♪魔法のアンサンブル
私はその人を常にプロデューサーさんと呼んでいた。
だからここでもただプロデューサーさんと呼ぶだけで本名は打ち明けない。
これは世間を憚る遠慮というよりも、その方が私にとって自然だからである。
私はその人の記憶を呼び起すごとに、すぐ「プロデューサーさん」と云いたくなる。
よそよそしい頭文字などはとても使う気になれない。
だからここでもただプロデューサーさんと呼ぶだけで本名は打ち明けない。
これは世間を憚る遠慮というよりも、その方が私にとって自然だからである。
私はその人の記憶を呼び起すごとに、すぐ「プロデューサーさん」と云いたくなる。
よそよそしい頭文字などはとても使う気になれない。
なんて。
実際のところはどうなんでしょう。
今の私には分からずにいます。
あの人のことを、プロデューサーさんのことをどう思っていたかを。
まるで虫に食われた一ページのように、そのことになると途端頭に靄がかかる。
実際のところはどうなんでしょう。
今の私には分からずにいます。
あの人のことを、プロデューサーさんのことをどう思っていたかを。
まるで虫に食われた一ページのように、そのことになると途端頭に靄がかかる。
どうしてでしょう。
あんなに『××××』だったのに。
どうして胸を張って、『××××』だ、って言えないんでしょう。
ずきりと胸が高まった。
あんなに『××××』だったのに。
どうして胸を張って、『××××』だ、って言えないんでしょう。
ずきりと胸が高まった。
私は本が『すき』です。
どんな貴賤もありません。
そこに描かれる彼、彼女らはとても輝かしい。
私は常にそんな彼女らに憧れていました。
だからアイドルを目指そうと思ったんです。
どんな貴賤もありません。
そこに描かれる彼、彼女らはとても輝かしい。
私は常にそんな彼女らに憧れていました。
だからアイドルを目指そうと思ったんです。
たとえば世界のため。
たとえば恋人のため。
たとえば我欲のため。
誰かのために頑張るあの人たちになりたくて、
だから、私はアイドルになったんです。
たとえば恋人のため。
たとえば我欲のため。
誰かのために頑張るあの人たちになりたくて、
だから、私はアイドルになったんです。
だけど今、私は誰のための生きているんですか?
ふと思う。
いいえ、思わずにはいられなかったんです。
ふと思う。
いいえ、思わずにはいられなかったんです。
◆ ◆ ◆
バトルロワイアルという造語めいた言葉を聞いて、私は一冊の本を思い出す。
独特の黒い装丁、盛り上がった赤い題字、数多の文字が躍る分厚い図書でした。
タイトルはそのまま『バトルロワイアル』、主人公・七原秋也を中心に巡る群像劇です。
物語の顛末を思い返すと同時に、彼と私を対照する。
殺し合いに、知人同士でせめぎ合う殺し合いに参加されたものとして。
独特の黒い装丁、盛り上がった赤い題字、数多の文字が躍る分厚い図書でした。
タイトルはそのまま『バトルロワイアル』、主人公・七原秋也を中心に巡る群像劇です。
物語の顛末を思い返すと同時に、彼と私を対照する。
殺し合いに、知人同士でせめぎ合う殺し合いに参加されたものとして。
私は軍用ナイフの柄を握り直して、切っ先を人差し指でつつく。
……あ、血が。切れてしまったらしい。ぷくりと、少量の血が吹き出てくる。
しばし凝視した後、指を口に含む。変な味がしました。
……あ、血が。切れてしまったらしい。ぷくりと、少量の血が吹き出てくる。
しばし凝視した後、指を口に含む。変な味がしました。
七原秋也と言う人間は、簡単に言えば熱血漢です。
知人が殺し合う現状が認めきれなくて、抗って、奔走して、
時には現実を嘆きながらも最後には前を向いた、紛れもない主人公。
小説の題材としては、『問題作』と謳われたのに違わず、
あまり私の好みとは言えませんでしたが、彼の生き様には思わず感銘を受けちゃいました。
憧れたりもしたものです。憧れたりも、したんですけど。
一つ溜息を吐き、視線を落とす。ベッドの縁に座り、ぶらぶらと揺れる、私の足がある。
それからもう一度、軍用ナイフに視線を戻す。
知人が殺し合う現状が認めきれなくて、抗って、奔走して、
時には現実を嘆きながらも最後には前を向いた、紛れもない主人公。
