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  • 鈴「あっづー……」セシリア「な、何ですのコレは……」⑫

自分用SSまとめ

鈴「あっづー……」セシリア「な、何ですのコレは……」⑫

最終更新:2011年08月23日 03:29

meteor089

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管理者のみ編集可

鈴「あっづー……」セシリア「な、何ですのコレは……」⑫

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679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/31(日) 23:51:28.36 ID:GFBiLOqo0




 学園に併設された滑走路に着陸した輸送機から機材が運び出されている。すっかり昇った日は厚い雲の上から淡く地上を照らしていた。

「やれやれ、ひと雨きそうだな……」

 管制室で山田と合流し、ヘッドセットを装着した千冬が、窓からどんよりと曇った空を見上げる。夜明け前に始まった雲海の上での戦闘は、ラウラの駆る電子戦機の登場により三重、四重の伏兵はあったものの、結果としては一年専用機部隊の圧勝に終わった。

「この程度で諦めはせんのだろうな……束」

 幼馴染の顔を思い浮かべて、千冬は苦笑いを漏らす。

(約束を違える事になった私を束は恨んでいるのだろうか…… いや、私を恨んでくれた方がマシか)

 どうやら親友とは家族にはなれないようだ。千冬自身が気に入ってしまったし、弟の望む相手なのだから、そもそもそれに口は出せない。今回の襲撃は来るべくして来たものだった。尤も、まさか移動中の他国領空内で仕掛けてくるとは思わなかった。撃墜したゴーレムの残骸は幸いにして都市部に落ちる事は無く、二次災害は軽微だったという。現在学園の研究班が回収に向かっているが……おそらく束の事だ、既に対策はとっていて、回収班は無駄足を踏む事になるのだろう。

 今回の襲撃は一夏とセシリアのどちらがターゲットだったのか、結局輸送機に無人機は一機たりと近づく事は無かったけれど、優先的にセシリアを攻撃していたように見えたという事はやはりセシリアの撃墜が目的だったのだろう。

「……そんな事をしてもあいつは喜ばんぞ、バカ者が」

 束は妹と一夏、そして千冬の事になると少々走り過ぎるきらいがある。あれはあれで、けして悪いやつでは無い。天才科学者等ともてはやされようが、無人機を操って攻撃を仕掛けてこようが、千冬には束を敵と断定する事はできなかった。

≪コントロール、こちらラウラ。周囲に追撃の敵影は確認できません≫

 輸送機の着陸後、念の為と哨戒を行う生徒達の実質的な現場司令官であるラウラから通信が入る。もっとも学園にまで追撃をしかけた所でメリットは無く、例えセシリアを撃墜した所で学園の医療設備ならば命までは落とすまい。あくまでも警戒の為だったが、杞憂で済んでくれたようで、千冬の顔から険しさが消える。

「うむ、ご苦労だった。全機哨戒を解除、学園に帰投するように」

≪はっ!≫

 遠くから、ISが空気を割く音が近づいてきている気がする。帰って来たのだ、日本に。IS学園に。



682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/31(日) 23:59:13.17 ID:GFBiLOqo0


「……ふぁ…………」

「あら、織斑先生。寝不足ですか?少し休んでいらっしゃっても構いませんよ。いいなあイギリス、私も行ってみたかったです♪」

 漸く落ちついた千冬がつい漏らした欠伸に、即座に飛びつき、からかおうとする山田。心なしか目がきらきらと輝いている。

「……そうだな、昨夜は語り明かしたものだから眠っていない」

「え、ええぇぇええっ!?せ、先生!昨夜はオルコットさんの家にって……!」

 顔を真っ赤にして狼狽する山田を見て内心でほくそ笑む。やはり山田は打たれてこそ輝く。

「ああ、オルコットの使用人と打ち解けてな」

「そ、そんな、織斑先生!み、乱れています!!あ!どこに行くんですか!?」

「君が休んで良いと言ったのだろう?少し仮眠をとってくる。全員の帰投が済んだらブリーフィングを行って解散しておいてくれ」

「え、ええっ!?先生!先生ーっ!」

 背に受ける山田の救いを求める声は心地よい、堪能したと上機嫌に笑むと、襟を正して久々の自室へと向かう。軽く休むだけで、ブリーフィングには遅れて向かうつもりだ、帰りのHRのノリでもたもたとうろたえる山田がきっとそこにはあるだろうから。



683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/01(月) 00:04:17.27 ID:EV57Pla20



――――



「おっかえりーぃ、かーんちゃーん」

 着陸後、ピットに戻った簪を迎えたのは幼馴染であり、自身の傍役である布仏本音の緊張感の無い声だった。

「……本音、だからその呼び方は…………」

 ピットには早朝から実戦に出撃した一年生の為に、整備科の生徒達が詰めている。早朝の出撃時は一部の人間だけだったが、ISによる集団戦、しかも実戦とあって、朝食前に作業服に着替えてピットに集まってしまうのは整備科の性か。

 整備科には基本的に2年生以上しかいない為、簪にとっては全員が上級生。本音も当然一年生だから本来は整備科ではないのだけれど、そこにいるのが当然のように整備科の作業着に身を包んでいた。

 丈の合っていない袖を軽快に振り回しながら、日本代表候補生である幼馴染をサポートする関係は、縁の下の力持ちを自任する整備科生徒から見ればとても微笑ましくて。そんな風に微笑ましそうに見られる事が簪には気恥かしかった。

