上がる。どこかに括りつけようとしていたはずの心がふわふわと浮き上がり始めてくる。

「リーダーッ!」

パァンと平手を食らわされたような乾いた音が向井拓海の意識をつんざく。それは小関麗奈の持つ拳銃の音だった。

「敵は上よ! アタシがどうしたらいいか言いなさいよっ!」

二度三度と銃声が鳴り響く。果たして、本当に敵とやらがそこにいたのかはわからないが、銃声のたびに病院の窓ガラスが砕けて散った。
“引き戻された”向井拓海は、しっかりと身体を起こすと手を振って全員へ指示を飛ばす。

「戻るぞっ! とにかく建物の傍に寄るんだっ! きらりっ、古賀を頼むっ! 麗奈はそのままだっ!」

その言葉に全員が再び動き出した。
諸星きらりは地面に蹲った古賀小春を拾い上げ、もう片手で車椅子を押すのを手伝いながら走り、
藤原肇も小早川紗枝を抱え起こすと彼女を肩で支え、盾を構えて走り出す。
向井拓海も正体の判明しない敵に牽制を続ける小関麗奈を後ろから抱えると、彼女に拳銃を撃たせたまま仲間の下へと駆けた。


 @


「ハァ……ハァ…………」

後ろ手に鉄扉を閉じると、向井拓海は崩れ落ちその場に膝をついた。
あれから8人は元いた病棟の方へと走ると、上からは死角となる場所に隠れながら壁沿いに進み、ようやく入り口を見つけると転がり込んだ。
遠くでは雨の降るような音が聞こえてくる。どうやら火災現場ではスプリンクラーが作動しているらしい。

「向井はん、それ平気なん……?」
「あ? ……あぁ」

心配そうに尋ねる小早川紗枝の言葉で向井拓海は自分の背に矢が刺さっていることを思い出す。
意識すれば刺さった場所がしくしくと痛む。だがそれほどの痛みでもなかった。試しに腕を上げてみても、特に支障は感じられない。

「アタシのは大したことねぇよ。それよか、紗枝は大丈夫なのか。それに……」
「うちは平気やよ。ちょっと髪の毛が焦げたくらいやし」

小早川紗枝は気丈にそう答える。だが非常灯の下でも彼女のジャージが熱に炙られ、あの綺麗な手に火傷ができているのはわかった。
言う通りに髪の毛も先っぽが焦げてしまっている。けれどこの程度なら今は負傷ではない、そう彼女は思っているのだ。

「アタシも平気だ……気にしなくて、いい……」

太股に矢を生やしたままの松永涼も顔に苦笑いを貼り付けながらそう言う。寄り添う白坂小梅のほうが今にも気を失いそうな白い顔をしていた。

「拓海ぃ……小春が、血が……どうしよぅ?」

矢が二の腕を貫通した古賀小春の傷口をハンカチで押さえながら小関麗奈が涙声で向井拓海に訴える。
そのハンカチはすでに血を吸って真っ赤になっており、その上でなお小関麗奈の手を濡らして赤い雫をぽたぽたと床へと落としていた。
諸星きらりに抱きかかえられた古賀小春の顔色は青く、じっと耐えるように目を瞑り、ただただ短い呼吸を繰り返している。

「小春ちゃん、このままだとどんどん元気がなくなっていっちゃうにぃ……」
「どうやら動脈を傷つけているみたいですね。どこか落ち着いた場所でちゃんと止血しないと」

泣きそうなのをこらえている諸星きらりとは対照的に藤原肇は冷静だった。冷酷にも見えるその様に、しかし今は誰も不安を感じることはない。
彼女はここで集めた荷物の中から止血帯を取り出すと、それを矢の刺さった上、脇の傍で強く結んだ。

「とりあえず今はこれで。矢を抜くのは手術になると思います。なのでここではできません。まずはここを離れましょう」

こいつがいて助かった。そう思おうと向井拓海は膝を伸ばして立ち上がる。いつもより身体が重たかったが、それは気のせいだと思うことにした。

「……よし、じゃあとりあえずは車だ。そこまで行けばどうにかなるだろ。……小梅。みんなの案内を頼んでいいか?」
「ええっ!?」
「向井はん?」
「ちょっと、アンタ、まさか馬鹿なこと考えて」