小説の題材としては、『問題作』と謳われたのに違わず、
あまり私の好みとは言えませんでしたが、彼の生き様には思わず感銘を受けちゃいました。
憧れたりもしたものです。憧れたりも、したんですけど。
一つ溜息を吐き、視線を落とす。ベッドの縁に座り、ぶらぶらと揺れる、私の足がある。
それからもう一度、軍用ナイフに視線を戻す。
……そういえば、あの人の支給品もまた、軍用ナイフでしたっけ。
私のもう一つの支給品が鍋蓋だったのも、プロデューサーさんなりの気遣いなんでしょうか。
とても、そうは思えませんが。嫌がらせでも受けているようです。
先ほどよりも深い溜息をついて、今度は視線を浴室に向ける。
水音が響く。シャワーの音です。
彼女は寝起きのシャワーを浴びている。
私が起こしてなかったら、いつ起きる気だったんでしょうか。
……まだ、上がってきませんね。手持無沙汰の私は、一度身体をベッドに寝かす。
私のもう一つの支給品が鍋蓋だったのも、プロデューサーさんなりの気遣いなんでしょうか。
とても、そうは思えませんが。嫌がらせでも受けているようです。
先ほどよりも深い溜息をついて、今度は視線を浴室に向ける。
水音が響く。シャワーの音です。
彼女は寝起きのシャワーを浴びている。
私が起こしてなかったら、いつ起きる気だったんでしょうか。
……まだ、上がってきませんね。手持無沙汰の私は、一度身体をベッドに寝かす。
天井へと視界が映る。
視界がぼやける。
頭が全然働きません。
視界がぼやける。
頭が全然働きません。
天井にはプロデューサーさんの顔があった。
彼は私に微笑みかける。
私も微笑み返す。
途端、胸にこみ上がる虚脱感に気が付き、瞼を閉じる。
真っ暗闇の中には誰も彼もいませんでした。
彼は私に微笑みかける。
私も微笑み返す。
途端、胸にこみ上がる虚脱感に気が付き、瞼を閉じる。
真っ暗闇の中には誰も彼もいませんでした。
ナイフをディパックに仕舞い、彷徨っていた足を地につけ、ゆらりと立ち上がる。
少しふらついてしまいましたが、それでもなんとか窓の元まで歩めました。
私のお腹の辺りから手の届かない高さまである大きな窓です。
その分大きく広がる景色を、一望する。映るどれもが、おもちゃのように小さい。
たとえ人がいたとしても蟻のようにしか見えないでしょう。
遠く、五百円玉サイズの野球場を見据える。
少しふらついてしまいましたが、それでもなんとか窓の元まで歩めました。
私のお腹の辺りから手の届かない高さまである大きな窓です。
その分大きく広がる景色を、一望する。映るどれもが、おもちゃのように小さい。
たとえ人がいたとしても蟻のようにしか見えないでしょう。
遠く、五百円玉サイズの野球場を見据える。
ここは摩天楼です。
私は七階の一室、ベッドに横たわっていたところで目が覚めました。
部屋番号は「770」……覚えやすくて大変結構です。
ともあれ、そこから最上階に移動し、この部屋を見つけました。
(屋上もありましたが、ヘリポートぐらいしかなかったです)
私は七階の一室、ベッドに横たわっていたところで目が覚めました。
部屋番号は「770」……覚えやすくて大変結構です。
ともあれ、そこから最上階に移動し、この部屋を見つけました。
(屋上もありましたが、ヘリポートぐらいしかなかったです)
そういえば、摩天楼と言えば、昴さんたちがこどもの日にイベントを起こしていましたね。
華麗に舞い、アイドルとして生活していた幸せな日々を思い出す。
誰かがぎりりと歯を鳴らす。誰だと思い前を向く。
三度目の溜息、今度は浅いものだった。
華麗に舞い、アイドルとして生活していた幸せな日々を思い出す。
誰かがぎりりと歯を鳴らす。誰だと思い前を向く。
三度目の溜息、今度は浅いものだった。
……。
…………。
それからしばらく、呆然と佇んでいました。
何分ぐらい経っていたでしょう。レプリカのような街並みに視線を落としていると、後ろから。
…………。
それからしばらく、呆然と佇んでいました。
何分ぐらい経っていたでしょう。レプリカのような街並みに視線を落としていると、後ろから。
「百合子ちゃん?」
「うへぇ?」
「うへぇ?」
変な声が出た。
「えいえ~い」
抱きつかれた。
……抱きつかれた!?