「お帰りなさい、簪。いいえ、か~んちゃん♪」

 ウインナーの絵の描かれた扇子で口元を隠した簪の二年生の姉、IS学園生徒会長更識楯無が近づいてくる。口元は隠れているけれど、確実に笑っているのが感じられるのは、姉妹だからだけではないと簪は思った。

「……お、お姉ちゃんまで……やめて……」

「照れちゃって、簪ったらかーわいい。か~んちゃん♪」

「かーんちゃーん♪」

「……も、もう……お願いだから……」



692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/03(水) 00:02:20.14 ID:MfeqTh3C0



――

「箒、お疲れ様!」

 簪から暫く遅れて、二機目、赤いISが帰投してきた。長いポニーテールを軽く振りながら、駐機状態にしてISを降りる箒に、一足先に制服に着替えていたクラスメイトからタオルが手渡される。

「シャルロット、ありがとう。すまないな、お前の出番を奪ってしまったよ」

「箒、ダメだよそんな事言っちゃ……僕の出番があるって事はそれだけみんなが危険な状況って事でしょ」

 窘める様に言いながら、スポーツドリンクのボトルを手渡すシャルロットに、すまないと苦笑いを零してから箒はピット内を見回す。

「む、簪はいないのか?

「簪……?ああ、四組の更識さんならシャワーに行ったよ、箒もブリーフィングの前にちょっと汗を流すと良いんじゃないかな?」

 なるほど確かに打鉄弐式の所ではクラスメイトの本音が上級生に混ざって整備を始めている、箒もシャワーに向かいたいのは山々ではあったけれど、第四世代という特異性から、紅椿のメンテナンスには教職員が中心となった三年の整備班で行われる。担当の教師の姿を探していると、ピットの外からどよめきが起こった。

「あ、この音は一夏が帰ってきたみたいだね♪それじゃ箒、僕は行くね」

「――――あっ!シャルロット……待て!」

 はっとしてシャルロットを引き留めようとする箒の手は、あと一歩届かなかった。



693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/03(水) 00:03:15.57 ID:MfeqTh3C0



―― 数分前、IS学園上空



「セシリア?」

 学園に戻る途中、青い機体がスラスターを吹かして近付いてくるのが見える。大方、パッケージをパージして戦っていた自分が無事なのか、落ちついたから見に来たのだろう。それは嬉しい、それは嬉しいのだけれど……。

「…………」

 そのさらに後ろから、白い機体も近付いてきている。一夏だ、セシリアと旅行中に何かやらかしたと思われる一夏が近づいてきている。

「ったく、空気読みなさいよあのバカ……」

 そうこうしているうちにセシリアがその表情が見えるくらいの距離に近付いてきて、スラスターを一度逆に入れて速度をあわせて鈴に併走する。

「大丈夫ですの?鈴」

「何がよ、あんたこそ大丈夫なのその機体。制動がまともにバランス取れてないじゃない」

「わたくしの操縦技術をもってすればこんなのちょろいですわ♪」

「あーはいはい」

「……なんですの?」

「……何よ?」

 口を尖らせたセシリアと、じっと睨みあいながら無言の時間が過ぎる。先にこの睨めっこに白旗を上げたのは鈴の方だった。けらけらと笑いだしながらセシリアに腕を伸ばす。二人とも主武器は既に格納していた。

「……お帰り、セシリア」

「ただいま帰りましたわ……鈴……」

 ISを装備したまま、手を取り合い、二人とも表情を和らげて笑う。土曜日の3on3からまだ一週間も経っていないというのに、ここの所続いたトラブルは、なんとなくだけれど今日の戦いが最後のような気がする。

 まだ聞いただけだけれど、サイレント・ゼフィルスは強制解除まで追い込まれたと聞くからおそらくダメージレベルはC相当まで達している事だろう。ましてや亡国企業にはサイレント・ゼフィルスがあってもイギリスの運用データそのものは存在していない筈。そうなると再出撃まではそれ相応の期間を要する。暫くの間亡国企業絡みの事件は起こらない可能性がある。

 そして、無人機とはいえ、一国の保有数を遥かに超えるISを製造、投入し、全てを撃墜されたとあっては、無人機による襲撃も少しの間は無いと考えていいかもしれない。



694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/03(水) 00:26:54.51 ID:MfeqTh3C0



「はー、大丈夫とは言ったものの、こりゃ怒られるでしょうねぇ」

「当り前ですわ、パッケージを強制パージしてぶつけるなんて正気の沙汰ではございませんわよ?あの高度でPICにエラーが発生したらどうするつもりでしたの?」

「いや、すぐ近くに一夏もいたし何となるかなって思ってさ……っ」

 鈴は、真面目に心配している様子のセシリアに、にぃと笑ってみせると、手をつないだまま甲龍の装着を解除する。当然のようにPICが慣性を殺し、セシリアに引っ張られる形で鈴はぶら下がる格好になり。

「ちょっと!ななな何をなさってますの!?」

 一瞬真っ青になりながらセシリアは慌てて鈴を追うように素早くターンし両手で抱きとめる格好になりながら、空中で何度も逆噴射をいれて制動をとる。

「ほら、やっぱり制動バランスとれてない」

「い、いきなりだったからですわ。それに装備が重いんですから仕方が無いでしょう?」

 抱きあう格好でにへらと笑いながらそんな風に言う鈴に、むすっと口元をへの字に結んでセシリアは睨みつけていた。

「あ、そーだ。だったら戦闘終わったんだししまえばいいじゃん、重いのってその肩の盾でしょ??」

「…………」

 ぽかん、とセシリアが口を半開きで鈴の言葉を聞いている。鈴としては冗談のつもり。急に重量負荷が消えたらどうなるのかなんて、普段のセシリアなら失念する筈も無いのだけれど、連日の戦闘やら一夏さんフィーバーナイトやら強制家庭訪問やら高高度戦闘やらでちょっぴりハイなセシリアには難しい話だったのかもしれない。

