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マボロシ

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マボロシ

この殺し合いには、2人の『敵』がいた。

1人は主催者の息のかかった齢14の少女。
自分を友達と言ってくれた子を殺し、その罪を背負いながらも動こうとしていた。
たった一つ、失いたくないもののために。

1人は主催者との協力も何もしていないただの女の子。
自分を憎ませることで出来るだけ多くの仲間を協力させようと動いている。
少しでも多くこの殺し合いから皆を助けるために。

二人は敵なのに、まったく違っていたのだ。


    ★           ★           ★



図書館の一室の中で一人の女性が横たわっていた。
体はボロボロ、服も綺麗な状態とは言えない。
まるで遭難してそのまま死んでしまったかのように、女性は横になっていた。

「…………」

だが、女性――――徳川まつりはしっかりと生きていた。
まつりは高坂海美と別れた後図書館で体を休めていたのだ。
これまで耐えてきたが体が限界を迎えたため図書館に備え付けられているソファで横になっていた。
この休んだ数時間がロスとなりかねないのは重々承知だ。
しかし命あっての物種、もし殺し合いに乗ってしまった誰かと遭遇した時に体が限界を迎えたら終わりだ。

「かなり痛みは取れたけれど……それでも傷は痛むのです」

打ち身みたいな痛みはほとんど消えた。
だが体中の傷はそんな短時間で治るほど軽いものではない。

「……結構時間が経ってしまったのです、早くいかないと……なのです」

まつりは立ち上がり時間を確認する。
放送まであと2時間もないほど、というところだった。
かれこれ2時間程眠っていたと言う事だ。
仕方のない休息時間ではあるが、これがどれだけのロスとなるのか。

「どうであれ、誰かに会わなければ話にもならないのです……ね」

荷物と武器を持ち、徳川まつりは窓から外を確認する。
外は日の光で橙に染まっていた。
それだけでもうすぐ日が暮れるという実感が沸いた。

(夜になると色々危険なのです……眠気で注意散漫にならないよう寝ておいて正解……なのですかね)

自分に仲間はいない。
そのため順番に睡眠をとる、などと言う事は出来ない。
そう言う道を取ったとはいえ、かなり苦しいものである。

体を休めつつ先ほどまで寝ていたのはそのためだ。
いつ体の限界が来てもおかしくない、夜で視界が悪くなれば尚更の事になる。

「……図書館に籠城し朝を待つのも手なのですが……それは受け身なのです」

殺し合いに乗っている者がいるのならば、夜は動くには最適な時間だろう。
その間に接触を図り、何かしらの対処をしておきたい。
または団体で行動している脱出しようと企てているメンバー達に会える可能性もある。
そこに対しても接触ができればかなり収穫となるはず。

これまで危険な行動をしてきたのだ、ここで動かずにどうする。

「……さて、そろそろ行くのです」

どこに行こうと言う目処は立っていない。
だが、なにかをしなければいけないという焦りのようなものがまつりの中に静かに生まれていた。



    ★           ★           ★




何もわからない。
自分がどうしてこんなに足掻いているのか。
苦しんでいるのか。

口がすごく乾いている。
だが体がなにも受け付けない。
気持ちが悪い。

そんな色々な感情がぐちゃぐちゃと、頭の中をぐるぐるとまわっていた。

「……私、は」

ただ――――ぐちゃぐちゃの頭の中に一つだけ消えない『幻影』があった。
美味しそうに甘いものを食べていた。
いつも私に構ってもらいに来た。
楽しそうに歌っていた。
そんな彼女が――――頭からずっと離れない。

やぶきかな≪ともだち≫

彼女がずっと、頭から離れてくれない。
この状態で誰かと会ったらと考えるとぞっとする。
特に、会いたくない人は数人いる。

――――数人いるのだが。

そのうちの一人が目の前に見える、と言ったらどうするだろうか。
逃げるのが正解か、今まで通り殺しに行くのが正解なのか。
殺してしまえば早いのだろう。
だが、それを簡単にさせてくれる相手ならば……の話である。


「はいほー! 志保ちゃん、あまり顔色がよろしくないのです……ね?」


そんな事を考えているうちに、その人物……徳川まつりが目の前にいた。
表情はいつもの彼女、だが……あからさまに違う点がある。
まず彼女の体なり服がボロボロである事。
そしてあからさまに武器かなにかを隠し持っているように見える事。

