第五章
第五章「序幕」
シフォンがオアシスを見つけて来たため、 アリン一行はようやく危機を脱することができたーー | |
アリン | ふう〜 まさかこんな場所にオアシスが隠れていたとは… |
クレブ | まったくですな シフォン様、どうやってここを見つけたので? |
シフォン | この「森の心」と呼ばれる宝玉のおかげでね 見つけることができたのよ |
チョコ | キュ〜 |
その宝玉は淡い緑色の光を放ち、 っているアリンの心を不思議と落ち着かせたーー | |
アリン | これは…一体どこで手に入れたんだ? |
シフォン | 拾った |
アリン | ホントかよ!? 聖なる祠の宝箱の中とか、そういうんじゃないの? |
シフォン | 別に信じなくてもいいけどね アンタは魔法を扱えないから、 こんな宝玉を手に入れても無駄だし |
アリン | 兄をバカにするな! お前が各地で起こしたトラブルを オレが片付けて来たんだぞ! わかってるのか!? |
シフォン | パパとママの情報を集めてたのよ 人間はひどいわ、全然教えてくれないんだもの |
アリン | それは、知らなかっただけじゃないのか? ん?あれ…なんか…眠い 急…に、眠くなってきた… |
シフォン | ワ…ワタシも… 突然…眠く… |
クレブ | マスター!シフォン様! どうされました!? こんな所で眠ってはいけませんゾ! |
アリン | ああ… うるさ…い…静かに……してく…れ… |
アリンとシフォンは唐突に眠りについてしまったーー |
5-1夢境の地「迷いの霧」
アリン | う…ん…?ここはどこだ? 何でここにいるんだ? |
アリンは見たこともない風景に困惑するーー | |
アリン | オアシスにいたはずなのに… いきなり眠って…?これは夢か? まさかシフォンの悪戯か…? |
アリン | シフォン!つまんない悪戯はやめろ! 早く元に戻すんだ! |
アリンは大声で叫ぶが、返事はなかったーー | |
アリン | なんなんだ一体…? 周りの様子を調べてみるか… |
アリンは歩きながら考えて、 まずは状況を把握することにしたーー |
5-3夢境の荒野「術者の陣」
アリン | 誰だお前らは!? いきなり襲ってきて一体なんのつもりだ!? |
アリンは奇妙な服装の幻術士に向かって叫ぶが、 何の返答もなく… 魔法の杖をかざして呪文を詠唱しはじめたーー | |
アリン | 無視しやがって! 実力で黙らせてやる、じゃなくて喋らせてやるぞ! |
霧の中からさらに複数の幻術士が現れ、 アリンを包囲するーー | |
アリン | な、なんだよ!…頭が…痛い! お前ら…やめろ… |
ファンカ | この化け物め この霧幻境で我らに出会ったのが運の尽きだ |
バモ | 四! |
リン | 三! |
ガリエ | 伏! |
ファンカ | 魔! くらえ!! |
アリン | ぅうあああああ…… |
アリンは頭痛とともに精神に強いダメージを受ける… 意識が、遠のいていくーー |
追憶がアリンの頭の中を巡っている… いつかの自分の声が…聞こえてくるーー | |
アリン | どうして父さんと母さんは… 僕を人間社会に捨てたんだ?… |
アリン | そうしてみんな僕をいじめるんだ?… 僕はただ… 友達が欲しいだけなのに… |
アリン | 誰かを助けても… どうせまた嫌がられて… 一体どうすれば… |
アリン | 僕なんていない方がいいのか? それならばこのまま消えてしまえば… きっと…楽に… |
アリン | やめろ!…頭の中から… 出て行け!!! |
アリンが大きな声で叫び、 力ずくで術から逃れた事に、幻術士達は驚愕するーー | |
リン | そんなバカな!?… 我らの術から抜け出しただと!? |
ファンカ | 慌てるな!ここを守るんだ! 夢の主の所へ行かせるな! |
アリン | お前らの主がいるのか!! 安心しな!お前ら誰一人逃さないぞ! |
5-5霧の峡谷「夢の主」
アリンは幻術者たちを打ち倒したが、 彼らはきりに同化して逃げ去ってしまったーー | |
アリン | ここは…夢の中なんだ… おい、主とやら!すぐ出て来い! |
突然、空中にシフォンの姿が現れ、落下してくる… アリンは咄嗟に避け、 シフォンは地面に尻もちをつくーー | |
シフォン | コラ!何やってるのよバカ兄! ちゃんと妹を助けなさいよ! |
アリン | いやバカじゃないぞ シフォンは空を飛べると思ったし、 それにここは夢の中らしいから、落ちても痛くないだろ |
シフォン | だ!と!してもよ! レディーに尻もちつかせるなんて許されると思う? |
アリン | レディーなんて見当たらないが? それより何でオレとお前だけがここに? クレブやチョコは? |
シフォン | おそらく… 森の心のせいじゃないかしら… |
アリン | あの宝玉か…? |
シフォン | あれを覗き込んだのは私とアンタだけ… 推測でしかないけど… とにかく現実に戻れればわかるんじゃないの? |