(…………そ、そう言われてみればそうでしたわ……)

「な、なによ、アンタまさか……」

「そ、そんな事ありませんわよ!?」

 言うが早いか、セシリアは両肩のシールドバインダーを粒子化する。今までより一回り大きくなった上に、四基のビットはソードビットとしても使える大型のモデル。その重量が無くなった途端、当然のごとく重量を相殺していた分が速度にグンと上乗せされる。

「――――ちょっ……やっぱそんな事あんじゃん!!!」

「――えっ!?どういう……ひゃああああぁぁぁぁぁあああ!?」

 急な加速に二人して悲鳴を上げ、なんとか制動を取ろうとセシリアが逆噴射を入れるけれど、軽くなった機体での逆噴射は単純にすっ飛ぶ方向が逆方向へ変わるばかりで、行ったり来たりを繰り返すばかり。完全にパニックに陥ったセシリア、ぎゅっとしがみつかれている為下手に動けず、しっかりとセシリアに捉り返すしかない鈴。このままいったら学園沖に代表候補生二人墜落なんてニュースに顔写真つきで載ってしまう。

「せ、せしりああぁぁぁぁ!!」「り、りんんんん!!」




695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/03(水) 00:37:58.89 ID:MfeqTh3C0



 互いの名前を叫び、強く抱き合う二人の視界に、血相を変え、全速力でこちらに向かってくる一夏の姿が見えた。

「セェシリアァァァァアッ!!」

 その声から、一夏が本当に必死なんだと伝わって来て、鈴は、少しだけ、セシリアを抱く手に力を込める。

「い、一夏さん!一夏さん!!」

「落ちつけセシリア!今すぐISを解除しろ!!」

「ちょっと一夏!そんな事したら……!!」

「いいから!! 心配するな鈴、二人とも俺が受け止める!!」

 毅然と言い放つ一夏に、鈴の鼓動が一瞬で早くなる。

(ああ、ずるいなー……昔からそう、いつも、いつも、ド天然のくせにこういう時は…………これじゃ、かなわないじゃない……)

「わかりましたわ!」

 セシリアが頷きながらブルー・ティアーズを粒子化する。つい先程までパニックに陥っていたのが嘘のように、笑みさえ見える。ISスーツだけの姿で、セシリアと抱き合ったまま空中に投げ出されつつ、どうしてセシリアはそんなに無条件に信じられるのだろうと鈴は思うけれど、そう言えば自分もこんな時の一夏は信用してるとついさっき思ったことを思い返し、少し不満げに口を尖らせていた。


701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/08(月) 00:50:24.75 ID:thp7Lc8H0


――


 セシリアの背中側から一夏が二人を抱きとめる。ふわりとした浮遊感が、とても心地いい。

「二人とも大丈夫か?まったく……何やってんだよ」

 少し呆れたような一夏の声に、肩越しに振り返りながらごめんなさいと少し気恥ずかしそうにセシリアが返す。背中から抱き締められてそんな風に振り返ったら、顔同士があんなに近づいてしまっていて。鈴からしてみれば少し照れたように頬に朱が差す一夏を見ていると無性に殴りたくなる。

「ふん、別にあんたに助けて貰わなくたって自力で何とかできたわよ」

「お前なぁ、どうしてありがとうの一言が言えないんだ全く…」

 つんけんとする鈴をよそに、このままではずっと抱きしめていなければいけない為、二人をそれぞれ両腕に抱え直す。丁度IS装甲に覆われた前腕に腰かけ、手が膝を抱える形だ、セシリアと鈴が其々一夏の肩を掴む体勢が一番安定するとなるまで、結構な時間を要した。



702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/08(月) 00:52:59.72 ID:thp7Lc8H0


――


「ちょっと一夏、変なとこ触るんじゃないわよ?」

「さわらねーよ……全く。セシリアは大丈夫か? ……セシリア?」

 二人を抱えてゆっくりと学園へと戻る。時々鈴がこうやって文句を言ってくるほかは静かな物だ。ふと、先程から静かなセシリアに話を振った一夏だったが、セシリアからは反応がない。どうしたのだろうと一夏が横目にちらりと視線をやると、そこには顔を上気させ、潤んだ瞳で見つめているセシリアの表情があった。急な様子の変化に一夏はドキリとして咄嗟に顔の向きを鈴の方へと向けてしまう。

「……ぁ」

 一夏の背後から少ししゅんとしたセシリアの声が聞こえた。眉をハの字に切なそうにしている表情まで妙にリアルに想像できる。一夏は、そんなつもりでは無いと弁解したくなったけれど……。

