本文
1ページ
彼は目覚めるたびに違う人生を思い出す。 ある日は画家、ある日は殺人者、ある日は誰かの弟……。 だが、どれも彼自身の記憶ではない。
「それが物語の断片なんだ」Mは言う。「お前の脳は、読者が読み終えた物語の『空きページ』にすぎない」
2ページ
彼の記憶は、誰かが忘れた物語の残骸。 そしてMは、それらを封じる者だった。
Mは静かに、棚から一冊の本を取り出す。
赤い表紙に文字は書かれていない。
3ページ
Mは一冊の本を開く。 ページは白紙だが、彼の記憶を静かに語ると、文字が浮かび上がる。
「お前が思い出すたびに、物語が完成する。……でも、完成した瞬間、その物語は失われる」
彼は語る。
「『僕』は誰かの物語だったんだね」
4ページ
Mは憐れみともつかない、曖昧で小さな笑顔を浮かべた。
「そして、物語はお前の記憶だった」
ページをめくる。彼が語った記憶は、今まさに読まれている。だが、誰も気づかない。自分が彼の記憶を封じていることに。
5ページ
最後のページに、こう書かれている。
『この物語を読み終えた者は、彼の記憶を夢に見る。 そして、自分が物語だったことを忘れる』
読者は本を閉じた。 彼は目覚める。 今度は『読者』の記憶を持っていた。
6ページ
Mは静かに笑う。
「封じられたものは、またどこかで封じる者になる……。それが、物語と記憶の交換律、だからな」
「ぼくにも分かるように説明してー!」
「お前にはたぶん分からないぜ。百年くらい勉強してくるといい、アハハッ」
むくれる
センチュリー?の頭をMがぽんぽんと撫でた。
書籍メタデータ
考察
Mが主役を務める短編。Mらしくテーマはメタフィクションのようだが、難解なのかただ訳が分からないだけか非常に理解がしづらい内容である。まあ、素人の書くメタフィクションは往々にして意味不明なものになるのだが。
もう一人の主な登場人物は『彼』と言及されているが、それが誰なのかは不明。一人称は『僕』であるらしい。
本、物語に宿るような形の記憶のミームなのかもしれない。
また最後では
センチュリー?がわずかに言及されている。物語をMから聞いていたらしいが、やはり彼には難しいようだ。
最終更新:2025年08月23日 11:07