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  • 上条「もてた」②

自分用SSまとめ

上条「もてた」②

最終更新:2011年09月04日 22:18

meteor089

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上条「もてた」 ① ②

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142 名前:28[sage] 投稿日:2010/09/17(金) 11:31:45.36 ID:vTQA5tko [2/2]

視線が、痛い。
当麻はファミレスでアイスティーを啜っている。
土御門たちは天草式の隠密術が相手ではさすがに分が悪いのか、見つけてくれる気配はなかった。
……いや、この現状を打開してくれるだろう点は有難いが、何を言われるか分かったものではないだろう。

隣に五和がいて、正面に対馬がいて、当麻から一番遠い席に姫神がいるこの現状。
さっきまで姫神と触れ合ってドキドキしていただけに、対角線上から飛んでくる
ジットリした視線は、当麻に絡み付いて離れない。

配座を決めたのは年長の対馬だった。
姫神と上条の関係が気になって気になって仕方ない五和に口出しをさせず、
そして上条にも文句を言わせず、姫神にも敵対するでも迎合するでもなく接し、
ファミレスのやや奥まったところに連れてきたのだった。

「そろそろ落ち着いた?」
「ええと……」

余裕のある微笑で対馬がそう上条に尋ねた。
しかし落ち着いたかといわれてもこれだけ不安定な座席で落ち着けというほうが無理だ。
さっき下着を見てしまった五和はうつむいて顔を真っ赤にしたままもじもじしているし、
姫神は口をむっと曲げて上条を睨みつけている。
そして対馬は何を考えてこんなことをしたのかがさっぱり読めない。

姫神は内心で、なぜ上条からもっと疑う余地のない決定的な言葉を貰わなかったのかと
自分に苛立ちを感じていた、
好きだ、と言ってもらっていたなら。人の彼氏に手を出すなと、一言それで済ませられるのに。
今告白してもらえるところでした、だから邪魔しないで下さい、
なんてのは恋敵かもしれない相手に言う言葉では断じてない。

「一応言っておくと、さっき五和が着てた下着は試着してただけだから、
 今は別のを着てるわよ。変な想像はしないことね」
「はい?」
「つつつつつつ対馬さんっっ!! 上条さんの前でそんな話しなくていいですっ!」

ガタリと音を立てて五和が身を乗り出す。ちょうど上条の目の高さで、胸がたゆんと揺れる。
上条慌てて目をそらすが、そらすのはたゆんたゆんたゆん、くらいまで見届けてからだ。
上条の気づかないところで、姫神は劣勢を自覚して顔をゆがめた。対馬は薄く笑った。

「上条さん。さきほどのは……女同士で見せ合うだけならたまにはちょっと大胆なのもいいかなって、
 そういう勢いで着ちゃっただけでいつもはあんなにはしたないのは着けてなくて、あの、その」
「でも五和、買ったわよね?」
「そそそれは決して上条さんがうっかり似合ってるよって言ってくれたからとかそういうのじゃなくて!」
「上条君。見たくなったら五和はいつでも見せてくれるって」
「だから対馬さん!」

見せてくれなんて言ったらすごいことになるだろう。五和も、自分も、そしてきっと姫神も。

146 名前:28[sage] 投稿日:2010/09/18(土) 10:39:02.00 ID:Rs0RAcEo

五和は目の前にいる女の子をこっそりと観察していた。
女教皇(プリエステス)様には負けません、なんて思ってましたけど、そうですよね。
ここは学生の町ですもんね。上条さんみたいにカッコイイ人は、お付き合いしてる人、いますよね。
ため息をついてしまいそうなのを隠しながら、姫神の二の腕や頬などを眺める。
いいなあ。対馬さんもだけど、手足とか顔の輪郭がほっそりしてるのって、羨ましい。
手足が太いことを気にしている五和にとって、姫神の体のラインは羨望の対象だった。

そういう五和の思考を分かっているからこそ、対馬は無理矢理ファミレスに上条を連れ込んだのだった。
傍観していれば五和が「き、綺麗な彼女さんですね! 私はお邪魔でしょうから!」なんて言いだすのは
言うまでもなく分かりきっていることだった。
天草式は現在、世界を股にかけた流浪の民だ。定住型の人生を送る上条とはすれ違いが多い。
それが理由で、学園都市に定住する女に盗られるなんてのは、面白くない。
女教皇(プリエステス)に盗られるのなら、アリだ。上条に出会ったのはあちらが先らしいし。
なにより見てて面白い。五和と女教皇(プリエステス)なら陰湿なことにはならなさそうだし。

「それはそうと、遊んでるところをむりやり引き止めてごめんなさいね。デートだった?」

ビクリと、五和の肩が震えた。核心を突きすぎた質問だった。
変わらず姫神が上条を見つめ続けていた。

「えっと、まあ。追われながらでデートって言うのかは怪しいですけど、デートでした」
「手を繋いで歩いたり。ゲームセンターで遊んだりしたもんね。当麻君」

見る見るうちに五和の顔が曇る。意外な展開に対馬はすこしだけ戸惑った。
上条は相当鈍いらしい、というのが建宮あたりの見立てなのだ。
男連中のくだらない話はだいたい聞き流しているが、上条の話は別だった。可愛い五和のためにもなる。
ところが実際はどうだ。デートしてますなんて言葉が出てくる辺り、
上条はこの少女を意識しているらしいではないか。

「そっか、彼女と遊んでたのね」

これが盗りあいなら、対馬としては五和をひたすらプッシュするだけだ。
だがすでに彼女持ちなら、さすがに五和の本音とよく相談しなければならない。
奪うのか、諦めるのか。
だが、上条の返事は予想と違い歯切れが悪かった。

「いや、彼女……とは言えないというか。その、まだ」

確かに付き合ってくれって、告白はされていなかった。
姫神だってそういう瞬間をずっと待っていた。
だけど今この場で、何も正直にならなくたって良いのに。
私は当麻君の彼女だって、そう言ってくれたって良かったのに。

149 名前:28[sage] 投稿日:2010/09/19(日) 11:54:57.79 ID:udGTBpMo [1/3]

「そういや二人はなんで学園都市に?」

色々とまずい空気を換えたくて、上条は気になっていたことを対馬にぶつけた。
科学サイドの頂点に立つこの街に、日本人といえど外部の人間はそうやすやすと入れない。

「ん、ちょっと仕事でね」

対馬は上条に分かるよう姫神に目線をやった。

「ああ、姫神もそういうの、知ってる人ですから。っていうかイギリス清教の保護を受けてるってコトは
 姫神はこの二人と無関係ってワケでもないんだな」
「当麻君。この人たち。魔術師なの?」
「イギリス清教の……傘下って言うとまずいのかな。まあイギリスで活動してる天草式十字凄教ってグループの
 メンバーになるんだ。この二人は」
「よろしくね。あなたのことはステイルさんから聞いてるわ。隠し事をせず話せて気楽でいいわね」

五和は目の前の女性の最も重要なことを、つかみ損ねていた。
上条の彼女の席にきちんと座っているわけでは、ないらしい。
競争相手はこの方と、自分と、女教皇(プリエステス)様と、
インデックスさんと、そして他にもいるかもしれない。
……どのくらい、上条さんと近づいてるのかな。
ゴールテープを切った人間がまだいない以上は競争相手たちに差がないのは確かなのだが、
誰が先行しているのか、それはものすごく気になる問題なのだった。

「それで、仕事ってのがあの店で……?」
「ちょっともう。思い出さないでよね。あれはついでよ。ここは日本人の学生の町でしょう?
 やっぱり、こういうところの下着が一番体に合うのよね。五和、すごかったでしょ?」
「ちょ、ちょっと対馬さん! だからもうその話はやめてください!」
「そういうこと言うなら、五和こそもっと上条君と話せばいいじゃない」
「えっ? あ、そんな」

対角線上にいる五和に、対馬は自分達にしか分からない方法でコッソリと言葉を伝える。

「ほらほら、もうじきアックアの件で五和は同棲するんだから。
 ここで慣れておかないと後で喋れなくなるよ?
 それに隣の子に差をつけられたままじゃ、今度来たときに
 落ち込むようなことになってるかもしれないし」
「……それは、嫌です」
「でしょ?」

ついさっき体中を見られてしまった相手だ。恥ずかしくて死にそうだ。
でも上条と喋りたいというのも、五和の本心だった。
「あの、上条さん」


150 名前:28[sage] 投稿日:2010/09/19(日) 11:55:32.66 ID:udGTBpMo [2/3]

「あの、上条さん」

返事をしようとした上条を、遮る声がした。

「当麻君。お茶なくなったみたいだから入れてくるね。また紅茶でいい?」
「え? あ、ああ。それで頼む」
「……ちょっと四つは持てないから。手伝ってくれると嬉しい」
「あ、それじゃ私やります!」
「そう」

無感動に姫神が五和を見つめた。ボックス席の通路側に座った姫神と五和が動くのは自然なことだ。
姫神は上条に声をかけていたが、最初から五和を誘い出す気だったのかもしれない。
二人でドリンクバーで氷を足し、ジュースを注ぐ。無言の中に緊張感があった。
火蓋を気って落としたのは、姫神だった。

「貴女は。当麻君とどういう関係なの?」

五和はそれに怯みそうになった。当麻君という響きは、一体いつになれば自分の口から付いて出ることだろう。
そしてどういう関係なの、とこちらの目を見て言えるその気持ちの強さは、
まさに彼女という席にいる人のそれに近かった。

「お仕事の関係で知り合った人です。ヴェネツィアを旅したり、最近はフランスのアビニョンを二人で歩きました」

柔らかい笑みを返す。それはある種の攻勢防御。
決定的な切り札を出せないことが激しく悔やまれる。
近々、上条さんのお宅に仮住まいさせていただく予定なんです、その言葉がどれほどのアドバンテージを引き出せることか。

「貴女にとって。当麻君はただの仕事上の知り合いなんだね。当麻君から見たら貴女はただの知り合いなのかな」
「そういう姫神さんは違うんですか?」
「私はクラスメイトだから。毎日当麻君とは会ってるし。今日もデートをしてる」
「異性のお友達と遊ぶのをデートって言うんですか? すみません、学園都市の流行語とかは押さえきれてなくって」

話すことはまだまだあった。だが、手際のいい二人の目の前にはすでにドリンクは出来上がっていた。
手にグラスを持ち、歩き始める。しかし二人とも、自分が黙ったままで会話を終わらせて、
暗黙のうちに『負け』を認めてしまうのは気に入らなかった。

「デートに誘ってくれたのは当麻君。それと学園都市でデートっていうのは恋人同士がするものだよ」
「でもお付き合い、してないんですよね?」

あっという間に座席にたどり着く。
五和は劣勢を自覚していた。だって自分の言葉は。

「貴女だってそうだよね?」

お前もまた上条当麻に好かれてなどいないんだぞという、自分にナイフを突きつける言葉だからだ。
五和が怯んだ隙を姫神は逃さない。先ほどの席とは違う、上条の隣に姫神は腰掛けた。

161 名前:28[sage] 投稿日:2010/09/27(月) 01:56:49.56 ID:jun65ZMo [1/2]
意外にも、二人が席に戻った後、対馬と姫神の二人が談笑をはじめた。
内容は学園都市の奇抜さに関する、他愛ないものだ。
ただし、上条を取り巻く事情はそう穏やかではない。水面下で、色々と変化があった。

