Bout the city (前編) ◆Su10.RK3MU
【001】
「だーれーかー、いーまーせーんーかー?」
殺し合いの舞台となる島のほぼ中央、島の東西を繋ぐ幹線道路から少し奥へと歩いた場所にあるキャンプ場。
細々とした明かりしかなく、寂しげな雰囲気を漂わせるそこに間の抜けた声が響き渡っていた。
細々とした明かりしかなく、寂しげな雰囲気を漂わせるそこに間の抜けた声が響き渡っていた。
「そんな大声出して誰か出てきたらどうするのよ?」
「だから、その誰かを探しているんじゃないですか」
「だから、その誰かを探しているんじゃないですか」
とほほーと溜息を吐いてセラスは広々としたキャンプ場を見渡す。
吸血鬼としては恥ずかしながらにまんまと人間達に囚われてしまった色々な意味でかわいそうな彼女は、
彼女を捕らえた2人の少女――涼月奏、近衛スバルの両名と共にキャンプ場を探索していた。
しかし、背中につんつんと刃物をちらつかされながらすでに30分ほどの時間を費やしているものの成果は芳しくない。
このキャンプ場には、テントを張るためのエリアと火を起こして料理をするエリアとあるが、どこにも人影は見られなかった。
いくらか立ち並ぶログハウスにしても、中に人が潜んでいそうだという気配はない。
吸血鬼としては恥ずかしながらにまんまと人間達に囚われてしまった色々な意味でかわいそうな彼女は、
彼女を捕らえた2人の少女――涼月奏、近衛スバルの両名と共にキャンプ場を探索していた。
しかし、背中につんつんと刃物をちらつかされながらすでに30分ほどの時間を費やしているものの成果は芳しくない。
このキャンプ場には、テントを張るためのエリアと火を起こして料理をするエリアとあるが、どこにも人影は見られなかった。
いくらか立ち並ぶログハウスにしても、中に人が潜んでいそうだという気配はない。
「どうやらここには誰もいないようね」
更に数分後、キャンプ場を一周し終えた3人はそう結論を出した。
それは正しく間違ってはいない。
それは正しく間違ってはいない。
だがしかし、彼女達を見つめる者が“キャンプ場の外”に存在した。
■
キャンプ場の北側、土がむき出しになった斜面の上から更に50メートルほど森を入った所に二人の男が潜んでいた。
衛宮切嗣と黎星刻の二人だ。
切嗣はライフルに備え付けられたスコープで、黎星刻は双眼鏡を使ってキャンプ場の中を探索している少女達を観察している。
衛宮切嗣と黎星刻の二人だ。
切嗣はライフルに備え付けられたスコープで、黎星刻は双眼鏡を使ってキャンプ場の中を探索している少女達を観察している。
黎星刻は双眼鏡から目を離すと、
地面に伏せてライフルを構えている男を見やり、そして彼の提案した“作戦”をもう一度頭の中で反芻した――
地面に伏せてライフルを構えている男を見やり、そして彼の提案した“作戦”をもう一度頭の中で反芻した――
「僕達に、この戦いを生き残れる実力があると思うかい?」
それが天子とセイバーの二人と別れた後、切嗣が最初に発した言葉だった。
黎星刻は返答に詰まる。
できると言うのは容易い。しかしそれはただの願望でしかない。目の前の男はそのようなことを聞きたいのではないだろう。
黎星刻は返答に詰まる。
できると言うのは容易い。しかしそれはただの願望でしかない。目の前の男はそのようなことを聞きたいのではないだろう。
「質問を変えよう。君が戦ったセイバー――彼女のような存在がここにウロウロしていると想定して、
それらと真っ向勝負を挑んで僕達が最後まで勝ち残る可能性を君はどれくらいあると考える?」
それらと真っ向勝負を挑んで僕達が最後まで勝ち残る可能性を君はどれくらいあると考える?」
――否/Zeroだ。
今度ははっきりと答えを返すことができた。
それはなんら難しい問いではない。いや、もうすでに答えが出ている。黎星刻はすでに一度敗北を喫しているのだから。
この問いにはなんの意味がある? 切嗣が自らを黎星刻の上位にあると印象付ける為か?
いやそれは違う。セイバーという手駒を持つ切嗣もここでは黎星刻と立場は変わらない。
より強き者が他に存在すれば(彼はすでに想定しているようだが)今この場における実力の差など関係はない。
つまり、この問いは問いの逆を導き出すための問いだ。この問いには誤りがある。
今度ははっきりと答えを返すことができた。
それはなんら難しい問いではない。いや、もうすでに答えが出ている。黎星刻はすでに一度敗北を喫しているのだから。
この問いにはなんの意味がある? 切嗣が自らを黎星刻の上位にあると印象付ける為か?
