第三章
第三章「序幕」
アリン達は長らく走り続け、 森林の入り口まで来たところで、 少し休息をとることにしたーー | |
アリン | ヒイヒイッ…ここまで来れば… さすがにもう大丈夫だろう… |
クレブ | フウフウッ…そうですな… ドラゴンもいないようですし、もう安全でしょう… |
息を整えた後、 アリンは目の前の古き森に目をとめるーー | |
アリン | すごい数の木々だな… こんな景色を見たことがある気がする… どこだったか…? |
クレブ | 何か思い出でもあるのですかな? |
アリン | …思い出した…人間のスラム街にいた時の景色だ… すべてが密集して雑然としていて、 まるでこの森のようだったな… |
クレブ | そうですか… 妖精の森からスラム街を連想するとは、 マスターの想像力は大したものですな |
アリン | よし!決めた! |
クレブ | 何をです? |
アリン | ここからオレはやり直す! 前にいた人間社会では全然仲間ができなかった… これからは仲間をどんどん増やせるように、 いろいろ頑張ってみるのだ! |
クレブ | ウウッ…マスター、大人になられましたな… ご両親もきっと… 喜ばれるでしょう |
アリン | は?いや、もちろん自分の為だよ? 親なんて関係ないよ |
クレブ | マスター、そうおっしゃらずに… ご両親は断腸の思いで… マスターを人間社会に出したのです |
アリン | フン、もうその話はいいさ! 行くぞ!クレブ 仲間を増やしにな! |
クレブ | マスター、その前に! まずは仲良くなる方法を考えるべきでは? 妖精はあまりヴァンパイアに好意的ではありませんゾ |
アリン | 行きながら考えよう! 出たとこ勝負で! |
3-1森の入口「友好の宣言」
アリン | オッケー!そうしよう! 妖精に出会ったら… 手を上げて、それから…え〜と… |
クレブ | 「私はヴァンパイア一族の代表として、 妖精族と友好関係を結びに来ました」 とにこやかに言いましょう |
アリン | そう、それ! けど、ちょっと長くて覚えきれないので、 手に書いておこう |
クレブ | マスター… 早速、使う機会が来たようですゾ |
クレブが指した方向には… 薬草を摘んでいる男の姿があったーー | |
アリン | おおっ!よし、行ってみよう! |
アリンは嬉しそうに男のもとに駆け寄って、 大きな声で離し始める | |
アリン | 「私はヴァンパイア一族の代表として、 妖精族と友好関係を結びに来ました」 と、にこやかに言う! |
男は立ち上がると、いきなり襲い掛かって来る… 相手が妖精ではなかったことに今さら気づいたーー | |
バロス | 野人、妖精、敵! 仲間、殺ス! |
クレブ | しまった! マスター、野人でしたゾ! |
アリン | くううう〜〜 せっかく上手くセリフ言えたのに! |
3-3旅人の道「融和の同盟」
バロス | 奇妙、オマエ 妖精、攻撃、オマエ 妖精、仲間、敵 |
アリン | ふむふむ…なるほど、わからん! 野人の通訳はいないか? |
クレブ | 妖精とマスターは仲間だと思ってたのに、 妖精がマスターを攻撃してるのを、 不思議に思っているようですゾ |
アリン | よくわかったなクレブ… まあ、こっちは妖精と仲良くなりたいけど、 相手は全然そうじゃなかったって事で…仕方ないよな |
クレブ | マスター、それなら、 野人を仲間にしてはどうです? 野人と妖精、療法を敵にするよりは… |
アリン | NO!ノーサンキューだ! |
クレブ | え?…何故です? |
アリン | 野人は男臭いのが多い! 妖精はカワイイのが多い! カワイイは正義!考えるまでもないぞ |
クレブ | マスター… まったくブレませんな… |
バロス | 俺、道、知る、 王様、謁見、オマエ |
野人はアリン達を案内しようとしていたようだが、 それは何者かの声によって中断されるーー | |