まず最も重要なことは、姫神が腕を絡めていることだろう。
あからさまにならない程度に、しかしそれでいて明確に姫神は上条に寄り添っていた。
二人の関係が恋人か否かを店員辺りにジャッジさせたら間違いなく恋人だと言うだろう。
ソファ型の座席についた手をそっと上から握られて、上条は冷静ではいられなかった。

他にも気になって仕方ないのは、なんともいえない表情をした五和が自分を見つめていることだ。
その表情を色で表現するなら、灰色に水色を混ぜたような色、とでも言えば良いだろうか。
怒りのような峻烈な感情は読み取れない。
不安と疑念の灰に羨望と、そして嫉妬の青を垂らしたような表情。
――カップルではないんだけど、まあこれじゃあそう見えるよなあ。
上条は五和が、カップルを目の前にしているせいでそんな表情なのだと予想していた。
上条も彼女のいない男子学生として、ファミレスでイチャつくカップルを見ればモヤモヤするものだ。
五和もおそらく付き合っている彼氏はいなさそうだし、自分と同じような気持ちを抱いてもおかしくない。

ぐに、と足を踏まれる感触がした。

「……えっと、五和さん?」
「どうかしましたか、上条さん」

つーん、と冷たい声ですっとぼけられた。
別に痛くはない。でもなんだか勘違いで普段は尊敬のまなざしで五和に見られている上条としては、
五和がやけに冷淡な感じがするのが気になるのだった。
足はまだどけてもらえない。

「当麻君。どうかした?」
「え、あ、いや」
「あなたには関係のないことですよ」

姫神に告げ口するような形になるのをためらっているうちに、五和が姫神の質問を切って捨てていた。
意外な五和の対応に上条が驚いて見つめていると、それに気づいた五和が拗ねたような表情をした。

五和は、上条の驚いた表情をみて、傷ついた。
きっとこの人は、どうして私がこんな態度をとってしまうのか、全くわかってないんですよね。
気になる人のことだから、こうなってしまうのに。

カランとなる氷の奥で、対馬はその光景を面白く見つめていた。
……私は青春、過ぎちゃってるなあ。
そういう思いを感じてちょっと感傷に浸るところも、あったりはするのだが。

166 名前:28[sage] 投稿日:2010/09/28(火) 11:12:11.52 ID:J49Amt.o [1/2]

「当麻君。これからどうするの? あまりお邪魔しても。二人に悪いし」

ケーキを頼んだ対馬と五和も、すでに食べ終えている。
ドリンクバーで元をとるにはどうせ20杯くらいは飲まなければいけないのだ。
缶ジュース二本飲むのと同じと考えれば、目の前のグラスに注がれたアイスティを干してしまえば割には合う。

思案していると、五和がさらに強く足を踏むのが分かった。
五和にとっては、それは意思表示だった。
足を踏んでいるのだから確かに上条への不満だとか怒りの表れではあるのだが、それだけではないのだ。
不満があることに、気づいて欲しい。気遣って欲しい。自分のことを見て欲しい。
それは精一杯の思いの発露であり、そしてそれが限界でもあった。

「当麻君?」
「あ、なんだ?」
「五和さんに足、踏まれてるの?」

なにも分かっていないようなすっとぼけた口調の姫神のその一言は、けん制だった。
たまたま足を踏んだだけなら仕方ないが、意図的に足を踏むなんてことは五和はするはずがない。
そういうポジションの確認だった。
五和には、上条に触れさせない。

すっと上条の足の上から重みが引いた。だがそれは撤退を意味しない。
顔を上げると朗らかな五和の笑みがあった、

「もしよろしかったら、少し街を案内していただけませんか? 私達は不慣れですし」
「……? 五和たちって仕事で来てるんじゃないのか?」
「いえっ、あのっ。荒事があると土地勘の有る無しは大きな違いですから、
 元から街をざっと歩く予定だったんです。だからこれはついでというか、あ、
 むしろこっちが大事っていうか……」

はしゃぐような感じで、五和が上条を誘った。
隣では対馬がにっこりと微笑んでいる。そうしてくれると嬉しいんだけど、というような表情だった。

「でも。今日は私とデートしてくれるんだよね?」

隣の姫神が、斜め下から見上げるようにそう呟く。
あざとい甘え方ではない。
だが上条の肩に僅かに頭を預け長い髪が制服の袖を軽く擦っていくその様はえもいわれぬ艶がある。

だいたい、さっきから姫神にはドキドキしっぱなしなのだ。
横に座られたせいで、髪を撫でてみたりしたい気持ちを押さえていたりするのだ。
案内を断る友達甲斐のないことはしたくないが、でもやっぱりデートを優先したいという気持ちが、
当麻の中で少しずつ強くなっていた。

174 名前:28[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:15:04.78 ID:pu2ffrYo [2/3]


上条の目線の動きを、対馬は眺めていた。
このまま座して待てば、上条がクラスメイトの子のほうに傾いていくのがなんとなく分かった。
それは、面白くない。

「まあ、追いかけてきてた子も撒けたみたいだし、そろそろ出ない?」
「え? あの」
「まだ紅茶が残ってるから困る?」

クスリと笑って、上条の前のグラスを手に取る。
上条が口をつけていたそのストローに、ためらいもなく口をつけて残りを飲み干す。

「あっ……」
「つ、対馬さん?!」

構図としては漁夫の利といえば良いだろうか。
とはいえ対馬に他意はない。年下のあどけない上条は男性とは意識しない。
もちろん二人の若い女の子達にとって上条はまさに意中の男性なわけで、
間接キスは二人をからかう意味を多分に込めてやったことだった。

そりゃ五和が本気になるだけの子だからね、あっちから本気でアタックされたら分からないけど。
15、6才を20才そこらの自分が相手にするのはややためらうが、7年もすれば上条も大人だ。
上条は、良いところも悪いところも知りすぎた天草式の男衆よりは気になる存在だった。

「さて、お代わりはもういらない?」
「あ、はい。いや……」

上条はチラチラと対馬の前に置かれた自分のグラスを気にしている。
照れた雰囲気が可愛かった。

「ちょっとだけ残ってるのが、そんなに気になる?」

対馬は自分が悪乗りしているのを自覚した。
その残りを再び上条が吸えば、今度は上条が対馬と間接キスすることになる。
若いし、意識しちゃってるんじゃないかな、と対馬は上条の下心を見透かした。

「い、いやべつに! ってあいでででで!」
「あ、ごめんね。当麻君」

重ねられた姫神の手が、突如として爪を立てて体重を掛け始めた。
姫神のリアクションはそれだった。
一方銃後から撃たれた五和のほうが混乱は深刻だった。

「つ、対馬さん!」
「あくまでも一般論だけどね? 五和。気になる男の子を捕まえたかったら、インパクトに残るような事をしないと」

危機意識ここに極まれり。五和は冷静さを失いながら、何をするべきか必死に頭をめぐらし始めた。

179 名前:28[sage] 投稿日:2010/10/01(金) 11:50:35.90 ID:.ihiQnko [1/4]

「えっと、すみません。払ってもらっちゃって」
「ううん。いいのよ。大した金額じゃないし、あなたたちは飲み物だけだったしね」

支払いは対馬がしてくれた。姫神は素直に頭を下げることに抵抗があるのか、目礼で済ませた。
その警戒感は正しいわね、と対馬は思う。

「特に上条君の紅茶は私が口をつけちゃったしね?」

ニッコリと微笑みかけると、上条はドギマギした。
姫神は面白くないという感じをもう隠そうともしなかったし、五和は目の前の展開が未だに信じられないのか、
すがるような目線を自分に向けてくる。

「さて、今後のことは歩きながら考えれば良いじゃない。さっきの商店街にでも行きましょう?」
「あ、はい……」

上条は、年上に弱い。
対馬はそれを確信した。もとより女性に強く物を言うタイプではなさそうだし、
五和や姫神に対してよりも対馬に対する物言いのほうが遠慮がちだった。
年下が趣味というわけでもないが、今日一日くらいは対馬が上条をリードできるだろう。
だが、もちろんそんなことをしたいわけではない。

「上条さん! あの、皆にお土産を持って帰りたいのでいいお店を知りませんか?」
「え?」

五和の声の勢いが良過ぎる。緊張と焦りが見え見栄だった。
……上条以外の人間には。

「たしか近くに日本じゃ学園都市にしかない海外のスイーツブランドが……って、
 五和は今あっちに住んでるからそういうのじゃないほうがいいのか?」
「いいです! 構わないです! 上条さん案内してください!」
「まあ、そう言うなら、って! 五和さん? ちょ、ちょっと当たって」

五和は上条の左手をそっと抱く姫神を、一度も見なかった。
そして姫神から想い人を奪うように、上条の右腕をぎゅっと抱きこみ引っ張った。
姫神に腕を抱かれたときにも「当たってるかも」なんて感じたことはもちろんあったのだが、
正直に言って五和のそれとは差があった。
肘の辺りが、もうそれはそれは柔らかい感触を伝えている。胸だけではない。
抱きこまれた腕の感触全てが、五和の柔らかさを伝えている。
上条は五和の包容力に理性を持っていかれそうになった。

「当麻君は。五和さんと遊びたいの?」

姫神の、ここ数時間の積極的だった「引き」が鳴りを潜めていた。
上条の体半分を五和に取られても、姫神はそれを奪い返さず、
きゅ、と上条の手を両手で握った。



181 名前:28[sage] 投稿日:2010/10/01(金) 12:31:31.23 ID:.ihiQnko [3/4]

五和が上条の二の腕に、頬をくっつけてうつむいた。
さっきにも増して腕の抱き方はタイトで、だが顔は当麻の視線の外だった。

「上条さん! もしご迷惑だったらそんなにお時間は取らせませんから!」

朗らかな声。だがどんな表情をしているかを上条には一切見せない。

「こんなこと言うと建宮さんや皆さんに怒られちゃうかもしれませんけど、
 結構天草式って禁欲的な決まりとか多くて中々羽目を外せないんです。
 でも今日なら大丈夫で、だから上条さんと遊べたらすごく楽しいなって言うか、
 アハハ、すみません私舞い上がっちゃって……っ」

きっと見せない表情のほうが、五和の本心だったのだろう。
あっという間に、声がしぼんでいった。
そうやって必死に誘うのが、五和の精一杯だった。

対馬は駄目よ五和、と思いながらそれを横から見ていた。
シリアスでは駄目なのだ。二人で上条を振り回して、隣の少女が不貞腐れて替えるまで、
上条をドギマギさせてやらねばならないのだ。
だって、隣の少女にだって譲れないものがあるのだ。
どちらかを選べと上条を窮まらせてしまったら。彼はどちらを選ぶだろう。
五和の逸る気持ちは分かる。だけど、選ばせる前に、天秤はこちらに傾けさせておかなければならなかった。

「五和……」

その必死さを、上条は可愛いと思った。
今すぐ彼女の思うとおりに動いてやったら、五和はどれほど喜んでくれるだろうか。
くすぐったくもあったが、五和は自分に素直な尊敬と親愛の情を向けてくれる子だ。
裏表がなくて、柔らかい。