いやそれは違う。セイバーという手駒を持つ切嗣もここでは黎星刻と立場は変わらない。
より強き者が他に存在すれば(彼はすでに想定しているようだが)今この場における実力の差など関係はない。
つまり、この問いは問いの逆を導き出すための問いだ。この問いには誤りがある。
「その通りだ。僕達にはありとあらゆるものが不足している。とりわけ重要なのは情報だ。
相手を知らずに戦いを挑む。そんなのは運を天に任せたギャンブルでしかない。
そして僕達はギャンブルに自らの命を賭けるほど酔狂な人間ではないはずだ」
相手を知らずに戦いを挑む。そんなのは運を天に任せたギャンブルでしかない。
そして僕達はギャンブルに自らの命を賭けるほど酔狂な人間ではないはずだ」
しかし、ここには情報源となるものが乏しい。都合よく、ここにいる他の人物の情報などそう手に入るまい。
その点において(黎星刻の立場からすると言い訳がましいが)当てずっぽうになるのは仕方ないのだ。
ならば、標的を見つけた後に詳細に観察するのはどうか?
偵察、観察、分析――そしてそこからくる戦術の組み立て、戦術に要する物資の調達、命令の伝達。
黎星刻が常道とする兵法の基本である。が、しかしここではそんな時間的余裕はない。この戦場は三日で閉じてしまう。
その点において(黎星刻の立場からすると言い訳がましいが)当てずっぽうになるのは仕方ないのだ。
ならば、標的を見つけた後に詳細に観察するのはどうか?
偵察、観察、分析――そしてそこからくる戦術の組み立て、戦術に要する物資の調達、命令の伝達。
黎星刻が常道とする兵法の基本である。が、しかしここではそんな時間的余裕はない。この戦場は三日で閉じてしまう。
「ならば、どこでアドバンテージを得るか。己の生の確率を高めていくか――」
情報ではない、武器も物資もここでは自由ではない。人手を得ることも容易くはない。ならば、残るのは――地の利か。
「その通りだ。その点について僕は君と意見を交わしたかった」
言って、切嗣は懐から地図を取り出して開いた。
「僕は、僕達が戦闘を行うエリアを“限定”しようと思っている」
あえて、戦場を限定する? それはつまり――
「そう、一種の篭城だ。そして、戦闘を行うエリアを限定することで余裕として生まれる時間をそのエリアの把握に費やす」
なるほどと黎星刻は頷いた。表情は平静を保っていたが、しかし切嗣の冷静さに内心驚きを禁じえないでいた。
黎星刻は天子と一緒に殺し合いの舞台に立たされた時点でこの戦いを個と個のものだと認識してしまっていた。
何もかもが不透明な上で、逼迫した状況。
黎星刻ともあろう者が己と敬愛する天子様を守るだけのことに精一杯でしかなかったということだ。
しかし、切嗣は違った。このような不可解な事が起きて間もなくだというのに、自らが置かれた状況を冷静に捉えている。
黎星刻は天子と一緒に殺し合いの舞台に立たされた時点でこの戦いを個と個のものだと認識してしまっていた。
何もかもが不透明な上で、逼迫した状況。
黎星刻ともあろう者が己と敬愛する天子様を守るだけのことに精一杯でしかなかったということだ。
しかし、切嗣は違った。このような不可解な事が起きて間もなくだというのに、自らが置かれた状況を冷静に捉えている。
黎星刻は内心切嗣という男の存在に感謝する。
確かにここは一種の戦場なのだ。ならば、自分は姫を守る騎士ではなく、軍師の視点で物事を進めなくてはいけない。
そのことに気づかせてくれた切嗣の存在は黎星刻からすればまさに僥倖であった。
考えようによっては天子を人質に取られたことも、彼女を堅牢な保護下に置けたと考えれば都合がいい。
確かにここは一種の戦場なのだ。ならば、自分は姫を守る騎士ではなく、軍師の視点で物事を進めなくてはいけない。
そのことに気づかせてくれた切嗣の存在は黎星刻からすればまさに僥倖であった。
考えようによっては天子を人質に取られたことも、彼女を堅牢な保護下に置けたと考えれば都合がいい。
「敵の情報を探すよりも、地の情報を得るほうが容易いということか」
「その通りだ。仮に最後まで生き残るために10人倒す必要があったとして、その10人の情報を得ることは不可能に近い。
だが、地形の、それも場所を限定するならば、1日2日で数エリア分の情報は得られるだろう」
