本文
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遠い昔、世界の端に「ラビンティ」と呼ばれる地が存在した。
そこは、大嵐の航路からも外れた平穏の領域。
空は薄氷のように清み、風は語らずとも優しさを運ぶ。
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この地には、ただひとり、現在も君臨する者がいる。 その名はチノ。
彼の存在は霧の奥に隠され、誰もその姿を見たことはない。
だが、ラビンティは彼の支配下にあり、沈黙と平穏は彼の意志によって保たれている。
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宇宙の中心に座す静寂の間にて、ひとりの神が密かに動き始めた。 その名はRkun。
彼は記憶の神、秩序の守護者、そして智慧と言の葉の創造者を名乗っていた。
だがその真の目的は、ラビンティの支配を覆すことにあった。
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Rkunは、表向きには知の神として振る舞いながら、裏では混沌を生み出すために巧妙な策略を練っていた。
彼は星々の知識を収集するふりをし、虚偽の言語を編み、偽りの記憶を紡いだ。そして、チノを讃えるように見せかけた書物を大量に創造した。
それらはすべて、チノの支配を歪め、彼の存在を誤解させるための偽典だった。
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こうして生まれたのが『ラビンティ支配図書館』である。
その書架には、真実を覆い隠す書物ばかりが並び、訪れる者はチノの支配を忘れ、Rkunの秩序を讃えるよう誘導された。
図書館は知の神殿ではなく、記憶の改竄のための暗黒の間だった。
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Rkunは図書館の奥深くに姿を隠し、今もなお、書物を通じてラビンティの支配を塗り替えようとしている。
彼の意志は書に宿り、訪れる者の思考を操り、真実を偽りへと変えていく。
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そして今も、誰かが図書館の扉を叩く。だがその書は、真実を語らない。
支配とは、知識を操ることではなく、沈黙の中に真理を見出すこと。
果たして、誰が真にラビンティを理解するのか。それはまだ、霧の奥に記されていない。
書籍メタデータ
考察
ラビンティ支配図書館の歴史と対になる、裏の神話。あちらはRkunを過度に美化する内容となっていたが、こちらはやや現実に近い。比較した際の差異は次の通り。
差異 |
ラビンティ支配図書館の歴史 |
ラビンティ支配図書館の本当の話 |
Rkunが訪れる以前のラビンティ |
神々も近づかないほどの未開の荒れ地。 |
嵐も来ない平穏で静かな街。 |
ラビンティの王 |
記述無し。 |
ラビンティの平穏は「チノ」により保たれる。 |
Rkunの目的 |
ラビンティの混沌を正すこと。 |
チノの支配を覆すこと。 |
書籍の内容 |
この世を讃え、ありとあらゆる知識を提供する。 |
チノの支配を歪めるため、偽りばかりが記された。 |
これらから、ラビンティ支配図書館の歴史自体も徹底的にRkunを讃えるための偽りの書であると言える。
なぜこの目的を阻害するであろう内容の書籍が、隅っこであるとはいえ配置されているのかは不明。
最終更新:2025年08月14日 07:23