だけど、上条はそのまま五和に傾くことはなかった。
五和ほど抱き込まれてはいない。だけど、左手に感じる確かな温かみ。
姫神が、隣で上条を見つめていた。

「当麻君」

名前を呼ばれる。言葉を返そうとして、ためらった。なぜかどんな言葉も、言い訳になる気がした。
何も弁解すべきことはないはずなのに。

姫神は、決心した。それは前から、言いたくて言いたくて、だけれど仕舞い続けていた言葉。
ためらいはある。恐怖で足もすくみそうだ。上条の腕を抱きにいけないのは、そのせいだ。

「当麻君。私は。当麻君と二人っきりがいい」

上条が息を呑むのが分かった。

「今日はデートの日だから。好きな人と。当麻君と二人がいい」

189 名前:28[sage] 投稿日:2010/10/02(土) 19:11:00.68 ID:u5GwrHQo [1/2]
――言ってしまった。
最後のほうは声が震えていた。
だって今ここで当麻君に断られたら。明日からどうやって生きていけばいいのかわからない。
好きな人に好きだというというのは、自分を袋小路に追い詰めるということだ。
絶対に答えが出てしまう。逃げられない。
しかし同時に、ついに言えたんだ、という思いもあった。

五和はその言葉で、どうしようもないほどの距離を上条との間に感じてしまった。
二人っきりでアビニョンを旅したり、あれやこれやと距離を縮めた気でいたのだ。
今日だって偶然会えたら良いななんて思って、そして信じられないことにそれが実現して、
もっとあの人の心に自分というものを沢山記憶してもらおうって思っていたのに。
『その言葉』を、自分は言えなかった。
言おうなんて考えもしなかった。それが、自分と上条の間の距離感だった。
隣の女の子の距離感は、それよりずっとずっと近かった。

対馬はちくりとした痛みを感じながら、それを見守っていた。
その痛みが、失恋という名前なのを対馬は知っている。
平静としていられるのはその痛みが自分の痛みじゃなくて、五和の立場に自分を重ねて、
いつだったか味わったその痛みを思い出しているからだった。
たぶんそうだった。

上条は、何を口にしたら良いのかさっぱり分からず、頭も空っぽのまま何も浮かべられなかった。
姫神の顔を見る。きゅっと唇を横に引いて、じっとこちらを見つめていた。
明らかに何かを待っている目だった。そして左手が、きゅっと強く握られた。
そのいじらしさが、可愛い。当たり前だ。好きだといわれてその子を可愛いと思わない男なんていない。
ましてや、とびっきりの美人からともなれば。

「姫神」

びくりとしたのは、左の手よりもむしろ、右腕のほうだった。
五和はもう、抱き留めるだけの勇気がなかった。
上条の離すのは嫌だ。
だけど、意気地のない自分を認めてしまったら、もう抱きとめる腕に力はこもらなかった。
そっと、上条が右手を動かした。ごくやんわりと、五和の腕を振り解く仕草だった。
五和はもう、上条のその意思に抗うことは出来なかった。

「五和。その、ごめんな。悪いんだけどさ」
「いいです。わかりました」

五和は上条に最後まで言わせなかった。聞きたくなかった。
そして、笑おうとして、笑い損ねた顔しか上条には見せられなかった。

190 名前:28[sage] 投稿日:2010/10/02(土) 19:14:39.64 ID:u5GwrHQo [2/2]

去り際の口上を、対馬が告げた。
上条と姫神とは別のところへ行くとのことだった。
五和は地面を見つめていて、愛想笑いをしているような、していないような、
そんな曖昧な雰囲気しか窺えなかった。

この期になってようやく、上条は五和が沈み込む理由を、なんとなく想像していた。
それは自分に都合のいい妄想だから、確信は持たないことにした。
……都合のいいものだ、と思う。
出来ることなら、五和を慰めてやりたいと思うのは。

対馬は五和の腕を引いた。まず立ち去るべきは自分達だろう。
五和の表情は、笑顔と言うには混乱と悔恨の影が強すぎただろう。
だが、笑顔を形作ろうとしたその努力を、対馬は褒めてやりたかった。

「さて、じゃあ帰ろうか」
「……」

上条に背を向けて数歩。対馬は五和の顔を見るのをやめた。
五和は子供じゃない。
どんな後悔をこぼしているのか。どんな追慕を呑みこんでいるのか。
そんなものは、五和自身だけが知っていればいいことだった。

五和と対馬が離れるまで、姫神は上条に寄り添うことはしなかった。
隣の上条がそれを望んでいない気がしたからだ。
そして、自分が伝えた言葉に、上条からきちんとした返事がないせいでもあった。

「そろそろ、完全下校時刻が来ちまうな」
「……そうだね」

さあっと、心に不安が差す。
――今日はもう遅いし、ここで分かれよう。
そんな言葉を上条に告げられるのではないか。

「なあ姫神」
「何かな?」
「夜、一緒に街、歩かないか?」

期待と不安、その両方がひどい強度で心臓を叩く。
上条の提案はごく当然のものだ。
完全下校時刻を過ぎたデートを制服でやるなんてのは馬鹿の極み。
そして場所さえきちんと選べば、寮暮らしの二人は何時まででも二人っきりでいられる。

「うん」

姫神は、上条にそう返事をした。


195 名前:28[sage] 投稿日:2010/10/03(日) 12:05:50.17 ID:AL1Zalgo [1/3]

部屋の明かりをつける。
手早く制服と下着を抜いで、髪をまとめる。
今日は随分走ったから、もはやシャワーを浴びて下着を付け替えることは確定事項だった。
髪は。さすがに無理か。
腰まで伸びたストレートヘアは、一旦濡らすと乾かすのに途方もない苦労が必要になる。
自分の能力をあれこれ応用して乾かす学生は多いが、あいにく姫神にはそんな応用力はない。

服選びはシャワー中に頭の中で行う。気に入った組み合わせは二つ三つあるから、
あとは鏡の前でそれらを試すだけだ。あまり待たせるのも、悪いだろう。
……待たせることで、心象を悪くしたくなかった。

汗をかきたくない一心でぬるめのシャワーを浴び、手早く濡れた体を拭く。
下着は上下がおそろいになるよう選んだ。
露出の激しい服は好みではないので見える心配はないし見せることにはならないと思うが、
準備とは出来ること全てをやることである。
首筋に張り付いた数本の髪を丁寧に拭く。シャワーを浴びたのがバレバレだとみっともない。
化粧水で軽く頬を拭いて艶を出す。唇のカサつきが気になったので、
グロスと兼用のリップクリームを小指に取り、塗り広げる。
唇の出来栄えには、いつもより気を使った。

バスルームを出て時計を見れば、分かれてから35分くらいが経っていた。
そろそろ待たせすぎになるだろうか、と手早く財布や細々したものを学生鞄からバッグに詰め替える。
さっと戸締りや手荷物を確認して、姫神は部屋を出た。

上条は15分くらい、エントランスで待っていた。
着替えというほどの着替えもないし、部屋で一息つくだけの余裕を置いてから、下に降りてきた。
女子寮と男子寮は隣同士だ。女子寮には丁寧なセキュリティが掛かっていてこちらから迎えにいけないので、
男子両側のエントランスで待ち合わせているのだった。遅い、とは言うまい。女の子の準備には時間がかかるのだ。
姫神が降りてくれば、恐らくエレベータの動きで分かるだろう。
そちらをチラチラと見ているところを青髪なり土御門なりに見つかれば
大変なことになるので周囲には気を使う。

頭の中で、さっきの姫神の言葉を思い出す。
唐突過ぎて何も言葉を返せなかったが、きっと姫神にとっても重要な言葉だっただろう。
上条はどんな答えを返せばいいか、決めあぐねていた。
実は俺も前から好きだったんだ、と言ってしまうと嘘だった。まさか好かれてるなんて思いもしなかった。
綺麗なのはもちろん知っていたし、付き合ってくれなんていわれたら嬉しいよなあありえないよなあ、
と思ったことは何度もある。だけど、姫神にだけ向けた特別な視線では、なかった。
姫神に強く引かれているのを、上条は今自覚している。
だけど姫神に伝える言葉はいくら練っても陳腐で、だから先ほどすぐに答えを返せなかった。

女子両側のエレベータが、降りてきた。
とりあえずは町を歩いて、公園だとかゆっくり語らえそうなところへ行こう、と上条は思案した。

「上条。貴様、こんな時間から外出する気なの?」

姫神ではなかった。
エレベータから出てきた吹寄が、ジロリと上条を見つめた。

207 名前:28[sage] 投稿日:2010/10/04(月) 22:45:19.47 ID:K.jLlhwo [1/3]

「吹寄。いや、そっちこそどこ行くんだよ?」
「どこ、って……貴様が悪いのよ上条当麻」
「はい?」
「休み時間中の話をもう忘れたわけ? 貴様が言ってたんでしょうが。
 西部山駅の駅前に面白そうな通販のカタログがあるって」
「あー」

言った。そういえば。

「もしかして、一人で行くつもりだったのか?」
「し、仕方ないでしょう。貴様は姫神やあの二人と遊びに行ったみたいだし」
「いや、明日まで待てばよかったんじゃ」
「……」
「……ごめん。悪かった。にしても、何でこんな時間に?」
「……」
「……ほんとごめん」

明日まで待ちきれないくらい楽しみで、だけど知り合いに見られるのはいやだ、ということのようだった。

「それで、上条。貴様は今からどこへ行く気なの?」
「まあなんだ。土御門とかとどっか遊びに行くかって話になってさ」
「日中も遊んだのにまだ遊び足りないわけ?」
「う……悪いかよ」
「悪いわよ。宿題どころか学校までサボって小萌先生を泣かせるような学生が夜遊びなんてしていいわけないでしょうが」

上条が学校を休むのには色々と事情はあるのだが、明かすわけにもいかず無断で休んでいるので、
実質上条は学校を代表するサボリ魔なのだった。
土御門辺りもサボりっぷりで言えば大して変わらないのだが、目をつけられないのは立ち回りが上手いのだろう。

「吹寄も寮を抜け出すんだろ? 止めたり、しないよな?」
「……まあ、あたしは学級委員じゃないから。でもちゃんと明日も学校に来なさいよ」
「ああ。俺の意思に反して誘拐でもされない限りは皆勤でも何でもやるさ」
「それで。どこに行くわけ?」

上条はその一言に焦りを覚える。土御門たちとどこかへ行くという嘘を上塗りしていく作業。
それに破綻を聞かせないように注意を払わなければならない。

「いやべつに、どこって決めてるわけでもないけど」
「この時間ならどっかで外食する気?」
「んー、まあ、たぶん」
「そう。ならあたしも行こうかな」
「……え?」
「なにかまずいことでもあるわけ?」

吹寄の意図が、上条にはつかめなかった。


208 名前:28[sage] 投稿日:2010/10/04(月) 23:05:40.21 ID:K.jLlhwo [2/3]

上条はひたすら危機感を感じていた。
まさか、吹寄がそんなことを言うなんて予想していなかった。
万が一あと数分でもここで待たれたら、姫神が降りてくるだろう。
うまく姫神が誤魔化すのを手伝ってくれれば切り抜けられるかもしれないが、危うい。