「その通りだ。仮に最後まで生き残るために10人倒す必要があったとして、その10人の情報を得ることは不可能に近い。
だが、地形の、それも場所を限定するならば、1日2日で数エリア分の情報は得られるだろう」
切嗣の意見は理にかなっている。地の利というアドバンテージを得る為に、どこかの場所に陣取るのは正しい。
だがしかし、それにも問題はある。3日という時間はやはりこの場合でも足かせになる。
切嗣は2日あれば数エリアは把握できると言ったが、ならばそこに誰もやってこなければどうする。
いやそもそも、そのエリアが――
だがしかし、それにも問題はある。3日という時間はやはりこの場合でも足かせになる。
切嗣は2日あれば数エリアは把握できると言ったが、ならばそこに誰もやってこなければどうする。
いやそもそも、そのエリアが――
「気づいたようだな。僕が相談したいのはあの八雲紫と名乗った女が言った“立ち入りできなくなる場所”のことだ」
そう。八雲紫という女はこの殺し合いの舞台の上に立ち入れなくなる場所が増えてゆくことを示唆していた。
その目的は状況の膠着の打開と、殺し合いの参加者がより狭いエリアの中で出会いやすくする為に違いない。
つまり、それは……“最終的に残るエリア”へと陣取れば、そこで他の者達よりも時間をかけて情報を得ていたのであれば、
生き残った者達の中でかなり優位なアドバンテージを得るということに他ならない。
その目的は状況の膠着の打開と、殺し合いの参加者がより狭いエリアの中で出会いやすくする為に違いない。
つまり、それは……“最終的に残るエリア”へと陣取れば、そこで他の者達よりも時間をかけて情報を得ていたのであれば、
生き残った者達の中でかなり優位なアドバンテージを得るということに他ならない。
「……どの場所が最後まで残る、か」
「それを推定することができれば僕達の戦略の半分は成ったと言えるだろう」
「それを推定することができれば僕達の戦略の半分は成ったと言えるだろう」
黎星刻は切嗣の開いた地図に注視する。
まず断定できるのは、立ち入りできなくなる場所とは地図に引かれた升目の単位で置かれるであろうことだ。
そうでなければこのように地図を区切って、しかも番号や記号を振る理由はない。
地図上での1マスが立ち入りできなくなる場所――進入禁止エリアと指定される最小単位なのは疑う余地もない。
まず断定できるのは、立ち入りできなくなる場所とは地図に引かれた升目の単位で置かれるであろうことだ。
そうでなければこのように地図を区切って、しかも番号や記号を振る理由はない。
地図上での1マスが立ち入りできなくなる場所――進入禁止エリアと指定される最小単位なのは疑う余地もない。
ならば問題は、どこからどのような順序で、そして一度にどれだけのエリアが指定されるのか。
指定されるタイミングは6時間おきに行われる放送毎。途中でペースが変わらなければ3日目が終わるまでに11回だ。
そして地図上の升目は全部で36マス。
11回目の放送で升目が埋まってしまっては意味がないので、その時点で最低1つは残るとし、
毎放送で同じ数ずつだけ埋まっていくと仮定すれば1回の放送で指定される進入禁止エリアは3つ。
11回の放送で33の升目が埋まり、最後の6時間に3つの升目が残るということになる。
指定されるタイミングは6時間おきに行われる放送毎。途中でペースが変わらなければ3日目が終わるまでに11回だ。
そして地図上の升目は全部で36マス。
11回目の放送で升目が埋まってしまっては意味がないので、その時点で最低1つは残るとし、
毎放送で同じ数ずつだけ埋まっていくと仮定すれば1回の放送で指定される進入禁止エリアは3つ。
11回の放送で33の升目が埋まり、最後の6時間に3つの升目が残るということになる。
「想定としては妥当な形だ。僕があの女の立場ならその通りにするだろう」
だがしかし、確証はない。全く別のパターンで升目が埋められてゆく場合も存在するだろう。
例えば、1回目で全体の半分を。2回目で残りの半分を……というパターンなどだ。
例えば、1回目で全体の半分を。2回目で残りの半分を……というパターンなどだ。
「この島は広くはない……が、狭いというわけでもない。
あまり一度に多くのエリアが指定されれば、退避する余裕が足りずに何人かの人間が死んでしまう可能性がある」
「それに何か問題が……?」