「なぁによ」

 眉を逆ハの字にして睨む鈴の顔が目の前にある。

「……いや、なんでもね……(……参ったなぁ)」

 上を見上げ、軽く溜息を吐くと、黒い機体が上空から高度を下げてくるのが見えた。

「何をしているんだお前達、さっさと帰投しろ――――……って、な、なんだこれはーっ!」

 高度を合わせ、目元を完全に覆っているバイザーを粒子化しつつラウラが話しかけてくるが、改めて肉眼で三人の状態を見ると、素っ頓狂な声を上げて一気に詰め寄ってくる。

「先程から何をしているかと思えば貴様ら!なんだその格好は!破廉恥な!!」

「は~ぁ?何が破廉恥よ!アンタに言われたくないわよ白のISスーツなんて着ちゃって!」

 ISスーツはその性質は兎も角、言ってしまえばスク水+ニーハイみたいなものだ。見た目的に。水着じゃないから恥ずかしくないもんとかそういう問題なのかもしれないが。入学当初はそりゃクラスメイトのISスーツ姿に一夏は何度賢者タイムを迎えたくなったか判らない。

 特にラウラと箒のスーツは白い。驚きの白さだ。白水着一つで膨大な画像ファイルを持っている中学時代の悪友に言わせれば「白水着はエルドラド」だそうだ、一夏もその考えは嫌いでは無い。

「色は関係ないだろう色は!いいから降りろ!」

 しかし、ひと山越えて見れば賢者どころか日常になってしまうのだから慣れは怖い。おかしな格好をされない限り今更一夏も前屈みになってしまう事も無ければ赤面する事も無い。元々エロに淡泊な一夏だから、慣れるのも結構早かった。



703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/08(月) 01:09:45.62 ID:thp7Lc8H0




「落下中にIS展開なんて失敗したらどうすんのよ!?」

「その時は私がワイヤーで受け止めてやる!」


「でしたら、ラウラさんもISを解除すればよろしいのではなくて?」」


 それまで、二人のやりとりもうろたえる一夏の様子もどこ吹く風と、一夏の首に手をまわしてぴったり寄り添っていたセシリアからの発言に鈴も一夏も、言われたラウラまでが唖然とする。今までだったら「お二人はどうぞお降りになってくださいな!今日の撃墜数はわたくしがトップなのですから当然の権利ですわ」くらい言いそうなものなのに。

「…………」「…………」

 鈴もラウラも、訝しげなジト目でセシリアに顔を近づける。

(なんだ、この……これは『余裕』とでも言うのか……!?)

 セシリアの態度に違和感を感じる。とはいえ、あまりここで時間を食うわけにもいかない、元々ラウラは一番最後に着陸する予定ではあったが帰投命令が出てからもう結構経ってしまっているし、先程一番学園から遠い位置にいた箒が着陸しているのを確認している。本来とっくに着陸していなければいけない筈のこの三人がおかしいのだ。

「意外な所から意外な提案だったので少々面食らったが、そうだな、ここはあまり時間をかけて学園から迎えが上がって来る前にお言葉に甘えるとしよう。うむ。」

 セシリアの策は判らなかったが、良いというのなら甘えるとしよう。ラウラはそう決めると、一夏の前でISを粒子化させる。

「っとと……」

 一夏がそっとラウラが落ち始める前に下側に入り、ラウラの華奢な体が、同じく華奢な鈴の隣に抱きかかえられる。




704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/08(月) 01:17:58.78 ID:thp7Lc8H0




「――……ん?」


「ちょっと、あんまり詰めないでよ、狭いじゃない!」

「さ、一夏さん。戻りましょう?」

 ISを装備すると、普通の人体骨格よりも前腕部が長い状態になるのは御存知の通り。鈴とラウラが並んで抱えられるくらいの幅は確かにある。

「ちょっと待て、おい、何故こうなる?」

「何故って、スペース的に仕方がありませんわ?」

 そして確かにセシリアが抱えられている左腕側は確かに狭い。セシリアが余裕のある座り方をしているせいもあるのだろうが……。

「ちょっとラウラ……っちゃんと掴まりなさいよ危ないでしょ!」

 鈴は、セシリアが一夏の首に手をまわしている為二の腕にしがみついている。ラウラの位置的に捉まるのは鈴の体になるわけで……

「――不公平だ!謀ったなセシリア!」

「ラウラさんったら、人聞きが悪いですわ、仕方ないじゃないですの」

 ラウラは見た、してやったりと口端を上げて笑うセシリアの姿を。鈴は鈴で複雑な表情でじっと一夏の腕にしがみついて頬を寄せている。

「くっ!一夏!やり直しを要求する!」

「む、無茶言ってんじゃないわよ!こんなトコでどうやって位置の入れ替えすんのよ!!」

「ええい鈴!お前すこしくっつきすぎじゃないのか!?大体何だセシリア!貴様、その体勢はなんだその体勢は!」

 左腕で抱きかかえられ、首に手をまわしているなんて特等席も良い所じゃないか、

「――……っと、とにかく戻るぞ……っ」

「ぅっ一夏、急にそんな!?」

 一夏が白式のスラスターを吹かす。急に勢いが加わったものだから、ラウラは危うくバランスを崩しかけ、慌てて一夏の胸に顔を埋めるように抱きつく形になってしまう。

「ああっ!ら、ラウラさん!一夏さんッ!ずるいですわッ!!」

「ぇ、ぇぇえ、俺かよ……」

 狼狽するセシリアの声に、ラウラは一矢報いた気がして、一夏の胸に頬をすりよせたままセシリアの方を向く。口を尖らせているセシリアと目があって、この現状でもやはりセシリアの位置は羨ましい。向うにしてみればこちらも羨ましいのかもしれないが……とりあえず今回は引き分けには持ち込めたか、ラウラはふっと小さく笑った。