「まずいっつーかさ、いいのか? 俺と土御門と青髪なんて、見るのも嫌な三人組だろうに」
「あんた達がバカでどうしようもない問題児あることにあたしはなんの疑いも持ってないけど、
 別に嫌ってはいないわよ」
「へ? そうなの? てっきり大覇星祭の一件で俺は嫌われてるものと……」
「いい加減忘れろ! 忘れなさい! 今すぐ頭から消し飛ばしなさい!」
「ご、ごめん!」
「……そういえば上条当魔。貴様は一端覧祭(いちはならんさい)にはきちんと参加するの?」
「……たぶん」
「断言は出来ないわけ?」
「俺の個人の意思としては参加する気だけどさ。まあ、最近いろいろありまして」

ローマ正教20億の敵なんて物騒な言い方をされている上条当麻にとって、
自分の都合というのは最近では冷蔵庫のカレンダーに書いた大型ゴミの日の書き込みよりも影響力がない。

「あたしは実行委員になるつもりなんだけど」
「そうなのか。まあ、吹寄っぽいよなあ」
「上条。貴様も一緒にやらない?」
「――――へ?」

信じられないお誘いだった。嫌とかよりも、何故のほうが先に頭にひらめいた。
顔に出ていたのだろう。吹寄は言葉を継いだ。

「そのサボリ癖なんとかしなさいよ。確約が出来ないって言うなら実行委員とか責任ある仕事を引き受けて、
 自分を追い込みなさいよって言う提案をしているの」

吹寄は怒っているように見えなくもない。しかしそれが普段の表情だった。
つい、まじまじとそれを見つめてしまう。真意が量りきれなかった。
「何よ」とぽつりと呟いて、吹寄は上条をにらみ返した。

……その応対の時間が、余計だった。
気がつかぬうちに、女子寮側のエレベータが下りてきて、見知ったその人を吐き出した。

「吹(ふき)ちゃん?」
「あ、姫神」

221 名前:28[sage] 投稿日:2010/10/05(火) 22:09:09.97 ID:U4lCiZso [1/4]

委員長気質の吹寄は転校生の姫神に率先して接してくれたので、
姫神にとって吹寄はかなり親しい友人だと言える。
吹寄はあまり恋愛話を好むほうではないとはいえ、恋愛話は女子同士の会話の大事な一要素だ。
姫神は共通の友達をネタに何度となく吹寄と恋愛話をしたことがある。
だが、互いに一線を引いたように、互いの好きな人に関する話はしたことがなかった。

そして、吹寄がいないところでも、吹寄の好きな人についての話、というのは聞いたことがなかった。
男に興味のなさそうな吹寄だが、だからこそ噂話に花が咲いてしまうのが女の性だ。
吹寄のいないところではそれこそあれこれと憶測が飛び交っても不思議はないのに。

その理由は、姫神にはおおよそ予想がついていた。
明言したことは一度もないが、姫神が気になる男の子は上条当麻である、というのはクラスの女子の常識だ。
別段あからさまな態度を取ったことなんてただの一度もないはずなのだが、
女特有の洞察力というのはこの手の問題に関しては神がかり的な鋭さを発揮する。
そしておそらく、クラスメイト達は吹寄の好きな男子についても確度の高い推論を持っていることだろう。
そういう話を、していないはずがないのだ。だからその話を姫神が耳にしない理由は一つ。
――吹ちゃんの好きな男子『も』たぶん。当麻君だから。

間接的な証拠に基づく推察でありながら、姫神はその予想を全く疑っていなかった。
何より自分の女の勘が、吹寄も上条のことが好きなのだと告げていたから。

エレベータが静かに開く。
吹寄と上条の距離は、クラスメイトくらいの距離。
特別なんて何もないのに、やっぱり姫神の脳裏で警鐘がカンカンと鳴っていた。

上条は事態のマズさに嫌な汗が伝うのを感じた。
姫神がとっさに嘘にあわせてくれるかは分からないし、なにより今日、
上条は姫神の手を取って学校を飛び出したのだ。
不純異性交遊を目の前に、吹寄ブチ切れるかもしれない。
吹寄は姫神と仲が良いから、なおさらだ。

「吹寄さん。これはですね」
「貴様、姫神と遊ぶ気だったの?」
「いや、まあ」
「土御門とかと遊ぶってのは、嘘だったということ?」
「――ああ。そうだ」
「吹ちゃん……」
「姫神。確認しておくけど、上条当麻に無理矢理誘われたとか、そういうのは……ないか」

吹寄は姫神を一瞥しただけでそう判断した。
髪の整い具合だとか、そういうところで姫神の気持ちを見抜いたのだろう。

「別にあたしは風紀委員じゃないから。止めたりはしないわよ別に……」

吹寄はそう呟いて、髪を軽く指でいじった。

229 名前:28[sage] 投稿日:2010/10/05(火) 23:51:53.98 ID:U4lCiZso [4/4]

「吹ちゃんは。いいの?」

気づかない振りをすれば、良かったのに。
姫神は吹寄にそう、尋ねずにはいられなかった。

「いいって? 何であたしが姫神と上条を止めるわけ?」

そのとぼけ方は上条を騙すのには充分で、姫神に悟らせるには充分なくらいの不自然さだった。
きっと吹寄が本当に上条のことをなんとも思ってなかったならば、多分怒っただろう。
あたしはそこまで優等生ぶらないわよ、か。姫神の恋路を邪魔するほど野暮じゃないわよ、か。
たぶん、今みたいに姫神が何を言ってるのか分からない、なんて態度には留めないと思う。
それが姫神の感じた吹寄の『嘘』だった。

「私は。今から上条君と。晩御飯を食べに街に行こうって約束をしてた」
「……見れば分かるよ」
「今日は一日中。上条君とデートした」
「……おめでとうって言えばいいの? 姫神意外と隠さないんだね」
「でもデートって言っても、土御門君たちがついてきたりしたんだけど」
「そう」

人を突っぱねるような態度のくせにかまいたがりな吹寄と、
人当たりはそう悪くない割にドライなところのある姫神。
普段この二人は仲が良い。
だけど上条はどうも、姫神と吹寄の間に不穏な空気が漂っているような気がしていた。

「なあ、姫神」
「どうしたの? 当麻君」

ぴくりと、吹寄の髪をいじる手が止まった。

「あ……」
「そういう名前で呼び合う位、進展したんだ。で、貴様は下の名前で呼ばないわけ?」
「いや、二人のときは秋沙って呼んだけどさ。クラスメイトの前じゃ恥ずかしいだろ」
「……」

今は、上条にそれをばらして欲しくなかった。
上条にアタックするのに、何も吹寄に断りを入れたりする必要はない。だけど無断も嫌だった。

「まあ良いけど。で、上条。さっきの話の続きだけど、あたしもついていっていいわけ?」
「え?」
「晩御飯、いくんでしょ?」

姫神を、吹寄が見つめた。
真意は測れない。でも、駄目だと言う気はなかった。姫神はコクリと頷いた。

234 名前:28[sage] 投稿日:2010/10/06(水) 12:04:22.73 ID:qf7geRoo [2/2]

入った店は、イタリアンレストランだった。
ファミレスよりは高級感があるが、学生の夕食に出来る程度の価格帯だ。
適当に三人とも注文して、料理待ちの時間。

夕方にもこういうボックス席にいたっけなと上条は思い出す。
そのときは対馬が座る席を決めた。今は、吹寄が決めた。
上条と姫神を隣同士に座らせて、吹寄は反対側に腰掛けた。

「で、確認しないと居心地悪いから聞くけど。あんたたち、付き合うことになったの?」

腕に掛かった長い髪を払いながら吹寄はそんなことを尋ねた。
上条が答えようとすると、姫神が上条をじっと見た。私が言うから、という意思表示のようだった。

「ううん。まだ。そういうことにはなってないよ」
「……そう。じゃあ、邪魔しちゃったんだ」
「そんな。邪魔だなんて。思ってない」
「思いなさいよ。あたしは人のデートに割り込むような野暮をするつもりはないし」
「……吹ちゃんは。それでいいの?」
「だからそれでいいって何よ。姫神は何の心配してるんだか」

いつもよりも少しイライラした感じの聞き返し方。
きっとそれは、図星なのだ。

「貴様はどういうつもりで姫神を連れ出したの?」
「え? どういう、って」

突如、矛先が上条のほうを向いた。

「夜に、単なるクラスメイトの女子を連れ出したら問題でしょうが。
 どう考えたって下心があるに決まってるでしょ」
「し、下心って……」
「ただ食事をするためだけに、貴様は姫神を誘ったわけ?」
「吹ちゃん!」

上条が何かを言う前に、またも姫神が二人の会話を遮った。
何がなんだかわからない上条の前で、女二人の思惑だけが交錯していく。

「姫神」
「ごめんね。上条君。何も聞かないで」

遮るように、朗らかな声で注文した料理が運ばれてきた。

240 名前:28[sage] 投稿日:2010/10/07(木) 11:31:04.95 ID:ssFeD/Yo [1/4]

パスタにフォークを刺して、クルクルと回す。
皿とぶつかる硬い音がテーブルの上でかすかに流れる。
そんな音が気になるくらい、上条たちの間には会話がなかった。

吹寄は、自然な態度で食事を摂っている様に見える。
目の前にいる自分や姫神が赤の他人だったら、完全に自然だっただろう。
自分達と会話をしようとしないこと以外は、おかしい所はなかった。
姫神も食事時におしゃべりなほうではないと思う。
食べ方もがっつくような感じではないので不自然には見えない。
だが、ずっとパスタを見つめているのに、時折思い出したようにチラリと吹寄を見るその視線が
意味ありげで、姫神と吹寄に間にあるおかしな空気を象徴していた。

「上条。貴様はもう少し落ち着いて食べられないわけ?」
「あ、ああ。悪い」

一番不自然なのはおそらく自分、上条当麻だろう。
会話を振るでもなく、黙々と食事をする二人の女の子の顔をまじまじと見つめているのだ。
……とはいえ黙っていろといわれた手前、会話を提供する役になるのもためらいがあった。

女の子達と同じ、並盛のパスタを頼んで正解だった。
あっという間に食べ終わるくせに、緊張していてそれ以上欲しいと思わない。
セットでついてきたコンソメのスープで口の中をすっきりさせると、
吹寄もちょうど食べ終えたところだった。

「貴様に聞いておかなくちゃならないことがあるわ」
「なんだ?」
「貴様はこれから、姫神になんて言う気なの?」
「……」
「好きだって、言うつもり?」
「それを言う相手は、姫神だ。吹寄、悪いけどお前のいるところで、
 そういう話はするわけにいかねーだろ」

姫神はその言葉に、息を呑んだ。
告白を、してもらえるのかもしれないと姫神は確かに期待している。
微かにしか期待していないつもりで、しかし今も心臓は強く脈動していた。

「まあ、いいわ。今ので分かったから。あたしがここに来た理由はね。上条。
 貴様のことを好きなクラスメイトを、姫神のほかに知ってるからよ」
「えっ?」

姫神と上条の驚きが唱和する。しかし意味は異なっていた。
上条は吹寄の言葉の中身が信じられなかったから。
姫神は吹寄が遠まわしにでも、その気持ちを上条に伝えたから。