「わからない。ただ、あの女は殺し合いの参加者がルール違反ではなく殺し合いの中で死ぬことを望んでいた節がある。
だとすればこういったことで死者が悪戯に増えるのはよしとしないんじゃないかというのが僕の印象だ」
あまり一度に多くのエリアが指定されれば、退避する余裕が足りずに何人かの人間が死んでしまう可能性がある」
「それに何か問題が……?」
「わからない。ただ、あの女は殺し合いの参加者がルール違反ではなく殺し合いの中で死ぬことを望んでいた節がある。
だとすればこういったことで死者が悪戯に増えるのはよしとしないんじゃないかというのが僕の印象だ」
しかし、これも確証のないことだ。ただの印象でしかなく、またその印象は相手がわざと植え付けたものなのかもしれない。
「アプローチを変えよう。途中経過はともかくとして、最後に残る場所というのは必ず発生する。
もし君ならどこを残す。あるいは、どこは残さない? どこから埋めてゆく?」
もし君ならどこを残す。あるいは、どこは残さない? どこから埋めてゆく?」
黎星刻は地図を見つめる目を凝らす。素直に考えれば“外側”から埋めてゆくのが順当に思える。
地図の端は海になっており、升目によってはほとんど舞台の意味を成していない場所もある。
参加者同士の接触を増やしたいのであれば、地図の端から順番に埋めてゆくのが一番効果があるはずだ。
つまり、最終的に残るのは地図の中央に近い場所となるだろう。とはいえ――
地図の端は海になっており、升目によってはほとんど舞台の意味を成していない場所もある。
参加者同士の接触を増やしたいのであれば、地図の端から順番に埋めてゆくのが一番効果があるはずだ。
つまり、最終的に残るのは地図の中央に近い場所となるだろう。とはいえ――
「そうだな。僕達は僕達なりの考えで推理することはできる。だがしかしそれは僕達なりの考えでしかない。
あの八雲紫という女。あるいはその裏に何者かがいるのだとしたらそいつが別の考えをしていれば無意味だ。
だから、最終的に僕達が戦場と定めるエリアを指定する根拠は、――僕達自身の都合で決めればいい」
「都合……?」
「相手側の事情が推し量れない以上、こちらの事情に重きをおいて決定するのが最もリスクが少ない」
あの八雲紫という女。あるいはその裏に何者かがいるのだとしたらそいつが別の考えをしていれば無意味だ。
だから、最終的に僕達が戦場と定めるエリアを指定する根拠は、――僕達自身の都合で決めればいい」
「都合……?」
「相手側の事情が推し量れない以上、こちらの事情に重きをおいて決定するのが最もリスクが少ない」
敵の情報が得られないから地の利を得ようとする。
どの地に陣地を置くのが有効かわからないのなら、まずは自らが得意とする場所を陣地とする。
正しい。なんらおかしくはない。だが正しいからこそに切嗣という男の思考は不気味であった。
まるで他人事のように効率だけを重視した作戦を取る。
そしてその効率から発生する無駄や労力も必要経費だとあらかじめ割り切っているような態度だ。
どの地に陣地を置くのが有効かわからないのなら、まずは自らが得意とする場所を陣地とする。
正しい。なんらおかしくはない。だが正しいからこそに切嗣という男の思考は不気味であった。
まるで他人事のように効率だけを重視した作戦を取る。
そしてその効率から発生する無駄や労力も必要経費だとあらかじめ割り切っているような態度だ。
普通の人間ならもっと勝利を確実にする方法はないかと躍起になるだろう。例え無駄な足掻きが不運を呼ぶとしても。
もしくはもっと素早く結果の出る決断を取るはずだ。人は己の死を窺わされた状況には長く耐えられない。
なのにこの切嗣の不可解なまでの冷静さはなんだ。
今この島の中にいる者達の中で、与えられた3日という時間をフルに使うと発想している者がどれだけいるだろう。
いくらかは無駄になると承知の上で、3日目の有利に向けて行動できる者が果たして彼以外にいるだろうか?
もしくはもっと素早く結果の出る決断を取るはずだ。人は己の死を窺わされた状況には長く耐えられない。
なのにこの切嗣の不可解なまでの冷静さはなんだ。
今この島の中にいる者達の中で、与えられた3日という時間をフルに使うと発想している者がどれだけいるだろう。
いくらかは無駄になると承知の上で、3日目の有利に向けて行動できる者が果たして彼以外にいるだろうか?
