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  • 朋也「軽音部? うんたん?」 卒業

自分用SSまとめ

朋也「軽音部? うんたん?」 卒業

最終更新:2011年05月09日 18:30

meteor089

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管理者のみ編集可

朋也「軽音部? うんたん?」

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217:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 11:47:31.31:jpDSDOMkO


俺たちは、前庭にいた。
体育館では、卒業式が行われている。
固い連中と肩を並べて座ってなんかいられない、と俺と春原は抜け出してきていたのだ。
後一時間もすれば、否応もなくこの学校を卒業してしまう。
遊んでいられた時間は終わってしまうんだ。

春原「今のうちに、ラグビー部の連中の部屋を回ってさ、壁に染みっぽい人の顔描いて回ろうぜ」

春原「帰ってきたら、ひぃっ、壁に人の顔が浮かび上がってるっ!って、びびりまくるって」

春原「夜中なんて、絶対、寝られないって」

春原「一週間後には、不眠症で死ぬねっ」

朋也「そいつらも、今日卒業だろ」

春原「えっ、マジかよ!?」

春原「なんでだよっ!」

朋也「愚問だからな」

春原「くそぅ、あいつらめ…おめおめと逃げやがって…」

朋也「呼んだらきっと、最後に相手してくれるぞ」

声「岡崎に春原…」

春原「ひぃぃっ!」


218:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 11:48:14.88:+UZ/pLeq0


いつの間にか、俺たちの正面に幸村が立っていた。

春原「なんだよ、ヨボジィかよっ、びっくりさせんなよっ!」

幸村「最後ぐらい、出んかい…」

春原「最後って、卒業式?」

春原「『楽しかった修学旅行っ、なぜか買ってしまった木刀っ』とかみんなで言うんだろ?ヤだよ…」

朋也「みんなで言うのは、小学生な」

春原「中学の時も言ってたってのっ」

朋也「田舎はなっ」

春原「ウチの田舎馬鹿にすんじゃねぇよっ!」

幸村「ほんとに、おまえらは…」

幸村「情けないやつらだの…」

幸村「これからは社会人だというのにの…」

朋也「逆だよ。最後だからさ」

幸村「ふむ…まぁ、それもそうか…」

幸村「ま、ホームルームぐらいは出たほうがいい…」


219:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 11:49:34.69:jpDSDOMkO


幸村「山中先生が悲しむでの」

朋也「ああ、わかってるよ」

幸村「ふむ、まぁ…」

幸村「それだけだ…」

体育館に戻ろうとする幸村。

朋也「なぁ、じぃさん」

俺はそれを呼び止めていた。

朋也「どうして、俺たちを卒業させてくれたんだ?」

幸村「ふむ…」

幸村「自分の教え子は…」

幸村「例外なく、自分の子供だと思っておる…」

半身のまま言った。

幸村「ただ…この学校は…ちと優秀すぎる生徒が多すぎての…」

幸村「長い間、わしの出番はなかった…」

幸村「が…」


220:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 11:49:56.27:+UZ/pLeq0


幸村「最後に、おまえらの面倒を見られてよかった…」

そう…
きっと、俺たちが思っている以上に、影で支えられていたのだろう。
それは、今よりも、もっと…
ずっと、歳をとった未来に、気づいていくことのような気がしていた。
そして、ひしひしと感じるのだ…。
今の自分があるのは、あの人のおかげなんだと。

朋也「俺たちはさ…」

朋也「きっと、うまく生きていけるよ。進学しないぶん、困難は多いだろうけどさ…」

朋也「それでも、きっとやっていけると思うよ」

幸村「ふむ…」

幸村「頑張りなさい…」

しわがれた声で、しみじみと深く芯を込めて返してくれた。
そして、その身を正面に戻して歩いていく。
ゆっくりと歩を進めるその後姿を、俺たちは見届ける。
廊下の角を曲がったところで、視界から消えていった。