243 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/07(木) 12:03:03.21 ID:ssFeD/Yo [4/4]

「吹寄。……唐突過ぎて驚くしかないんだけどさ、それ、ホントなのか? そんな話聞いたこともないぞ」
「黙ってたんだから、そりゃあ伝わらないでしょ」
「一体誰なんだよ……って、言ってはくれないか」
「当たり前でしょうが。貴様は今から誰に何を言おうとしてるのか、よく思いだしなさいよ」
「……」
「黙らないで何とか言いなさいよ。上条当麻、貴様は今から誰に、何を言おうとしているの?」
「姫神に」

姫神はもう食べる気にならないのか皿の上に残ったパスタを、フォークで弄んでいた。
その肩が、ぴくりと震えた。

「これから、姫神と二人でどっか歩く気だ。それ以上は吹寄、ここでお前に話すようなことじゃない」

二人ですべきことを、二人以外の人がいるところでしてはならない。
それは通すべき筋だと上条は考えていた。
姫神も上条の意図を理解していた。だが同時に、吹寄がどう感じるかも痛いほどわかるのだ。
その言葉は、「お前なんて眼中にない」と言われているように、きっと吹寄には聞こえたろうと思う。

「……そうね。あたしは部外者。確かに貴様にあれこれ聞くのはお門違いだったかもしれないわ。
 でも。今じゃなくてもきちんと教えて欲しい。
 上条のことを好きな女の子に、貴様のことを諦めさせなきゃいけないから」

上条は、吹寄の呟きを聞いて、全ての言葉を失った。
きっと吹寄は、そのクラスメイトの気持ちをよく知っている。
面倒見のいい吹寄のことだ。きっと親身になって相談に乗ったのだろう。
残念そうな、いや違うか。悔しそうな、のほうが近いかもしれない。
そしてまるでわが身のことのように傷ついた響きが、声には含まれていた。
反射的に謝りそうになって、それを自制した。

「吹ちゃん、私は」
「姫神は何も言わないで。姫神は別にズルなんてしてない。
 誰にも後ろ指を指されるような事なんてしてないんだから、変な気遣いなんていらないわよ」
「……ごめん、なさい」
「謝るのも自己満足よ。姫神には語る言葉なんて何もない。ただ、上条と幸せになればいいだけ」
「……うん。吹ちゃんは、私のことを嫌いになった?」

何バカなこと言ってんのよ、と吹寄が笑った。
どことなく泣き顔めいて見えたのは、上条の錯覚だったろうか。

「何で第三者のあたしが姫神と喧嘩するのよ。きっと上条のことが好きな子も、姫神のことを恨んだりはしないって」
「うん」

吹寄がグラスの水をあおった。
それをきっかけに三人は席を立ち、支払いを済ませてとっぷりと暮れた夜の学園都市の空を見上げた。
星は見えない。言葉もすくなに、吹寄は上条たちと別れ、寮へと帰っていった。

246 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/08(金) 10:27:32.69 ID:Y4D7cqUo [1/9]


肌寒い空気が、すっと足元を吹き抜ける。
夏の名残の暑さももう失われて、日が沈んでからは冬の足音も聞こえ始める季節。
街中のレストランを出てから、上条と姫神は黙々と緩い上り坂を登った。
姫神は上条の導くままにしたがっていたが、おおよそ、行き先に心当たりはあった。
この先には、眺めのいい公園がある。夜景が綺麗だというのは、有名な話だった。
繁華街から遠く不良にとって退屈な場所なこともあって、学生達の逢引の場所として、
それなりに有名な場所だった。

姫神の足取りは、重たかった。
さっき吹寄と交わした言葉が、これからのことに対する期待感以外の気持ちを膨らませていた。
吹寄の言ったとおりなのだ。姫神は卑怯なことなんてしなかった。
だから、確かに悪いことなんて何もない。
しかし、同様になんら悪いことをしなかった友人の口を封じ、
心に秘めていた気持ちをそのまま秘めさせるように仕向けてしまったのも事実だ。

「姫神」

ほんの少し前を歩く上条が、そう名前を読んだ。そしてすぐ、間違いに気づいた。

「秋沙。その、さ。手、繋がないか?」

少し前から、上条がさりげなく手を差し出して、手を繋ごうと誘う仕草を見せていたのには気づいていた。
それを取らなかったのは、自分で何かを決めるのが怖くて、上条に強く引っ張って欲しかったから。
姫神は無言で指を絡ませた。手の温かみが伝わるのと同時くらいに、上条が身を寄せて、体が軽くぶつかった。
公園の入り口に立つ。高低差の激しいここから展望のいい広場までは、階段を上ることになる。

「今日はなんかやたらといろいろあったな」
「うん」
「青髪と土御門には追いかけられるし」
「うん」
「御坂のヤツにもなんか追いかけられることになったし」
「うん」
「五和にも……まあ、会ったしな」
「……」

立場が違えば仲良くも出来たであろう、彼女のことを思い出す。
そうだ、あの時。もし自分が上条にアタックしなかったなら。
当麻君は。あの子と親密になっていたかもしれない。
五和は初対面だ。それだけが理由なのかもしれないが、吹寄に対してとは異なり、
姫神は五和に対しては敵対意識を持っている自覚があった。
自分のものだと見せ付けなければ、上条は取られていたかもしれない。
その危機感を思い出すと、自分のやったことが正しかったと思えるような気がした。
恋は戦争。分かち合うことの出来ないものが、確かにあるのだ。


248 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/08(金) 10:33:07.22 ID:Y4D7cqUo [2/9]

「吹ちゃんの言ってた。上条君のことを好きな女の子のこと。考えてた。」

安っぽいスニーカーの音を響かせながら、雑草の生えた階段を登る。

「あー……。あれ本当なんかね。なんていうかさ、 全くもてた事のない上条さんの人生を振り返るに、
 どうも信じられないんだよな。別に疑うわけじゃないけど」
「吹ちゃんは嘘なんてついてないよ」
「もしかして、その子の事、知ってるとか?」
「――うん。予想は。ついてるから。綺麗な子だよ」
「クラスの女子の誰が綺麗か、なんてのを秋沙に話すわけにはいかないな。万が一女子に知れたら俺は確実に殺される」
「言わないよ」

じっと、上条を見つめる。視線の意図は、割とすぐ伝わった。

「秋沙は、綺麗だと思う」
「クラスで何番目に?」
「番号なんてつけたことないって」
「男子がランキングつけてるの。知ってるよ?」
「マジで? まあ、女子もつけてそうだけど」
「うん。当麻君は。結構ポイント高いよ」

上条がグッと拳を握った。女子の評価の高さはクラス内での過ごしやすさとかなり関連している。
非常に心強い、ありがたい情報だった。

「私やその子が気にしてる男の子を。みんな非難なんてしないから」
「……」

一体、何度目だろう。姫神が、これほどにきわどい言葉で自分の気持ちを表現するのは。
もう上条はその意味に気づかなかったり、取り違えたりはしなかった。

「ねえ当麻君。吹ちゃんと比べて。私の順位はどうだった?」
「吹寄はおカタい奴だからなあ。告白しても無理そうって奴が多かったな」
「本当はそうでもないんだけどね。……それと私が聞きたかったのは。皆じゃなくて当麻君のこと」
「う。えーっと。吹寄はなんていうか、女の子のカテゴリに入れてなかった」
「え?」
「吹寄ってだいたいいつも怖いし。時々遊ぶけどぶっちゃけ男子の連中とつるむときと同じノリだし」
「吹ちゃんは。結構女の子なところあるよ?」
「そうかあ?」
「当麻君は。見る目がないよ」
「……まあ、否定なんてとてもできやしませんが。でも何で秋沙が吹寄のことで怒るんだよ」
「自分でちゃんと分かって。私の口からは。言えないし言わない」

ぷいとそっぽを向いた姫神の横顔を眺めながら、残りの段を一つずつ上がっていく。

「それで。私のことは。どう思ってたの?」
「この先で、話すよ」

最後の一段。それを越えると足音が砂を踏むものに変わった。視界が開け、眼下に学園都市の眠らない光の海が姿を現した。

251 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/08(金) 11:50:30.63 ID:Y4D7cqUo [4/9]

ザクザクと音を立てながら、広場の先へと進む。
切り立った高台の端にある、少し高めの柵の向こうには絶景が広がっている。
地上にきらめく星。光の海。いや湖か。
ハイウェイを途切れ目なく車のライトが縫っていく。遠くに見える真っ暗な縁は、恐らく学園都市と外との境界だろう。

「姫神はここ、来たことあるか?」
「お昼になら。一人で歩いたことがあるよ」
「夜は初めてか」
「うん。だって。ここはデートスポットでしょ? 一人で夜はちょっと危ないし」
「今日は俺達以外はいないみたいだな」
「そうだね。当麻君は夜のここに来たことあるの?」
「ああ。一学期にクラスのとある男子がここで告白するって情報が流れてさ。偵察しに来た」
「……本当は他の女の子に告白されたとかじゃないよね?」
「んなわけあるか」

柵の前に、到着する。眺めが良い綺麗な場所で、人がいなくて。
大切なことを大切な人に言うために、うってつけの場所だった。
そして逆に言えば、もう、大切なことを言う他はない、そういう『逃げ』のない場所だった。

今から当麻君に。告白されるんだ。
期待が、どうしようもなく姫神から落ち着きを奪う。そして不安が、どうしようもなく心を軋ませる。
きっと、好きだと言ってもらえる気がする。そんな予感がある。
ごめんなさいとか、さようならを言うのにこんな場所を用意する必要はないからだ。
今から振ろうとする相手に、綺麗だなってきっと言わないと思うからだ。
でも、確信なんてあるわけがない。それが、苦しい。

「金も掛からないし、すげえ穴場だなここ。なんていうか、予想以上に雰囲気良くてちょっと
 俺自身がここに見合ってないなー、とか」
「そんなことないよ」
「いやまあでも、服もいつもどおりの着古しだし、靴もかなりくたびれてるし、
 もうちょっと気合を入れればよかったかな、ってさ」


252 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/08(金) 11:51:40.58 ID:Y4D7cqUo [5/9]

そんなことは、気にしないのに。
急にそんなことを気にしだした上条に、少しだけ苛立ちを感じた。
上条にしてみれば、どう切り出していいかがわからなくて、戸惑っているだけなのだが。

「秋沙」

意を決した上条の瞳が、まっすぐに姫神を捉えた。
緊張に視線を外したくなって、姫神は必死にそれを我慢した。
鼓動がもうどうしようもないくらい早い。

上条の、唇が動いた。

「夕方に、さ。秋沙の口から俺のことを好きだとか、そういう言葉が出てきたと思うんだけど。
 ……俺の、聞き間違いとかじゃ、ないんだよな?」
「……うん。私は当麻君のことが。好き」

言って、しまった。ついに言ってしまった。
どさくさにまぎれてじゃなくて、こんなにも告白のためにあつらえられた場所で、思い人だけにそれを告げてしまった。

「そうか。聞き間違いじゃ、ないんだな」

上条が笑った。ほっとしたような、そんな表情。
しかし、直後に申し訳なさそうな顔をして、ツンツン頭をガリガリやった。

「俺が次は、答えを返す番だよな」
「……うん」

上条の表情は姫神を一喜一憂させる。目の前の憂い顔は、良くない。自分を不安にさせる。

「その、ごめんな」
「えっ―――――?」

姫神の心臓が、止まった。

269 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/09(土) 11:04:45.77 ID:e1x3H2go [1/8]
「今までさ、秋沙にそんな風に想ってもらえてるなんて、考えたこともなくてさ」