「作戦を本格始動させるのは最初の放送を聞き、進入禁止エリアがどういうものなのかはっきりした後になるが
目星をつけるなら早いにこしたことはない。
僕達が有利に戦うことができるエリアをピックアップして、その後の経過に合わせて柔軟な対応ができるようにしておこう」
目星をつけるなら早いにこしたことはない。
僕達が有利に戦うことができるエリアをピックアップして、その後の経過に合わせて柔軟な対応ができるようにしておこう」
そして、黎星刻と切嗣の二人が最終的に絞ったのが、地図の中央より北側、《C-2》から《C-5》までの4マスであった。
「本命は《C-2》の市街地。化物を相手にするなら逃げ込める建物は多いにこしたことはない。
それに、建物が多ければその分仕掛けを施すことができるし、物資の調達もはかどるだろう。
そして、そこから東の《C-3》《C-4》《C-5》を保険。《C-2》から撤退する際の猶予としておく。
最終ラインは《C-5》のホテルだ。ここまで引くような事態に陥れば、僕は最終手段(セイバー)を出撃させる」
それに、建物が多ければその分仕掛けを施すことができるし、物資の調達もはかどるだろう。
そして、そこから東の《C-3》《C-4》《C-5》を保険。《C-2》から撤退する際の猶予としておく。
最終ラインは《C-5》のホテルだ。ここまで引くような事態に陥れば、僕は最終手段(セイバー)を出撃させる」
切嗣の確認に、黎星刻は依存はないと頷いた。二人で考えたこの案に今のところ不備は認められない。
もし早期の放送で二人が陣地とした升目が埋められたとした場合の対処も決定してある。
《C-2》が埋まれば代わりに《D-3》を、《C-5》が埋まれば《B-4》を新しく陣地と指定する――と4つの升目を維持する。
常時、4つの升目をキープしておけば、最悪3つの升目が一度に埋まっても最低1つの陣地は確保しておけるという計算だ。
もし早期の放送で二人が陣地とした升目が埋められたとした場合の対処も決定してある。
《C-2》が埋まれば代わりに《D-3》を、《C-5》が埋まれば《B-4》を新しく陣地と指定する――と4つの升目を維持する。
常時、4つの升目をキープしておけば、最悪3つの升目が一度に埋まっても最低1つの陣地は確保しておけるという計算だ。
「じゃあ、まずは《C-2》へと向かうことにしよう。ガソリンなどの燃料が手に入れば色々とできることも増える」
切嗣が歩き始め、そして黎星刻もそれにならう。風にそよぐ花の大海の抜け、二人は足を西へと向けた。
――黎星刻は回想を終えると再び双眼鏡を構え、キャンプ場の中を歩く3人の少女達を見る。
あれから間もなく、二人は道路を走る車両を発見し、それがキャンプ場へと向かっているのだとあたりをつけ
相手に悟られることなく観察できるようこの位置へとついたのだ。
あれから間もなく、二人は道路を走る車両を発見し、それがキャンプ場へと向かっているのだとあたりをつけ
相手に悟られることなく観察できるようこの位置へとついたのだ。
双眼鏡の視界の中で、おっかなびっくりといった風に周囲を探っている少女達の姿は黎星刻の想定していないものだった。
明かりを隠そうとせず、また身を隠すでもない振る舞いは黎星刻からすれば素人のそれと変わらなかった。
なんだ拍子抜けだ、こんな組み伏し易い相手がいるのか――とは、考えはできても、とても心から思うことはできない。
むしろ、視線の先にいる少女達が屈強な戦士であり、我々を手こずらせる敵であれはそれだけ楽であったろうと思う。
殺し合いを興じるために集められた者の中に、比較して力が劣る者が混じるのは至極当然だろう。
黎星刻自身においても切嗣が連れていたセイバーという者からすれば遥かに劣る存在であった。
だがしかし、あのような殺し合いや戦場とは無縁そうな、ただの一般人でしかなさそうな者がいるとは想定外だった。
明かりを隠そうとせず、また身を隠すでもない振る舞いは黎星刻からすれば素人のそれと変わらなかった。
なんだ拍子抜けだ、こんな組み伏し易い相手がいるのか――とは、考えはできても、とても心から思うことはできない。
むしろ、視線の先にいる少女達が屈強な戦士であり、我々を手こずらせる敵であれはそれだけ楽であったろうと思う。
殺し合いを興じるために集められた者の中に、比較して力が劣る者が混じるのは至極当然だろう。