その言葉に皆が色めき立つ。7人の14の瞳に見つめられると向井拓海は肩を竦め、皆を落ち着かせようと掌を見せた。

「おいおい、勘違いすんなよ。アタシはここでちょっと爆弾のヤツを待ち伏せして、場合によっちゃ一発殴ってやろうかと思ってるだけだよ」
「それを馬鹿なことって言うんでしょーが! 頭に血が上ってんじゃない。冷静になりなさいよ」
「いや、アタシは冷静だぜ」

努めて静かに言うと、向井拓海はここに自分が残る理由を皆に説明し始める。

「まず、このまま全員で車のとこに行っても、車が出る前に爆弾を投げ込まれりゃお終いだ。わかるよな?
 だったら、誰かがどこかで足止めする必要があるのもわかるだろ。その上で、今この中で殴ったり蹴ったりできるのはアタシだけだ」
「でも相手は爆弾を持ってるんやで? しかも、まだ何個持ってるかもわからへんし、弓矢かてあるのに」
「だから~、だからアタシはここで待ち伏せするんだよ」

後ろ手に向井拓海は拳を扉に叩きつける。ゴンゴンと鈍い音が響いた。

「ここなら外から攻撃される心配はねぇ。でもってヤツが追ってくるなら十中八九ここを通る。
 で、この重い鉄扉だろ? 影に隠れて後ろを取ればまず負けるなんてことはねぇよ」
「……ヤツがここを通らなかったら? それに、……車の運転なんか誰にでもできることじゃねぇんだぞ……?」

掠れた声で言ったのは松永涼だ。先ほどはなんでもないと言っていたが矢の刺さった部分が傷むのかもしれない。額に脂汗が浮かんでいた。

「10分待ってもこなけりゃ、お前らを追うよ。……確かに、運転できるのもアタシだけだしな。ここでくたばるつもりはないから安心しな」

重い沈黙が8人の中に落ちる。
話の理屈は理解できるし、向井拓海が破れかぶれでないこともわかる。だがそれでも今、仲間同士が離れ離れになるのは不安だった。
じわじわとそれぞれの中で膨らむ不安。それを切り裂くように声を発したのは藤原肇だった。

「向井さんの言う通りです。私達は車の方に向かいましょう。その中でなら古賀さんの傷も手当できるかもしれません」
「おう、頼んだぞ」

そして向井拓海が応じれば、誰もこれ以上問答することは無駄だと悟ったのか、この場を離れる意思を固めたようだ。
それぞれが少しずつ言葉をかけ合うと、彼女達は最初は戸惑い気味に、しかしすぐにしっかりとした足取りでこの場を離れていった。
暗く長い廊下に響くいくつもの足音は次第に小さく、最後は細波のようになり、聞こえなくなる。

「………………ガチの喧嘩なんかいつぶりだろうな」

皆を見送ると向井拓海は苦笑し、言いながらバックから鉄芯入りの木刀を抜き出す。ずっしりとした重みに心臓がとくんと跳ねた。
殺すつもりはない。誰であっても助けるという気持ちは嘘ではない。けれど、そうも言ってられない状況に陥ることも覚悟しておかなくてはならない。

「手足の一本は……仕方ねぇよな……」

木刀を強く握るとそのまま肩に乗せ、向井拓海は扉の脇の死角へと身を隠す。
相手は完全にこちら全員を殺しにかかっている。絶対に油断はできないし、最悪、殺してしまってもしかたがない。それくらいの覚悟で行こう。
そう心の中で念じると、長く静かに息を吐き、その相手が現れるのをじっくりと待った。


 @


その時はすぐに訪れた。キィ……と軋む音を立て、向井拓海の目の前で鉄扉がゆっくりと開く。仲間と別れて5分くらいのことだった。

「(……来たっ!)」

途端に胸の中で心臓がバクバクと音を立て始める。
これからサシで殺し合いをする、かもしれない――思考は冷静なつもりだったが、身体のほうがビビっているのを向井拓海は痛感していた。
息を殺し、痛いほどに木刀を握り絞める。後姿が見えればまずは一撃。とにかく相手が動けなくなるようにしよう。そう念じる。

「(だ、誰だ……こいつ……?)」

だが、戸惑う。ようやく扉の影から出てきたその相手の後姿は向井拓海が想像する誰とも違うものだった。
背は少し小柄だろうか。背中にふわふわと広がるウェーブのかかった髪の毛が開いた鉄扉から射し込む光できらきらと輝いていた。
そして、向井拓海をなにより戸惑わせ、木刀を振り下ろすのを躊躇させたのはその何者かが“アイドルの衣装”を着ていたことだった。