上条が言葉を区切る。言いにくいことなのか、視線をさまよわせた。
姫神は足が震えそうだった。

「だから正直に言っちまうと、姫神のことをはっきりと意識したのは、今日が初めてだったんだ。
 だから秋沙のこと、すごく気になってるけど。けど、好きだって言葉を、使っていいって自信がもてないんだ」

霧は晴れない。言い意味でも悪い意味でも。
当麻君は何を言っているのだろう。
言葉の意味を、姫神は上手く飲み込めなかった。

「秋沙と手を繋ぐと嬉しくなるし、一緒にいて、楽しかった。今ここで、秋沙のことを抱きしめたいって、思ってる。
 けどさ、お前のことを意識してまだ一日も経ってない俺がそんなこと思っちまうのってどうなんだろうな?」

少しずつ、脳裏に上条の言葉の意味が浸透してくる。
たぶん、自分のした最悪の予想とは、趣きが異なるらしい。

「……当麻君は。私のこと。嫌い?」
「んなわけあるか。もしそうだったらこんなことするわけないだろ」
「私よりも気になる女の子は?」

怖かった。その質問をするのは。でも聞かないと先に進めない。
上条はその言葉で、御坂や、五和や、インデックスを思い出す。

「秋沙に一番……ドキドキしてる」
「良かった……」

姫神はほっと息をついて、胸元の十字架を軽く握り締めた。
やっぱり秋沙は可愛いな、と何度目なのか分からないが、再び上条はそう確認した。

「ごめんなって言うのは。ひどいよ」
「え?」
「振られるのかなって。思った」
「い、いや。別にそういうわけじゃなかったんだって」
「……悪気がないのは。余計に悪いよ」
「ごめん」
「死んじゃうかも。って思った」
「ごめん」
「五和さんとか、気になるのかなって思った」
「ごめん。そういうわけじゃ、ないって」
「まだ。ちゃんとした答えを。聞いてないよ」

上条は黙った。自分の中に降って湧いたような感情。姫神を可愛いと思い、惹かれる感覚。
取り扱ってまだ一日だというのが姫神に申し訳なく、もっと時間をかけて確かめるべきことのような気がしていた。
――違う。時間なんて関係ないじゃないか。今の気持ちが勘違いかもなんて、責任逃れもいいところだ。

「えっ?」

黙って、上条は姫神を抱きしめた。

271 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/09(土) 12:41:24.47 ID:e1x3H2go [2/8]

ぎゅっと抱きしめて、改めて実感する。
インデックスとじゃれあうときに感じる気持ちとは全然違う。
携帯を替える一件で御坂を抱き寄せたときに感じた気持ちとも違う。
姫神を抱きしめると、姫神を可愛いと思う気持ちが滾々(こんこん)と湧いてきて、
もっと強く、抱きしめたくなる。

「と。当麻君。その。あの。」

珍しいくらい、姫神が慌てていた。至近距離で目が合うと恥ずかしがって顔を隠した。
おずおずと、上条の体にも手が回される。だけどその力は弱く、ためらいがちだ。
理由は、上条にも察しがついていた。
まだ自分は、決定的な言葉を口にしていない。

「俺は今、秋沙のことを世界で一番幸せにしてあげたいって、思ってる」
「……うん。幸せにして。ください」

抱きしめられた上条の胸の中で。
柔らかくて暖かな笑顔を、姫神が顔一杯に浮かべた。
感情表現の薄い姫神だから、きっとそれは最上級の感情表現。
それを見て上条はたまらないくらい嬉しくなった。
そしてその気持ちこそが、姫神のことを好きなんだという気持ちだと、理解した。
笑いかけてくれたから好きになったのだろうか。それとも好きだったから笑わせてあげたいと思っていたのか。
鳥と卵の水掛け論はどうでもいい。
どちらが因果とも分からない、相手を幸せにすることと自分が幸せになることが等価になる現象。
そういうものを、好きになるというのだろう。

「秋沙。好きだ」
「うん。私も。当麻君が好き」

自然とその言葉は口から突いて出た。
きゅっと、電灯に照らされた影を一つに束ねるように、互いの体をくっつけあう。
すこしの時間を置いて、服越しに温かみがじわりじわりと伝わってくる。
自分とは違うリズムの心臓の鼓動や、吐息がすぐ傍に感じられる。
姫神を抱きしめているのだという実感が、上条を満たした。

髪を撫でると、いい香りがした。
手を滑らせていくと、最後まで撫でられない。お尻に触れてしまうからだ。
腰のギリギリのところまで撫で、時々腰を抱いてさらに姫神を抱き寄せる。
どんな顔をしているのだろう、と表情を覗き込もうとすると、むずがるように姫神が顔をそらした。

「秋沙?」
「だめ……。どうしよう。恥ずかしくて当麻君の顔を見れないよ」
「恥ずかしい?」
「恥ずかしいって言うか。当麻君の顔を見たら好きすぎてどうしていいかわからなくなるの」

可愛すぎる。抱えたこの感情を、ただ抱きしめるだけでしか表現できないのがもどかしかった。

281 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/09(土) 17:33:57.03 ID:e1x3H2go [6/8]

つい悪戯心が湧く。

「ふ。ふふっ。だめだよ……当麻君。だめ」

抱きしめた姫神の首筋に指を這わせてくすぐる。そして顎を捉えたらくいと持ち上げようとする。
照れながら姫神はくすぐられる感触に耐え、上条の指から逃げ回る。
本気で嫌なら上条の腕を振り解けばいいのにそれをしない。

「あっ」
「あ……」

不意に、当麻の攻撃が通じてしまう。二人のどちらにとっても唐突に、姫神の顔(かんばせ)が持ち上がる。
焦点がとっさに合わないくらいの傍に、姫神の顔がせまった。
そして抱きしめた状態で顔を持ち上げた姿勢は、あまりにキスにうってつけで。
二人ともフリーズする他なかった。

「ご、ごめん! 調子に乗っちまった」
「ううん。いい。」

思わず姫神の頬から手を離し、抱きしめた腕を緩める。
夜景に照らされた姫神の唇が、艶かしい。
上条の視線に気づいたのか、姫神が口元を隠すようにうつむいた。僅かに表情には、躊躇いの色。

「ちょっと。まだ怖い」

それが何のことかは、察せた。そりゃあ告白してすぐにそれは、早いと思う。
普通はどんなもんなのか、上条には自信がなかったが。

「いいよ。それより、抱きしめられるのは嫌じゃないか?」
「全然。そっちは。もっとして欲しい」

再び姫神を抱きしめる。身長差はちょうどいい塩梅だった。抱きしめると、ギリギリ上条の胸の中に納まる。
安堵したような、深いため息が聞こえた。


282 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/09(土) 17:35:23.89 ID:e1x3H2go [7/8]

「抱きしめあうって。すごいね」
「ん?」
「すごくあったかくて。安心する」
「だな。俺も、懐かしい感覚のような気がしてる」
「……当麻君は。よく女の人と抱き合ってるんじゃないの?」
「なんか秋沙の中では俺が酷い女たらしになってる気がするんだけど」
「だって。事実でしょ?」
「どこがだよ」
「私が知ってるだけでも。シスターの子に常盤台の子に吹ちゃんに小萌先生」
「おいおい待て待てなんかおかしい人選だぞそれ!」
「さっきは五和さんって子にも会った。まだいるんでしょ?」
「いや、だから知り合いの子が増えたってだけでべつにやましいことは」

この際全部白状しろ、という感じで姫神が迫る。
やましいかどうかで言えば、姫神に告白するより前の行為はどんなものであってもやましくはないのだが。

「じゃあ最近仲良くなった女の人の名前を全部挙げて」
「……あの、秋沙さん?」
「私。こう見えて結構嫉妬深いから」

ただのクラスメイトだった頃からまったく変わっていないはずのその表情が、上条にはなんだか恐ろしく見えた。

「話して。女の人の名前と。年と。背格好」
「あの、怒りません?」
「後で聞かされたら。嫌だよ。今日より前のことは仕方がないから気にしない。けどこれからは。嫌だよ」

逃げられない。逃げたら怖いのもあったが、姫神を傷つけるのはもっと嫌だ。

「えっと。インデックスは知ってるよな。あとは御坂美琴、さっきの常盤台のと、双子の妹。んで五和。この辺はもういいよな? あとは神裂火織っていう……あいつ18歳って言ったっけな、黒髪で俺と同じくらいの身長だ。で他には……ミーシャ、あれサーシャって言えば良いのか? 変な服装のロシア人の子だ。それと風斬と、アニェーゼってインデックスと同じくらいの子とオルソラって20くらいのイタリア?人と、あアンジェレネとルチアって同じローマ正教のシスターと、あ、白井黒子って常盤台の一年のを忘れてた。ツインテのお姉さまラブが行き過ぎた変態だ。……ええとそんなもんか。」

上条は極めて正直に、この数ヶ月を思い出して報告する。
回想の途中に姫神を見なかったのは正解だったかもしれない。
上条が一人数え上げるたびに、その表情が曇っていく。
あっという間に不安は具体的な懸念へと成長進化し、もはや全ての敵を征するのが到底無理と理解するにいたり、
姫神の表情は諦念という一つの真理を体得していた。上条が見た表情は最後の穏やかな顔だった。


283 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/09(土) 17:37:50.48 ID:e1x3H2go [8/8]

「当麻君って詐欺師か何かなの?」
「……あの、ものすごい不名誉な評価だと思うんですけどそれ」
「まあ。助けてもらった私が。文句を言えることじゃないってことなのかな」

はぁと今度のため息は憂鬱を含んでいた。

「ねえ当麻君。約束。してほしい」
「……えっと、何をだ?」
「私以外の女の人と。デートをしないで」

そんなことは当たり前だ。それは姫神としたいことだし、姫神以外とはしてはいけないことだ。

「しねーよ」
「キスとか。それ以上も駄目」
「当然だ」
「女の子と二人っきりで買い物をすることも駄目」
「……まあインデックスは一緒に買い物についてきたりしないしな」
「女の子と手を繋ぐのも駄目」
「やらないよ。そう言うのは全部、姫神とすればいいんだろ?」
「うん。おんなじことを私も当麻君に約束する」

姫神が頭を上条の胸にこすり付ける。

「私は当麻君のものだから。だから当麻君も私だけの人でいて欲しい」
「約束する」
「うん」
「好きだ、秋沙」
「うん。私も大好き」

再確認。毎日やっても飽きないんじゃないかと思うくらい、嬉しい言葉の交換。
姫神を撫でる腕に、すこし力を込めた。

「シスターの子には。なるべく早く報告しないとね」
「……あ、ああ。まあそのうち言わないとな」
「なるべくはやく」

上条の言葉を姫神がやんわりと訂正した。

「あの子はまだ色気より食い気みたいだけど。でももう女の子だよ」
「……」

もしあの子が自分の気持ちを自覚して、伝えずにはいられないくらい膨らませてしまったら。
その想像はしたくない。だから早めに摘み取る。上条の可愛い妹分というポジションに固定する。
姫神は別にインデックスを嫌ってなどいない。ただ、譲るつもりのないイスがあるだけだ。