「ふふん、詰めが甘いなセシリア?」

「ふん、何の事ですの?」

 そう返すセシリアも、少し口を尖らせつつも目元は笑んでいる。

「あんたイギリス帰ってちょっと白々しくなったんじゃないの?」

 其処に鈴も絡んできて、着陸までの短い間だったけれど、一夏を余所に女三人は姦しく話し続けていた。一夏はと言えば、首筋に触れる手の感触に気が行っててそれどころでは無くて無言を貫いていた。もっとも、口が挟める状態だったとしても、口を出したら出すだけ話がこじれただろうから、結果的にはこれでベストだったのかもしれない。




719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/18(木) 23:30:24.81 ID:tJ/GqQkH0


――――――



720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/18(木) 23:31:29.53 ID:tJ/GqQkH0



「待て……シャルロット!!」

 箒の伸ばした手は、外から聞こえたどよめきに声を阻まれて届かなかった。ピットの入り口をふさぐように集まっている人混みの中へ身軽に身を滑り込ませていくその髪を追って箒も人混みの中へと追いすがる。

 箒はそこにある光景は知らない。しかし、大体予想はつく……ずっと一夏を見ていたから、分かってしまう。一夏は『特別』を見つけた、そういう顔をしていた。その特別になりたかった。けれど……もうそれは不可能なのかもしれない。そもそもこのタイミングで見つけたということは相手はセシリア以外にはありえない。

「―― 一夏ァ!?お姫様抱っこしながら帰還するなどいくらなんでも……!!」

 人混みから一歩飛び出した箒の目に飛び込んできたのは、一夏に三人の女子が抱き着いていて、それをシャルロットが呆然と見ているという光景だった。もはやそこまで覚悟していても、言葉にしないといられない。そんな光景がそこにあった。

「な、なんだこれはぁあぁぁぁぁぁああ!?」

 セシリアをお姫様抱っこで帰ってくるくらいは予想したが流石に三人とか訳が分からない。箒は、シャルロットを止めに来たことも一瞬で忘れて思い切り叫んでしまった。呆然としていたシャルロットがそんな箒の叫びではっと我に返る。

「あれ、箒?シャルロットも、もしかして出迎えてくれたのか?」

 この期に及んでこの一夏と言う名前の大ボケ男はわざとやっているのだろうか。シャルロットも箒も一夏の表情から一夏が本気で言ってるのだとはわかるけれど……本気で言っているからこそたちが悪い。そんな状況で降りてきてどう思われるか全くわかっていない。シャルロットはプルプルと肩を震わせている。

「い、い、一夏……どういうつもり、だい?」

 漸く、絞り出すようにシャルロットが口を開く。その端正な顔立ちの眉間には深く皺が刻まれ、少女の一夏への想い、というよりも、この場にいる大多数の生徒が似たような思いを抱いていて、クラスメイトである彼女はその思いが特に強い部類ということ。思いの強さで言えば、いま、一夏の腕に抱かれている三人もまた其々がそれぞれの想いであることはまた別。

 するりと、三人の中でラウラが抱擁から逃れるように飛び降りる。特にシャルロットと仲がよく、ルームメイトでもあるラウラにとって、親友であるシャルロットの機微は大きな意味を持つ。鈴も鈴でいちいちここで揉める必要は無いと一夏の腕から飛び降りた。

「――セシリア?お前も……」

 着地したラウラが、セシリアがまだ降りていないことに眉を顰めて振り返ると、そこには降りようとして狼狽えるセシリアと、セシリアを抱いた腕を引き寄せている一夏がいた。





721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/18(木) 23:40:58.15 ID:tJ/GqQkH0



「何もねーよ、箒。シャル。俺がセシリアをこうしてることに、何もおかしなことなんかねぇんだ」

「え、ちょっと……い、一夏さん!?」「一夏……」「い、いち……か……」「……ふぅ」「ちょ、アンタまさか……」

 一夏の言葉にセシリアは一夏が何を言い出すのかと狼狽えつつも、僅かな期待を持ってその横顔を見つめる。その表情を見て、各人の顔色が変わる。或いは諦めにも似た色を見せるラウラ。普段の素直さ、穏やかさにはない、絶望にも似た色を見せるシャルロット。睫を伏せ、全てを受け止めようとする箒、呆れたように半笑いを浮かべる鈴。



「――俺は、織斑一夏は、セシリア・オルコットが好きだ。愛してる!!  ――……個人として、男として、心から、そう思ってる」



 既に朝のエマージェンシーにコールのかからなかった生徒達も寮から登校し始めているのだろう、そんな朝の学園の話し声さえ遠くに聞こえる程、うみねこが鳴く声さえ聞こえる程に、周囲が静まり返った。

 一夏は白式を解除し、顔を真っ赤に染め上げ瞬きする事さえ忘れたセシリアに一度視線をやると、僅かに頬を朱に染めてセシリアを抱えたままピット内へ向け歩き出す。入り口をふさいでいた整備科生徒達の人の群れが二人の進む先だけ綺麗に割れた。




722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/18(木) 23:42:09.82 ID:tJ/GqQkH0


――


「……はぁ、ったく……アンタってほんっと、相変わらず空気読めないわよね!」

 鈴が呆れ顔で深々と溜息をつきながらその背に続く。一夏の告白がショックじゃないわけではない。少なくとも一番好ましいと感じている異性は一夏であることは変わりはない。だからと言って今回の一夏の判断に異議を唱えるつもりもない。セシリアが一夏を慕っていることは前から知っていたし、最近は殊更セシリアからも主張されている。セシリアにとって望む結果になったということはとても嬉しい。幸せそうなセシリアを見るのは実にいい気分だ。なにより鈴は「セシリアを選んだ」その一夏の判断に心から同意ができた。