ミーファ | フン…呪医バロスとヴァンパイアが手を組んだのか …斥候隊のみで対応するのは難しいか…? |
バロス | 妖精、傲慢、 野人、妖精、嫌イ! 戦闘、妖精、継続 |
自分を放ったらかしで対立する妖精と野人を、 アリンはソワソワしながら見ていたーー | |
ミーファ | そこのヴァンパイアは小便でも我慢してるのか? さっさとその辺でして来い |
アリン | 違うよ! そうか、この野人は呪医バロスというのか |
ミーファ | フン…名前すら知らなかったのか? コイツは妖精族に甚大な被害を及ぼしたお尋ね者、 やっと見つけたぞ! |
アリン | 名前すら知らないのかって言われてもなあ… 言葉ほとんど通じないし… |
バロス | 俺、ババ、ロロ、スス、呪医 |
アリン | お、自己紹介してこれたのか じゃあ、こっちも… オレ、アア、リリ、ンン、真祖! |
ミーファ | 余計な話はいらん! 私と戦え!! |
ミーファ | クッ…このヴァンパイアのせいだ… ずっと邪魔しやがって! |
バロス | 妖精、敗北、言訳、 野人、笑笑 |
アリン | え?オレのことが気になって、 戦いに集中できなかったと? もしかして…恋? |
ミーファ | アホめ!ドカス!死ね! ワタシは男だ! |
アリン | なんだ、男か |
バロス | 妖精、魔法、強力、 オマエ、危険、注意 |
クレブ | それは魔法ではなく単なる罵倒ですな マスターもダメージ受けてないようですが、 念の為、妖精の口を塞いでおきましょうか |
シーラ | ミーファに何をする気よ! このゴミ虫ども!消滅しろ!! |
アリン | おっふ…… カワイイ妖精さんなのにこれはこれは… 酷い言われようだ… |
何故だか満足気なアリンをよそに、 新たな妖精が樹上から降りてくるーー | |
シーラ | ミーファ!いま助けるよ! |
バロス | 妖精、救援、 俺、阻止! |
3-5妖精の坑道「深奥の王」
妖精シーラは不意を突いてミーファに駆け寄り、 縛っていたロープを切ったーー | |
シーラ | ミーファ…走れる?… このままでは危ない… 一旦引きましょう |
ミーファ | 走れるよ…シーラ、 ありがとう…助けに来てくれなければ… どれほど酷い事をされていたか想像もつかない… |
アリン | 言いがかりだぞ! なんでオレがそんな悪者扱いなの!? 誤解だよ! |
ミーファ | もちろん貴様は悪者で、 そして変態だろう!? |
シーラ | ミーファ!今はそれはいいから、 とにかく離脱することに専念しましょう! |
アリン | まったく…オレは悪者じゃないよ! ほら、クレブ、通らせてあげな |
クレブ | おや、マスター? 逃してあげるのですか? |
バロス | 反対!オマエ! 妖精!逃走! オレ!怒怒! |
シーラ | 騙されないわよ! え…いいの?本当に…? |
アリン | オレはみんなと仲良くなりに来たんだ 同じ亜人種同士、友達になれないかな? |
ミーファ | 野人とは無理だ! コイツ等が先に妖精の地を占領しに来た! そしてきっと妖精女王を捕まえようと… |
バロス | 妖精、細身、苦手、 野人、ポッチャリ、好キ。 |
シーラ | は???… 喧嘩売ってんのかお前!! |
バロス | 野人、喧嘩、シナイ、 食物、ナイ… 子供、老人、空腹… |
野人族の食糧事情の話を聞いて、 妖精は少し態度を軟化させるーー | |
シーラ | そ…それならそうと言えばいいのに… 食べ物なら、分けてあげることだって… |
バロス | 野人、話ス、苦手… |
アリン | なんだか… すれ違っちゃってただけなんじゃないのか? |
ミーファ | シーラ、野人族の状況を見に行ってみる |
シーラ | ミーファ… |
ミーファ | バロスの話す通りなら、争いなんて… |
シーラ | そうね、ワタシも一緒に行くわ |
一行が森の中をしばらく進んだ後、 バロスは急に立ち止まって、 不思議な雄叫びをあげるーー | |
バロス | 全員、此処、待ツ、 俺、野人ノ王、呼ンダ |