「…………お前、か?」

呟いてしまった声に、その後姿の肩がびくりと揺れる。
振り返ったその相手は、相川千夏でも緒方智絵里でもなく、そう、あの渋谷凜といるのをよく見かける――向井拓海がそこまで考えたところで、

「がっ!」

何かが、よく見れば目の前に手斧が、咄嗟に庇った左腕に深々と食い込んでいた。
相手は――神谷奈緒は何も言葉を発しなかった。向井拓海の目の前にある彼女の顔にはなんの表情もなかった。

「ひ……ぁ、……あぐぁ! が……あくっ!」

ぐらりと身体が傾き、向井拓海は咄嗟に床に手をつく。だがその手は今しがた切断されかかった左腕で、強い電流のような激痛が彼女を襲う。
無論、身体を支えられるはずもなく、噴き出した血がぬるりと滑ると向井拓海はそのまま激しく背を床に打ちつけた。
チカチカとする視界の中で神谷奈緒のシルエットはコマ送りのように斧を振り上げている。

「まっ…………!」

向井拓海は寝転がったまま右手を突き出す。いつの間にかに握っていたはずの木刀はその手から転げ落ちていた。
そして、そこまでだった。

「ご」

ゴンと床に後頭部を叩きつける音が向井拓海の中に響く。
そしてその瞬間、床が天井に、天井が床にと、天地がぐるりと回り、――世界は暗転した。






 @


「小梅、どっちよ!?」
「えっと…………こ、こっち!」

車椅子を押しながら走る白坂小梅に先導され、7人は深夜の病院の中を走っていた。
リノリウムの硬い床に打ち付けられる足音が廊下の中に反響し、いやに耳に障る。
上を見上げれば救急外来と書かれた札が見えた。ちょうど病院の裏側の端で、少し先にあるガラス戸を潜ればその先は駐車場だ。

「あっ……!」
「小早川さん。大丈夫ですか?」
「へ、平気やよ。堪忍な」

足を滑らせ膝をついた小早川紗枝に藤原肇が手を伸ばす。床の上に俯く彼女は返事こそしたものの、息は上がりひどく辛そうだった。

「ハァ……ハァ……と、トレーニングはさぼったことはあらへんのやけど、……あかんなぁ、はは」
「仕方ありませんよ。こんな状況では、ろくに休みも取れませんし」
「まったく……でも、仕方ないわね。アタシも……はぁ、とりあえず歩きましょ。止まってられるほどの余裕はないはずよ」

そう言う小関麗奈の息も随分と上がっていた。彼女はというばトレーニングはさぼりがちだ。身体が小さいこともあって体力もない。
彼女は額に浮かんだ汗を拭うと、諸星きらりに抱かれた古賀小春に声をかける。その声に古賀小春は薄目を開けてにこりと微笑んだ。

「小春はどう? 痛い? もうすぐだからね?」
「れいなちゃんいつもより優しいねぇ。……うん、痛いけど、小春はまだ大丈夫だよ」
「や、優しいとかっ! アタシはただ、アンタがいなくなったら困るから、そうしてるわけで……う、うぅ」
「レイナちゃんが本当はいつも優しい子だってきらりは知ってるにぃ☆」
「あ、アンタも何言って……アタシは、レイナサマなのよ!?」

古賀小春の笑顔と微笑ましい一場面に緊張していた空気が弛緩する。皆の顔に笑みが浮かび、そして古賀小春がしゃっくりのような声を上げた。

「え?」

小関麗奈の顔が白く固まる。気づけば古賀小春の細い喉に銀色の棒が刺さっていた。
びくっびくっと喉を逸らすとその度に矢の刺さったところから真っ赤な血が溢れ、痺れるように胸を震わせると彼女は全く動かなくなってしまう。

「あっ……く」

ひゅっと小さな風切り音がして、今度は小関麗奈のわき腹に新しい矢が突き立った。


 @


「くあっ、が……て、めえええええぇぇぇえええぇぇえええええっ!!」

突然の光景に固まる藤原肇の目の前で小関麗奈が絶叫を上げ、両手に持った拳銃を花火のように鳴らしている。
その銃口の向かう先は上階へと向かう非常階段の踊り場で、ひとつ音が鳴る度に壁に小さな穴が開き、そして今、防火ガラスに大きなヒビが入った。
手すりの陰に誰かが隠れているのだろうか。古賀小春と小関麗奈とを射抜いた何者かが。その姿を藤原肇はまだ見てはいない。