(まだゲームセットじゃないし、だってアタシは軸が違うもの)

 だって、セシリアを一番理解してるのは自分なのだから。「一番好きなのはアタシだ」そこにブレがないからこそ、少しそれは人間として軸がずれてるかもしれないと思ったが、IS学園ではそう珍しくもないはずと思えば気は楽だった。



723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/18(木) 23:48:25.00 ID:tJ/GqQkH0


――


「…………そうか」

 大きく深呼吸してから、晴れ晴れとした表情で箒がそれに続く。箒はすぐ手が出るし一夏のことになると冷静になれないという面があったけれど、それと同時にクラスメイトを大切に思っていたい。IS学園に来るまでは、篠ノ之束の実妹であることが様々な重荷だった。IS学園でも時折それは重荷だった、誰も彼もが腫物を触るように接する。それがたまらなく嫌で、そんな中でそうではない、ISが開発される以前の幸せだった時期の思い出に、幼馴染に縋る気持ちは間違いなくあった。

(……私は、一夏の優しさに甘えていただけなのかもしれん。)

 今、箒の周りには沢山の仲間がいる。誰の妹であることを前提としない友人たち。一夏の幼馴染としての自分を、箒を箒として、同じ男に惚れた恋のライバル達。特に、実質的なクラス代表ともいえるセシリアは孤立しがちな箒にとっては、特に……そんな自分を対等に見てくれる仲間に恋で敗れたのなら、それは、どんな感情を起こすのだろう、ずっと疑問だった。

「なんだ、思ったよりも……嬉しいものなのだな……」

 もし一夏がセシリアを泣かすことがあったら一夏を殴ろう。セシリアが一夏を裏切ることがあっても一夏を殴ろう。自分はどこまでも自分で、それ以外ではないし、それ以外になる必要なんかないのだから。



724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/18(木) 23:52:59.79 ID:tJ/GqQkH0


――


「……嘘だ……嘘だよね、一夏……」

 去ってゆく一夏の背を見つめながら、うわ言のように呼びかけるシャルロットの声に応える者はいなかった。

 その問いに対する正確な回答ができる人間は織斑一夏を措いては他にいなかったし、その一夏がこのような嘘を言う人間ではないことは何よりシャルロット自身もよくわかっていたし、膝から崩れ落ちるシャルロットの傍らにいるラウラにだってわかっている。

 織斑一夏の心はセシリア・オルコットに向いている。それは抗いようのない事実としてこの場に存在していた。

「僕は、これからどうすれば……」

 シャルロットにしてみれば、突然はしごを外されたようなものだった。父親の命令でIS学園に男子生徒として入学したシャルロットは、一夏に接して彼に恋をして、自身をまっすぐ見つめてくれる彼の為に、女であることを偽らず、堂々と彼の前に在る事を決めた。一夏の為ならそれこそなんだってできる覚悟はあったし、なんだってするつもりだった、一夏とは自分を殺してでも公私共にベストなパートナーであるために努力した、尽くした。

 それが、彼の傍にありたいと願い、自己に縁って自身を輝かせてきたセシリアとの最大の違いだった事は、もうシャルロット自身が分かっていた。

(ずるいよ、セシリア……キミを憎むのは筋が違うってわかっているけど……)



725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/18(木) 23:59:15.20 ID:tJ/GqQkH0


――


「……シャルロット、大丈夫か?」

 ラウラは、思った以上に冷静にこの状況を観察していた。

(むぅ……これで三連敗か)

 セシリアにしてやられるのはこれで三度目だ。しかも連続。別に一夏がセシリアが好きだろうと、あれは自分の嫁であることには変わりはないし、正直何が変わるのかイマイチ理解できない。セシリアは尊敬できる級友の一人だし、やられっぱなしでは堪らないとは思うのだが、少なくとも現時点では自分よりも強い。

(何、優秀な遺伝子はたくさん残すに越したことはない。)

 セシリアの才能と一夏の学習能力の速さと特異性を持った遺伝子、実に興味深い。本人に言ったらどう思われるかは別としてそんな風に思う。

「行こう、シャルロット……そうして俯く者を誰が尊敬する?」

 尽くしたいという健気な感情は美しい、故にシャルロットは美しい。だが、ただそれだけではないのだ、優しく、一途で、愛らしい、そんなものは全員がそうだ。尊敬される要素がほんの少しセシリアには強くて、一夏にとってその要素が好ましいもので、一夏がそれを知りそれに触れる機会が多かった。ただそれだけなのだ。悔しいならば、尊敬される自身になればいい。

「……ラウラ……うん」

 眦にいっぱい涙をためたシャルロットがラウラの手を借りて立ち上がる。周囲の整備科の先輩たちは、ピット内に戻ったセシリア、鈴のISのメンテナンスを開始すべく、ピット内に向けて歩き始めていた。




726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/19(金) 00:02:38.08 ID:Zxz67M/S0