しばらくして、野人の男がやって来たが、 一行を怪しむような目つきで睨んでいるーー | |
ギャラドス | 俺、野人ノ王、説明 |
バロスは双方に誤解があった事を、 野人の王ギャラドスに話した… ギャラドスは暫く黙考し、やがて口を開いたーー | |
ギャラドス | 野人、妖精、仲直リ、 喧嘩、駄目、 鉱物、交換、食物 |
シーラ | 良かった… ミーファ、これで争いも終わるのね |
ミーファ | ああ、もう血が流れることは無いだろう… |
シーラ | これからはお互い協力して 森の平和を守っていきましょう |
しかしギャラドスはアリンの方に目を移すと、 怒りの表情を露わにするーー | |
ギャラドス | 野人、戦ウ、吸血鬼、 友好、ナイ! |
バロス | 俺、謝ル、 国王、戦ウ、 オレ、従ウ |
アリン | え〜〜〜っ!何でだよ!? どういうこと? 何を怒ってるんだ? |
クレブ | マスター!こうなっては仕方ありません 一旦、応戦するしかありませんゾ! |
アリン | 何故だ… 一体オレが何をしたというのか… |
クレブ | マスターご安心を!世界中が敵に回っても、 クレブはマスターの後ろで応援してますゾ! |
アリン | 前に立って守れよ!! |
野人達の攻撃を受け、 アリン達は劣勢に陥っていたーー | |
ギャラドス | 空飛ブ、吸血鬼少女、何処? オマエ、教エル、 野人、オマエ、許ス |
アリン | 空飛ぶ…少女… シフォンのことかぁあああああっ!! アイツ…また兄に迷惑をかける気か!? |
シーラ | あれは君の妹なの? 妖精の地で混乱を引き起こして、 それを私達は野人の差し金だと勘違いしてた… この戦争は君の妹が引き起こしたようなものよ! |
アリン | 駄目だアイツ…早くなんとかしないと… |
クレブ | それで…シフォン様は、 野人族にはどんなことをしたので? |
シーラ | 野人の王は死んでも話したくないと言っているし、 よほど無礼なことをしでかしたのでしょうね |
アリン | この…状況で… 一族を率いる者として、 やるべきことはただ一つ! |
アリンはギャラドスの前に立ち、 深く行きを吸い込んだーー | |
クレブ | おおっマスター!誇り高き真祖の威厳を、 ついに見せてくれるのですかな!? |
アリン | 申し訳ございません! 私供の対応に不備がございました! 後日、始末書を提出させていただきます! |
クレブ | マスター… ご立派に、なられましたな…(涙) |
第三章「終幕」
アリンは一体どこで学んだのか、 ジャンピング土下座なる大技を繰り出し、 ようやく野人の王の許しを得ることができたーー | |
ギャラドス | 了解、 野人、吸血鬼、許ス、 喧嘩、シナイ |
シーラ | 私達も、野人族が君達と争わないと言うなら、 行き過ぎた行為がない限りは敵対しません |
アリン | ありがとう…よかった… |
シーラ | よかった、これで問題は解決ね 私達は妖精の地に戻って長老達に説明するわ |
ミーファ | じゃあ、ここでお別れだな! |
シーラ | ねえ!君の妹の躾は、 くれぐれもよろしく頼むわよ? |
妖精達が去った後、 ギャラドスはアリンに向き直り、 バンバンと肩を叩いたーー | |
ギャラドス | オマエ、オ陰、 野人、妖精、仲直リ、 野人、感謝 |
アリン | まあ、シフォンのこともあったし、 こっちも殺されなくて感謝だよハハハ… |
ギャラドス | 野人、吸血鬼、友達 |
アリン | えっ、友達だって!? |
ギャラドスは頷いて、豪快に笑っているーー | |
アリン | やった!友達が出来たぞクレブ! これまでの苦労が報われたな! |
クレブ | そうですなマスター! 一族の栄光へ、ようやく第一歩を踏み出しましたゾ! クレブもうれしいですゾ! |
その日の夜は野人族から盛大なもてなしを受け、 翌日、野人族との別れを惜しみつつ、 アリン達は旅立ったーー |