「当麻君とお付き合いするなら。ちゃんとあの子にも報告しないと」
「わかった」

姫神は上条にそっと笑いかけた。
296 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[] 投稿日:2010/10/11(月) 23:51:20.33 ID:gWqZzAso

「長居すると冷えてくるな。秋沙、寒くないか?」
「当麻君とくっついてると寒くないよ。……と言いたいところだけど。さすがに足が寒いのはどうしようもないね」
「じゃあ、もう帰るか?」

この高台に来て、20分くらいだろうか。
もとから夜景以外に見えるべきものがあるわけでもないし、ブランコで遊ぶ年でもない。
寒くなければいつまでだってここでじゃれあっていたいのだが、そろそろ厳しい季節だった。

「あとちょっとだけ」
「ん。わかった。……で何分ぐらいだ?」
「一時間くらい?」
「それ、かなり寒いんじゃないか?」
「そうだね。でも。帰っちゃうとこんなことできなくなる」
「だなあ」

こんな時間に女子寮に上条が入るのはあまりに剣呑だし、その逆はインデックスがいるせいで無意味だ。
二人っきりで触れ合える場所は、寒い場所ばかりだ。
柵にもたれかかった背中が寒い。だけど、全幅の信頼を寄せるように預けてくれた姫神の重みが嬉しい。
触れ合っている体の前面は大丈夫だろう。せめて届く、背中と頭を撫でる。

「寒いところにいるのは残念だね。あったかいところでこうされたら。寝ちゃうかも」
「気持ちいいか?」
「すっごく。安心する」

きゅっと上条のジャケットを握るその手に、庇護欲をそそられる。

「明日。当麻君はお昼どうするの?」
「あー、弁当を作るにも晩飯の残りとかないからなあ」
「じゃあ。作ってきても。迷惑じゃない?」
「……マジ?」

それは嬉しい。物凄く嬉しい。そして同時にかなり恥ずかしい。
うまく立ち回らないとクラスメイト中に晒されることになる。
上条の懸念を理解しているのだろう。姫神がクスリと笑った。

「おおっぴらなのは恥ずかしいから。屋上とかで二人で食べよう?」
「まあ屋上にもそこそこ人はいるけどさ。まあ教室よりはずっといいか」
「やめたほうがいい?」
「いや、なんだ。恥ずかしいんだけど、それ以上に食べたい。秋沙の料理」
「うん。……明日までには無理だけど、もうちょっと恥ずかしくないものを作れるように勉強しておくね」
「秋沙の腕はもう充分だろ」
「そんなことないよ」

そんな、どうでも良いようなことを喋りながら空を見上げる。
地上の光がさえぎるから大きな星しか見えないが、建物に切り取られない星空はひたすら広い。
胸の中に好きな女の子の体温を感じながら見上げるそれは、普段と全く鮮やかさが違っていた。

302 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 10:39:38.24 ID:vOL9ZnQo [2/13]
結局、それから一時間近くじゃれあった。
ふと気づいて時計を見たときには、飲み屋とファミレス以外の外食店が閉まる時間帯だった。
女の子が外を歩いていい時間も、いい加減に終わりだった。
帰りの道すがらはあっという間だった。行きの沈黙が嘘のように会話が続いて、時間を感じさせなかった。
明日からは、もっと楽しい日が待っている。それは間違いのないことなのに。
今日というこれからもずっと記憶に残るような、大切な一日が終わってしまうことが、寂しかった。

「それじゃあ、また明日、だな」
「うん……」

女子寮のエントランス。見送るほどの距離でもないが、名残惜しくて上条はそこまでついていった。
ここまで来ても、まだ姫神は歯切れが悪かった。

「いい加減思いきらなきゃだめだよね。明日。また会おうね」
「ああ。というか嫌でも学校には行かざるを得ないしな」
「サボリ魔のお前が言えたことじゃないと思うけど」

不意に、後ろから声が掛かった。
肩より下まで伸ばした黒髪をカチューシャで上げた女性。
まっすぐで僅かに濡れたような艶のある髪は、姫神とコンセプトが近い。
ただ胸元の凶暴さはまるで違う。その気だるげな雰囲気と相まって、エロい感じのする人だ。
名は雲川芹亜。上条たちの先輩に当たる人だった。

「お前は基本的にいつも不幸な人間だったと記憶してるけど。今は不幸なの?」
「今は別に不幸なことはないですけど」
「ああ、私が不幸の種か。転校生ともう懇意なのか。相変わらず手は早いな」
「何ですか人聞きの悪い」

隣で姫神の機嫌が加速度的に悪くなっていくのが分かる。
今日という日の余韻を楽しむ瞬間に、雲川が割り込んだからだ。

「お前は不幸不幸と言いながら女運だけはやたらと良いけど。なぜそういう例外があるんだろうな」
「女運って。どう考えてもそんなもんはないでしょう」
「なら隣の彼女はどう説明付ける気だ? まあ興味は尽きないけど。
 馬に蹴られないうちに退散することにしよう。じゃあな」

エレベータに乗り込んで、雲川は二人の前を後にする。
扉の閉まり際に、上条が必死になって弁明する声が聞こえた。

「……当麻君。私は。あの人のことは聞いてない」
「い、いや。あの人とはここ最近の付き合いじゃないし、魔術とか超能力が絡んだ知り合いじゃなかったから」

ふっと笑って、確認するように独り言を呟く。

「上条が言い寄られるのは、運というよりは気質なんだろうな。
 不幸があっても自分で未来を切り開いていける前向きさというのは将来性がある。
 確かに私も伴侶に求めたい気質だな。
 だが、女難の相は悪運の類だろう。吸血殺しもこれから苦労するだろうな」

散歩の帰りに思わぬ楽しみがあって、ちょっと満足げな雲川だった。

304 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 11:24:14.79 ID:vOL9ZnQo [4/13]

「ただいまー」

自室のドアを開ける。おかえりー、というインデックスの声がなかった。
不審に思いながら居間まで進むと、ベッドサイドで膝を抱えてうずくまっていた。
机の上には食器が散乱している。先ほどの出掛けに当麻が作っていった食事だ。

「食べたものは片付けろって言ってるだろ。……っていうか、お前どうしたんだよ?」
「とうま」

ベッドの上のシーツがぐしゃぐしゃだ。そこで泣きはらしたのだろうか。目が腫れていた。
なにか良くないことでも起こったのだろうかと、鞄を放り出して慌ててインデックスに駆け寄る。

「体の調子でも悪いのか?」
「ううん」

ふるふると、乱れた髪を横に振る。
落ち着けるように、軽く頭を撫でながらそれを整えてやる。

「とうま……。とうまは、どこにもいかないよね?」
「え?」

ドキリ、とする。姫神とのことを言われたのかと思ったからだ。

「どこにも、って何だよ。急にどうしたんだ?」
「一人でいたら、怖くなってきて……っ。私もとうまがいなくなっちゃったらどうしようって!」

ぎゅっと、インデックスにしがみつかれた。まだ残り火があったのか、ぐすぐすと泣き始めた。
そんなインデックスをどうにかしてやりたくて、上条はぎゅっと抱き返した。

「な、インデックス。落ち着いて話してくれないと、何が何だかわかんねーよ」
「さっきっ。カナミン見てたら……カナミンがお兄さんをとられちゃったの」
「……はい?」
「ずっとずっと憧れのお兄さんだったのに! すっごく優しくて、頼れる人だったのに。
 『僕には好きな人がいるんだ』って、絶対それはカナミンのことだと思ってたのに!!」
「あー」

青髪ピアスの言葉を思い出した。たしかこの超機動少女(マジカルパワード)カナミンというアニメは、
最終話近くで小さな女の子達にとって地雷とも言うべき話が存在するのだとか。
ずっと主人公の憧れだった「お兄さん」が、同年代の女の人と結婚してしまうエピソード。
たぶん、インデックスが言っているのはそれだろう。確かに地雷を踏んでインデックスは満身創痍だった。


305 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 11:25:11.93 ID:vOL9ZnQo [5/13]

「カナミンだってすっごくお兄さんのこと好きだったのに。どうして振り向いてくれなかったのかな」
「さあ、なんでだろうな」
「カナミンは年下で、お兄さんよりは子供だったかもしれないけど。でも、すっごく頑張ってアピールしてたのに」
「そうか」
「カナミンと違ってお兄さんには特別な力なんてなかったのに、カナミンが危ないときには助けてくれたんだよ?
 カナミンはそれが嬉しくて、すっごくドキドキしてたのに」
「それでお前、ずっと泣いてたのか」
「うん……。だって、こんなのカナミンが可哀想なんだよ! 年下だからって、まだ子供だからって、
 あんなの……っ。カナミンだって好きだったんだからああぁぁぁぁ」」

ぶり返したのか、うわぁぁぁとインデックスが胸の中で泣いた。
情操教育にはいい番組だなあ、なんて場違いな思考が湧いてくる。それは上条にとっても現実逃避だった。
インデックスの背中を撫でてやること5分。高ぶった感情を沈めるのにそれだけ掛かった。

「……落ち着いたか?」
「うん。ごめんね、とうま」
「いいよ、気にすんな」
「とうまはどこにも、行かないよね?」

言葉に詰まった。自分はついさっきまで、どこでなにをしたのか。
返せるのは、意図的に曲解を含めた答えだけ。

「俺の家はここしかないし、お前がここにいればそりゃ俺は帰ってくるさ」
「うん……」

柔らかく笑うインデックスの、そのあどけなさが痛かった。

「それで、最後カナミンはどうしたんだ?」
「え?」
「ずっと落ち込んでて、おしまいか?」
「ううん。……お兄さんに、笑っておめでとう、って」
「そうか」
「私には出来ないよ、あんな風に笑うことなんて」

その一言は、重たかった。お兄さんは、どういう気持ちでカナミンに「それ」を告げたのだろう。
上条はその日、インデックスに告げることは出来なかった。
こっそりとやりとりする姫神とのメールが、やけに後ろめたかった。


306 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 12:04:07.74 ID:vOL9ZnQo [6/13]

パジャマの裾をぎゅっと握り締めて画面を凝視する打ち止めを、洗い物をしながら黄泉川は眺める。
芳川はベランダで星を見ながらコーヒーを飲んでいる。
寒いところで飲むコーヒーが好きだなんていっていたが、あのアニメを見るのがいささか辛かったのだろう。
子供向けのクセに、思い人を取られる時の心情をやけにリアルに描いていた。
別に芳川は過去を思い出したとか、そう言うわけではないだろう。
だがアニメのキャラに感情移入できるほど若くもなくて、しかし恋愛ごとから遠ざかるにはいささか若すぎた。
なんとなく居心地が悪かったのだろう。
同年代の自分も同じことを感じていたが、手に泡をくっつけて皿をゴシゴシやりながら、
10歳程度の少女がアニメを見ているのを眺めていると、野暮ったい母親めいた気持ちが湧いてくるのだった。