「ひきゃああああああああああああああああ!!」

その時、絹を裂くような悲鳴がその場に響いた。誰が?と藤原肇は首を巡らす。
声の主は白坂小梅だった。車椅子に向かってひどく歪んだ顔をしている。そこに座っているはずの松永涼はどうしたのか? 藤原肇からは窺うことができない。
そしていつの間にかに向かう先のガラス戸が砕けてなくなっていた。いつの間にだろう。それもわからない。

「(駄目だ……駄目だ……なんとかしないと……)」

白坂小梅が車椅子の持ち手にかけていた機関銃を取り、砕けたガラス戸の方へと向かい構える。次の瞬間、夜闇の中に赤い点が一瞬見えた。
すると機関銃を構えていた白坂小梅がバンザイのように手を挙げ、その手の中でパパパと軽快な音を鳴らしながら機関銃が踊った。
天井の、明かりの点いてない蛍光灯がパァンと粉々になり、
藤原肇の前に立ち、同じく呆然としていただろう小早川紗枝の身体がぶるぶると震えると、その背中が一気に赤く染まる。

「(そんな……そんな…………)」

そして、あのカァンという音が耳に届く。まるで鉛のように重くなる時間の中、藤原肇は視線を前に戻すとそれを見た。
踊り場の手すりの陰からぬっと突き出た不気味な白い腕。そして、階段を転がり小関麗奈の目の前へと落ちてゆく拳大の爆弾。
小関さんの前に出なくては――盾を構える身体を前に出そうとして、しかし身体も同じく鉛のように重くて、無限のような一瞬が過ぎ去り、真っ白な光。
真新しいキャンバスの中に小関麗奈のシルエットが浮かび上がり、次の瞬間、いくつもの真っ赤な舌が透明な盾の表面を舐め上げた。
場違いにも、藤原肇はそれを見て実家の窯を思い出した。
赤色はすぐに黒色へと変わり、その黒色の中でふわりと身体浮いたのが、この場面での藤原肇の最後の記憶だった。






 @


「……加蓮? ここにいるのか? 加蓮!?」

不意を打とうとしてきた向井拓海を返り討ちにした神谷奈緒は、爆音を聞くと廊下を走りその場へと駆けつけた。
そして不安げにパートナーの名を呼ぶ彼女の前には凄惨とも言える光景が広がっている。
爆炎が通り過ぎた廊下は床も壁も黒く焦げて、スプリンクラーから弱々しく水が滴る中、未だ消えない火がちろちろと揺れる影を作り、
そこには蝉の抜け殻のように身体を丸めた真っ黒な死体。そしてここにあって当然だが、ひどく不気味に見える車椅子。
砕けたガラスが尖った部分を見せてそこら中に散らばり、これらが自分達が作り出した光景だとしても吐き気を催すほどに残忍な有様だった。

「奈緒? 奈緒なの?」
「加蓮!」

ゆっくりと階段を下りてくる北条加蓮に神谷奈緒はほっと胸を撫で下ろす。すぐに駆け寄ると、彼女の背に手を回してぐっと抱きしめた。

「もう、奈緒ったら心配しすぎ」
「馬鹿言ってんなよ。二人ならともかく、加蓮ひとりであいつらを相手とか心配になるに決まってんだろ」

一息つくと神谷奈緒は身体を離し、改めて殺し合いのあった現場を見る。しかし、よく見ればその惨状の割りには死体が少なく思える。
まず目につくのは黒焦げで丸まっている小さな死体。そして、車椅子に座ったまま胸元を真っ赤に染めて眠るように死んでいる、このふたつ目。

「こいつも、加蓮が……?」
「え、どうかな。太股の矢は私で間違いないけど……」
「どういうことだ?」
「あの子達、銃を持ってたみたいなんだよね。いっぱい撃ち返されたし。だから、味方に当てちゃったんじゃないかな?」

神谷奈緒は車椅子の死体をじっと見る。胸元に空いた穴は確かに矢ではなく銃で開けられたもののように見える。
そして改めて近くを見渡せば、床や壁、天井までにも同じような小さな穴がいくつも開いているのが発見できた。

「ふぅん……ま、いっか。でも、向こうは8人だっけ? いまいち減らせなかったな。アタシもここに来る途中で一人やってきたけどさ」
「ちょ、ちょっと奈緒の方こそ平気だったの?」
「平気だって。楽勝……だったよ」
「うん、それなら……怪我とかしてなければいいんだけど」