黎星刻自身においても切嗣が連れていたセイバーという者からすれば遥かに劣る存在であった。
だがしかし、あのような殺し合いや戦場とは無縁そうな、ただの一般人でしかなさそうな者がいるとは想定外だった。
勝ち残ると誓った決心という名の壁に鎚が打ちつけられる。
自分達以外の全員を殺して生を得ると誓った。ではその中に無辜の人間も含まれていたのかと。
自分達以外の全員を殺して生を得ると誓った。ではその中に無辜の人間も含まれていたのかと。
黎星刻が自問する中、3人の少女はここには誰もいないと悟ったのか、止めてある車のほうへと戻り始めた。
双眼鏡から目を離し、黎星刻はライフルを構える切嗣を窺う。撃つなら今だろう。この男には良心の呵責など存在すまい。
今、ライフルの引き金を引けば最低二人は殺せるはずだ。
まずは一番後ろを歩いている執事服の少女の足を撃つ。そして続けざまに戦闘を歩く白人の女を撃ち殺す。
ここまでは一息だ。仕損じることもまず考えられない。
その後、残った少女が足を撃った少女を助けようとするなら殺すのは容易い。彼女を撃ちもう一人に止めを刺して事は終わる。
逆に、もし仲間を見捨て逃げ出し、物陰へと隠れたのなら彼女の命は助かる。
その場合は足を撃った少女に止めを刺すに止め、二人は何者かが銃声から狙撃手の位置を特定した可能性を考慮して
素早くこの場を離れることとなるだろう。
双眼鏡から目を離し、黎星刻はライフルを構える切嗣を窺う。撃つなら今だろう。この男には良心の呵責など存在すまい。
今、ライフルの引き金を引けば最低二人は殺せるはずだ。
まずは一番後ろを歩いている執事服の少女の足を撃つ。そして続けざまに戦闘を歩く白人の女を撃ち殺す。
ここまでは一息だ。仕損じることもまず考えられない。
その後、残った少女が足を撃った少女を助けようとするなら殺すのは容易い。彼女を撃ちもう一人に止めを刺して事は終わる。
逆に、もし仲間を見捨て逃げ出し、物陰へと隠れたのなら彼女の命は助かる。
その場合は足を撃った少女に止めを刺すに止め、二人は何者かが銃声から狙撃手の位置を特定した可能性を考慮して
素早くこの場を離れることとなるだろう。
だが、切嗣は結局引き金を引かなかった。
3人が車に乗り込むのを確認すると、スコープから目を離して立ち上がる。
3人が車に乗り込むのを確認すると、スコープから目を離して立ち上がる。
「見逃すのか?」
尋ねてみるが、顔を向けた切嗣の目を見れば彼にそんな情けや優しさがあるはずもないことが否応にも理解させられる。
彼はあくまで自らの最終目的だけの為に少女達を見送ったのだ。
彼はあくまで自らの最終目的だけの為に少女達を見送ったのだ。
「どうやら、仲間となる人間を探して地図に描かれた施設を巡っているらしい。
ここに留まって隠れようという素振りもなかった。もしかしたら探すべき人間の当てがあるのかもしれないな。
あるいは、彼女達が3人でいたことがそれに関係するのか……、少なくとも彼女達には“4人目”がいたはずだからね」
ここに留まって隠れようという素振りもなかった。もしかしたら探すべき人間の当てがあるのかもしれないな。
あるいは、彼女達が3人でいたことがそれに関係するのか……、少なくとも彼女達には“4人目”がいたはずだからね」
強い光や闇の上を渡る。車から発せられる力強いヘッドライトの光は遠く離れた場所からでも容易に確認できた。
「おそらく次はデパートに向かうんだろう。わかっていれば向こうが車でも追いつくのは難しくない。
こんな夜中に明かりをつけて車を走らせていれば必然、通りかかった近くにいる者から発見されることになる。
彼女達には僕達が安全に《C-2》の街中へと侵入する為のカナリア(危険発見装置)になってもらうのがいい」
こんな夜中に明かりをつけて車を走らせていれば必然、通りかかった近くにいる者から発見されることになる。
彼女達には僕達が安全に《C-2》の街中へと侵入する為のカナリア(危険発見装置)になってもらうのがいい」
やはり切嗣の考えは合理的だ。黎星刻が“考えていたとおり”でもある。
「移動しよう」
ライフルを鞄に仕舞った切嗣が歩き出す。彼の背を追って黎星刻もよどみなく歩き出した。
そう、黎星刻もまた合理的な判断をする男なのだ。どう感情が揺さぶられようと、天子の命が第一だということは変わりえない。