――


「あ、あの……一夏さん?」

 セシリアをいわゆるお姫様抱っこした体勢のまま、白式のメンテナンスを行う整備科の面々の前でじっと立っている一夏に、整備科の面々もどうしたものかと顔を見合わせている。その中にはイギリスからの留学生の姿も見え、ブルー・ティアーズ担当の先輩方もいることに気付いたセシリアが、少し名残惜しさを感じながらも、公衆の面前での大告白をやってのけた、想い人……今となっては、想い人というよりは「彼氏」の顔を覗き込みつつ声をかける。とりあえず降ろしてもらって愛機を預けなければブリーフィングに向かうこともできない。

「ああ、大丈夫だ」

 少し離れたところでは、中国語の怒号が飛び交っていた。キャノンボール・ファスト専用パッケージともいえる「風」パッケージを強制パージなんかしたのだから、鈴がきっと上級生に大層怒られているのだろう。

「……え、あの、一夏さん?」

「大丈夫だ、誰が何と言おうと、俺はセシリアを……」

 ぐっとセシリアの背を支える腕に力がこもる。僅かに頬を染めた一夏の顔が近づき、少し熱っぽいような眼差しで瞳を見つめられると、セシリアも一瞬呆けたようにじっと見つめ返してしまう。

「ん”っん-!」

 イギリスの整備科上級生の咳払いではっとセシリアは持ち直したけれど、一夏は未だに二人の世界から帰ってきていない。そもそも今まで一夏は想われる側にずっといた。しかも自覚症状がない状態でだ。それが、惹かれつつあった状態からイギリスでの短くも濃密なハプニングの連続で、一気に気持ちが高まった状態となり、帰りの機中で、死地に飛び立つセシリアから受けた「おまじない」が先程の一夏の行動に結びついたわけで。

「いえ、そーではなくて……っ!?」

 告白するというのは。膨大なエネルギーを生む。好きという気持ちを抱え込むことは言ってしまえばだれにでもできる。それを相手一人に伝えるだけでも結構大変な労力を必要とする。傷つけてしまうかもしれない、自分が傷つくかもしれない、それでも想いを伝える、言葉にする。ただでさえそんな経験がなかった一夏にそこまでさせたエネルギーはすさまじく、そんな簡単に覚めるわけがない。

「セシリア……好きだ……」

「え、ええっ!?ちょっと、い、一夏さん!?そんな場合では……お、およしに……」

 ぐぐとセシリアをさらに引き寄せ、唇を交わそうとする。セシリアも抵抗を試みるように手で一夏の胸元を押して、顔を近づけさせまいとするけれど、ISスーツ越しの一夏の胸板に触れているという感触に自然と力が緩んでしまい、そして二人の顔と顔が近づいて……



727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/19(金) 00:05:24.43 ID:Zxz67M/S0



――パシーン

 高らかに竹刀の音がピットに響いた。

「いい加減にせんか!この……バ、バ、バ、バカップルが!」

 一夏の顔面を払い胴気味に撃ち抜いた箒が、両手を腰に見下ろす。セシリアはといえば、打たれながらも落とさないようにとゆっくり抱擁を解く一夏の腕の中からするりと降りて、顔面を抑える一夏に心配そうに寄り添っていた。

「い、一夏さんっ、大丈夫ですの!?  箒さん!……助かりましたケド……いきなり顔を狙うなんてあんまりですわ!」

「セシリア、いまのうちにブルー・ティアーズを預けたほうがいいのではないか?」

 いつの間にか、いや、多分箒と一緒にいたのであろうラウラが肩を竦めながらちらと整備科の上級生のほうを見る。

「まったく、やっぱりセシリアじゃ……って思っちゃうよ」

 その傍らには、未だに不服そうにしているシャルロットもいた。

「ちょーっと、アンタ達まだぐだぐだやってるわけ?さっさとしなさいよね、ほらセシリア、IS出して」

 甲龍を預け終えた鈴も輪に戻ってきて、一夏をいたわるように寄り添っているセシリアの腕をつかみ、強引に引きはがす。セシリア自身もいいかげん機体を預けなければブリーフィングどころか一限目に遅刻してしまうことは分かっていたから、口では抵抗しつつも素直に従って。

「ぁっ、ひ、引っ張らないでくださいまし……まったく、もぅ……」

「そら!一夏もいつまで鼻を抑えてうずくまってるつもりだ!全くお前たちときたら……」

 箒が一夏の腕を掴んで立たせたところで。

「…………みんな……山田先生が困ってる……」

「あらあら……ふうん、へぇ」

 制服に着替え終えた簪が姉の楯無と共に輪に戻ってきて未だ機体を預け終えてもいない二人と、それを取り巻く一年専用機持ち達を見回す。一夏とセシリアを取り巻く状況は、大きく変わっていたけれど、やっぱりというか、結局というか。


「相変わらず世話が焼ける」


 結局は。その一言に尽きた。




728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/19(金) 00:10:37.22 ID:Zxz67M/S0


――――


「はー、やっと部屋でゆっくりできますわ……」

「ま、念願かなったんだしいいじゃないの。まさか一夏があんなに積極的になるなんて、イギリスで何があったのよ?」

 ブリーフィングもその日の授業も無事終えて、寮の廊下を鈴と二人で部屋に向かう。休み時間のたびにクラスメイトや他クラスの生徒にまで押しかけられて質問攻めにあったセシリアはぐったりと肩を落として疲れ切った表情だったけれど、それでもどこか嬉しそうにしている横顔を見ながら、鈴はニヤニヤと笑っていた。