ばつが悪そうに目を逸らすと神谷奈緒はまた現場に目をやり、減らした相手の数を数える。ここで二人。向こうで一人だから計3人だ。
8人を相手にと考えれば中々の戦果だが、爆弾を大盤振る舞いしたと考えると乏しい戦果とも言える。

「あいつらがどこに逃げたとかわかる?」
「さぁ……、爆弾投げた後は隠れちゃってたし……」
「そっか……」
「あー、なんだかアタシのせいっぽい感じ」

神谷奈緒が残念そうな表情を見せたことに、北条加蓮は眉根を寄せる。この顛末、そもそもはこのがっかりしている神谷奈緒のせいなのだ。

「そもそも、奈緒が“とかげ”にびっくりして爆弾を投げるのを失敗するから!」
「だっ、だって仕方ないだろー。あんなでっかいとかげがこんなところにいるとか思わないじゃん!」

事が始まる直前。向井拓海を中心として8人の人間が集まっているところを目撃した二人は、一網打尽にしようと部屋に向かって爆弾を投げたのだ。
しかし、不意に足元に現れたイグアナに驚き、神谷奈緒の投げた爆弾は部屋よりも手前に落ち、しかも爆発すると炎で廊下を閉じてしまった。

「この爆弾が燃えるやつだってのもちょっと驚いたね」
「どこかでひとつくらい試しに爆発させておけばよかったって思ってるよ」

困惑する二人であったが、すぐに北条加蓮が妙案を思いつく。二手に別れ、片方が8人を追い回し、もう片方が上からそれを狙うという作戦だ。
そこで神谷奈緒はより危険だと思われる獲物を追い立てる役を買って廊下の窓から外に。ボウガンを持つ北条加蓮は階段を上った。

「最後は、奈緒と合流しようと下りてきたらばったり会っちゃったから驚いたけどさ。まぁ、結果オーライよね」
「アタシのじゃない爆弾の音が聞こえた時は心臓が止まるかと思ったよ」
「加蓮~……加蓮~……って泣きそうな声で探してたもんね」
「ちゃかすなって! んもぉ……」
「あはは。でも、爆弾を投げる前に矢を一発当ててるから、その子ももう死んでるかも」
「だったら半分か。……上出来って考えるべきなのかな」

ふむと頷くと、神谷奈緒はもう一度死体を調べる。なにか使えるものを持っていないかと思ったのだ。
だが、車椅子にかけてあったバッグには飲み物と食べ物くらいで、床で丸まっているものにしても両手に握っている拳銃はとても使えそうには見えなかった。
では先ほどの不意打ちをかけようとしてきた相手のは? 神谷奈緒は調べずに放ってきたことを思い出す。

「あのさ。ちょっと向こうに行かないか? まだバッグ調べてないこと思い出してさ。何か持ってるかもだし」
「うん、別にいいよ。少しでも武器になるものはあったほうが……」

不意に口を閉じた北条加蓮に神谷奈緒は怪訝な顔をする。そしてはっと気づくと後ろを振り返った。


 @


カツン、カツンと闇の中になにかを叩く様な音が響く。ひどく耳障りで、けどそれ以上に気になる……聞き逃せない音のように感じる。
それは自分より離れていく足音で。そうだと気づいた時、向井拓海は薄暗い天井を見上げていた。

「(アタシ……そうか…………)」

向井拓海は先ほどのことを思い出し、状況を理解すると上体を起こす。不思議と、軋みや痛みのようなものはなかった。
アドレナリンのせいだろうか。ともかくあいつを追わないと。傍らに転がっていた木刀を拾うと、それを杖代わりに床の上へと立ち上がる。

「(約束したからな……戻るって……)」

神谷奈緒を追う為、仲間の下へと戻る為に。一歩、踏み出そうとして、しかし向井拓海はその場でつんのめってしまう。
まるで足の裏を床に貼り付けられたような不可思議な感触。怪訝に思い、足元を見やればそこにあったのは向井拓海の死体だった。

「(ああ、そっか……)」

額を真っ二つにされ、頭が半分開きかかったその顔は苦悶の表情に歪み、あふれ出した赤黒い血が顔中を斑に染めている。
四肢をだらしなく放り出し、血の海に沈んだその姿は――向井拓海は間違いなくそこですでに死んでいた。