……抱きつかれた!?
「い、いや、ちょ、ま」
「い~こい~こ~、百合子ちゃんはいい子ですね~」
「い~こい~こ~、百合子ちゃんはいい子ですね~」
後ろから抱きつかれたから予想でしかありませんが、服はどうしたんですか、服は!
仄かにシャンプーの香りを漂わせる彼女から溢れる熱気。風呂上がりなのには間違いないようです。
いや、でも、普通着ますよね?
私は乱暴に拘束を振りほどき、振りかえる。
やっぱりと言うべきか、全裸の猫がいた。
仄かにシャンプーの香りを漂わせる彼女から溢れる熱気。風呂上がりなのには間違いないようです。
いや、でも、普通着ますよね?
私は乱暴に拘束を振りほどき、振りかえる。
やっぱりと言うべきか、全裸の猫がいた。
「む~、美也の魔法を振りほどくなんて~」
宮尾美也さんです。
同じアイドルの、仲間です。
同じアイドルの、仲間です。
◆ ◆ ◆
黄色混じりの茶髪は肩甲骨の辺りまで伸び、艶やかに身体に張り付いている。
湿り気しか感じさせない髪は、胸の輪郭に対しても、まとわりついていた。
ライトノベルの主人公ならば、どのように描写するでしょう。かのように説明するかもしれません。
しかし生憎のところ、私にそんな心の余裕はありませんでした。
ばくばくと五月蠅い心臓に掌を当てながら、彼女特有の垂れさがった目を見つめ返す。
湿り気しか感じさせない髪は、胸の輪郭に対しても、まとわりついていた。
ライトノベルの主人公ならば、どのように描写するでしょう。かのように説明するかもしれません。
しかし生憎のところ、私にそんな心の余裕はありませんでした。
ばくばくと五月蠅い心臓に掌を当てながら、彼女特有の垂れさがった目を見つめ返す。
「なんですか……いきなり」
深呼吸の後、ようやく言葉らしい言葉を発する。
私が女だからでしょうか、照れた様子もなく、
顎に指を添えて、不思議そうに首を傾げました。
私が女だからでしょうか、照れた様子もなく、
顎に指を添えて、不思議そうに首を傾げました。
「だって百合子ちゃん、悲しい顔をしてますよ~?」
改めて、ちらりとガラス窓を窺った。
前に向き直る。
美也さんはにこやかでした。
前に向き直る。
美也さんはにこやかでした。
「悲しい顔をしてたら、気持ちまで悲しくなっちゃいます~」
……。
だとしたら、今の私は、どんな気持ちを抱いているのでしょう。
衝動的に疑問を投げかけたくなった。喉までこみ上げたところで、言葉を飲み込む。
だとしたら、今の私は、どんな気持ちを抱いているのでしょう。
衝動的に疑問を投げかけたくなった。喉までこみ上げたところで、言葉を飲み込む。
「だから美也が魔法をかけるんです」
不敵な笑み。
彼女は笑みを浮かべた直後、私に裸のまま飛びかかってきた。
……って、また!
反応が遅れた所為で、逃げるのも叶わない。
美也さんが私に抱きついてくる。
「百合子ちゃんは一人じゃないよ」、と呟きました。
私は何も聞かなかったことにして、彼女の腕を解きにかかる。
彼女は笑みを浮かべた直後、私に裸のまま飛びかかってきた。
……って、また!