「も、質問は明日にしてくださいな……」

「いいわよ別に、話してくれる時に話してくれれば ――――あ、そうだ……」

「なんですの?」

「――おめでと、セシリア」

 ドアのロックを解除しながら笑いかける鈴の表情は、本当にうれしそうで、本当に祝福してくれていることが伝わってきて、セシリアは思わず目を丸くして鈴が先に部屋に入っていくのを見送った。勿論、誰に祝福されなくても構わない、セシリアが一夏を好きだという気持ちは何者にも揺るがすことはできないし、ゆらぐつもりだってない。ただ、クラスメイト達はともかく鈴をはじめとした、一夏を想っていた仲間たちは特にそんな簡単に祝福してくれるようになると思っていなくて、ずっと心残りだったから、本当にうれしくて。

「――……っ!」

 感極まって、というのはこういうものなのだろう。引いていたキャリーバックから手を放して、両手で顔を覆う。涙があとからあとからあふれるけれど、悲しくなんてない。嬉しい、嬉しくて涙が止まらない。キャリーバックを廊下に置いたまま、居ても立っても居られないセシリアは涙も拭わないで鈴を、親友を追って部屋の中に駆け込んだ。


「――鈴っ!!」

「――なぁによ、気持ち悪いわね、泣くことないじゃない……」

 床に転がるコンビニ袋を蹴飛ばして鈴にひしと抱き着くセシリア、それを抱き返しながら、瞼を閉じてセシリアの背をなでる鈴。

「わたくし、わたしくは……最高の友人を持ちました…………わ………………ところで今何か蹴ったような……ぇ?」

「何よ今更、じゃ、親友。一緒に部屋を片付けよっか?」

 二人が抱き合う周囲に散らばるコンビニ袋、お菓子の袋、空のペットボトル、出しっぱなしのゲーム機、ボードゲーム、ぐちゃぐちゃのシーツ、起き抜けのままと思われるベッド。惨憺たる状況の部屋に今更気づいたセシリアが幸せな嬉し泣きの表情から一変、あんぐりと口を大きく上げて息を呑む。




「……な、な、何ですのこれはぁぁぁあああ!?」



IS-ifストーリー Cecilia Alcot「イギリス旅情編」

      -fin-

第一部『鈴「あっづー」セシリア「な、何ですのコレは……」』 一旦 完



729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(熊本県) [sage]:2011/08/19(金) 00:12:31.60 ID:Utn/gz9No
乙なんだぜ!

730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/08/19(金) 00:15:29.99 ID:Zxz67M/S0
ということで、第一部終了でございます。
大変長くお待たせしました。見て頂けまして本当に感謝です。

本格的なイチャラブは第二部の予定です。

一夏×セシリア
鈴×セシリア

この方向です。

731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/08/19(金) 00:57:54.03 ID:KRkGuXj3o
乙!
一夏の告白は聞いてる方が恥ずかしくなるような状況だなww
幸せそうなセシリアはいいね。これは二部も楽しみだ

732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/20(土) 02:58:00.53 ID:ZmY0Uvkto
乙!
続き楽しみにしてます。

735 :IS ifストーリー Cecilia Alcot  ◆l5R7650ANI [sage saga]:2011/08/23(火) 01:05:51.57 ID:VgP8bmRI0



― エピローグ ―


「おい、愚弟よ」

「……いや、千冬姉、さすがにその呼び方はないんじゃ……」

 帰ってきた日の夜、セシリアと鈴が騒ぎながら部屋を片付けている頃、織斑姉弟の部屋。

「お前、セシリアに告白をしたらしいなぁ?しかも帰投直後の他の生徒もいる目の前で」

「な、なんだよ、千冬姉は……文句あるのかよ」

「いいや、無い。ふふっ、お前にしては実に情熱的でいい告白じゃないか、それで?どうしてオルコット、いや、セシリアを選んだ?」

 上機嫌にタンクトップに短パン姿で缶ビールを美味そうに飲みながら、千冬が告白の結果ではなく告白の理由を問う。結果は聞くまでもない、暴行未遂を赦す程にあの少女が弟を心底想っているのは知っていたし、例え答えをセシリアが保留していたとしたって、それは時間の問題だろう。

「……どうしてって、セシリアが好きなんだよ」

「また下半身で考えてるんじゃないのか?このケダモノめ」

「ちげーよ……ったく。……いや、あんな事しちまった俺には、本当はこんな告白なんて許される立場じゃないのかもしれないけど……そんな俺でも、赦してくれてるんだ、そんな俺を、セシリアは好きでい続けてくれるんだって……それで、学園に帰ってきたらみんながいて、また、前みたいに着かず離れずになるのかと思ったら、居ても立ってもいられなくて」

 一夏の回答に千冬は驚いて目を丸くする。

「……お前……まさかあいつらに想われてることはひょっとして気づいていたのか?」

「……どうして俺なんか、とは思ってたけれど、流石に今回の旅行でセシリアはそれなりに俺を想ってくれてるって自覚はあったよそりゃ……ただ……って、なんだよ千冬姉、その顔は……」

「…………いや、我が弟ながら、とんだクソ野郎だと思ってな。まあ、いい、私から見てもよくわかるほどだったがな」

 セシリアにしか思われていないと思っていたと真顔で言う弟に軽い眩暈さえ覚えながら、結局収まった所がセシリアで良かったと深く溜息を吐く。

「な、なんだよ……」

「お前が思っている以上に、セシリアの想いは深いぞ?」

「……わかってるよ、でも、愛したいんだ、セシリアを」



「…………ふん、上出来だ」



千冬の声はいつになく優しいものだった。



                     END








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