朋也「じゃ、行くか」

春原「そうだね」

俺たちは校舎ではなく、校門の方へ向かっていった。
ある計画のために。


221:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 11:51:27.42:jpDSDOMkO


―――――――――――――――――――――

門から玄関へ続く大通りには、すでに人だかりができていた。
保護者と下級生たちだ。
卒業生を花道で迎えようと待ち構えている。

春原「んじゃ、派手にいきますか」

朋也「ああ、そうだな」

―――――――――――――――――――――

春原「注もぉおおおおくっ!!」

昇降口の上段に立ち、春原が大きく声を上げた。
なるべく目立つよう、俺に肩車された状態で。

春原「この後っ、シークレットイベントがあるっ! 全員グラウンドに集合するようにっ!」

続けざま、そう声を張り上げた。
なにごとかと、場にざわめきが生まれ始めていた。
すると、こちらに駆け寄ってくる影がふたつ。

梓「なにやってるんですかっ」

憂「岡崎さん、春原さんっ」

中野と憂ちゃんだった。

朋也「よぉ、中野、憂ちゃん」


222:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 11:51:55.72:+UZ/pLeq0


梓「よぉ、じゃないですよっ! HRはどうしたんですかっ!」

朋也「サボリだな」

梓「だめですよ、ちゃんと出ないとっ! こんなところで芸を披露してる場合じゃないですよっ!」

春原「芸じゃねぇよ。宣伝だ」

梓「せ、宣伝?」

朋也「ああ、宣伝だ。おまえらの、ラストライブのな」

梓「え…?」

朋也「ほら、おまえらさ、最後に演奏してこの学校を出たいって言ってたじゃん」

朋也「それで、どうせなら広い場所がいいってことで、グラウンドになっただろ」

朋也「で、もう音響とかも準備してあるしさ、ライブにしちまえよってことだ」

俺たちが軽音部のためになにかしてやれることはないか、最近まで話し合っていたのだが…
その結果出した結論がこれだった。しかも、今朝突発的にだったので、出たとこ勝負だったのだ。

梓「そんな…勝手にそんなことしたらまずいですよ…ひっそりと身内でやるだけならまだしも…」

朋也「そんなんでいいのか? テープにレコーディングとかもしてたけどさ…本当にそれだけで満足か?」

梓「それは…」

朋也「やっちまえよ。くそでかいハコで、おまえらの、最後の放課後を」


223:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 11:53:09.17:jpDSDOMkO


梓「最後の…放課後」

憂「…岡崎さん、春原さん。私も宣伝手伝いますっ」

梓「憂…」

朋也「そっか。サンキュな、憂ちゃん」

春原「さすが唯ちゃんの妹だね。話がわかるよ」

憂「えへへ…」

朋也「おまえはどうなんだ、中野。つっても、おまえが乗り気じゃなきゃ、全部無駄足なんだけどな」

梓「私は…」

憂「やろうよ、梓ちゃんっ。私、またライブみたいよ」

梓「………」

梓「…そうだね。うん…やるよ、私」

憂「梓ちゃんっ」

朋也「よし。そんじゃ、おまえは先にグラウンド行って準備しててくれ」

梓「わかりましたっ」

たっと駆けていく。


224:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 11:53:48.05:+UZ/pLeq0


春原「じゃあ、僕らは宣伝だね」

朋也「ああ」

憂「はいっ」

春原「おっし…グラウンドへ集合ーーーっ!!」

朋也「グラウンドへお越しくださーーーーいっ」

憂「お願いしまーすっ! グラウンドへ来てくださーいっ!」

懸命に叫んだ。
すると…
その必死さが通じたのか、ひとり、またひとりと動いていき、次第に大きな人の流れができていた。
向かう先は、もちろんグラウンドだ。
確かな手ごたえを感じ、俺たちは声を張り続けた。