反応が遅れた所為で、逃げるのも叶わない。
美也さんが私に抱きついてくる。
「百合子ちゃんは一人じゃないよ」、と呟きました。
私は何も聞かなかったことにして、彼女の腕を解きにかかる。
「幸せにな~れっ、幸せにな~れっ」
「だから抱きつかないでくださいってっ」
「だから抱きつかないでくださいってっ」
頭を撫でられる。
私は強引に引きはがす。
名残惜しそうに指をくわえる。
……そんな顔したって駄目なんですから……。
私は強引に引きはがす。
名残惜しそうに指をくわえる。
……そんな顔したって駄目なんですから……。
「なんで魔法なんですか……」
恐らく疲れを隠せてないでしょう。
いつもより数倍もトーンが落ちた声で尋ねる。
美也さんはそれでも態度を崩さず、いい加減昇りはじめた日光に照らされながら笑う。
いつもより数倍もトーンが落ちた声で尋ねる。
美也さんはそれでも態度を崩さず、いい加減昇りはじめた日光に照らされながら笑う。
「だって、いつも言ってるじゃないですか」
「何をですか……?」
「『私は風の魔法遣い……! ダークラビット今こそ……』今こそ……なんでしたっけ~?」
「『成敗致す』じゃないでしょうか……って! 言わせないでください!」
「何をですか……?」
「『私は風の魔法遣い……! ダークラビット今こそ……』今こそ……なんでしたっけ~?」
「『成敗致す』じゃないでしょうか……って! 言わせないでください!」
改めて人から口にされると恥ずかしいなあ……。
聞いたのは百合子ちゃんでしょ~……? と正論が聞こえましたがスルーしました。
聞いたのは百合子ちゃんでしょ~……? と正論が聞こえましたがスルーしました。
「それに、あの人が私を、魔法の国のお姫様にしてくれたました~」
「……プロデューサーさんですか?」
「はい~、遊園地で一緒に遊んだんですよ~。ですから美也は魔法使いなのです~」
「……プロデューサーさんですか?」
「はい~、遊園地で一緒に遊んだんですよ~。ですから美也は魔法使いなのです~」
少し頬がむくれるのを感じる。
何故でしょう。
こんなことを、殺し合いをさせるプロデューサーに対してこんな気持ちを抱くのでしょう。
そんな自問から逃げるように、美也さんに投げかけた。
何故でしょう。
こんなことを、殺し合いをさせるプロデューサーに対してこんな気持ちを抱くのでしょう。
そんな自問から逃げるように、美也さんに投げかけた。
「あの、美也さん」
「ふに?」
「美也さんは、私が怖くないんですか?」
「ふに?」
「美也さんは、私が怖くないんですか?」
美也さんは意図が掴めないのか、腕を組む。
しばしの逡巡の後、困ったように私に訊ね返した。
しばしの逡巡の後、困ったように私に訊ね返した。
「そういう百合子ちゃんは、私が怖くなかったんですか~?」
「どういう意味ですか?」
「私が寝た振りをして、近づいてきた百合子ちゃんを殺したかもしれませんよ~」
「どういう意味ですか?」
「私が寝た振りをして、近づいてきた百合子ちゃんを殺したかもしれませんよ~」
言われて初めて気付きましたが、そういえば、そのような考えを持つのが普通なのかもしれません。
開始して十五分は優に過ぎていたにもかかわらず、のんびりとベッドで寝ていた美也さんを、
私は何のためらいもなく起こしました。……どう転ぶかも、予測せずに。
開始して十五分は優に過ぎていたにもかかわらず、のんびりとベッドで寝ていた美也さんを、
私は何のためらいもなく起こしました。……どう転ぶかも、予測せずに。
「……」
「私を、百合子ちゃんは起こしてくれました」
「……いや、美也さんがそんなことするはずないじゃないですか」
「私を、百合子ちゃんは起こしてくれました」
「……いや、美也さんがそんなことするはずないじゃないですか」
衝動的に言葉を吐く。
けれど、言ってみて納得しました。
美也さんがそんなことするはずないって。
明確な形にはなってませんでしたが、私はそう思っていたのでしょう。
美也さんの笑顔は崩れませんでした。
けれど、言ってみて納得しました。
美也さんがそんなことするはずないって。
明確な形にはなってませんでしたが、私はそう思っていたのでしょう。
美也さんの笑顔は崩れませんでした。
「それを人は信じるっていうんですよ~」
目の泳ぐ私に対して、美也さんは柔和な笑みを浮かべる。
とても温かな笑顔だった。
とても温かな笑顔だった。
「人を信じるってのは、理屈ありません~」
彼女は浴室の方へと姿を消しながら、そんな事を言う。
何かを探しているようだった。
間もなく目的のものは見つかったようで、「あった~」なんてゆるやかな声がする。
何かを探しているようだった。