「(みんな……すまない……。紗枝……ごめん……。プロデューサー……ごめん……)」

気づけば見上げているのは天井で、向井拓海は無念と後悔を抱きながら深い闇の中へとその意識を沈め、溶けるようにこの世から消え去った。






 @


「奈緒……加蓮……よかった」

そこにいたのは。神谷奈緒が通ってきた廊下からではなく、北条加蓮が下りてきた階段からでもなく、駐車場へと続く出口からでもなく、
それらのどれでもないもう一方の廊下の奥から現れたのは、ふたりが想いに想い、そしてもう会うことはできないと思っていた――渋谷凜だった。

「凜…………」
「…………どう、して?」

神谷奈緒と北条加蓮の顔が青褪める。会いたいと思っていた。けれど絶対に会いたくないとも思っていた。
しかし、それでも会ってしまう――そんなこともあるだろうと思う。だが、よりにもよってこのタイミングなのかと、二人が凄惨に人を殺した今なのかと。
なのに、どう見ても今いるここは、醜く穢れ死体の転がるここはそういう場所で、誰が罪を犯したのかも明らかなのに、渋谷凜は微笑んでいた。

「ふたりに……会えた」

安堵の笑みの上に涙さえ浮かべる渋谷凜に、思わず神谷奈緒は後ずさってしまう。彼女の差し伸べる手を取ってはいけないと身体が反応していた。
もし、ここで受け入れてしまえば全てが台無しになってしまう。犯した罪も、その為の覚悟もなにもかもが砕け散ってしまうに違いない。

「…………………………」

発する言葉すらなにも思い浮かばない。何を言ってもそれは絡めとられ、自分はそれに安心し、全てを委ねてしまうというはっきりとした確信があった。
今すぐに後ろを向いて逃げ出したい。しかし、安寧の誘惑が足に絡みつき、なにより逃げ出せば追われてしまうというのも間違いない。
なにもかももう終わりなのだろうか。辛うじて渋谷凜より目を引き剥がし、縋るように隣の北条加蓮の顔を見る。


その瞬間、どこかで猫が鳴いた。にゃおんと、ひどく意地悪そうに。


小さく赤い華が、渋谷凜と神谷奈緒の間で咲いていた。
まだふたりに理解は届かず、その間にも北条加蓮の身体はぐらりとかしぎ、ゆっくりと倒れこんでいく。ゆっくりと、とてもゆっくりと。硬い床へと向かって。



そして、誰かが絶叫した。耳を塞ぎたくなるような、酷く悲しい悲鳴だった。






 @


熱い。曖昧な意識の中で最初に思ったのはそれだった。
まるで八月の熱中夜。知らぬ間に扇風機のタイマーが切れて、寝苦しさに起きた時のようだと、小早川紗枝はそう思った。

「小早川さん。起きましたか? 小早川さん」

糊で張りついたような粘る瞼を開けると、こちらの顔を覗き込む藤原肇の顔がある。
とても必死に、ひどく悲壮な顔をして、えらく可哀相やなと小早川紗枝はぼんやりとそう思う。

「意識をしっかり。絶対助かりますから」

あぁと、小さく熱い息を吐く。今の言葉でだいたい察しがついてしまった。変に勘がよいのも困りものだと、なぜかそれが無性におかしい。
息をするのがひどく辛い。お腹がまるでつきたてのお餅になっているような感覚がある。
途切れる前の記憶は、白坂小梅が振り回す機関銃の銃口がこちらを向くところで終わっていた。

「小梅ちゃん、は……?」
「…………白坂さんは」

案じて問えば、藤原肇は首を横に向ける。どうやらそちらに彼女もいるのだろうけど、小早川紗枝はその先を追うことはできなかった。
けれど、下から横顔を窺えば、どのようなことになっているのか、やはりだいたいはわかってしまう。

「…………拓海はん、きはった?」
「それが、……私達も逃げるのに精一杯で……」

返される言葉に目の前がきらきらと輝き始める。少しして自分が泣いてるのだと気づいた。
きらきらと光る世界はどんどん白ぼけて、すぐに目の前にあるはずの藤原肇の顔もわからなくなってしまう。

「あのなぁ……」
「しっかりしてください! 今、止血もして、だからっ!」
「……うち、……泳ぎたかったんよ……」
「小早川さんっ! だめ――」

自分を案ずる藤原肇の声はどこかへ消え、ちゃぷちゃぷと水の流れる音が耳元でしはじめる。
さっきまであったひどい熱さはもうこれっぽちも感じず、とても涼しげで、とても心地のよい。このままこれに身を委ねていたい。そう思ってしまう。