―――――――――――――――――――――

春原「お、きたきた」

卒業生が群れを成し、校舎から大挙して押し寄せてくる。

春原「てめぇら、グラウンドへいけーーっ!」

その集団に向かって吠える春原。
不測の事態にざわざわとささやく人混みの中から、教師がひとり、こちらに早足で歩み寄ってきた。

教師「こらっ! なにをやってるっ!」


225:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 11:55:05.55:jpDSDOMkO


学年主任だった。

教師「おまえらは、最後まで問題を起こす気かっ!」

春原「別に悪いことしようってんじゃねぇよ。ちっとグラウンドまで来てほしいだけだよ」

教師「グラウンドだと…?」

その敷地に目を向ける。
そこには、さっきまでこの場にいた人間が全て移動していた。

教師「おまえら、保護者の方と在校生までグラウンドに誘導したのか?」

朋也「そうです。許可なくやったことは謝ります。でも、今はだけは目をつぶってください」

朋也「お願いします」

頭を下げる。

教師「岡崎、おまえらがなにをしたいのかは知らんが、なにか事故があった時に責任は持てないだろう」

教師「全て、この学校での不祥事になるんだぞ。個人でどうこうできる話じゃなくなるんだ」

教師「おまえはちゃんと更生して就職まで決めたんだから、大人しくしていろ」

教師「春原、おまえも同じだ」

朋也「それでも、どうか、お願いします」

また深く頭を下げる。


226:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 11:55:28.95:+UZ/pLeq0


春原「お願いします」

憂「お願いしますっ」

春原も、憂ちゃんも一緒になって頭をさげてくれた。

教師「だから、それは…」

声「私からも、お願いします」

聞き覚えのある声。顔を上げる。

さわ子「なにかあった時は、私がひとりの社会人として全ての責任を被ります」

さわ子さんだった。

教師「山中先生…」

さわ子「だから、どうかお願いします」

さわ子さんも、同じように頭を下げてくれた。

教師「…はぁ」

大きくため息を吐く。

教師「安全だけは確保するように」

言って、停滞していた卒業生の集団に体の正面を向ける。


227:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 11:57:19.75:jpDSDOMkO


教師「グラウンドへ集合!」

そう、声を上げた。
しばし間があった後…皆、列を崩しながらもぞろぞろとグラウンドへ足を運んでいた。

さわ子「すみません、主任」

教師「…こういうことは、今後ないように」

言って、学年主任もグラウンドへ歩いていく。

朋也「ありがとうございます!」
春原「ありがとうございます!」
 憂「ありがとうございます!」 

その背に大きく礼の言葉を送った。

朋也「さわ子さん、助かったよ」

春原「救世主だよね」

憂「先生、ありがとうございますっ」

さわ子「ええ、それはいいんだけど…岡崎、春原。式とHRはちゃんと出なさいよね」

朋也「悪い。最後まで迷惑かけちまって」

春原「ごめんね、さわちゃん」

さわ子「まったく…手のかかる生徒だこと。ほら、卒業証書」


228:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 11:57:45.94:+UZ/pLeq0


黒い筒を一本ずつ俺たちにくれた。

朋也「サンキュ」

春原「これで、晴れて卒業だね」

さわ子「で、グラウンドに人を集めてどうしたいのよ」

朋也「ああ、それは…」

唯「朋也ーっ! 春原くーんっ」

唯がこちらに駆けてくる。軽音部の面々もその周りにいた。

唯「はぁ…はぁ…ど、どうしたのふたりとも…」

律「なぁにやってんだよ、おまえらは…つか、なにがしたいの?」

朋也「おまえらのラストライブの呼び込みしてたんだよ」

澪「え…? どういうこと?」

朋也「ほら、グラウンドにさ、演奏できるように設備整えただろ?」

朋也「だから、ライブしちまえよってことだ。客がいるなら、成立するだろ、ライブもさ」

さわ子「そういうことだったのね…やることが大雑把すぎるわよ、あんたたちは」

朋也「悪い」


230:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 11:59:16.35:jpDSDOMkO


さわ子「憂ちゃんも、巻き込まれたひとりなのよね?」

憂「えへへ、そうですね」

さわ子「ご愁傷様ね…」

律「ほんと、アホだな、おまえらは…」

呆れたように肩をすくめる部長。

律「でも…なぁんか燃えてきたぜぇ、あたしは」

紬「うん…私も。私たちのために、こここまでしてくれる人がいるんだもの」

澪「そうだよな…うん。私も、すごく熱い感じだ」

唯「私もだよ、ふんすっ! ふんすっ!」

朋也「じゃ、やってくれるんだな」

律「ったりまえじゃん。任せとけって」

朋也「そっか。じゃ、頼むよ。中野はもう先に行ってるからさ、合流してやってくれ」

澪「うん、わかったっ」

朋也「おまえらの…放課後ティータイムのファンとして、俺も観てるからな」

春原「僕も、名誉ファン会員としてのオーラを出しながら観とくよ」


231:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:01:36.45:jpDSDOMkO


律「だれが名誉ファン会員だっつーの…」

唯「ふたりとも、違うよっ! ファンじゃなくて、放課後ティータイムの一員でしょ?」

朋也「って、いいのかよ、それで」

律「ま、いいんじゃねぇの? なかなかいい働きしてくれたしな」

唯「りっちゃんの許可も下りたし、もう公式メンバーだねっ」

朋也「そっか。そりゃ、光栄だな」

春原「僕の担当楽器はもちろんムギちゃんで、ボディをあれこれして音を奏でるってことでいいよね?」

律「死ね、変態っ!」

紬「くすくす…」

笑っていた。俺たちは…今、確かに笑えていた。

―――――――――――――――――――――

朋也(ふぅ…)

準備を進める様子を遠巻きに眺めながら思う。
これで俺が、軽音部に…唯にしてあげられることは、全て終わったと。

朋也(よかった…最後に用意できて…)