間もなく目的のものは見つかったようで、「あった~」なんてゆるやかな声がする。
「百合子ちゃんはマイティセーラーに選ばれたんですよね」
目当てのものはドライヤーのようです。
ベッドに向かい側、テーブルに備わっているコンセントにケーブルを挿す。
ベッドに向かい側、テーブルに備わっているコンセントにケーブルを挿す。
マイティセーラーは正義の味方です。
私たちが演じた物語の、主人公。
――プロデューサーさんが私に、ってあてがってくれた役どころ。
私たちが演じた物語の、主人公。
――プロデューサーさんが私に、ってあてがってくれた役どころ。
美也さんは、濡れる髪を手で梳きながら、ドライヤーのスイッチを入れる。
「それはですね、あなたがマイティセーラーに相応しいからって、
プロデューサーが認めてくれたってことなんですよ~」
「……」
プロデューサーが認めてくれたってことなんですよ~」
「……」
……。
私は、何も、言えませんでした。
ただ乾いたドライヤーの音が鳴り響くだけ。
その間は一瞬だったか、それとも長い間だったのか。
美也さんが徐々に乾きつつある髪から、視線を私の方に戻す。
私は、何も、言えませんでした。
ただ乾いたドライヤーの音が鳴り響くだけ。
その間は一瞬だったか、それとも長い間だったのか。
美也さんが徐々に乾きつつある髪から、視線を私の方に戻す。
「ねえ、百合子ちゃん」
「はい」
「百合子ちゃんは、幸せになれました~?」
「はい」
「百合子ちゃんは、幸せになれました~?」
その顔は、今までとは打って変わって、不安げな顔。
今までの言葉は、彼女が私を励まそうとしていたものだった。
私が悲しそうな顔を浮かべていたから、彼女は私に幸せをプレゼントしようとしたのでしょう。
今までの言葉は、彼女が私を励まそうとしていたものだった。
私が悲しそうな顔を浮かべていたから、彼女は私に幸せをプレゼントしようとしたのでしょう。
彼女には励ますって概念がないのかもしれませんが、
彼女の言葉でちょっとだけ前を向けたのも事実です。
それでも。
彼女の言葉でちょっとだけ前を向けたのも事実です。
それでも。
「……ごめんなさい。幸せには、なれませんよ。なれるわけないじゃないですか」
社長を殺したことは確固たる事実で、
私たちをこんな事態に巻き込んでるのは、明確な現実です。
そんな現実を前にして、いつも通りでいられるほど私は強くありませんでした。
――だけど。
私たちをこんな事態に巻き込んでるのは、明確な現実です。
そんな現実を前にして、いつも通りでいられるほど私は強くありませんでした。
――だけど。
「だけど……信じるしか、ないじゃないですか」
今までのプロデューサーさんは確かに私の胸の中に居る。
これまでの私の物語は、バッドエンドながらもこの胸に焼きついていた。
それなのに、――それなのに、切り捨てるだなんて出来るわけないじゃないですか。
これまでの私の物語は、バッドエンドながらもこの胸に焼きついていた。
それなのに、――それなのに、切り捨てるだなんて出来るわけないじゃないですか。
「正義の味方みたいに、一途に、愚直に、そして優しく」
七原秋也のように私は仲間を信じたい。
物語の主人公にはなれませんが、それだけは確かに出来るでしょう。
物語の主人公にはなれませんが、それだけは確かに出来るでしょう。
「プロデューサーさんが信じた私を、私は信じる。
風の戦士、マイティセーラーに似合う私になりたい」
風の戦士、マイティセーラーに似合う私になりたい」
全てが全て七原秋也のようにはいかないでしょうが、私は私として生きていきたい。
思考が散り散りになっていましたが、そうでした。ただ、それだけだったんです。
――ただ、プロデューサーが遠くに行ってしまったような気がしてしまった。
――だったら、その背中を追いかければいいじゃないですか。
裏切られた嘆いてばかりいないで、プロデューサーの話を、私は聞きたかった。
思考が散り散りになっていましたが、そうでした。ただ、それだけだったんです。
――ただ、プロデューサーが遠くに行ってしまったような気がしてしまった。
――だったら、その背中を追いかければいいじゃないですか。
裏切られた嘆いてばかりいないで、プロデューサーの話を、私は聞きたかった。
「どこに行くんですか~?」
「お風呂です。頭を冷やしてきたいんです」
「そうですか~、上がったらマッサージをしてあげます~」
「マッサージ、ですか?」
「そうです~、緊張をほぐすマッサージなんですよ~」
「……そうですか、なら、お願いしちゃおっかな」
「は~い」
「お風呂です。頭を冷やしてきたいんです」
「そうですか~、上がったらマッサージをしてあげます~」
「マッサージ、ですか?」