そう、黎星刻もまた合理的な判断をする男なのだ。どう感情が揺さぶられようと、天子の命が第一だということは変わりえない。
◆
明かりを点けることもなく、僅かな月明かりのみを頼りに切嗣は山を西へと下る。
その最中、パートナーである黎星刻とは特に言葉を交わしたりはしない。必要な情報は伝えるべき時に伝え終わっている。
――そして、切嗣は彼にあるひとつの情報を伝えていなかった。
その最中、パートナーである黎星刻とは特に言葉を交わしたりはしない。必要な情報は伝えるべき時に伝え終わっている。
――そして、切嗣は彼にあるひとつの情報を伝えていなかった。
「(あの白人の女の目……)」
ライフルのスコープ越しに3人の中で先頭を行く女の紅い目を覗いたその時、切嗣は眩暈がするような感触を得た。
それは極々僅かの、常人では到底意識できないほどの僅かな霊的なプレッシャーだ。
切嗣が魔術師であり、全身を巡る魔術回路の流れに敏感だからこそ感知できた――そういう種類のものである。
それは極々僅かの、常人では到底意識できないほどの僅かな霊的なプレッシャーだ。
切嗣が魔術師であり、全身を巡る魔術回路の流れに敏感だからこそ感知できた――そういう種類のものである。
「(……《魔眼》。あの女はそれに類するものを持っている。魔術師なのか、あるいは人間ではないのか)」
決して強い力ではなかったが不安要素だ。
普通の人間相手でもそうだが、相手が魔術に通じる相手かもしれないとなれば慎重に慎重を重ねて悪いことはない。
切嗣には“殺す”か“見逃すか”2つの選択肢があったが、最終的に後者を選んだのにはそんな理由もあった。
無論、黎星刻に語った理由も真である。あれに手をつけるのは自分達が最初でなくともいいというだけの話だ。
普通の人間相手でもそうだが、相手が魔術に通じる相手かもしれないとなれば慎重に慎重を重ねて悪いことはない。
切嗣には“殺す”か“見逃すか”2つの選択肢があったが、最終的に後者を選んだのにはそんな理由もあった。
無論、黎星刻に語った理由も真である。あれに手をつけるのは自分達が最初でなくともいいというだけの話だ。
足早に山を抜け、切嗣は街中へと入ってゆく。背中についてくる黎星刻も同じだ。
切嗣と黎星刻は同盟(というには些か手順が乱暴かつ強制的ではあったが)を結んでいる。
しかし、二人が互いに生き残りの一席を奪い合う敵であることに変化はない。
生還が唯一の組にしか約束されていない以上、最終的にはどちらかが死ぬ形で決着をつける必要がある。
なので、背中を預ける男がいつ自分に対して凶刃を振るわないとも限らないのだが――
切嗣と黎星刻は同盟(というには些か手順が乱暴かつ強制的ではあったが)を結んでいる。
しかし、二人が互いに生き残りの一席を奪い合う敵であることに変化はない。
生還が唯一の組にしか約束されていない以上、最終的にはどちらかが死ぬ形で決着をつける必要がある。
なので、背中を預ける男がいつ自分に対して凶刃を振るわないとも限らないのだが――
「(僥倖……いや、不幸中の幸いか)」
黎星刻がそうすることはないだろうと、少なくとも今のうちはそんな気は起こさないだろうと切嗣は確信している。
魔眼を持つ女を理解しきれず油断ならない者だとしたら、黎星刻はその真逆で完全に理解できる人間だ。
その思考パターンは切嗣に近く、腕前や戦術的傾向も近いことから実にトレースしやすい。
また目的意識も強く、それと合わせて実に御しやすい相手と言えた。
魔眼を持つ女を理解しきれず油断ならない者だとしたら、黎星刻はその真逆で完全に理解できる人間だ。
その思考パターンは切嗣に近く、腕前や戦術的傾向も近いことから実にトレースしやすい。
また目的意識も強く、それと合わせて実に御しやすい相手と言えた。
切嗣には不安があったのだ。あの騎士王と二人きりでは到底、生還の目はなかっただろうと。
ここには切嗣の手足となって動いてくれる舞弥の姿はない。
同じ主従関係であれば、どうして自分と彼女ではないのか――そう毒づきたいと思って、内心毒づいてもいた。
そこに黎星刻の登場である。おあつらえむきに彼が生きる理由(天子)を隣に置いてだ。
すぐさまに切嗣は彼を手中へと収めたが、始まって間もなくに舞弥の代わりとなる人材を得られたことは幸運だったろう。