これで悔いはない。唯とも、笑顔で別れることができる。そのはずだ。


232:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:02:17.02:+UZ/pLeq0


キィーン…

スピーカーから音が鳴る。それは、最終調整の出足を告げる音。
もう少しすればライブが始まるだろう。俺は、その時をじっと待っていた。

―――――――――――――――――――――

ちりちりとマイクの音がした。
電源を入れたのだろう。

唯『こんにちは、放課後ティータイムです!』

始まった…唯のMC。

唯『今日は絶好の卒業日和ですね! 私もさっき思わず卒業しかけちゃいました!』

律『いや、んなくしゃみみたいに言われてもな…』

笑いが起こる。今日も好調のようだった。

唯『えへへ…えーっとですね、そうです、今日は卒業式なんですよねぇ』

唯『それで、お父さん、お母さんたちもいっぱい来てますよ』

唯『まぁ、それはいいんですけど…』

律『無駄な前フリはやめろ』

「りっちゃーん、ツッコミがんばってーっ」


233:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:03:36.87:jpDSDOMkO


「進行の具合は田井中にかかってるぞーっ」

律『はは、ども』

唯『でですね、実は私たち、このライブのこと、さっき知ったんですよ』

「なんで知らなかったのーっ」

「ありえねーっ!」

「平沢せんぱーいっ!」

様々な野次が飛び交う。

唯『式とHRの間にセッティングしてくれた人がいたんです。それで、外に出てきたらびっくりしました』

唯『こんなにたくさんの人を集めてくれたこと…私たちのために動いてくれてたこと…』

唯『すっごくうれしいドッキリでした』

律『おい、ドッキリじゃ、ここに集まってくれた人全員サクラになっちまうぞ』

「りっちゃーん、俺サクラじゃないよーっ」

「俺もガチだよーっ」

唯『じゃあ、サプライズっていうのかな。文化祭の時もあったよね』

唯『あの時は、みんなが私たちと同じTシャツ着てて、驚いたなぁ…』


234:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:03:59.70:+UZ/pLeq0


唯『今日もそれくらい驚きました』

「俺着てたよーっ」

「今も持ってるよーっ!」

唯『ありがとー、みんな。本当に楽しかったよね。文化祭だけじゃなくて…この三年間』

唯『いろんなことがありました。楽しいこと、いっぱいありました』

唯『時々辛いこともあったけど…でも、やっぱりとっても楽しかった』

唯『私たちは、放課後、いつもお茶をして、お話して、だらだらと過ごしてきたけど…』

唯『練習する時は、いっぱいして、ライブを頑張りました』

唯『二年生になると、新入部員も入ってきてくれました。とっても可愛い女の子です』

唯『そして、とってもギターが上手くて、可愛い上に即戦力になってくれて、言うことなしでした』

唯『それからの私たちの活動は、4人でいた頃よりもっと楽しくなりました』

唯『そして、三年生になると、今度は男の子がふたり、部室に遊びに来てくれるようになりました』

俺と春原のことだ…。

唯『とっても面白いふたりで、いつも私たちは笑っていられました』

唯『もっと、もぉっと部活が楽しくなりました』


235:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:04:53.36:+UZ/pLeq0


唯『いっぱい、みんでお話しました。お菓子を食べました。ふざけあいました。やんちゃなこともしました』

唯『けど…』

唯『………』

唯『けど…そうだよね…今日で…おしまい。もう…戻れないよ…』

途中から涙声になって、鼻をすする音が聞こえてきた。

唯『おかしいな…泣きたくないのに…どうしてだろう…さっきまで…うれ…し…』

律『唯…』

澪『…ゆ…唯…』

紬『唯ちゃん…』

梓『唯先輩…』

唯『いやだよ…終わっちゃうなんて…いやだ…いやなの…うぅっ…いやだよぉ…』

そして…唯は泣き始めた。
ずっと堪えていた涙が溢れ出した。
しゃくりあげ、子供のように泣いた。
それは、文化祭の日に見た、あの泣き方より辛いものだった。
続いてほしいと願った、楽しい日常の区切り。
そんな現実を突きつけられ、どうしていいかわからない辛さ。
心の中心に位置していたものを失った辛さだった。
俺は見てられなくなって…顔を伏せた。


236:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:06:21.50:jpDSDOMkO


このまま終わっちまうのか…。
俺のしたことは、唯を傷つけただったのか…。

声「甘えてんじゃねぇええええええええっ!」

怒声が、空にこだました。この声は…

朋也「さわ子さん…」

俺は人混みの中にその姿を探した。
それは人だかりが割れた中の中心にあった。
付近すべての注目を集めて。

さわ子「唯ーーーーっ!」

さわ子「てめぇらの居た時間は卒業したくらいで終わっちまうほど安っぽいもんだったのかーーっ!?」

さわ子「違うだろっ! 離れようが近かろうが、どうあっても色褪せない時間を生きてただろうがーーっ!」

さわ子「ここで挫けたら、全部嘘になっちまうぞっ! 先に進めねぇぞっ! いいのか、おいっ!」

メガネを外し、髪が振り乱れるくらいの剣幕で叫んでいた。
………。
少しの間の後…

憂「おねえちゃーん! 頑張れぇーっ! 今日は焼肉だよーっ!」

憂ちゃんがすぐ近くで声を上げていた。
憂ちゃんの励ましはなんだか的外れだった。
けど、それに便乗しない手はない。


237:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:06:47.39:+UZ/pLeq0


朋也「俺たちも、同じだぞ、唯っ!」

朋也「春原や俺ができなかったことを、今、おまえらが叶えようとしてくれてるんだっ!」

朋也「わかるかっ、俺たちの挫折した思いも、おまえらが今、背負ってんだよっ」

朋也「だから、叶えろ、唯っ!」

怒鳴りつけた。言動の辻褄が合っているかさえわからなかった。
でも、思うままを叫んだ。
………。
唯が…顔を上げる。
もう泣いていなかった。
真っ直ぐに…前を見据えていた。
…連れていってくれ、唯。
この町の願いが、叶う場所に。
唯がマイクを手に取った。
それは、歌う意思の顕れ。
放課後が始まる。
俺たちの、最後の放課後が。

―――――――――――――――――――――

ライブが終わり、会場となったグラウンドは、祝福する声と拍手で賑わっていた。
それでも、だんだんと人が校門の方へ流れていき、卒業式本来の様相を取り戻し始めている。
唯たち軽音部は、さわ子さんを含め、一箇所に固まって、互いを抱きしめあっていた。
皆、涙を流していたが、その顔はとても晴れやかだった。
周辺でその様子を写真に収めたり、ビデオ撮影する父兄の姿があった。
きっと、あいつらの親なんだろう。


238:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:07:57.86:+UZ/pLeq0


春原「おい、岡崎」

朋也「なんだよ」

春原「ほら、あそこ」

朋也「ん?」

春原が示す先。
卒業生が、部活の後輩、顧問や担任の教師に手を振り、振られていた。
その少し離れた場所に幸村の姿もあった。
誰も、幸村の元に寄っていく者はいない。
まるで、忘れられた銅像のように、ぽつんと立っていた。
俺と春原は顔を見合わせる。

春原「そういうのも、アウトローっぽくていいよね」

そして、どちらが先でもなく老教師に駆け寄り、その正面で深く礼をしていた。

朋也「ありがとうございましたっ!」
春原「ありがとうございましたっ!」

抜けるような青空に響かせた。
賑わいが一瞬引くような勢いで。
この三年間の感謝を。

朋也「じゃあな、ジジィ。元気でな」

春原「僕らが死ぬまで死ぬなよっ」


239:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:09:11.80:jpDSDOMkO


幸村「無理を言うな…」

最後の教師としての笑顔を目に焼きつけて…
俺たちは校門をくぐり抜けた。

―――――――――――――――――――――

キョン「よぅ、ふたりとも」

抜けた先、門のすぐそばでキョンが背をもたれかけていた。

朋也「よぉ」

春原「お、また久しぶりだね」

キョン「えっと…すまん、そっちの春原っぽい人は、春原で合ってるよな?」

朋也「ああ、髪の色はだいぶめちゃくちゃになっちまってるけど、ギリギリ春原だ」

春原「これが通常の日本人だろっ!」

キョン「ははは、すまん、冗談だ」

春原「そういうフリには岡崎が絶対に食いつくからやめてほしいんですけどねぇ」

キョン「そうだな。今後気をつけるよ。その機会があればだけどな」

春原「なんだよ、もう会わないつもりなのかよ」

キョン「そうなるかもしれないからな。最後におまえらに会っておきたかったんだよ」


240:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:09:33.01:+UZ/pLeq0


春原「はっ、そんなの、会おうと思えばいつでも会えるに決まってるだろ」

春原「この町に戻ってくれば、絶対に会えるんだよ、僕らは」

キョン「そうか…それは、安心だ」

春原「へへっ…」

キョン「じゃあ…おまえら、元気でな」

手を中に掲げる。ハイタッチの誘いだ。

朋也「おまえもな」

左手で合わせる。パンッと小気味良い音がした。

春原「じゃあな、キョン」

春原は豪快に叩き、大きな音を立てていた。

声「キョン! なにしてんのよ、早くきなさいっ!」

坂の下から声が届く。

キョン「おっと…やばい」

背を向ける。

朋也「涼宮と達者で暮らせよ」


241:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:11:09.37:jpDSDOMkO


春原「結婚式には呼んでくれよなっ」

一度振り向き、苦い顔を向けてくれると、駆け足で坂を下りていった。

―――――――――――――――――――――

俺たちは学校を出ると、そのまま寮に戻ってきていた。

春原「ふぅ…」

ベッドに腰掛ける春原。
俺は床に寝転がって天井を見上げた。

朋也「で…おまえは、明日の朝この町を出るんだったよな」

春原「ああ、まぁね」

春原は少し前から荷造りを始め、帰省の準備をしていた。
ちょっとずつ部屋にあったものが消えていき、今ではあの年中据えられていたコタツさえなくなっている。
卒業証書をもらっても湧かなかった実感。
でも、この部屋の閑散とした佇まいを見ると、これまでの生活に終止符が打たれたことを否応なく感じさせられる。
ここで過ごしてきた時間は、俺の中でそれだけ大きかったのだ。

春原「僕がいなくなっても、泣いたりするなよ」

朋也「俺がそういうやつに見えるのか」

春原「まったく心配なさそうですねっ」

朋也「だろ?」


242:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:11:32.17:+UZ/pLeq0


春原「ああ」

お互い顔は見えていなかったが、向こうもにやけているのが空気でわかった。

春原「おまえにはひどい目に遭わされまくったけどさ…楽しかったよ、この三年間」

朋也「そっか」

春原「おまえは、どうなんだよ」

朋也「俺か…? まぁ、俺も…楽しかったよ。おまえがいてくれてさ」

春原「そっか…へへっ」

口に出してこいつを肯定するのは初めてだったかもしれない。
まさに、最初で最後というやつだ。
しかし…なんともむずがゆいものがある。
けど…悪くはなかった。

がちゃりっ

声「こらーっ! なに勝手に帰ってんだっ!」

朋也「ん…」

春原「おわぁっ」

ベッドから跳ね起きる春原。
ドアの方へ顔を向けてみる。


243:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:12:52.01:jpDSDOMkO


律「あ、岡崎もいやがった」

部長だった。

唯「え、朋也もいるの?」

梓「じゃあ、連絡する手間が省けましたね」

澪「こんにちは~」

紬「お邪魔します~」

憂「どうもー」

和「ん…殺風景になったわね」

その後ろから、わらわらと顔なじみの連中が湧いて出てきた。

律「おまえらも片付けぐらい手伝えよなぁっ」

言いながら、部屋に上がりこんでくる。

唯「おじゃま~」

続けて唯たちもぞろぞろと入ってきた。
みんな、その手にはコンビニやスーパーのレジ袋を提げている。
その中には、ペットボトルや駄菓子類が詰め込まれているようだった。