アリン | うーん…夢の主って奴をさがしてみるしかないか… ところで、お前は空から落ちる前に、 何かを見たか? |
シフォン | か、関係ないでしょ!? 死んでもあんたには教えないわ! |
アリン | いや、まあ別に教えてくれなくてもいいさ |
メニス | … |
一人の女性がアリンとシフォンの前に姿を現した… 何も語りかけては来ないが、 強力なオーラを身にまとっているーー | |
アリン | 夢の…主か? このプレッシャー…今までの敵とは段違いだ… 勝てるのか…? |
シフォン | 何言ってるのよ?ここは夢の中、 その支配者に勝てるわけないじゃない? |
アリン | そうか!?何故もっと早く言わないんだ! さっさと逃げるぞ! |
シフォン | ねえ…ちょっとは頭を使いなさいよ もし彼女が私達を殺したいだけなら、 そもそもここまでたどり着けてない… とにかく、何が目的なのか見極めるのよ |
アリン | なんでそんなに落ち着いてられるの? |
メニス | ………………………… |
アリン | クッ…勝てない… この差は…厳しすぎるぞ… |
シフォン | ダメージを与えても…すぐ回復してしまうし… 弱点も見つからない… |
アリン | 強すぎるけど、何か方法を考えないと… |
シフォン | できるだけ耐えて… 彼女が反応するのを待って… |
アリン | 反応したら殺されるんじゃないか!? ヤバいんじゃないか!? |
シフォン | うるさいわね! 助かりたいなら黙っててよ! ほら、始めるわよ! |
シフォンの言ったとおり、 夢の主を包む霧が消えていく… 少し苦し気な様子を見せているーー | |
メニス | 君… 燭光石…もっとこちらに…近づけて… |
シフォンは夢の主が言う通り燭光石を近づけると、 みるみる霧を吸収しはじめたーー | |
メニス | お願い… 君たちが誰か知らないけど… 君たちに頼むしかない… |
アリン | だ…大丈夫か? シフォン、もっと霧を吸収できないか? |
メニス | い、いけない! アイツに見つかってしまった… 君たち…早く四相の地に行って… 守護者を…助けて… |
アリン | アイツ?守護者?四相の地? ダメだ色々出過ぎて理解が追い付かない… |
シフォン | ちょっと! 黙っててもらえる? |
メニス | 災厄はすべて…ボクのせい… 時間はもう…早く… できなければ……もう… |
シフォン | できなければ…どうなってしまうの? |
メニス | ボク…ああ… 見つかってしまった…君たち…早く…! 四相の地へ!! |
霧が夢の主を包み込む… 夢の主は力を振り絞り、 アリンとシフォンを夢から解放したーー |
第五章「終幕」
アリン | うわああああっ!! |
アリンが叫びながら飛び起き、 見守っていた者達を驚かせるーー | |
クレブ | マスター、悪い夢でも見たのですか? |
アリン | ……あれ?ここは? クレブ、お前は本物か、偽物か? |
クレブ | もちろん本物ですゾ!…痛ッ! クレブのほっぺをつねっても意味ありませんゾ! |
アリン | やっと…現実の世界に戻って来れたか… おや?シフォンは? |
シフォン | ここにいるわよ 夢の世界に飛ばされたのは、 やっぱり森の心のせいだったみたいね… |
アリン | ああ、これからは拾い物には気を付けないとな… |
シフォン | ねえ…夢の主から受けた頼みだけど、 どうするつもり? |
アリン | そう言われてもなあ… 守護者とか何だか全然わからないし、 オレに言われても… |
シフォン | アンタはホントに何も知らないのね… 四相の地の守護者は水の巨人ウォレオ、 炎龍のファージャ、母なる大樹フレージアと、 砂嵐の蠍王アシラ……聞いたことないの? |
アリン | 炎龍?炎龍なら知ってるぞ! 炎龍の鳴き声が聞こえた後、火山が爆発したのだ |
シフォン | え、なにそれ! そんなこと聞いてないわよ! |
アリン | うん、言ってないし 何でも兄から話を聞かせて欲しいのか?妹よ |
シフォン | まあ、別にいいわ 守護者は自分で探し出してよね |
シフォンはため息をついて、 翼を広げて飛び立とうとするーー | |
アリン | 待った! あの霧を吸収できる燭光石はまだあるのか? またあそこに行ったら… |
シフォン | なに?欲しいの? たくさんあるわよ、ほら |
アリン | おお、サンキュー! シフォン…いろいろと助かったよ、ありがとな |
シフォン | ………………… |
アリン | ん、どうした? |
シフォン | べ、別に…じゃあね! |
シフォンは日傘で顔を隠しながら、 チョコを連れて飛び去って行ったーー | |
クレブ | おや、マスター 夢の中にいる間、兄妹で仲良くなれたのですかな? |
アリン | うーん、別に けど、新しいやるべき事はできたな! |