それは諦めと自分を迎え入れる死そのものだった。


 @


「…………小早川さんも、亡くなりました」

息苦しい薄暗闇の中で、藤原肇はまるで怨霊の吐く言葉のようにそれを垂れ流した。
それを聞き、古賀小春と白坂小梅、ふたりの死体を両手の中に抱く諸星きらりがくっと喉を鳴らす。
涙は我慢しているつもりだった。けれど、藤原肇も諸星きらりもその頬は濡れ、涙の粒は止まることなく流れ続けている。

「私達……」

何かを言おうとして、しかし続きが出てこない。なにが言いたかったのかもよくわからなかった。
ただ、現実に押し潰されない様耐えるのが精一杯だった。いや、もう押し潰されているかもしれない。その状態で辛うじて正気を保っているだけかもしれない。
藤原肇と諸星きらりを除く全員が死んだ。向井拓海だけははっきりとしないが、しかし今はそんな楽観はできない。

あの時、爆炎が狭い廊下の中を過ぎ去った後、気づけば藤原肇は諸星きらりに引きずられていた。
その胸には、その時にはもう死んでいただろう古賀小春と、辛うじて息をしていた白坂小梅が抱かれ、小早川紗枝は自分といっしょに引きずられていた。
意識を取り戻した藤原肇は、自分の足で立ち上がると白坂小梅を引き受け、そしてシャッターの上がった商店を見つけその中に飛び込んだのだ。

病院で用意した荷物はほとんどがあの場に置き去りで、なのでまともな手当てなどなにもできなかった。
例えできていたとしてもきっと誰も間に合わなかっただろう。
身体の真ん中に銃弾を受けた白坂小梅は一度も目を開けることなく死んでしまったし、そして小早川紗枝も今しがた息を引き取った。

「あんな……、あぁ…………」

きっと、悪意を、殺意を過小評価していたのだ。並べ立てられた死と謎に探偵気取りで答えを出し、それで上に立てたと勘違いしてしまったのだ。
しかしなんてことだろう。いざ殺される場面となれば、こちらを殺そうとする相手と応対すれば、そこでできることはなにもなかった。
救う――などとはなんとおこがましいことだったのだろう。結局、あの間、一度も相手の顔を見ることすらできなかったのだ。

「肇ちゃん……泣かないで。でないと、きらり……うっ、…………うううううう」

諸星きらりは嗚咽を零して泣く。泣くまいとして、それでも溢れる悲しみを吐き出すように無様に泣く。
藤原肇も同じように泣く。泣けば悲しみもいっしょに流れてゆくのだというのなら、今はいくらでも泣こうと涙を零す。

ふたりは、死に囲われ、いつまでも泣き続けた。それを止める者はここにはいなかった。






【向井拓海 死亡】
【古賀小春 死亡】
【小関麗奈 死亡】
【松永涼 死亡】
【白坂小梅 死亡】
【小早川紗枝 死亡】

【北条加蓮 死亡……?】






【B-4 商店/二日目 黎明】

【藤原肇】
【装備:】
【所持品:基本支給品一式×1、アルバム、折り畳み傘】
【状態:疲労、無力感】
【思考・行動】
 基本方針:■■■■■■■■■■■■■■■■
 0:■■■■■■■■■■■■■■■■

 ※ライオットシールドは爆発のあった場所に残されたままです。

【諸星きらり】
【装備:かわうぃー傘】
【所持品:基本支給品一式×1、不明支給品×1、キシロカインゼリー30ml×10本】
【状態:疲労、深い悲しみ】
【思考・行動】
 基本方針:■■■■■■■■■■■■■■■■
 0:■■■■■■■■■■■■■■■■



 ※向井拓海の持ち物は彼女の死体の傍に残ったままです。
   鉄芯入りの木刀、基本支給品一式×1、US M61破片手榴弾x2、ミント味のガムxたくさん

 ※小早川紗枝の持ち物は彼女の死体の傍に残ったままです。
   基本支給品一式×1、水のペットボトルx複数
   (消火器はどこかで失われてしまいました)