春原「え、え? なんだよ、ここ、なんかの会場になるの?」


244:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:13:13.30:+UZ/pLeq0


律「そうだよ、卒業記念パーチー会場だ」

春原「マジかよ…つーか、事前に言えよなっ」

律「おまえらだって何の断りもなくライブ仕掛けてたじゃん」

春原「まぁ、そうだけどさ…」

律「とにかく、ここで飲み食いするからな」

春原「いいけどさ、あんまり食い散らかすなよ。明日出てかなきゃなんないんだからさ」

春原「掃除し直すの面倒なんだよね」

律「え!? 明日? 早くない…? 春休みは…?」

春原「休み中には次入学してくる寮生が入居するんだよ」

律「そ、そっか…そうだよな…はは」

和「娯楽品もなにもないのは、そういうことなのね」

春原「まぁね」

律「じ、じゃあさ、みんな、なんにもないとこだけだど、楽にしてくれよ」

春原「おまえが言うなっての」

律「ふ、ふん…」


245:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:14:29.21:jpDSDOMkO


澪「律、なんか動揺してないか?」

律「な、なんで? 別にしてないけど…」

紬「春休み中、春原くんと遊ぶつもりだったのね」

律「ちがわいっ! と、とにかく、菓子の箱あけまくろうぜっ」

律「そんで、この部屋をゴミ屋敷にして帰ろうっ! 立つ鳥跡を濁しまくり、ふははっ」

春原「てめぇ、散らかすなって言ったばっかだろっ!」

律「そんなの忘れちゃった、てへっ」

春原「キモっ」

律「んだとぉ、ラァッ」

丸めてあったゴミをぶつける。

春原「ってぇなぁ…ウラぁっ!」

春原もそれを拾って投げ返した。

律「とうぅっ!」

部長は軽やかに身をかわす。

律「ばーか」


246:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:14:57.59:+UZ/pLeq0


春原「むぅ…うらぁっ!」

今度はしわしわになった洗濯物を投げつける。

律「ぶっ…って、なにパンツ投げつけてんだよ、変態っ!」

春原「あ、やべ…」

律「どういう性癖だ、こらーっ」

春原「勘違いすんなっ! 僕はノーマルだっ」

和「さ、あのふたりは放っておいて、お菓子を広げましょ」

澪「そうだな」

憂「私、たくさん避けるチーズ買ってきました」

梓「あ、憂ナイス。私それ好き」

憂「ほんと? よかったぁ」

唯「朋也、隣に座ろ?」

朋也「ん、ああ」

紬「ふふ、ラブラブね」

唯「えへへ、まぁねぇ」


247:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:16:23.11:jpDSDOMkO


律「こらーっ! 私抜きで始めるなぁっ!」

澪「おまえが暴れるのに夢中だったんだろ…」

春原「ムギちゃん、隣に座っていい? っていうか、最後だし、むしろ僕に座ってくれてもいいよっ」

紬「えっと…ごめんなさい、今足が疲れてて、空気椅子できないの」

春原「そうまでして触れたくないんすかっ!?」

律「わははは!」

和「ほんっとに、うるさいわねぇ…」

―――――――――――――――――――――

律「でもさぁ、ライブ自体もびっくらしたけど、唯が泣き始めた時もかなり焦ったよなぁ」

スティック菓子をポリポリとかじりながら言う。

唯「ごめんね…」

律「いや、いいよいいよ。感極まって泣いちゃったんだよな」

唯「うん…もう、これで終わりなんだって思ったら、寂しくなっちゃって」

澪「唯…」

春原「唯ちゃん、心配すんなよ。学生時代、一緒に馬鹿やった奴らは、一生縁が切れねぇから」


248:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:16:49.55:+UZ/pLeq0


春原「でさ、今手に入る友達は、学校だけの仲じゃないんだ」

春原「卒業して遠く離れてしまっても…」

春原「それでも休みを合わせてくるような…そんな仲なんだ」