「そうです~、緊張をほぐすマッサージなんですよ~」
「……そうですか、なら、お願いしちゃおっかな」
「は~い」
そういえば、聞いたことがある。
彼女には、かようなマッサージ術があるって。
……彼女はなんだかんだ器用に何でもこなしますよね。羨ましいです。
彼女には、かようなマッサージ術があるって。
……彼女はなんだかんだ器用に何でもこなしますよね。羨ましいです。
「美也さんは、これからどうするんですか?」
「私は私がしたいことをするだけですよ~」
「私は私がしたいことをするだけですよ~」
アイドルをころすだなんて、できるわけないじゃないですか。
彼女は呟くように言う。
だけど私にはちゃんと聞こえちゃいました。
……そうですよね、その通りです。
彼女は呟くように言う。
だけど私にはちゃんと聞こえちゃいました。
……そうですよね、その通りです。
「私の幸せをおすそ分けするんですよ~、だってみんな、幸せな方がいいでしょ~?」
「……きっと難しいですよ?」
「……きっと難しいですよ?」
美也さんが小首を傾げる。
「難しいなんて関係ないじゃないですか~、私がそうしたいだけなんですから」
マイペースに彼女は笑う。
それがどれだけ大変か、本当に分かっているかは、私には分かりません。
けれど彼女は確かにそう言って、笑っている。
私にはおよそ真似できない心持でした。
それがどれだけ大変か、本当に分かっているかは、私には分かりません。
けれど彼女は確かにそう言って、笑っている。
私にはおよそ真似できない心持でした。
「そういうわけで寝ますね~」
「起きててください! っていうかいい加減服を着てください!」
「起きててください! っていうかいい加減服を着てください!」
自由気ままな猫のように。
彼女はベッドに飛び込んだ。
私は浴室で綺麗に畳まれたまま放置されていた、彼女の衣服を乱暴に拾い上げて、ベッドへ放り投げる。
彼女はいそいそと着替え始めました。
彼女はベッドに飛び込んだ。
私は浴室で綺麗に畳まれたまま放置されていた、彼女の衣服を乱暴に拾い上げて、ベッドへ放り投げる。
彼女はいそいそと着替え始めました。
「えへへ~、ありがとうございます、百合子ちゃん」
「もう……、本当に寝ないでくださいよ。眠気覚ましにシャワー入ってたらキリがないですし」
「は~い」
「もう……、本当に寝ないでくださいよ。眠気覚ましにシャワー入ってたらキリがないですし」
「は~い」
穏やかな返事に、不思議と笑みを浮かぶ。
私はしっかりとした足取りで、浴室に向かいました。
私はしっかりとした足取りで、浴室に向かいました。
◆ ◆ ◆
私は本が『すき』です。
どんな貴賤もありません。
そこに描かれる彼、彼女らはとても輝かしい。
私は常にそんな彼女らに憧れていました。
だからアイドルを目指そうと思ったんです。
どんな貴賤もありません。
そこに描かれる彼、彼女らはとても輝かしい。
私は常にそんな彼女らに憧れていました。
だからアイドルを目指そうと思ったんです。
主人公なんておこがましいことは言いません。
それでも、私はあなたが『だいすき』だから。
信じたいんです。
一途に、愚直に、そして優しく。
それでも、私はあなたが『だいすき』だから。
信じたいんです。
一途に、愚直に、そして優しく。
信じちゃ、ダメでしょうか。
訊ねても、プロデューサーは現れてくれませんでした。
訊ねても、プロデューサーは現れてくれませんでした。
【一日目/朝/D-7 摩天楼】
【七尾百合子】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]支給品一式、軍用ナイフ、鍋蓋
[思考・行動]
1:宮尾美也と行動
2:お風呂に入る
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]支給品一式、軍用ナイフ、鍋蓋
[思考・行動]
1:宮尾美也と行動
2:お風呂に入る
【宮尾美也】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(1~2)
[思考・行動]
1:幸せをおすそわけ
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(1~2)
[思考・行動]
1:幸せをおすそわけ
| Nonstop runners high | 時系列順に読む | LiarGirl |
|---|---|---|
| Nonstop runners high | 投下順に読む | LiarGirl |
| GAME START! | 七尾百合子 | 絶望偶像 |
| GAME START! | 宮尾美也 |