 ※松永涼の持ち物は彼女の死体の傍に残ったままです。
   毛布、車椅子、輸血製剤(赤血球LR)×5、ペットボトルと菓子・栄養食品類の入ったビニール袋

 ※白坂小梅の持ち物は彼女の死体の傍に残ったままです。
   拓海の特攻服(血塗れ、ぶかぶか)、基本支給品一式×2
   USM84スタングレネード2個、ミント味のガムxたくさん、鎮痛剤、吸収シーツ×5枚、車のキー
   不明支給品(小梅)x0-1、不明支給品(涼)x0-1
   (イングラムM10(0/32)はどこかで失われました)

 ※小関麗奈の持ち物は全て焼失しました。

 ※古賀小春の持ち物は彼女の死体の傍に残ったままです。
   ヘッドライト付き作業用ヘルメット、ジャンプ傘、基本支給品一式×1、ソーブサンフラット3号×9枚
   (ヒョウくんは行方不明になっています)

 ※台車(輸血パック入りクーラーボックス、ペットボトルと菓子類等を搭載)は、爆発に巻き込まれ失われました。

 ※軽トラックは、パンクした左前輪を車載のスペアタイヤに交換してあります。
   軽トラックの燃料は現在、フルの状態です。
   軽トラックは病院の近く(詳細不明)に止めてあります。

 ※拓海と小梅の調達した『車』は病院の駐車場に停まったままです。
   車種は不明。鍵は小梅が所持しています。



【B-4 救急病院/二日目 黎明】

渋谷凛
【装備:マグナム-Xバトン、レインコート、折り畳み自転車、若林智香の首輪】
【所持品:基本支給品一式】
【状態:軽度の打ち身】
【思考・行動】
 基本方針:私達は、まだ終わりじゃない。
 0:加蓮……?
 1:加蓮と奈緒を連れて帰る。けど……。
 2:病院で何があったのか、それを知り、いたはずの者らに泉らのことを伝えたい。
 3:卯月を探す。
 4:自分達のこれまでを無駄にする生き方はしない。そして、皆のこれまでも。
 5:みんなで帰る。

 ※折り畳み自転車は病院の傍に停めてあります。

【神谷奈緒】
【装備:アイドル衣装、軍用トマホーク】
【所持品:基本支給品一式×1、デジカメ、ストロベリー・ボム×3、私服、ホテルのカードキー数枚、マスターキー】
【状態:健康】
【思考・行動】
 基本方針:覚悟を決めて、加蓮と共に殺し合いに参加する。(渋谷凛以外のアイドルを殺していく)
 0:加蓮っ!?
 1:加蓮を連れて逃げないと……でも。
 2:他のアイドルを探して殺すため、施設をまわっていく。
 3:千川ちひろに明確な怒り。

【北条加蓮】
【装備:アイドル衣装、ピストルクロスボウ、専用矢(残り13本)】
【所持品:基本支給品一式×1、防犯ブザー、ストロベリー・ボム×4、私服、メイク道具諸々、ホテルのカードキー数枚】
【状態:胸を撃たれた?】
【思考・行動】
 基本方針:覚悟を決めて、奈緒と共に殺し合いに参加する。(渋谷凛以外のアイドルを殺していく)
 0:………………。

 ※自転車は病院の傍に停めてあります。
 ※デジカメのメモリにライブの様子が収録されています。(複数の曲が収められています)


【B-4 救急病院・出口傍の暗がりの中/二日目 黎明】

【和久井留美】
【装備:前川みくの猫耳、スポーツウェア、S&WM36レディ・スミス(2/5)】
【所持品:基本支給品一式、ベネリM3(7/7)、予備弾x37、ストロベリーボム×1、ガラス灰皿、なわとび、コンビニの袋(※)】
【状態:健康】
【思考・行動】
 基本方針:和久井留美個人としての夢を叶える。同時に、トップアイドルを目指す夢も諦めずに悪あがきをする。
 0:………………。
 1:様子を窺い、全員始末して武器を奪う。
 2:次の放送までは積極的に動く。
 3:いいわ。私も、欲張りになりましょう 。

 ※コンビニの袋の中には和久井留美が100円コンビニで調達した色いろなものが入っています。


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向井拓海 死亡
松永涼 死亡
白坂小梅 死亡
小関麗奈 死亡
古賀小春 死亡
古賀小春(ヒョウ君)補完エピソード:さだめ
諸星きらり 次:継/繕
藤原肇
前:DEAD SET 渋谷凜 次:THE 愛
前:夢は無限大 北条加蓮
神谷奈緒
前:彼女たちが盤面に数えるサーティートゥー 和久井留美

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最終更新:2016年04月20日 00:48