春原「これから大人になっても、周りや自分が変わってしまっても、それでも友達なんだ」

春原「みんな出世してさ…すげー忙しくなっても…」

春原「職場の同僚との、新しい居場所が出来ても…」

春原「結婚して、子供が出来て、家族を守るために精一杯でも…」

春原「それでも…僕らはきっと、顔を合わせれば笑いあってるんだ」

春原の言葉。珍しく真に迫っていて、俺たちは静かに耳を傾けていた。

唯「うん、そうだよね。ありがとう、春原くん」

律「急に真面目なこと言いやがって…なんだよ、おまえも言えるんじゃん、そういうこと」

春原「はは、僕の溢れるセンスが爆発しちゃったかな」

律「あーも、すぅぐ調子乗る…」

澪「おまえとそっくりだな」

律「なんか言ったかー?」


249:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:18:25.49:jpDSDOMkO


澪「いや、別に」

梓「さわ子先生もすごかったですよね」

律「あー、昔の血が蘇ってたよな。てめぇ、とか、おらっ! とか言ってさ」

春原「僕もあれは結構ビビッちゃったよ。唯ちゃんは一番ビビッちゃったんじゃない? 名指しだったし」

唯「うーん、ていうよりは、勇気づけられたかなぁ」

春原「マジで? やっぱ、いい神経してるよ、唯ちゃんは」

唯「えへへ」

和「憂と岡崎くんも、はっぱをかけてたわよね」

律「あー、だったな。憂ちゃんは夕食の話題で釣ろうとしてたよな」

憂「やっぱり、ちょっとズレてましたか…?」

唯「そんなことないよ。ちゃんとテンション上がったよ。ありがとね、憂」

憂「うん、えへへ」

律「この姉妹はのほほんとしてんなー、ほんと…」

紬「岡崎くんは、唯ちゃんへの愛を叫んでたわよね」

朋也「あ、愛?」


250:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:20:11.27:jpDSDOMkO


紬「うん、愛」

梓「あんな公衆の面前で恥ずかしくないんですか? 唯先輩のご両親も来てらしたんですよ」

マジか…。

朋也「いや、愛とかのつもりじゃなかったんだけど…」

唯「ええ? 愛はないの? 愛してはくれないの?」

朋也「い、いや、おまえのことは好きだけど…」

唯「だよねっ! 私もだよっ」

言って、腕に絡みついてくる。

朋也「あ、おい…」

律「くぁー、目の前でイチャつかれたらたまったもんじゃないっすわ…」

梓「そういうことはよそでやってくださいっ! しっしっ」

動物を追い払うような手振りをされてしまう。

澪「………」

律「あー、ほら、元岡崎狙いだった梓と澪のテンションがおかしくなっちゃうし…」

梓「わ、私はぜんぜんそんなことないですしっ! ですしっ!」


252:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:30:49.65:jpDSDOMkO


律「すでに口調がおかしいからな…」

唯「でも私、朋也と同じくらいみんなのことが好きだよ?」

律「おー、勝者の余裕かぁ?」

唯「違うよ、ほんとうのこと。だからね、愛の歌をみんなで歌おうよ」

律「なにそれ」

唯「だんご大家族だよっ」

律「って、またそれか…ライブの最後にも歌ってたよな」

律「せっかくいい感じで盛り上がってたのに、みんなずっこけてたぞ」

唯「そんなことないよっ! 盛り上がりはピークに達してたよっ」

律「あ、そっすか…」

唯「うんっ。今からあの興奮を再現するよっ」

唯「だんごっ、だんごっ…」

一人で歌い始める唯。

唯「みんな、カモン!」

唯「やんちゃな焼きだんご 優しい餡だんご…」


255:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:31:17.75:+UZ/pLeq0


律「はいはい、わかったよ…」

そして部長たちも合わせて歌った。
いつかのカラオケの時のようだった。
今度は、俺と春原もちゃんと声を出して歌っていた。

―――――――――――――――――――――

朋也「ふぅ…」

部屋の空気も熱気でモワついて来た頃、俺は夜風にあたるため、外へ出てきていた。

朋也(涼しいな…)