外見的情報だけを推理するのならば、彼女は数人と交戦したと考えられる。
だが殺し合いに乗っている、という雰囲気ではない。
彼女自身が演技でそうみせている可能性もあるが、にしては違和感が多い。
もし殺し合いに乗っているのならば、その武器とやらですぐ襲いかかればいい。
あからさまに戦闘をしてきたという服で寄られたら誰でも警戒する。
なのに彼女はそれを厭わず近寄ってきた。

(やはり、まつりさんは読めない)

早撃ちで銃弾を彼女に対し打ち込めば、間違いなく彼女は死ぬだろう。
だからこそ、そうすればいいのだと思っているのに体が動かない。
もし彼女が何かを考えていたら、そう考えるだけで恐怖が体を支配する。

「志保ちゃん、さっきからずっと黙りっぱなりなのです……どうかしたのです?」
「……いえ、何でもないです」

兎にも角にもこの場をどうにかして対処しないといけない。
具体的にどうするか……などは決まっている。
彼女をすぐにこの場で抹殺する。
だが彼女も何かしら考えているように見える、すぐに銃を取り出し撃つのは危険かもしれない。
出来るだけ自分が殺し合いに乗ってないと思わせ油断させたところを殺したい。

まずはまつりさんを油断させないといけない。
ついでに彼女が殺し合いに乗っているのかいないのか、そこも判断しておきたい。
そう考え探りを入れようとした、その瞬間だった。


「志保ちゃん、無駄な事は考えない方がいいのです」


その言葉に、顔から血の気が引いたのがわかった。
彼女は今なんと言った?
無駄な事は考えない方がいい、と。
私が殺し合いに乗ってる事、まつりさんを油断させようとしている事がばれたのか。
そんなはずはない、エスパーでもなければそんな心を完全に読むなど出来るはずがない。

「……何のことでしょうか、そんな事よりまつりさんのその恰好について聞きたいんですが」
「ほ? 話の腰を折るのは良くないのですよ」
「折ってるつもりはありません、こちらはただそちらがこの殺し合いについてどう思っているか探りたかっただけです。
 むしろここで話すつもりがないのなら殺し合いに乗っていると判断しますよ」

あくまで、殺し合いには乗っていない。
そう言う風に見せる、見せようとする。

もし彼女が心を本当に読んでいるのならこの質問には答えないだろう。
殺し合いに乗っている私に情報を提供する必要がないのだから。
カマをかけた、という感じである。


「まつりの格好よりも、そちらの表情の方が問題だと思うのですよ?
 先ほどからずっと、何か悪いものでも見ているような表情をしてるのです。
 その上で強がっている、と言う事は何か企んでると思っているのですが」


だが、返答は最悪の内容だった。
彼女自身の情報は得られない。
それどころか、こちらの情報を提供するまで言わないとも言う宣言とも取れる。

そして何よりも最悪なのは……。

(表情……か)

表情に出てしまっている、という点だ。
先ほどからずっと気分が悪いままで強がってはいたが体は嘘を吐けないらしい。
まつりさんは確信はないものの、私が何かを隠しているというのには気づいているようだ。


――――ならば話は早い。



気付かれる前に殺すだけなのだから。




    ★           ★           ★

志保自身に何かがあった、と言う事はわかっていた。
表情から見れば一目瞭然というほどに彼女の顔色が悪かったから。
それほど衝撃的な事があったのだろう。

まつりがわかったのはそこまでだった。
だからこそ、彼女自身どう考えてるかを探ろうとした。

だが、それがある意味間違いだったのだ。
油断しているつもりはなかった。
もし志保が殺し合いに乗っていたとしても対処できるように武器をすぐ取り出せるようにした。
そこまでは、完璧だった。

『志保がこの殺し合いのために訓練を積んだ』という情報さえ知っていれば。

もし武器を取り出そうとしても少しのタイムロスがあると踏んだ。
そこで無理やり拘束し最悪手を下せばいい、そう考えていた。

しかし、志保の動きはまつりの予想を超えていた。
何のためらいもなく、無駄もなく、武器を取り出しまつりに銃口を向けた。


一番驚いたのはまつりだった。
自分が武器を取り出す間もなく、一瞬で形成を不利にされたのだから当然である。
殺される、そう思った瞬間まつりは反射運動の如く荷物を志保に向かって放った。

パン、と乾いた音が鳴りバッグに穴が空く。
と、同時にまつりは相手の懐に潜り込み、全力で殴――――れなかった。
志保が先ほどより後方に移動していたのだ。

(……まずいのです)