この苛烈であろう戦いを勝ち抜くに当たって必要なもののうち半分を得たと言っても過言ではない。
ここには切嗣の手足となって動いてくれる舞弥の姿はない。
同じ主従関係であれば、どうして自分と彼女ではないのか――そう毒づきたいと思って、内心毒づいてもいた。
そこに黎星刻の登場である。おあつらえむきに彼が生きる理由(天子)を隣に置いてだ。
すぐさまに切嗣は彼を手中へと収めたが、始まって間もなくに舞弥の代わりとなる人材を得られたことは幸運だったろう。
この苛烈であろう戦いを勝ち抜くに当たって必要なもののうち半分を得たと言っても過言ではない。
後は、陣地である。それさえ手に入れば切嗣は十全に力を振るい、成し得るうちで最良の結果を導き出すことができるだろう。
その最良をもってしても生還には届かないかもしれない。
だが、切嗣の顔にそれを不安と思うような表情は全く浮かんでいなかった。
その最良をもってしても生還には届かないかもしれない。
だが、切嗣の顔にそれを不安と思うような表情は全く浮かんでいなかった。
切嗣はただただ、その時その時で最もよいと考えられる結果を目指すだけだ。いつでも、どんな場合でも。
【C-3/西部・町外れ/1日目-黎明】
【主:衛宮切嗣@Fate/Zero】
[主従]:セイバー
[状態]:健康、令呪(2画)
[装備]:背負い袋(基本支給品)、タバコ@現実
レミントンM700(弾数x4)+(7.62mm弾x36)@現実、グロック17(弾数x10/10)+(9mm弾x90)@現実
[方針/目的]
基本方針:この殺し合いを勝ち抜き生還する。
1:立てた戦略(※)に従い、黎星刻と協力して行動する。
2:まずは3人の少女を追ってデパートへと向かう。
[主従]:セイバー
[状態]:健康、令呪(2画)
[装備]:背負い袋(基本支給品)、タバコ@現実
レミントンM700(弾数x4)+(7.62mm弾x36)@現実、グロック17(弾数x10/10)+(9mm弾x90)@現実
[方針/目的]
基本方針:この殺し合いを勝ち抜き生還する。
1:立てた戦略(※)に従い、黎星刻と協力して行動する。
2:まずは3人の少女を追ってデパートへと向かう。
【従:黎星刻@コードギアス反逆のルルーシュ】
[主従]:天子(蒋麗華)
[状態]:健康
[装備]:輪刀 覇幻@戦国BASARA、双眼鏡
[方針/行動]
基本方針:天子を守るためにこの殺し合いを勝ち抜く。
1:立てた戦略(※)に従い、衛宮切嗣と協力して行動する。
2:まずは3人の少女を追ってデパートへと向かう。
[主従]:天子(蒋麗華)
[状態]:健康
[装備]:輪刀 覇幻@戦国BASARA、双眼鏡
[方針/行動]
基本方針:天子を守るためにこの殺し合いを勝ち抜く。
1:立てた戦略(※)に従い、衛宮切嗣と協力して行動する。
2:まずは3人の少女を追ってデパートへと向かう。
※衛宮切嗣と黎星刻の戦略
色々と動き回るのではなく、特定の場所に滞在し続けその地を活かした待ち伏せ作戦などで戦闘を有利に進める。
現在の目標は《C-2(最優先)》《C-3》《C-4》《C-5》。ここら一帯の地形の把握と物資の調達を基本的な行動とする。
他の参加者を発見すれば適せん対処。もしどこかが禁止エリアに指定された場合、
その分だけ代わりの陣地候補を選出し、常に4つのエリアを陣地にすることを維持する。
色々と動き回るのではなく、特定の場所に滞在し続けその地を活かした待ち伏せ作戦などで戦闘を有利に進める。
現在の目標は《C-2(最優先)》《C-3》《C-4》《C-5》。ここら一帯の地形の把握と物資の調達を基本的な行動とする。
他の参加者を発見すれば適せん対処。もしどこかが禁止エリアに指定された場合、
その分だけ代わりの陣地候補を選出し、常に4つのエリアを陣地にすることを維持する。
【レミントン M700】
レミントン・アームズ社が開発したボルトアクション方式のライフル。
高い命中精度と信頼性を誇り、古くから警察や軍隊などで狙撃銃として採用されている。スコープ付き。
レミントン・アームズ社が開発したボルトアクション方式のライフル。
高い命中精度と信頼性を誇り、古くから警察や軍隊などで狙撃銃として採用されている。スコープ付き。
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