二酸化炭素が充満した狭い部屋から、開けた場所に出てきた開放感も手伝って、気持ちがよかった。

和「あら、岡崎くん」

朋也「お、真鍋」

缶ジュースを持った真鍋が俺に近づいてくる。
真鍋は、俺より先に部屋から出ていたのだ。

和「外の空気を吸いにきたの?」

朋也「ああ、そんなところだ」

和「そ」

言って、ジュースを口にした。


257:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:32:39.64:jpDSDOMkO


朋也「そういえばさ、坂上から聞いたんだけど、桜並木、守れたんだってな」

和「ん、そうね」

朋也「あいつ、おまえのことをすごい奴だって、すげぇ評価してたよ」

朋也「自分の力だけじゃ絶対に成し遂げられなかったってさ」

和「そんなことないわ。あの子のほうがよっぽどすごいわよ」

朋也「逆の意見なんだな。謙遜か?」

和「私はプライベートでへりくだったりしないわ」

朋也「あ、そ」

和「あの子は、本当に純粋で、穢れなくって…真っ直ぐなの」

和「とてもじゃないけど、汚い根回しや、既得権益の保守なんかには関わらせる気にならかったわ」

朋也「おまえにも人間らしい感情があるんだな」

和「まぁ、一応ね」

和「それでも、一般的に必要とされる事務処理の手続きなんかはちゃんと教えていたんだけどね」

和「たったそれだけなのに、あの子はどんどん力をつけていったわ」

和「厄介だった組織をひとつ解体してくれるくらいにね」


259:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:33:29.99:+UZ/pLeq0


朋也「厄介な組織?」

和「ええ。部費に割り当てられるはずの予算を6%横領してる連中がいたの」

和「そいつらは秀才で構成されていて、そのバックには卒業していったやり手の先輩たちがついてたわ」

和「在校生だけなら秀才軍団だろうと、なんてことなく処理できたんだけど…」

和「関わってるOBとは私もしがらみがあってね。1、2年生の頃懇意にさせてもらってたのよ」

和「だから、仕方なく目を瞑るしかなかったんだけど、あの子が会計のおかしさに気づいてね」

和「この不透明な出費はなんなのか、って訊かれたわ。それで、核心には触れず、遠まわしに伝えたの」

和「そうしたら、話をつけてくるって、リーダー格の男のところにいこうとするのよ」

和「私は止めたわ。後であの子にどんな不利益が生じるかわからなかったから」

和「でも、どうしても行くって聞かないのよ。それで生徒会室を飛び出して行ったの」

和「数日後、見事に連中の動きがなくなってたわ」

和「聞いたところによると、構成員のひとりひとりに直接当たって説き伏せていったらしいの」

和「取引きもなく、圧力をかけたわけでもなく、暴力を背景に脅したわけでもなく…」

和「そんな単純なことだけで、不正に金儲けを楽しんでた奴らの考えを改めさせたのよ」

和「すごいわよね。下衆な連中でさえ、あの子の人柄には惹かれてしまうんだから」


260:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:36:34.43:jpDSDOMkO


和「ちなみに…夏頃、軽音部部室にクーラーついたじゃない?」

和「あれは、連中がため込んでた裏金を充てて設置したものなのよ」

朋也「そうだったのか…」

和「ええ。それに、桜並木だって、実質あの子の力で守ったようなものだし」

朋也「え、そうなのか?」

和「そうみてもらっても間違いじゃないわ。あの子ね、英語の弁論大会で、市に訴えたのよ」

和「宅地造成の一環で、学校の桜まで切るのはやめにしてください、ってね」

朋也「へぇ…」

桜の木が切られることになってしまった背景には、そんな事情があったのか…。

和「その甲斐あって、あのとおり今も桜並木は健在なんだけどね」

学校の方を見て言った。この坂下からも、その木々は遠くに少しだけ見えているのだ。

朋也「でも、それじゃ、なんで坂上の中でおまえの評価が高いんだろうな」

和「ま、どうしても私の政治力が必要な時があったってことよ」

和「弁論大会の出場枠だって、無理を言って拡大してもらって、そこにあの子をねじこんだりしたからね」

和「そういう、正規の手段では成しえないことや、時間がかかってしまうことを割とすんなりやっていたから…」


261:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:37:49.20:+UZ/pLeq0


和「それが、まっとうな道を行くあの子の目には、すごい事として映ったんでしょうね」

朋也「そっか」

和「そうよ」

俺から視線を外し、ジュースで喉を潤した。

和「でも…そんな、裏で陰謀渦巻く泥臭い時代も、私の代で終わりでしょうね」

どこをみるでもなく、ただ遠くを見て言う。

和「あの子が…坂上さんが生徒会長の座につけば、きっと光坂は変わる」

和「まっとうで、まっさらな、新しい時代が始まるわ」

和「ま、もうその兆しは見え始めてたんだけどね…」

俺に向き直り、少し眉を下げて言った。

朋也「もしかして、おまえがその役割を果たしたかったりしたのか?」

和「まさか。私はごたごたしている方が好きよ。だから、時代の移り変わりがちょっと名残惜しかったの」

和「ただの懐古ね。それに、元生徒会長OBとして、私も在校生を遠方から動かしてみたかったし」

和「それはきっと、目の届かない場所で人を使うことの予行演習になるでしょうからね」

和「今後のためにも、是非その場を活用したかったんだけど…仕方ないわよね」


262:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 12:40:32.70:jpDSDOMkO


やけに卒業生の影響力が残っていることを不思議に思っていたが…今、その理由がわかった。
きっと皆、真鍋と同じように考え、あの学校を演習の場として使っていたのだ。
その伝統が今まで受け継がれていたと。そして、それも真鍋の代で終わってしまうと。
まとめると、そういうことだった。

和「ふぅ…」

天を仰ぐ真鍋。俺もそれに倣った。夜空には、星がいくつも見えていた。

和「本当に…おもしろい時代を駆け抜けたてきたわ。唯たち軽音部がいて、あなたたちがいて、SOS団がいて…」

和「濃い人間がそろいもそろってあの学校に、私の同学年に居たんだものね」

和「唯じゃないけど、私も高校生活が終わってしまうと思うと、少しさびしいわね」

今真鍋はどんな顔をしているのだろうか。気になって正面に向き直る。
すると、同じタイミングで真鍋も視線を下げてきた。

和「ま、私は唯ほど情に流されたりしないから、次へ向けて心の整理はついているんだけどね」

朋也「さすがだな。おまえはやっぱり真鍋和だ」

和「それはそうでしょう。って、もしかして…褒めてるの、それ?」

朋也「ああ、すげぇ褒めてる」

和「それは、どうも」

月明かりの下、優しく微笑む。とても人間らしい表情だった。



和「それじゃ、先に戻ってるわね」

朋也「ああ」

寮の玄関へ入っていく真鍋の後姿を見送る。
俺はしばらくの間、真鍋に使われていた日々を思い出しながら、夜空を見上げていた。



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