荷物を放り視界を狭めかつ驚かせ銃弾を逸らせさせる。
このまつりの策はあくまで猫だましの論理で放った起死回生の一撃。
これを切り抜けられた時点でまつりは絶体絶命と言っても良い。

ならば、どうすればいい。
志保を揺さぶる何かさえ見つかれば、隙が生まれるかもしれない。
考える時間はない、何かを、彼女を動揺させるものを提示する。

そんな中、一つ……その可能性がまつりの中に浮かんだ。



「……可奈ちゃん」



浮かんだのは、それだった。
志保と仲が良く、先ほどの放送で死んだ彼女。
まつりが考えられる可能性は、そこしかなかった。


そのまつりの予想は、正解に近かった。
先ほどまで無駄のない動きをしていた志保に無駄が生まれた。
体をびくつかせ、その後手が震えだした。


その隙を逃すほど、まつりは甘くなかった。
すぐさま踏み込み志保を蹴飛ばす。
と同時に隠し持っていた銃を取り出す。
それを志保に向ける――――だが志保もすでにこちらに銃口を向けていた。

「……志保ちゃん、やるのです……ね?」

志保は何も答えない。
だが、銃を持つ手は震えていた。
間違いなく殺そうと思えば殺せる、それは間違いない。
形勢逆転、とは言わないが5分5分までは持って行けたのではないか。

「教えてほしいのです志保ちゃん、一体何があったのかを」
「…………」

パン、と音がし自分の横を何かが通った感覚がした。
続けて来るかとまつりが銃を構えた瞬間だった。


志保が、逃走していた。


文字通りの意味である。
銃を撃ち、それを牽制としてその場から逃走した。

「あっ、ま……待つのです!」

そう言う間にも志保は遠くにいなくなってしまう。
追いかけるのも選択肢にあるが、体制を整えられればこちらも危険だ。

それに、考えなければいけない点が多い。
志保の動きがあまりにも機敏すぎた点。
可奈と志保に一体何があったのか。
もし死んだと知っただけならきっとあそこまではならないだろう。
ならばきっと、志保と可奈には間違いなく何かがあったと予想できる。

「……」

この殺し合いにおいて、謎が増えた。
プロデューサーが何の意図を持ってこの殺し合いを開いたのか。
そしてあの志保の動きの無駄の無さ。
何か、この殺し合いがずっと前から計画されていたようなものではないかと感じられる。

「……どうであれ、今のまつりに出来る事をするだけなのです」

先の事よりも、今見える事をする。
やるべきことをやる、それが徳川まつりがすべき事なのだから。

「放送までもそこまで時間もないのですが……もう少し探索するとするのです」


【一日目/夕方/F-4図書館付近】
【徳川まつり】
[状態]四肢、背中、左腕に傷
[装備]二十六年式拳銃(4/6)
[所持品]基本支給品一式、不明支給品0~1、二十六年式拳銃実包×24
[思考・行動]
基本:『敵』を演じるのです
1:殺し合いをやめてくれない子には容赦しないのです
2:紗代子ちゃんとロコちゃんを探す……?
3:志保ちゃん……一体何が?


    ★           ★           ★

逃げた、逃げた、ただ逃げた。
殺そうと思えば殺せたはずなのに。


『……可奈ちゃん』


その言葉で、思うように体が動かなくなった。
まるで呪いの言葉のように。
まつりの前に、可奈が立っているように見えて。

まつりを殺せば、もう一度可奈を殺すような気がした。
それも構わないと思ったはずなのに。
一度殺したはずなのに。

「どれだけ……私は……っ!」

こんな状態で、人を殺せるはずがない。
殺さなければいけないのに。
この殺し合いを、加速させないといけないのに。


それでも今の私は、ただ走って自分から逃げることしかできなかった。



【一日目/夕方/F-4】

【北沢志保】
[状態]???????
[装備]ベレッタM92(10/15)
[所持品]基本支給品一式、不明支給品0~1、9x19mmパラベラム弾入りマガジン(2)、タオル、着替え
[思考・行動]
基本:"ジョーカー"として動く
 0:???????????
 1:とにかく、人を殺して行く
 2:嘘をついてなくちゃ――――
 3:可奈の『呪い』を背負い続ける?
 4:人に会いたくない、見られたくない
 5:発電所に行かなくちゃ


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 武器を持った奴が相手なら、『うみみんバックハンドスプリング』を使わざるを得ない   徳川まつり   サーチライト 


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