「はぁー、ってミサカはミサカはクライマックスを見終わった後のため息をついてみたり」
「ん、終わったか。ニュースに変えてくれ」
「もう! 黄泉川は余韻を楽しむってことをわかってない!ってミサカはミサカは主張してみる!」
「ずいぶんとハマってたじゃんよ。こないだはアニメで泣くほど子供じゃないとか言ってたのに」
「な、泣いてなんかないんだもん!
 何度も言うけどミサカは培養器から途中で放り出されたからこんな姿をしてるけど、
 精神年齢はちゃんと14歳のものなんだからってミサカはミサカは懇切丁寧に説明してみる」

蛇口をひねる。一つ一つ食器から泡を洗い落として、水切り籠に入れていく。
真後ろにある食器洗浄器が新米兵のまま泣いていた。

「話を聞いてよーってミサカはミサカはソファの上で腕を振り回してみる!
 あ、芳川だ。そんなに外にいて寒くないの?」
「まだそこまで冷える季節じゃないわよ。で、アニメはもう終わった?」
「うん。あの子は大切な人をとられちゃったけどねってミサカはミサカは報告してみたり」
「そう。……それにしてもこのアニメの対象年齢っていくつなのかしらね。
 あまり強い感情を引き起こすアニメは子供には良くないって意見もあると思うけど」
「日本のアニメが海外で問題視される理由の一つじゃん。喫煙なんかは絵の修正で何とかなるけど、
 ストーリーの根幹にかかわる部分はどうしようもないよな」

打ち止めが画面を見て寂しそうな顔をしているのに気づいた。
もしここに彼がいたら、悪態をつきながら一緒にアニメでも見ていただろうか。
そんなことを考えていると、打ち止めがこちらを見た。

「――む。なんか余計な心配されてる気がする、ってミサカはミサカは警戒してみる」
「会えなくて、寂しい?」

芳川がそっと頭を撫でた。最近自分も芳川も何気なく母性を発揮してしまう局面が多くて困る。

「大丈夫だよ、ってミサカはミサカはほんのちょっとだけ強がってみたり。
 あの人はきっとモテないから大丈夫。最後にはちゃんと私の胸に帰ってくるんだから。
 ってミサカはミサカはカナミンとは違うところを見せ付けてみる!」

この少女と彼は、不思議な関係だった。割れ鍋と綴じ蓋のような、夫婦らしいところを見せることもあるし、
時には父娘のような、あるいは兄妹のような、そんな雰囲気になることもあった。
――どこで何をしてるかあたしたちは把握できてないけど、打ち止めを泣かすんじゃないよ。
そんな感傷に少しだけ浸って。
黄泉川はテレビのチャンネルをニュースに変えた。打ち止めに怒られながら。

309 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 22:28:54.18 ID:vOL9ZnQo [8/13]

「――って感じでさ。ごめん。昨日は話せなかった」
「……そう。たしかに。ちょっと言い出しにくいね」
「ごめん」
「ううん。日を改めて。またちゃんと報告しようね」
「ああ」

通学路。エントランスで待ち合わせをして、他の学生達と共に学校へ向かう。
手は繋がない。朝っぱらからそういうことをやると冷やかしも激しいのだ。
手にはすこし可愛らしい柄の巾着。鞄に入りきらなくなった二人分の弁当を、
今日はここに入れてきた。自分の弁当だし、上条はそれを自分で持つと提案した。

「あー……とりあえずあの二人にはこっちから言わないとなぁ」
「……それと、吹ちゃんにも」

憂鬱なことだった。
青髪と土御門はこちらから説明しなかった場合嫌になるほど質問攻めにされるのが目に見えている。
吹寄には、話すべき理由がある。

街路樹はそろそろ色褪せ始めて、黄色に近い葉もちらほらと見かけた。
遠くには、昨日の公園が見えていた。

「当麻君?」
「昨日、あそこにいたんだなって」
「うん……」

髪を揺らしながら、幸せそうに姫神が微笑んだ。
それが嬉しくて、上条も笑い返した。

「おはよう。二人でいるってことは、そういうことでいいの?」

後ろから声が掛かる。振り向くと吹寄がいた。

「吹ちゃん」
「はよーっす。……顔色悪いな、吹寄」
「え? そう?」
「なんつーか、目に隈ができてる感じがする」
「まあ、寝てないからね。いろいろやることがあって」
「無理すんなよ」
「うん。ありがと」

角がなさ過ぎて、やりにくかった。どうも本格的に吹寄は不調らしい。

「で。昨日あれからどうしたの?」
「吹寄。……その、まあなんだ。お前の予想通りだ」
「……」
「姫神と、付き合うことになった」


310 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 23:16:56.53 ID:vOL9ZnQo [9/13]

少し話すと、吹寄はさっさと前を歩いていってしまった。
あまり姫神は話すことが出来なかった。たぶん、あからさまにならない程度に避けられていた。
嫌われたのとは違う気がするが、仕方ないことだろう。
少し時間を置いたら、疎ましがられても自分から話しかけに行こうと姫神は決めた。

校門をくぐった辺りで、『運転手のいない自動車』の怪談の元になった車に追い抜かれた。
中に乗っているのは『学園都市の技術によって大人になれなくなった人』と噂されている人だ。

「おやおや姫神ちゃん。今日は上条ちゃんと一緒に登校してるんですねー」
「あ、おはようございます」
「おはよう。小萌先生」
「今日はいい一日になりそうですねー?」

小萌先生が姫神に訳アリな笑みを向けた。姫神はその意図を理解しているらしかった。
微妙なことではあるが、姫神と上条の距離は、ただの友達よりも少しだけ近い。
姫神の気持ちを知る小萌先生にとって、それはとても嬉しくなることだったのだ。

「姫神ちゃんは今日も頑張ってるです。上条ちゃんも人の気持ちをちゃんと分かるようになるべきですよ」
「……はい?」
「小萌先生」

姫神は、現状が小萌先生の予想を上回っていることが少し、嬉しかった。
きっとこの先生は、姫神が頑張ってこの距離まで詰めているのだと、そう考えているのだろう。
それを訂正するのは、嬉しかった。
上条の腕をそっと握る。

「違うよ」
「えっ? あ、ももももしかして! 姫神ちゃん?」
「当麻君」
「な、なんだ?」

担任の目の前で、昨日告白したばっかりの彼女と腕を組むのはさすがに恥ずかしい。
どうせ噂でものの数日中には知られるのだろうから、あとでこっそり知っておいて欲しかった。

「小萌先生にも。ちゃんと報告したい」
「……姫神は、恥ずかしくないのかよ」
「私が当麻君のことを好きだったのは。もうずっと前にばれてたことだから」

そういえば姫神は月詠家に居候していた時期もあるのだ。考えれば自然なことなのかもしれない。
上条にだって小萌先生は並々ならぬ恩がある人だ。そういう意味では、きちんと報告すべきなのかもしれない。

「小萌先生。まあ、その……姫神と付き合うことに、なりました」


312 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 23:19:45.26 ID:vOL9ZnQo [10/13]

パアァァァァァァ、と小萌先生の表情が明るくなった。

「本当ですか! わぁぁぁ、おめでとうです姫神ちゃん! 上条ちゃん!
 はぁー……良かったですねぇぇ姫神ちゃん。ほんと、ほんとに良かったですねー!!」
「うん。ありがとう」

淡く笑う姫神の視線が優しくて、いとおしかった。
それを見つめていると、突然小萌先生の目が厳しくなった。

「上条ちゃん!」
「な、何ですか?」
「姫神ちゃんを泣かせたら先生が承知しないです!
 上条ちゃんはやんちゃで色んなところで女の子と仲良くなってくる困ったさんですが、
 お付き合いする女の子を泣かせるようなことはしないって先生信じてるです」
「当たり前です」

突如、思い出したように小萌先生の顔が暗くなった。

「……シスターちゃんにも、ちゃんと説明するですよ」
「はい。姫神にも言われてるんで、なるべく早く」
「上条ちゃんは、大人になるんですね」
「なんですか突然」
「小萌先生?」
「誰にもいい顔したりせず、大切な人を一人だけ選ぶってことは、とっても大人なことなんですよ。
 それはとてもとても、上条ちゃんにとっても、姫神ちゃんにとってもかけがえのない経験なのです。
 これからずうっと一緒にいられるかは、愛情だけでは測れないものが沢山ありますけど、
 先生はそれらを二人が乗り越えてくれることをずうっと願ってます。
 そして、二人の周りの人にも、ちゃんと感謝の気持ちを忘れないこと」
「はい」

これほど小萌先生の説教をきちんと聴いたのは、初めてだったかもしれない。
言葉の重みを知って始めて、説教というのは実に染みるのだろう。

「さて、じゃあもう時間です。朝礼でまた会いましょう」
「はい」
「んじゃ、また後で」

満足げな小萌先生を見送って、二人は階段を上がった。

314 名前:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage] 投稿日:2010/10/12(火) 23:54:21.64 ID:vOL9ZnQo [12/13]

教室に入ると、意外なことに青髪も土御門もすでに来ていた。
土御門は来る日は早い時間に来るので驚くほどではないが、
青髪は小萌先生に怒られるためにわざわざ遅刻をする男だ。

「おっすカミやん。……姫神と連れ添って入ってくるなんて、意味深やなあ」
「で、どこまで進展したのかにゃー?」

ああ、こいつらは変わらないなあ。上条はそう嘆息した。
姫神はクラスに入った時点で自然と分かれ、今は女子と挨拶を交わしていた。
こちらが見ているのに気づいたのだろう。目が合った。

「あのうカミやん? いま、もしかして姫神とアイコンタクト、してた?」
「まさか。それはないぜよ。フラグの立て逃げが信条のカミやんに限って」
「立て逃げって、人聞きの悪い」
「だけど真実だにゃー?」
「勝手に言ってろ」

自分の机に鞄を置く。この程度の誹謗中傷は日常だから気にはならない。
だが、なんだが疑いの目をした青髪ピアスは普段と違った。

「カミやんの昨日の顛末、気にならへんの?」
「いやー実はさる筋からの情報からでな、あれからカミやんはさらにもう二人の女の子との
 合計四人でお茶をしたらしいにゃー」
「……うわー。デートするって学校を出ても、やっぱりカミやんはカミやんやねえ」

さすがに、この二人に付き合っていることを打ち明けるのは恥ずかしい。どうやって切り出していいのかも分からない。
……と、ふと気づくと姫神が隣にいた。

「姫神さん?」
「どうしたんだにゃー?」

上条との関係を疑うより前に、昨日さんざん弄ばれた怒りをぶつけられるのかと警戒しているようだった。

「別に。上条君に言いたいことがないなら。すぐ立ち去る」
「姫神……」

良いのかよ? と目で問う。首は縦に振られた。

「あー、なんだ。昨日は確か俺がもてるかもてないかって話から、始まったんだよな?」
「カミやん」
「まさか……」
「まあ、結論を言うとだな」

隣で姫神が軽く笑い、上条の腕を抱いた。クラス中がその仕草に息を呑む。
怒涛の急展開を見せた昨日を振り返る。いろいろとあった。そしてその結末が、今ここにある。
上条は軽く呼吸を整えて、姫神が隣にいることの意味を、一言に込めた。

「もてた」

――――おわり――――



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